転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ 作:ストライダー信長
「ん?気づいた〜?」
浮上した意識が、眠たげな声を捉えて一気に覚醒した。
微睡みから、身を起こし。
「キミ、砂漠で行倒れてたんだってさ。あと少しシロコちゃんが通りかかるの遅かったら、危なかったって」
「見るな!!!」
咄嗟に、自分の顔をシーツで覆い隠して、
「………お願い、だから、顔は、見ないでほしい」
「そう?ま、事情は人それぞれだし良いけどさ。おじさんもワケアリだし」
気怠そうな声の主が、にへら、と、そんな擬音が似合いそうな笑みを浮かべた………様な気がした。
頭からシーツを被って。
「それで君、名前は?」
「名前……ですか」
声の主にそう訊ねられ、そういえば自分の名前すら覚えていなかった事を、そしてソレに違和感すら覚えていなかった事を自覚してしまった。
「………すみません、実はその、記憶喪失というやつのようで」
「なるほどねぇ~………ま、そんな事もあるよ」
「記憶喪失なんざそうそうないだろ」と言いかけたのを、辛うじて飲み込んで。
「………あっ、ちょっとあっち向いててください」
「ん?まぁいいけど」
ガサゴソと音がしたのを確認してシーツを取り、私が着ていた真っ白い病人服を脱いで。
「………やっぱりあった」
服の裾の方、乱雑に縫い付けられたワッペンに、「根切タエ」と刺繍されていた。
どうやら、コレが私の名前のようだ。
「根切タエ、というようです」
「なるほど………タエちゃんか………」
………といっても、記憶が蘇りもしなければ実感すらないので、「だからどうした」という話なのだが。
どことなく寂れた雰囲気の、保健室らしき室内を見渡し。
「あの、この包帯、少し頂いてもいいですか?」
「いいよいいよ~」
声の主から全力で顔を背けつつ、向こう側が透けないように折り畳んだソレを眼帯代わりに、自分の眼をギッチギチに塞ぐ。
何も見えない事を確認して、
「………もう、大丈夫です。ありがとうございました」
「うへ~………タエちゃん、おじさん、さすがにその恰好はどうかと思うな~………」
「?どうかしましたか?」
「いやぁ~………女の子が裸ってのは、ちょっとマズくないかな?」
「なるほど………それもそうですね」
手探りで服を見つけて、なんとか袖を通し。
「では、改めて………私のような身元も知れない不審生物を拾ってくださり、ありがとうございます。何かお礼をしなければいけないとわかってはいるのですが、あいにく、今は手持ちがなくて………あっ、私の羽とかいります?」
「それはちょっといいかな~?おじさんも、下心がないわけじゃないし」
「そうですか。………あの、お名前を窺ってもよろしいでしょうか?」
「おじさんの名前は小鳥遊ホシノだよ、よろしくね、タエちゃん?」
「よろしくお願いします、小鳥遊さん」
声の方を向いて頭を下げ。
「それでさ、タエちゃん。ちょっと聞きたいんだけどさ、キミ、行く当てあるの?」
「行く当ては………皆目無いですね。やる事も無いので、野垂れ死にするまで飛んで死のうとは思ってましたが」
「そっかぁ………それじゃあさ、タエちゃん、ウチ………アビドスに入らない?メンバー足りてなかったし、どうせやる事ないならウチに来なよ~」
「それは………いいのですか?こちらとしても、助けていただいた御恩がありますし、嫌なわけではないのですが」
「じゃあ決まりだね。皆いい子だから、きっと仲良くなれるよ」
「はぁ………あの、本当によろしかったのですか?」
「問題ないよ。君、悪い子じゃなさそうだし」
「………そう、ですか。それでは、よろしくお願いします?」
「うん。よろしくねぇ、タエちゃん」
なんだかこっちまで気が抜けそうな声に、私は、少しだけ安堵してしまった。
「というわけで、今日からウチに入学する根切タエちゃんで〜す」
「どうも、根切タエです。皆様方には色々と御迷惑をおかけするかも知れませんが、どうかよろしくお願いいたします」
小鳥遊さんに連れられて来た部屋で、私は複数人の気配と相対していた。
……やはりというか、相手を見なければ、私のあの眼は発現しないらしい。
少しだけ、安心した。
「ちょちょちょホシノ先輩!展開が急すぎる!説明して!?」
「あっ、この子が黒見セリカちゃんね。アビドス高校1年、対策委員会会計係。普段はこんなんだけど、優しい子だから仲良くしてあげてね?」
「よろしくお願いします、セリカさん」
「あっ、うん、よろしく………じゃなくて!」
