私がゲーム開発部を訪れてから数時間が経過した。その間に起こった出来事としては、モモイが担当しているシナリオの完成……とまではいかなかったものの大まかな所は終わった。
その次にミドリが担当しているイラストについてで言えば、アイテムなどのデザインは元々終わっていた。なので、後は登場人物、風景、モンスター、etc…まあ問題は山積みである。
さらに酷いのは、ユズ担当のシステム関連である。そもそもバトルのシステムは出来ているものの、宝箱、アイテム・技・モンスターのパラメーター……殆どが出来ていなかった。
「……これは、終わらなくない?大丈夫そう、皆?」
「ど、どうしよー、、、バタン」
モモイが倒れ込んでしまった。アリスもユズもミドリも話せない程にダウンしている。
そもそも今回は何のためにゲームを作っているのかというと、どうやら学校外の機関に向けたミレミアムサイエンススクールの発表のためらしく、部活一つ一つが何かを制作して出すらしいのだが今ゲーム開発全体の進度はおよそ3割である。果たして残り2週間……終わるのだろうか?
▲シャーレ
「うーん、これはこれは……。」
今、私はPCに向かって厳しい表情をしながらカタカタとキーボードを打っている。何をしているかというと、ユズ担当のゲームのシステムの一部を作っている。
何故することになったというと…少しプライベートでもゲームを作っていたことがあり、その経験を生かせるんじゃないかと思ったからだ。
「主人公が覚える技は……と。」
実際、やったことない人は分からないかもしれないが地味な作業である。ただただパラメーターを入力していくだけである。その癖、技の威力などゲームバランスを考慮して作らないといけない……まあその辺は後で直せばいいのだが、乱雑につけたとて後でつけが回ってくる。
気付けば4時にシャーレに着いて作業してから5時間、飯も食わないでぶっ通しだ。私は3缶目の缶コーヒーなど、飲み込んでから作業を続ける。
「それにしても……少しきついな。」
ここの所、予定も詰め詰めで何も休みというものを取れていない。実際、明日はゲヘナ学園の風紀委員会に呼ばれており休みがない。
「よし!頑張る……。あ、あれ……。」
視界がおぼついている。ぐにゃぐにゃに曲がっている。というより、視界の制御が出来な………………。
▲ミドリ視点
先生は馬鹿だ。私がダウンして少し休んでいる間に先生は消えてしまった。ゲーム開発部の皆に一通り聞いてみると、どうやら先生はまた……また無理をして私達を手伝ってくれている。私は先生が限界を迎えてることを知ってた。だから無視は出来ない。
そう思い、私は先生がいるシャーレに向かった。全速力で。お姉ちゃんも驚きながら私を止めようとしてたけど関係ない。ごめん、お姉ちゃん。これ以上先生を無理させたら……私は怖いの。
また昨日と同じ。丁度夜が更けて9時。あんな先生にさせたくないから。
▲先生視点
これは、闇だ。深い闇。冷たく感じる空気。悲しみに明け暮れ疲れた私の体。なのにそこは虚無。何もない。そこから生み出される私の絶望。精神が蝕ばんでるのが分かる。全方向から否定の言葉が投げかけられている。
お前の取り柄なんかない。生きてる価値なんて無い。お前が傷ついて貰えてるのは偽りの愛情だ。
分かってる。
散々だ。全てが嫌になってくる。理論とか常識とかそんなものは通用しないんだ。皆が私を責めてて、味方なんていなくて。
皆は苦しさを知らないで、ただ責めてるだけで自分の欲望だけを満たしてくシャーレに来る前のあの雰囲気を想起させる。
生徒には言えない。私の死に対しての欲求は。
私は癒えない嫉妬に塗れてる劣等感は。
私はたまたま手に持っていたナイフを心臓に突き刺そうとした。
でも、突然私に一筋の光が指してくる。それと同時に付け抜けてくる甘ったるい濃い花の匂いは。
私は知ってる。そしてこの匂いを嗅いでると本当に落ち着く。
でもそろそろ起きなきゃ。たぶん待たせちゃってるから。
「あ、先生!大丈夫ですか!?私がここの部屋に入ってきたら急に先生が倒れ込んでて、本当に…!」
目の前には一人の生徒。私を悪夢から目覚めさせてくれた本当に優しい生徒。そんな生徒に向かって呼びかける。
「大丈夫だよ。ありがとう。」
そう言って、深く抱き締めた。本来なら、私が先生という立場ならこんな行為してはいけないだろう。でも、今の私は無性に、無性に温かみが欲しかった。この私を刺激する甘ったる匂いが欲しかった。
「せ、先生?少し恥ずかしいというか……。」
「ごめん、ごめん。そろそろ離れるよ。」
もっと抱き締めていたくなったが、困らせる訳にはいかない。私は体を離すことにした。
「ほいっと……、、、よいしょ……っ、、、
あれ?ミドリ?」
顔を離さそうとしてもガッチリホールドされて中々抜け出せない。おかしい。疑問に思い上目で見ると、そこにはいたずらっこの目をした。悪いミドリがいた。
「どうしたんですか♡…………先生♡」
と、いかにもわざとらしい笑顔でこちらを見てくる……。やばい、さっきまであった冷たい静寂は消え去り、気付けば焦りが体を迸っていた。
このまま欲望に従っていけば、いずれ先生、いや一人の男として見せてはいけない所を見せてしまう。だか、抗ったとしてもプライドは維持出来るが明らかにミドリを悲しませてしまう。
「先生、無理しなくていいんですよ……このまま溶けちゃって下さい。」
あぁ、本当にまずい。この匂いと体と全てが私を狂わせてくる。しかも、血流の働きがとてつもなく良くなっている。健康面では全然良しとされていることだが、今回ばかりに限っては、悪い方向に作用している……っ。
「……先生?なんか格好が変ですが……。」
ミドリはそう言うと即座に耳元を寄せてきた。そうして息たっぷりで囁きながら……
「どうしたんですか♡」
あぁ、本当にまずい。理性が残り僅かだ。このままじゃ先生が攻略されてしまう。ギリギリだ。根性でHP1残っているような感じに近い。このままじゃ私は……本当に先生として失格だ。
「ミドリ本当にやめ…………。」
ガチャ
「先生ー!!ミドリ知ってる?急に部室を飛び出していったから何かあるんじゃ、、、と思って………………。」
「「あっ。」」
「…………。おじゃましました……。」
「「待って、誤解だから!!」」
モモイが急速に入っては、ダッシュで帰っていった。さっきまでの色付いた雰囲気は跡形も残ってない。ただ二人の考えていることは同じ。
「先生、お姉ちゃんを追いかけないと!」
「ああ、勿論!」