転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ 作:ストライダー信長
「ありがとうございます、イワナ先生。わざわざ付き添ってくださって」
「”お礼は良いよ。私がしたかっただけだからさ”」
「それでもです。先生、本当にありがとうございます」
市の病院の受付、私とセリカさん、アヤネさん、それと先生の4人で、柴大将とロボットさんのお見舞いに来ていた。
正直、私1人じゃ病院に行くのも大変だっただろうし、ありがたいのだが………なんというか、すごく気恥しい。
浮ついた気持ちを押さえつつ、病室のドアを開けて、
「あっ、貴女は………」
嗅いだ事のある気配。
あの、黒い翼を持った、怖ろしい生徒の匂い。
─────嵌められたッ!!
どうする!?
どうすればいい!?
密室。
相手は2人、対抗できそうな小鳥遊先輩は不在。
一か八か、やられる前にやってやる。
右腕の刃を露出させ、
「
「”わーーーっ!?ストップ!!タエちゃん、ストップ!!いったん落ち着いて!!”」
「はっ!?」
初手で必殺の一撃を叩きこもうとして、先生に止められた。
荒くなった呼吸を意志力で捻じ伏せ。
「………すみません。そちらの白い人がとても怖かったもので」
「あらそう。正直、私からすれば貴女の方がよっぽど恐ろしいのだけど?」
「いやいや、常識的に考えて邪眼が利かない人の方が怖いですって。なんで倒れてくれないんですか?」
「………」
「………」
「”あ~………2人とも?”」
「あぁ、すみません、イワナ先生。つい」
「………まぁ、良いわ。それより、」
「あ、そうだ。1つだけ良いですか?」
「………何かしら?」
不思議そうにコテンと首を傾げる風紀委員長相手に、頭を下げ、
「すみません、やりすぎました」
「………別に、謝罪はいらないわよ」
「それでも、です。ケジメは付けなくては」
「そう」
「タエちゃん、店の事ならあんまり気に病まないでくれ。キヴォトスで店を開いたときから、いつからこうなるってわかってた。………それに、皆には悪いがそろそろ店も畳むつもりだったからよ。予定が少し早くなっただけさ」
………え?
「紫大将!?お店を畳むってどう言うことですか!?」
「少し前から、退去通知を受け取っていてな」
「なんで……いえ、ありえません!!アビドス自治区の土地の所有権は、アビドス高校にあるはずです!!」
「何年か前の生徒会が、借金を返せなくて土地と建物の所有権が移ったんだよ。確か………カイザーなんとか、だったか?」
「っ!?それは………先生、セリカちゃん、タエちゃん、先に学校に戻ってください、私は少し確認したい事が出来ました」
「それなら、私も行きます。セリカさんも来ますか?」
「え?」
「……私も行くわ。先生は学校に戻ってて」
「"わかった。みんな、気をつけてね?"」
「はい」
少し不安そうにそういった先生に頭を下げて、意識を集中させる。
風の音、肌に触れる風の感触、そしてその揺らぎ。
「先生、少しだけ窓を開けていただけますか?」
「"えっと……これくらいでいいかな?"」
「はい。ありがとうございます」
それだけ言って、私は
「"??????"」
「あら………」
「タエちゃん!?急に何してるんですか!?」
「ちょっ、このっ、力強っ!?」
「動かないでください」
柔らかな体をきつく抱きしめ、決して離れないように拘束する。
「ほら、アヤネさんも見てないでコッチ来てください」
「………え?こ、こうですか………?」
「はい」
アヤネさんも抱きしめて、抱えあげ。
「それじゃ、行きましょうか。アヤネさん、オペレーションお願いします」
「………タエ、あんたまさかっ」
「それじゃっ、飛びますよ!!」
翼を大きくはためかせ、二人を抱えたまま、私は窓から文字通り飛び出した。
「……ねぇ、先生。あの子、大人しそうな顔してなかなか暴れん坊ね」
「"あはは………"」
「死ぬ………死んでしまう………」
「大げさですね、セリカさん」
「誰のせいよ誰の!!」
「あぐっ」
コンクリの壁にもたれ掛かってぐったりするセリカさんに、脚を思いっきり蹴られてしまった。
痛い。
「ソレはそうとアヤネさん、目当ての物は見つかりましたか?」
「無視すんなぁ!」
「あうっ」
「はい……土地の名義は……………カイザーコンストラクション!?」
「なるほど?」
「………取り敢えず、対策委員会の皆と共有します」
「なら、私がアヤネさんを掴んで飛び」
「それは結構です」
「そんなぁ………」