「それで、こっちのほんわかした子が十六夜ノノミちゃん。2年の先輩だから、ちゃんと敬うように」
「はい。よろしくお願いいたします、十六夜先輩」
「そんなに堅苦しくなくて良いんですけど……まぁ、困った事があったら、いつでも言ってくださいね?」
「はい」
なんとなくネコっぽい雰囲気の人と、ゆったりした雰囲気の人。
………なんというか、十六夜先輩はともかく、セリカさんからは、少しこっちを警戒しているような感じがする。
まぁ、小鳥遊さんと十六夜先輩が無警戒過ぎるだけの気もするが。
「んでもって、こっちの子が砂狼シロコちゃん。ノノミちゃんと同じ2年生の先輩だから、いう事はちゃんと聞くように」
「はい。………ん?えと、もしかして、私を助けて下さった………」
「ん。通学路に布団が落ちてると思ったら人だったから驚いた」
「そう、ですか。………その節は、どうもありがとうございました」
「別に気にしなくていい。それよりも、体に不調はない?」
「ええ、まぁ」
「そう、それならよかった」
どこか冷たいながらも心配するような声に頷いて、何故か頭をポンポンされた。
何故だ。
というか、よく考えるまでもなく、私、右腕ないんだが?
どこからどう見ても重傷者なんだが?
………ま、気にしたら負けか。
というか砂狼先輩、ポンポンならまだしも頭撫でるのはマジでやめてください。
眼帯取れちゃう、取れちゃうから。
「あの………シロコ先輩、困っているみたいなので、やめてあげた方がいいような」
「ん。わかった」
「あぷっ」
「そうそう、それでこの子が奥空アヤネ。一年生だけど怒らせないようにね?怒らせると怖いから」
「ちょっ、ホシノ先輩!何言ってるんですか!?」
「はい、わかりました。よろしくお願いします、アカネさん」
「えっ、あっ、はい、よろしくお願いします………?」
こっちの先輩は、少し気弱なのか。
顔を見れないので少しもどかしいが、声と匂いと気配を紐づけて覚えるしかな。
「あれ?対策委員会って5人だけじゃなかったっけ?」
がらがらとドアを開けて、誰かが入ってきた気配がした。
思わず、そっちを振り向いて。
「なんていうか、シロコちゃんが拾ってきた感じ?行く当てないみたいだから、アビドスに勧誘しちゃった」
「なるほど?………ええっと、お名前は?」
「根切タエ、です。………多分ですけど」
「………なるほど、訳アリみたいだね。とりあえず、自己紹介からさせてもらうよ。私の名前は独活ノ木イワナだ。連邦捜査部シャーレの特別顧問をしているが………まぁ、体の良い何でも屋のようなものだ。これからよろしく頼むよ、タエちゃん」
「あ、ええと、よろしくお願いします?」
………不思議な声だ。
無条件に信頼したくなるような雰囲気と、飄々としていながらも、私を確かに気遣っていることがわかるような、優しい声。
………声色からして女の人だとは思うが、この人は、どんな顔をしているのだろうか。
見ることなど、一生叶う事はないのだろうが、それでも少しだけ気になってしまった。
差し伸べられた左手に、握手を返そうとして
「っ!?」
うなじを奔る、雷撃じみた直感。
柔らかな手を引っ掴んで抱き寄せ、床に押し倒し
「伏せてッ!!」
轟音と、腹の底に響くような衝撃波。
咄嗟に、窓の外に目をやって。
「オラオラオラオラ!!撃てぇっ、撃ちまくれッ!!」
「ヘルメット団舐めんじゃねぇぞ!!」
ヘルメット被った、ガラの悪そうな女生徒の集団が、手に手に銃火器を構えて好き勝手にぶっ放して。
全員が全員、血を噴いて斃れた。
校門付近、廃材で作られたバリケードのあたりに、血だまりが、ゆっくりと広がっていく。
ぁ、あぁ………ッ、
「オンギャァアァアアァァアアアアッッ!!!!!!」
タエちゃんはまぁまぁな頻度でバブ味を求めて暴走します。
可愛いですね。
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激戦!アビドシアンデスワーム!!
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恐怖!キヴォトシアンデスマグロ!!
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邪眼は春眠を貪る
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邪眼は蒼月を背負う
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邪眼は機構を喰らう