暗殺教室 自己証明   作:烏鷺

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8時間目 毒の時間

「毒です。飲んでください!!」

 

「阿呆なのか?」

 

理科の授業でお菓子の着色料を取り出す実験を行った後、試験管やら三角フラスコを持って前に出た奥田のセリフを聞いて俺はそう呟いた。まさか、ターゲットに真正面から堂々とそう言って毒を渡す暗殺者が現れるとは、いや、そもそもこれは暗殺と言えるのだろうか

 

「奥田さん、これはまた正直な暗殺ですね」

 

奥田の暗殺に流石の殺せんせーも冷や汗をかいて困惑顔になっている。

 

「あ、あのっ、私皆みたいに不意打ちとか上手く出来なくて…でも、化学なら得意なんで真心こめて作ったんです!!」

 

「それはそれは、では頂きます!」

 

「飲むのかよ!!」

 

あまりにすんなりとそう言って毒を飲み込んだ殺せんせーに前原が突っ込んでいるがそんな事はどうでもいい。俺を含めクラス全員が殺せんせーに注目する

 

「どうなる?」

 

「そもそも毒って効くのか?」

 

全員の目が殺せんせーに集中する中、殺せんせーは呻き声をあげはじめた。しかし

 

にゅ

 

(角が生えた??)

 

俺達の予想とは裏腹に殺せんせーに毒は効かず顔色が変わり謎の角が生えただけだった。いや、だけ、と言うのは不適切か、毒に殺せんせーが反応すると言うのがわかっただけでも成果だろう

 

「この味は水酸化ナトリウムですね。人間が飲めば有害ですが先生には効きませんねぇ」

 

「そ、そうですか」

 

なんで味を知ってるんだよ。と言うツッコミは後にした方が良いだろう。余りにも予想外の変化と反応に毒を渡した奥田本人も戸惑っている。

 

「後、2本あるんですね」

 

「は、はい…」

 

「それでは」

 

そして、そんな俺達を放置して先生は2本目の毒を飲み込んだ。

 

「うっ、うぐぁっ、ぐぐぐ………」

 

バサッ

 

再び呻き声を上げた殺せんせーだったが次は頭に翼が生えた。若干、最初にできた角の形状が変わっているがそれ以外に目立った変化はない。

 

「豪華な顔になってきたな」

 

「酢酸タリウムの味ですね。先生には効きません」

 

俺の呟きを他所にそう言う殺せんせー、だから、なんで味を知ってるんだよ。本気でツッコミを入れたい衝動に駆られつつもグッと堪えて我慢する。

 

「では、最後の一本ですね」

 

「どうなる!?」

 

「最後はどうなるんだ!?」

 

殺せんせーは角と翼を生やしたまま最後の一本を飲み込む。今までの変化から全員の期待が高まっていく

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」

 

殺せんせーの呻き声をドラムロール代わりに俺達はドキドキしながらその様子を見ていた。

 

しかし

 

ぽんっ

 

殺せんせーは真顔になった。今まで生やしていた角と翼を完全に無くし薄い真顔に、まるで読めない変化の法則に俺を含め全員が唖然となるが殺せんせーは構わず奥田に話しかける。

 

「王水ですねぇ、どれも先生の表情を変える程度です」

 

「そ、そうですか…」

 

ある意味劇的な顔の変化に奥田は戸惑いを隠せなくなっている。だが、それは見ている俺達も同じだ。

 

「先生真顔薄っ!!」

 

「顔文字見てーだな!!」

 

とうとう前原と岡島が我慢できずにそう言うが殺せんせーは表情を変えずに受け止める

 

「先生のことは嫌いでも暗殺のことは嫌いにならないでください」

 

「いきなりどうした!?」

 

そして、何を思ったのか薄い真顔とか細い声で俺達にそう言ってきた。毒の効果が出ているのではと思えなくもないが見た目しか変わってない所を見るとやはり効いていないのだろう。その事に奥田は目に見えて肩を落とすが殺せんせーはそんな奥田に笑顔で話しかけた。

