転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ 作:ストライダー信長
今回、若干暗めの描写があります。ご注意くださいまし。
「あうぅ………」
「タエちゃんは、もうちょっとスタミナと耐久力をつけた方がいいね」
「この貧相な肉体に攻撃に耐えろと………?」
疲れ切って瓦礫に座る私を、小鳥遊先輩が余裕気に見下ろしていた。
日課の賞金首狩りを終え、無事に帰ってきたところで珍しく訓練をしていた小鳥遊先輩と遭遇し、流れで模擬戦を行う事になったのだが………マジで一方的にボコられた。
というか、高度15メートル程度とはいえ垂直ジャンプで跳んで掴んできた時はマジでビビった。
………何故だか一瞬、小鳥遊先輩の背後に、「
ところどころ痛む体を、何とか起こして。
「ま、攻撃と回避に関しては良い線行ってると思うよ?義手も使いこなせてるみたいだし」
「点数をつけるなら何点くらいですか?」
「う~ん………78点、かな?」
「微妙な点数ですね」
「一撃一撃は重いけど、あれくらいならまず当たらないからね」
義手に仕込まれていた機構─────【
確かに、威力はある。
当たれば並大抵の相手なら一撃で戦闘不能に追い込めるだろうが、その分、反動がえげつない。
本来であればもっと大型のカラクリ人形に搭載されているであろう機構を私の矮躯で運用するのだから、当然と言えば当然なのだが………アレは、駄目だ。
地上で一発まともに撃っただけで体がバラバラになるかと思った*2。
アレを撃つなら、飛翔しながらすれ違いざまに叩き込むしかないだろうな。
気合を入れて、立ち上がり。
「それでは、小鳥遊先輩。私はこれで」
「うへっ?何か用事でもあるの?」
「はい、バイトが………」
「そっか~………それじゃ、引き止めちゃ悪いね。ほどほどに頑張ってきてね~?」
「はい」
ここ数日ですっかり馴染んだ白面を被り直して、廃公園を後にした。
「いらっしゃいませ、お客様。4名様でよろしいでしょう………か?」
「あら?あなた、どこかで………」
入ってきたお客様を席に案内しようとして、なんだか覚えのある気配が4つ。
記憶を、掘り起こして。
「………もしや、そこにいるのは便利屋の皆様では?」
「っ!?社長、にげっ」
「思い出したっ!貴女っ、ミネルヴァさんでしょ!?」
「………ミネルヴァ?」
「あっ、センパイ、お構いなく。ちょっとした顔見知りってだけです」
「そ、そう?ならいいんだけど………」
「ねぇミネルヴァさん!どうしてここに!?あの仮面はどうしたの!?」
「バイトです。あの仮面は………ほら、少し不気味じゃないですか。飲食業に従事するにはふさわしくないのでお休みです」
「なるほど………!」
「………えぇと、テーブル席でよろしいでしょうか?」
「は~い!」
「………なんか、ゴメンね?」
「いえ、お構いなく」
4人を空いていた席に案内して、厨房へ走り。
「………ねぇ、タエちゃん。あの人たち知り合い?」
「なんというか………数日前に銃弾を交わした仲です。皆様、腕利きの傭兵ですよ」
「なるほど?」
「注文も決まったようですし、行ってきますね」
「あっ、うん、お気をつけて?」
何故かそんな事を言うロボ先輩からメモとペンを受け取って、
「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
「え、え~と………紫関ラーメンを4つ」
「え、えへへ………ひ、一人につき一つです………。ああ、私なんかには勿体ないくらいの贅沢です…………」
………なんだか1人、私と似たオーラの人がいるような気もするが、気にしたら負けだろう。
注文を取って、厨房に戻ろうとして
「あぁ、それと、大将からの伝言です。『替え玉がいるなら言ってくれ』だそうです」
「あっ、ありがとうね」
ラーメンを配膳し終え、硬く絞った雑巾で窓を拭く。
他のお客様がいないので、周りの音がよく聞こえる。
「………わかった!何が引っ掛かっていたのかわかったわ!」
「社長?急にどうしたの?」
「このお店が問題だったのよ!!」
「!?」
「どゆこと!?」
「私たちは仕事でこのあたりに来てるの!!ハードボイルドに!!アウトローっぽく!!」
「?」
「なんなのよこの店は!?お腹いっぱい食べられるし!あったかくて親切で!話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!ここにいると、皆仲良しになっちゃう気がするのよ!!」
「それって何か問題?*3」
「大有りよ!私が一人前の悪党になる為には、こんな店は要らないのよ!私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと冷酷さなの!こんなほっこり感じゃないわ!!」
「いや、それは考え過ぎじゃないかな?」
「………それって………」
「こんなお店は消しちゃえ………って、ことですよね?」
「………hu?*4」
なんだろう、猛烈に、猛烈に嫌な予感がする。
「ふ、ふへへ………これで、これでようやく、私もアル様のお役に立てます………!!」
全身を覆う、特大クラスの『殺意』!!