「セリカちゃん、歩けますか?」
「無理ぃ………」
「そう、ですか………でも、置いていくわけにも」
「なら私が背負って走ります。足にもそこそこ自信があるので」
「………タエ、あんた、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「はい!任せてください!!」
「………まぁ、それならいいけど。無茶しないでよ?」
「わかってます。ほら、背負いますからしっかり抱きついてくださいね?」
「う、うん………」
背中に感じる柔らかな感触と、人肌の温もり。
体を揺すって、位置を微調整して、
「それじゃ、行きますよ?」
「大変です皆さん!!良く分かりませんがなんだかマズイことになっ、て……」
急ぎ足で駆け込んだ部室の空気が、完全に死んでいた。
どれくらいかと言うと、もうホントに誰か死んだんじゃないかってレベルで死んでいた。
「あの………小鳥遊先輩?」
「おっ、タエちゃん。どうかした?」
「どうかって「皆さん大変です!!土地の名義が、アビドスからカイザーコンストラクションに変わっていて」ふぐぅっ」
「タエちゃん!?」
ドアのところで立ち止まっていた私にアヤネさんの悪質タックルが直撃。
ふっ飛ばされ、顔面から床に叩きつけられる。
痛い。
体も痛いし心も痛い。
なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
じゃなくて、
「『地籍図』によれば、この校舎近辺を除いた辺り一帯が、カイザーコンストラクションの権利下にあるそうです」
「……どうして、こんな事に?学校の自治区を取り引きなんて、できるはずが………」
「……一体誰が、こんな事を…」
「アビドスの生徒会、でしょ」
どこか気だるげな、飽きれたような声で、小鳥遊先輩がそう言った。
「かつての生徒会が借金を返しきれなくなり………という事ですか」
「そんな………アビドスの生徒会は、2年前に無くなったはずです」
2年前………2年前なら、ちょうど小鳥遊先輩が1年生だったころか。
「小鳥遊先輩、当時の生徒会について何かご存じだったりしませんか?」
「うへ~………ご存じと言うか、副会長やってたよ」
「えっ、ホシノ先輩が!?」
「………セリカちゃん?その反応はどういう事かな?」
「あっ、やっ、そのっ、ちがっ、」
セリカさんの絶叫をBGMにお茶を飲む事しばらく、満足したのか落ち着いた小鳥遊先輩曰く、
・入学した時には生徒会は殆ど居なくなっていた。
・当時の生徒会は自分とバカな先輩が1人だけ。
・当時の自分は嫌な性格の新入生だった。
・何もかもめちゃくちゃだった。
………とのこと。
「はぁっ………はぁっ、ふぅ………校内一のバカが生徒会長って………どうなってんのよ………」
あっ、復活した。
「役割と学力は別じゃないかな?」
「そうですよ。セリカちゃんだって成績はそこまでよくな」
「わーわーわーわー!!!」
「………まぁ、実際無茶苦茶だったよ。生徒会と言っても、実際はバカ2人が集まっただけだったからね〜」
そんな事を言いながら私に抱き着いてきた小鳥遊先輩を、なんとなく撫でて、
「………しかし、なんでわざわざアビドスの土地を買ったんですかね?」
「………というと?」
「いや、アビドスって砂漠ばかりじゃないですか。何かを建てたりするのにも不向きでしょうし、カイザーグループみたいな大企業が狙うようなものがあるのか気になって。砂漠の地下にお宝でも埋まってるわけじゃないでしょうし」
「”………一応、カイザーがアビドス砂漠で何か企んでるかもしれなくもなくもない………くらいの情報はあるけど”」
「すっごくあやふやですね☆」
「”あんまり信頼できない情報源なんだよ*1”」
どことなく草臥れたような雰囲気の先生が、椅子から腰を上げ、
「よし。行ってみようか、アビドス砂漠」
「………遅い、ですね」
「そう?おじさんからしたらすごく速いんだけどな~………」
「タエちゃんの場合、翼で飛んだ方が速そうですもんね♧」
「”大丈夫?しんどくない?」
「いつも立ったまま寝るので、問題ないです」
ガランとした車内、吊革は手が届かなかったので立ったままの私に、先生がそう言ってくれた。
少しだけ嬉しくなってしまったのを、押し殺して、
『もう少しでアビドス砂漠………砂漠化が進む前から、ずっと砂漠だった地域です』
砂漠………砂漠、か。
私の眼は、視界に映るもの全てを傷つける。
ゆったり景色を楽しむなど夢のまた夢、叶わぬ事なのだろうが、