 

「それとね、奥田さん。生徒1人で毒を作るのは安全管理上み過ごせません。なので放課後時間があれば一緒に先生を殺す毒薬の研究をしましょう」

 

「…は、はいっ!!」

 

「ターゲットが自分から…罠だろ」

 

殺せんせーのセリフに奥田は嬉しそうに笑って応えているが俺は笑えずそう呟いた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「奥田」

 

「は、はい!!」

 

奥田の暗殺が終わり実験で使った用具を片付けた後、俺は奥田に声をかけた。だが、奥田は少し怯えた様子で俺に応え振り向く。

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ…なにも…」

 

奥田の様子に俺は首を傾げるが本人はなんでもないようなので俺は尋ねたかったことを聞くことにした。

 

「さっき殺せんせーに渡した3つの毒だが、材料はホームセンターの重曹や牡蠣殻石灰、薬局の殺鼠剤、市販の濃硝酸と濃塩酸か?」

 

「…………………………………………………」

 

しかし、俺がそう尋ねると奥田は何故かぽかんとした顔になった。

 

「奥田?」

 

「…………………………………………………」

 

「奥田!!」

 

「は、はい!!」

 

「どうした、具合でも悪いのか?」

 

「い、いえ…大丈夫です…。少し以外で」

 

俺のセリフに奥田はそう呟く。最後の方は何を言っているのかわからなかったが今は奥田の答えの方が重要だ。

 

「え、えっと…結城君の言う通りです。酢酸タリウムは殺鼠剤では濃度が足りないと思ったので多少調整しましたが、水酸化ナトリウムと王水は仰る通りです」

 

「そうか…凄いな」

 

「え?」

 

奥田の答えに俺は素直に賞賛した。

 

「どの毒の調合も難しい。それを放課後の短い時間でやるなんて中学生のレベルじゃない」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「でも、それだけに惜しいな」

 

「え?」

 

「優れた知識、技術で毒を作れるのに真正面からしか渡すことが出来ないなんてな」

 

「どう言う事ですか?」

 

しかし、俺がそう言うと奥田は困惑した表情でそう言ってきた。

 

「気付くべき事に気付けないと高い知識と技能を利用されて終わるぞ」

 

奥田は俺の言った事がよく理解出来なかったのか首を傾げるが奥田の問題は自分で解決するべき問題、後はカルマの時のように殺せんせーが何とかしてくれるだろう。

 

俺はそれ以上は何も言わずその場を去った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

奥田の真正直な暗殺から一日経ち登校すると奥田がいつもは見せないハイテンションで潮田達と話していた。

 

「何事だ?」

 

「ああ、結城クンおはよー。なんか奥田さんが殺せんせーから教えてもらった毒を完成させたんだって」

 

「昨日言ってたヤツか…」

 

「そうみたいだねぇ」

 

事情がわからずカルマに聞けばそういう事らしい、正直、罠の可能性がかなり高いがあの様子だと奥田はその可能性を考えていないみたいだ

 

「おはようございます。皆さん」

 

「あ、殺せんせー来たみたい。渡して来れば?」

 

「はい!!」

 

多少の不安があるが殺せんせーへと毒を渡しに行く奥田を俺は見送り、毒を渡された殺せんせーは昨日と同じくあっさりと毒を飲み込んだ。

 

「…ヌルフフフ、ありがとう奥田さん。君の薬のおかげで先生は新たなステージへと進めそうです」

 

とても嬉しそうに、興奮した様に殺せんせーはそう言う。その様子に「やっぱりな」と呟き、俺はエアガンとナイフを用意する

 

「…えっ、それってどういう…?」

 

『グオォォォォォオォォォォォォォォォォオォォッ!」

 

自身のセリフに戸惑う奥田を他所に殺せんせーは叫び声を上げて大量の煙を放出すると

 

「ふぅ…」

 

ドロドロに溶けた状態になった。

 

『溶けた!!??』

 