咄嗟に、翼を広げ、
「ストップ、です………っ!」
「へにゃあっ!?」
殺意の源………何かの起爆装置らしきそれを、全力で握り潰す。
右腕の刃を、露出させて、
「………ここで、大将の店で、殺し合いをしたくはありません。どうか、矛を収めてください」
「「「「………すみませんでした」」」」
「………ま、未遂だったしな。もうすんなよ?」
「「「「はいっ!!」」」」
自分をお店を爆破されかけても笑って許す大将って、もしかしなくても凄く良い人なのではなかろうか。
「あ、それとその………あなたにも、ごめんなさい。実は私、もう一度、あなた達の学校を」
耳に響く風切り音と、頭痛にも似た殺意の波濤。
咄嗟に、柴大将を突き飛ばして
「伏せてくださいっ!!!」
閃光と激痛、衝撃波。
爆発に吹き飛ばされて転がり、地面に叩き付けられる。
全身を苛む痛覚を嚙み殺して、立ち上がり。
「柴大将!!先輩!!ご無事ですか!?」
「げほっ、ごほっ………大丈夫!!息はあるわ!!!」
「こっち来て、早く!!」
「わぴゃっ」
ガレキの陰に引きずり込まれた。
両目を手で覆い隠して。
「………便利屋の皆さん、お怪我はありませんか?」
「無事よ、無傷とは言えないけど」
「………そう、ですか。襲撃者は」
「………あいつら、
「その、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」
「………いえ、謝罪は不要です。それよりも、依頼をしたいのですがよろしいでしょうか?」
「………依頼?」
「はい。柴大将と先輩を連れで、出来るだけ遠くまで逃げてください。報酬は、賞金首捕まえて溜めた6万8021円。私の全財産です」
「貴女っ、何を言って─────いえ、その依頼、受けさせてもらうわ」
「ありがとうございます」
「けれど、報酬は受け取らないわよ。その代わり、今度ラーメンを奢ってちょうだい?」
「………はいっ」
ドヤ顔が見えそうな声音にどこかほっこりしつつ、懐に忍ばせていた白面をつけて右腕を改める。
………驚いたことに、あの爆撃を受けてなお、木製の義手には傷1つ付いてい無い様だった。
立ち上がり、パンパンと服のほこりを払って、
「……ねぇ、あなた、何をする気なの?」
「何をって………そんなの、1つしかないでしょう?」
「あのふざけた風紀委員とやらを絶滅させます」
『便利屋68に告ぐ!!貴様らは包囲されつつある!無駄な抵抗はせず、武器を捨てて大人しく出てこい!!』
白面を被り、両手を頭上に掲げたまま、前に出る。
頭の中で『声』が囁く。
あいつら全て、殺してしまえと。
「ん?………なんだ、お前。便利屋どもじゃないようだが」
「つい先刻、あなた方が消し飛ばした、何の罪もない善良な一般市民が営むありふれたラーメン屋の従業員です」
頭の中で『声』が嘯く。
あいつらのハラワタを抉り出し、晒してやれと。
「いや、それは………」
「あぁ、言い訳も弁明も釈明も不要です」
私の中で、
「あなたたち全員」
目の前の人間を、地を這うカス共を皆殺しにすれば、きっと、きっと、
「消えてください」
『すごく気持ちいいぞ』と。
「オンギャァァアアアアアァアアアアアッッッ!!!!!」
「しまっ!?」
突撃と同時に棒立ちで突っ立ってたバカを蹴り飛ばし、そのまま地面に叩き付けて昏倒させる。
近くにいたバカの腹に義手パンチを叩き込み、抜き放った銃口を突き付けて引き金を引く。
白面を取り払って、
「あうっ」
「けぷっ」
「ごひゅっ」
近場の三人が穴という穴から血を噴いて倒れ伏す。
散発的に放たれた弾丸を躱し、翼を広げて。
「っ、弾幕を張れっ!!近寄らせるんじゃな」
「お前が指揮官か?」
「っ!?」
地面すれすれ、極低空を飛翔し、跳び膝蹴りを叩き込む。
そのまま押し倒してこめかみを殴りぬき、ぐったりした体を盾に銃弾を防ぐ。
痙攣するそいつを放り捨て、
「こっ、のぉっ!!」
「ぬるいッ!!」
銃床の殴打を右腕の刃で防ぎ、鋸刃を引っ掛けて銃身を切断。
硬直した瞬間を狙ってストックで殴り倒し、よほどタフなのか拳を固める銀髪の女生徒。
右ストレートに頬を撃ち抜かれる寸前で、
引き倒しざまに横腹に膝蹴りをぶち
「隊長からっ、離れろ!!」
「チィッ」
乱射された弾丸の射線上から逃れ、撃ち返すついでに睨みつけて行動不能にする。