「………いつか、皆さんと目を見て話したいものですね」
「うへっ、嬉しいこと言ってくれるじゃん。そんなこと言われたって何も出ないよ?」
「………タエ、あんた、意外と甘えん坊よね」
「そういうセリカさんも、つっけんどんな風して結構優しいですよね」
「~~~~っ!?!?」
「わぁ、セリカちゃん、顔真っ赤ですね☆」
「ノノミ先輩っ!?」
「”ミレニアムなら色々作ってるし、案外何とかなったりしてね”」
「………そう、ですね。そうなるといいんですけど」
何の気なしに、白面を左手でそっと撫でて、
『本日は、当列車をご利用いただきありがとうございます。次は~終点~アビドス砂漠~。右側のドアが開きます。お降りの際は、列車が完全に止まるまで席を立たず、ドアが開くまでお待ちください』
「雑兵、でしたね」
「うっ、ぐぅ………」
「寝ててください」
「あぐっ」
足元で呻く不良の腹を蹴っ飛ばして沈黙させ、水分補給。
列車を折りて数分後、唐突に襲い掛かってきた不良たちをノックアウトした私たちは、状況を確認していた。
「あっ、そうだ。砂狼先輩、金目のものがあれば身包み剝ぎ取っていきましょう。小遣い程度にはなります」
「ん。根こそぎ奪い取ろう」*2
「2人とも?」
「………ん、ごめんなさい」
「ダメでしたか。以後気を付けます」
「よろしい」
略奪は止められてしまったので、おとなしく水筒の水を飲む。
翼をバサバサやって、砂埃を落とし、
「そういえば、タエちゃん、足熱くないんですか?ずっと裸足ですけど………」
「問題ないですね。私の足に合う靴とかまず売ってないでしょうし」
だが、確かに裸足のままというのも見た目がアレか。
………足に包帯でも巻いてみるか?
「まぁ、そもそも私、着れる服が少ないですし」
ここキヴォトスには、結構な数、角や翼、尻尾などの特徴を持った生徒がいる。
当然、そんな生徒のための服もあるのだが………如何せん、私の翼が大きすぎてサイズが合わなかった。*3
………あとはまぁ、おしゃれとやらに興味も無ければ、無駄遣いできるだけのお金もないのも、原因の1つだろうか。
今の制服だって、アビドス高校の制服の背面を大きく切り取って翼穴をあけた、一歩間違えれば痴女の誹りを免れないような際どい服*4だし、自分でも、もう少し身嗜みに気を付けるべきだとは思っているのだが………。
………あぁ、でも、そうか。
「イワナ先生。少しいいですか?」
「”どうかした?”」
「いえ………ただ、先生が、どんな服が好みなのか気になって」
私みたいなのでも、着飾って先生に気に入ってもらえるのなら、それは少しだけ、少しだけ、素敵な気がする。
「”えぇと………特にはないけど、どうかした?”」
「聞いてみただけです」
「(*^^*)」*5
『(^0_0^)』*6
「(#^^#)」*7
「('ω')」*8
「………な、なんですか、そのリアクションは」
「べつにぃ~?」
「なんでもありませんよ~?」
「ん、なんでもない」
『なんでもありませんよ?』
「なに?みんなどうかしたの?」
「なんでもないよ~」
「「『なんでもないですね』」」
「ちょっと!!絶対何かあるじゃないですか!!なに!?なんですか!?私、何かやらかしたんですか!?」
「べつにぃ~?」
「小鳥遊先輩!?」
「………ねぇ、本当にどうしたの?なに?なにかあった?」
「”………みんな、タエちゃんが困ってるから、ソレくらいにしてあげてね?”」
「「『は~い』」」
「ねぇ、なに?本当になに?」
真白い太陽が照らす炎天下の砂漠で繰り広げられる、和気藹々とした光景。
ついさっきまで銃撃戦を繰り広げていたとは思えないくらい平和な景色を、
─────1匹の、銀色の蟲が視ていた。
「ほ~ん………もう来ちゃったか。少し早めに仕上げた方が良さそうだね」
真っ暗な部屋、古びた椅子に腰かけた壮年の男が、なぜか掛けたサングラスを弄りながらそう呟いた。
天上から吊るした無数のカラクリ人形を眺めつつ口髭を撫でた男が、「くふぁ」と欠伸を零し、
「………黒服に頼まれてたものも作り終わったし、そろそろ仕上げますかね」
吊り下げられた巨大な機構………四脚の巨人めいた鉄塊が、冷たい輝きを帯びて沈黙していた。
銀色の蟲………ぜひ………うっ、頭がっ、
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欲しいssあったら投票してくだちぃ
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邪眼は機構を喰らう