前原や潮田達まじかで見ていた面子が驚きで声を上げるが俺は何かしらの変化はあるだろうなと高を括っていたので驚きはない。

 

「君に作ってもらったのはね、先生の細胞を活性化させ流動性をます薬なのです」

 

そして、殺せんせーは驚き唖然とする俺達にも聞こえる様に奥田にそう言うと一瞬で片岡の机の中に移動した。

 

「面倒だな」

 

移動のスピードが溶ける前と変わっていない。かなり厄介になってしまった。その事に愚痴りながらも俺は、カバンの中身を全て出し。対先生BB弾を空のカバンに入れる。

 

「液状故にどんな隙間にも入り込むことが可能に」

 

「何処に入ってるのよ…」

 

「しかもスピードはそのままに!さぁ、殺ってみなさい!!」

 

先生のセリフに奥田以外の全員が一斉にエアガンを構えるが速すぎて狙いが定まらない上に床下や天井に入り込まれ弾が全く当たらない。

 

しかし

 

「先生!!助けてくれ!!」

 

「どうしました結城君!?」

 

俺がそう叫ぶと殺せんせーは真っ先に俺の元に飛んでくる。俺はカバンを開けて構える。このまま先生を弾入りバッグに入れようとしたが

 

「にゃあ!?」

 

開けていたが故に中が見えたのか殺せんせーは方向を変えて天井の隅へ逃げてしまった。

 

「ななな、なんて事するんです、結城君!!」

 

「失敗か…」

 

「残念そうな顔をするんじゃありません!!先生本気で心配しましたよ!!」

 

「すみません」

 

「次からはなしですよ!」

 

「わかりました」

 

焦った様子でそう言う殺せんせーに俺がそう応えると殺せんせーは安心した様子で息を吐いた。

 

「騙したんですか殺せんせー!?」

 

そんな殺せんせーに奥田の悲痛な声が響く。しかし、殺せんせーはニヤリと口を歪めた。

 

「奥田さん、 暗殺には人を騙す国語力も必要ですよ」

 

「えっ…」

 

「どんなに優れた毒を作れても、今回のようにバカ正直に渡したのではターゲットに利用されて終わりです。今回のようにね…。渚君、結城君、君達が先生に毒を盛るならどうしますか?」

 

「え?えっと…」

 

唐突過ぎる質問に潮田は首を傾げるが俺はパッと思いついた考えを答えた。

 

「先生の好きな甘いものに毒を混ぜます。例えばこの前、カルマが勝手に食べてなくなったジェラートなんかに」

 

「うん、僕もそうするかな…。特性ジュースとか言って渡せば先生飲んでくれそうだし」

 

「そう、人を騙すには相手の気持ちを知る必要がある。言葉に工夫をする必要がある。上手な毒の盛り方、それに必要なのが国語力です。ちなみにカルマ君に盗られた後に毒入りジェラートを渡されれば先生は迷わすジェラートに飛びついていました。結局お金無くて買えなかったので…」

 

その時のことを思い出したのか殺せんせーは表情を曇らせたがすぐに視線を奥田に合わせた

 

「君の理解の才能は将来みんなの役に立ちます。それを多くの人にわかりやすく伝えるために…毒を渡す国語力も鍛えてください」

 

「は、はい!!」

 

天井から降りて元の姿に戻りながらそう言う殺せんせーに奥田はやる気に満ちた顔で応えた。奥田の応えに満足したのか殺せんせーは笑顔で頷いている。

 

「あははっ、やっぱり暗殺以前の問題だね〜」

 

その様子にカルマが揶揄う様にそう言うが全員は苦笑いを浮かべて肩を竦める。

 

殺せんせーの力の前では、どんな猛毒を持った生徒でもただの生徒になってしまう。まだまだ、先生の命には遠く届きそうにない。

 

「たく…いつになったら殺せるんだろうな?」

 

1人そう呟きながら俺は席に着いた。

 

 

 

 

 




最後のまとめ的な部分は完全にパクリましたすみません。
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