転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ   作:ストライダー信長

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番外編 邪眼と月

 

 

 

 

『タエさん!第1フェーズ《夜間飛行》、目標地点・サンクトゥムタワーへの【邪眼】の誘導を確認、《月輪》作戦第2フェーズ開始地点に到達しました!!これより第2フェーズ《送り火》を開始します!!』

「了解、引き続きお願いします、ユウカさん」

 

 

 

 

 

 耳元のインカムから響く友人の声にそう返し、私は、上昇を開始した。

 

 

 ミレニアムサイエンススクール・エンジニア部………彼女たちの作ってくれた、このドレスは、素晴らしいまでの加速度を以て、月光の照らす冷たい夜空へ、私の体を運んでくれていた。

 

 

 

 

 【邪眼】………私の呪いの眼をモデルに作られた怪鳥もまた、私を追って、上へあがってくる。

 

 

 

 伝わってくる感情は、焦燥と嫌悪、そして骨の髄まで焼き焦がすような憤怒。

 

 

 あぁ、そうだ、そうだろうとも。

 

 それでいい。

 

 もっと焦れ、苛立て、そして私を追ってこい。

 

 

 

 

 思い出すのは、3日前も、そして、つい2時間前も、私の心配をしてくれた、【冷酷な算術使い】なんて字名で呼ばれる、愉快な親友の姿。

 

 

 

 

『………キヴォトス上空、サンクトゥムタワー頂上よりなお高い位置まで【邪眼】を誘導し、邪眼の通じないあなたを追いかけさせたうえで反転、急降下からすれ違いざまに射殺する。………なるほど、確かに、あの怪物のような鳥を殺すにはそれしかないのでしょうが………一体、どうやって、【邪眼】にあなたを追わせるんですか?』

『あぁ、そこについては問題ありませんよ、ユウカさん。前も言った通り、作戦当日の夜、キヴォトス全域で夜間飛行と外出を禁止してくれれば十分です。………ねぇ、ユウカさん。あの【邪眼】が、なぜ、戦闘用ヘリや飛行船ばかり狙っているかわかりますか?』

『………さぁ?』

『許せないんですよ、自分以外に空を飛ぶ奴がいる事が。奴にとって、月光の中を、あの、甘く冷たい、優しい月明かりの中を飛んでいいのは、奴だけなんです。たとえ罠と知っていても、奴は私を追うしかないんですよ』

『………なんで、それがわかるんですか?』

『わかりますよ。私も、奴も、ミネルヴァなんですから』

 

 

 

 

 

 

 

『第1ブースター燃焼終了!分離………成功!第2ブースター点火!90秒後に分離します!それまでに、どうか、決着を!!』

「了解」

『………タエさん。残念ながら、私たちに支援できるのは、ここまでです』

「はい」

『どうか、あとは任せました』

「………はい!」

 

 

 

 

 ガシャン、と音がしてブースターが分離され、私の体が更に加速した。

 

 

 

 涼やかに私を照らす月光を見上げ、私だけの夜を飛ぶ。

 

 

 

 サンクトゥムタワーと呼ばれる巨大構造物の天辺を通り過ぎ、高く、高く。

 

 

 

 右の義手と接続した村田銃を、掻き抱いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────征くぞ、ミネルヴァ」

 

 

 

 

 

 勝機は一瞬、機会は一度っきり。

 

 

 薬室に込める弾丸は、私の友人たちが夜鍋して造り上げてくれた、水銀弾。

 

 

 

 ………私の邪眼の力を喰らい、威力を増す、一発こっきりの特別製。

 

 

 

 左手でレバーを引き、燃焼を停止させる。

 

 

 

 再点火と同時、翼を折り畳んで反転し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遥か直下、私を見上げて飛翔する、私と同じ『眼』を持った、怪鳥がいた。

 

 

 

 彼我の距離、およそ800メートル。

 

 

 私と同じ怪物とは思えぬくらいに、欠伸が出そうなほどノロマな、無様な姿。

 

 ………当たり前だ、奴と私では、ミネルヴァとしての年季が違うのだ。

 

 生まれたての雛が、紛い物の眼が、私に、本物の邪眼に、先生の【翼】に、敵うわけがない。

 

 

 

 私と同じ、ギョロギョロと呪毒を撒き散らす邪眼は、確かな恐怖に染まっていた。

 

 

 

 

 ………ああ、そうだろうよ。

 

 

 怖いのだろう?

 

 

 一撃、たったの、ひとにらみ。

 

 この眼のひとにらみで、どんな生きモノでも、死んでいく。

 

 いついかなる時であると、月光の中を飛翔するのは、自分だけなのだから。

 

 

 だからこそ、私が怖ろしいのだろう?

 

 

 

 死なぬ私が、恐ろしくて、恐ろしくて、そして何よりも、羨ましいのだろう?

 

 

 

 ………ずっと、分からない事があった。

 

 

 

 あの夜、月が綺麗だった、あの夜、私を撃ち殺したあの老人は、自らの眼を、そして番と思わしき老婆を殺した私に引き金を引く、その瞬間、微かに笑っていた。

 

 

 

 

 不思議だった。

 

 理解が、出来なかった。

 

 

 

 

 だが、今ならば、このキヴォトスに来て経験を得た今なら、理解できる。

 

 

 

 あの夜の私には、そしてこのミネルヴァには、何もない。

 

 

 だが、あの老人には、確かにあったのだ。

 

 守るべき何か、番か、子か、それとも友かは知らないが、確かに、あの老人の手には、大切なものが握られていた。

 

 

 

 

 そして、それは、私もそうだ。

 

 

 

 こんな私を受け入れてくれた先輩(ホシノ先輩)が、かけがえのない大切な友達(アリス)が、そして何よりも、愛する人(イワナ先生)がいる。

 

 

 

 ………こんな私の、醜い目を、綺麗だと言ってくれた、あの人(先生)が。

 

 

 

 

 銃を握った右手を、槍のように構え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────だから、【邪眼】」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の、負けだ」

 

 

 

 

 

 激発音と、嗅ぎ慣れた硝煙の香り。

 

 

 

 稼働限界を迎えて空中分解するブースターと、血飛沫の向こう。

 

 

 

 すれ違いに撃ち放った弾丸は、呪われた梟の眉間を、確かに貫通していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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