自殺未遂の男先生とミドリ   作:hatake2

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視界

 結局モモイがダッシュで去ったあの後、なんとか追い付いて説得に成功した。しかし、それ以外にも問題は山積みだった。締め切り時間が迫っているためシナリオの微調整であったり、登場人物・モンスターの表情差分であったり、プレイヤーとのプレイを重ねてのデバッグと詰め込む要素のクオリティであったりやらなければいけないことが盛り沢山だった。

 

 そのせいかここ5日日間はゲーム開発部はほぼ徹夜に近しい状態だった。私は無理するとまた誰かに迷惑をかけてしまうし、それとまた倒れたりするともっといけない事が起こり得るかもしれない。だから随所手伝うことにしていた。そのお陰か一応ゲームをクリア出来る状態には持って行くことが出来た。

 

 しかし、イラスト、ゲームバランスやバグに加えてキャラクターのセリフなどの実装も未だ出来ていない。そのせいか、少しずつだが皆もピリピリしつつあった。

 

「ミドリー!疲れたよ〜〜〜!!

もうやりたくないー!!」

 

「うるさい、お姉ちゃん!だいたい口だけ動かしてて全然手元動いてないじゃん!」

 

(ア、アリスちゃん、なんかピリピリしてるよ……。)

 

(ど、どうしましょう!ユズ……!このままじゃゲームも完成せず魔王ユウカにゲーム部を侵略されておしまいです〜!)

 

 事態は良くなるどころか悪化していきモモイとミドリの口論も絶えない、その横でユズとアリスがパニックになっているという最悪の状況が出来上がりつつあった。

 しかし、不幸中の幸いというべきか今日は先生がゲーム開発部に向かっていた。そして、先生が到着した……と同時にさっきまでの光景はさらに狂気に塗れていた。

 

「皆ー!仲良くやって……る?」

 

 そこに転がってきた状況に私は頭を悩ませるしかなかった。そこにあったのは、まさに"混沌"という言葉が一番適している環境であった。ユズとアリスが部屋の端に縮こまりながら怯えていて、何やらブツブツと話している。

 そして、それを凌駕する程の目の前の悲惨さ。ソファーにあるクッションが空中に破けて舞い上がっての繰り返し、そして床には羽が、資料が、衣服が、その他諸々が散らばっている。その元凶として、目の前で激しい戦闘を繰り返しいるモモイとミドリ。二人は争いに熱中し過ぎていて私が来たことにすら気づいてない。

 

「…………」

 

「お姉ちゃん!!もう観念して!!」

 

「あー!!もう、うるさい!!」

 

 そう言ってモモイが本気で殴りかかった。

 

「いっ……!、お姉ちゃん!もう容赦しないから!」

 

 そうしてミドリが殴りかかった……。

そこから誰も予想すら出来ない悲劇が起きた。

 

「!!!」

 

 ミドリの予備動作や反撃を事前のやりとりから見抜くことが出来たモモイはそのまま華麗に避けた。しかし、"先生"がいたことに二人とも気付いてなかった。加えて、背後で先生がこの喧騒を止めにかかろうと入っていたことでさえも。

 

「くっ…………!」

 

「「先生!!!」」

 

 割と本気の打撃が腹斜筋辺りに抉りながら入った。痛い。私は我慢しなきゃいけないのに、生徒に笑顔を届けて心配させないように振る舞わないといけない存在なのに。疼くまってまるで冬眠中の熊のように動くことが出来なかった。

 意識が遠のく……。途切れる最後に微かに見えたのはミドリが涙を零しながらこちらに向かってくる様子だった。

 

 ▲才羽ミドリ視点

 

 私は取り返しのつかないことをした。あんなに傷ついてる先生を、あろうことか私の手自らで汚してしまった。先生の一番になれるかもなんて浮かれてた私が稚拙だったことを実感した。先生の唯一の拠り所として存在してあげられると思ったのに。私は先生に傷つけるものは……容赦なんかしない、、、そう思ってた。

 馬鹿みたい。結果的に一番傷つけたのは私になっちゃった。。。

 

「先生!、ど、どうしよ!」

 

「ど、どうしましょう!」

 

「うわーん!先生が、はんのうがない。ただのしかばねのようだ。状態ですぅ……!!!」

 

「縁起の悪いこと言わないで!」

 

 私は一言も発せなかった。もう言葉すら発する気すらない。目の前を暗闇が埋め尽くしてる。頭の中をどす黒い後悔と絶望が支配している。

 

「ミドリ……?大丈夫?」

 

 私のせいだ。私のせいだ。私があの時周りを見回していれば。一時の怒りなんかに任せないで、しっかりしていれば。

 ふと視線を落とすとその先には腰に装着してある銃が見えた。私は深く理解した。あの時、なぜ先生があんな選択をしたかを。周り全部が暗闇に見える。全てが黒色で生きる理由なんて感じなくなる。本当に感情が地獄のように一色に染まる。この時も一刻と先生に届く様々な依頼、混沌を渦巻くキヴォトスの問題、そして私の境遇とは段違いな程のプレッシャー。もし、このまま先生が死んじゃうなら。生きててもこの先も同じような目に合わせてしまうなら。私は……。

 

 

 

 手を伸ばした。長く細いという形状だけ聞くと頼りなさを感じるフォルムとは異なりどこか冷たさすら誇るその死を直結させる筒状のものに。触れる寸前だった。

 

「いや、いやだ。いかないで……………………。」

 

「え……。」

 

 先生が私の手を掴んだ。そして、また眠りについた。あれは些細な寝言だろう。この瞬間にも先生は苦しんでる。私は目覚めた。何をしようとしてんだろう。私は全てを悟った気でいた。先生はまだ私の得体知れないものと戦っている。私が、この罪を負って先生を助けなきゃ。それが今、私に許された責務。そういう風に感じたから。




すいません。時間とかプライベートの都合で中々書けませんでした。綺麗事ってクソだし、見返りなんてもの返ってこないよ。私が望むのはこれの小説が皆の生きる少し時間になれたら嬉しい。
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