まったく………よく連携が取れている。
個々人の練度も決して高くはないが、ヘルメット団のように一瞥くれた瞬間に昏倒するわけでもない。
総評、鬱陶しい事この上ない。
この上ないが。
「………楽しい、なァ」
口角が吊り上がる。
こめかみがピクピクと痙攣して、私の意思に反して表情筋が笑顔を作る。
胎の奥に、火が灯る。
熱く、昏く、私の理性を焼き焦がす、黝い火が。
『さぁ、好きに暴れなよ、お姫様。殺したいように殺せばいいさ』
あぁ、そうだ、その通りだ、全く以てその通りだ。
義手の刃を、展開して。
「草刈りだぁ」
「っ、伏せろーーーーっ!!!」
酷く重い、人体程度なら紙切れの如く引き裂く必殺の刃を、薙ぎ払った。
頭がガンガンする。
現実感がどこにもない。
まるで、夢の中を泳いでいるような、そんな心地。
ウィンカーを起動して、
「ばあっ」
「~~~っ!?!?」
チェーンを手繰って前に跳び、至近距離から眉間に一撃入れてノックアウト。
耳鳴りの中、倒れかけたソイツを盾に攻撃を防ぎ、ピンを抜いた手榴弾を懐に突っ込んで。
「さようなら」
「へっ?ちょっ、やばっ」
間抜けな悲鳴と爆発音。
射撃を躱し、睨み返し、1人、また1人と動くものが減っていく。
『この程度で満足かい?』
いいや、もっとだ、もっとやろう。
脳味噌の奥が甘く疼く。
頭が茹だる。
躱し、壊し、撃ち返す度に、暗く、深く、何かが研ぎ澄まされていく。
楽しい。
すごく、すごく、すごく、楽しい。
私は、この快楽を知っている。
見下し、蹂躙し、虐殺する、あの、仄暗い快楽だ。
『どうせやるなら、もっと激しくしなくちゃね』
『っ、第2陣、予定変更です!迎撃態勢を』
羽ばたき1つ、突撃して戦線を薙ぎ払い、吹き飛ばし、撃ち抜き、蹂躙する。
翼を、はためかせて
「随分と、好き勝手やってくれたみたいね?」
背筋に氷柱を突き刺されたような悪寒と、脳内を揺らすアラート。
全力で後ろに跳びのいた私の眼前を、紫色の閃光が引き裂いた。
連続で放たれた弾丸を躱し、砂埃に覆われた市街地に降り立った私の正面、銃を構える少女がいた。
巨大な漆黒の翼と、ふわふわの真っ白な長髪。
冷たい紫紺の眼をした、1人の少女。
─────アレは、だめだ。
恐らくは、小鳥遊先輩と同格、或いはそれ以上。
私のような小物とはワケが違う、圧倒的なまでの
………だが、やれる。
殺ってやる。
殺って殺る。
殺って殺る!!!
五体が砕けようと構うものか、ここで、今この場所、この時で、絶対的な一撃とやらを叩き込んでやる。
体を半身に開き、右腕を突き出して。
「
「………そう、とまるつもりはないのね」
大きく息を吸い、吐いて、翼を広げる。
深く、腰を落として。
「
「イシュ・ボシェテ」
右腕の機構が動作を開始し、爆発的な破壊力が蓄積されていく。
一歩、踏み込んで
「タ~エ~~!無事なら返事しなさ~い!!」
「………」
なんだか、聞きなれた声が聞こえた。
咄嗟に、白面を被って
「セリカさん、どうしてここに?」
「どうしてもこうしてもないわよ!!いきなり紫関が爆発したって聞いて、アンタがバイトに入ってたから慌ててきたのになによこの惨状!!」
「何と言われても………風紀委員を殲滅しようとしただけですが?」
「な、なななっ、なんですってーーーーっ!?」
どこかで聞いた事があるようなないようなリアクションのセリカさん。
思わず、笑みが零れて。
「あ、れ?」
ガクンと、膝から崩れ落ちる。
体に力が入らない。
自分の肉が、まるで自分のものじゃないみたいだ。
駆け寄ってきたセリカさんに抱き着いて。
「ちょっ、タエ!?あんた、しっかりしなさい!!」
「すみません、疲れたので少し寝ますね」
「はぁっ!?」
というか、セリカさんすごいな。
いい匂いするし柔らかいしあったかふわふわだしで、マジで抱き枕として最高過ぎる。
胸が少し硬いが、それもまた良きかな。
「おやすみなさい………」
「このっ、こんな状況で寝るなっ!ああっもうっ!ホシノ先輩、早く来てくださいよぉ!!」
そんな愉快な悲鳴を聞きながら、私は微睡に身を委ねた。
人の脳内に直接語り掛けてくる声………いったい何スレスなんだ()
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