転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ   作:ストライダー信長

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第2話 メスフクロウ、アビドスに行く

 

 

「ん?気づいた〜?」

 

 浮上した意識が、眠たげな声を捉えて一気に覚醒した。

 微睡みから、身を起こし。

 

「キミ、砂漠で行倒れてたんだってさ。あと少しシロコちゃんが通りかかるの遅かったら、危なかったって」

「見るな!!!」

 

 

 咄嗟に、自分の顔をシーツで覆い隠して、

 

 

「………お願い、だから、顔は、見ないでほしい」

「そう?ま、事情は人それぞれだし良いけどさ。おじさんもワケアリだし」

 

 気怠そうな声の主が、にへら、と、そんな擬音が似合いそうな笑みを浮かべた………様な気がした。

 頭からシーツを被って。

 

「それで君、名前は?」

「名前……ですか」

 

 声の主にそう訊ねられ、そういえば自分の名前すら覚えていなかった事を、そしてソレに違和感すら覚えていなかった事を自覚してしまった。

 

「………すみません、実はその、記憶喪失というやつのようで」

「なるほどねぇ~………ま、そんな事もあるよ」

 

 

 「記憶喪失なんざそうそうないだろ」と言いかけたのを、辛うじて飲み込んで。

 

「………あっ、ちょっとあっち向いててください」

「ん?まぁいいけど」

 

 

 ガサゴソと音がしたのを確認してシーツを取り、私が着ていた真っ白い病人服を脱いで。

 

 

「………やっぱりあった」

 

 

 服の裾の方、乱雑に縫い付けられたワッペンに、「根切タエ」と刺繍されていた。

 

 どうやら、コレが私の名前のようだ。

 

「根切タエ、というようです」

「なるほど………タエちゃんか………」

 

 

 ………といっても、記憶が蘇りもしなければ実感すらないので、「だからどうした」という話なのだが。

 

 どことなく寂れた雰囲気の、保健室らしき室内を見渡し。

 

「あの、この包帯、少し頂いてもいいですか?」

「いいよいいよ~」

 

 声の主から全力で顔を背けつつ、向こう側が透けないように折り畳んだソレを眼帯代わりに、自分の眼をギッチギチに塞ぐ。

 何も見えない事を確認して、

 

 

「………もう、大丈夫です。ありがとうございました」

「うへ~………タエちゃん、おじさん、さすがにその恰好はどうかと思うな~………」

「?どうかしましたか?」

「いやぁ~………女の子が裸ってのは、ちょっとマズくないかな?」

「なるほど………それもそうですね」

 

 手探りで服を見つけて、なんとか袖を通し。

 

 

「では、改めて………私のような身元も知れない不審生物を拾ってくださり、ありがとうございます。何かお礼をしなければいけないとわかってはいるのですが、あいにく、今は手持ちがなくて………あっ、私の羽とかいります?」

「それはちょっといいかな~?おじさんも、下心がないわけじゃないし」

「そうですか。………あの、お名前を窺ってもよろしいでしょうか?」

「おじさんの名前は小鳥遊ホシノだよ、よろしくね、タエちゃん?」

「よろしくお願いします、小鳥遊さん」

 

 声の方を向いて頭を下げ。

 

 

「それでさ、タエちゃん。ちょっと聞きたいんだけどさ、キミ、行く当てあるの?」

「行く当ては………皆目無いですね。やる事も無いので、野垂れ死にするまで飛んで死のうとは思ってましたが」

「そっかぁ………それじゃあさ、タエちゃん、ウチ………アビドスに入らない?メンバー足りてなかったし、どうせやる事ないならウチに来なよ~」

「それは………いいのですか?こちらとしても、助けていただいた御恩がありますし、嫌なわけではないのですが」

「じゃあ決まりだね。皆いい子だから、きっと仲良くなれるよ」

「はぁ………あの、本当によろしかったのですか?」

「問題ないよ。君、悪い子じゃなさそうだし」

「………そう、ですか。それでは、よろしくお願いします?」

「うん。よろしくねぇ、タエちゃん」

 

 なんだかこっちまで気が抜けそうな声に、私は、少しだけ安堵してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、今日からウチに入学する根切タエちゃんで〜す」

「どうも、根切タエです。皆様方には色々と御迷惑をおかけするかも知れませんが、どうかよろしくお願いいたします」

 

 小鳥遊さんに連れられて来た部屋で、私は複数人の気配と相対していた。

 ……やはりというか、相手を見なければ、私のあの眼は発現しないらしい。

 少しだけ、安心した。

 

「ちょちょちょホシノ先輩!展開が急すぎる!説明して!?」

「あっ、この子が黒見セリカちゃんね。アビドス高校1年、対策委員会会計係。普段はこんなんだけど、優しい子だから仲良くしてあげてね?」

「よろしくお願いします、セリカさん」

「あっ、うん、よろしく………じゃなくて!」

「それで、こっちのほんわかした子が十六夜ノノミちゃん。2年の先輩だから、ちゃんと敬うように」

「はい。よろしくお願いいたします、十六夜先輩」

「そんなに堅苦しくなくて良いんですけど……まぁ、困った事があったら、いつでも言ってくださいね?」

「はい」

 

 なんとなくネコっぽい雰囲気の人と、ゆったりした雰囲気の人。

 ………なんというか、十六夜先輩はともかく、セリカさんからは、少しこっちを警戒しているような感じがする。

 まぁ、小鳥遊さんと十六夜先輩が無警戒過ぎるだけの気もするが。

 

「んでもって、こっちの子が砂狼シロコちゃん。ノノミちゃんと同じ2年生の先輩だから、いう事はちゃんと聞くように」

「はい。………ん?えと、もしかして、私を助けて下さった………」

「ん。通学路に布団が落ちてると思ったら人だったから驚いた」

「そう、ですか。………その節は、どうもありがとうございました」

「別に気にしなくていい。それよりも、体に不調はない?」

「ええ、まぁ」

「そう、それならよかった」

 

 どこか冷たいながらも心配するような声に頷いて、何故か頭をポンポンされた。

 

 何故だ。

 

 というか、よく考えるまでもなく、私、右腕ないんだが?

 どこからどう見ても重傷者なんだが?

 

 ………ま、気にしたら負けか。

 

 というか砂狼先輩、ポンポンならまだしも頭撫でるのはマジでやめてください。

 

 眼帯取れちゃう、取れちゃうから。

 

「あの………シロコ先輩、困っているみたいなので、やめてあげた方がいいような」

「ん。わかった」

「あぷっ」

「そうそう、それでこの子が奥空アヤネ。一年生だけど怒らせないようにね?怒らせると怖いから」

「ちょっ、ホシノ先輩!何言ってるんですか!?」

「はい、わかりました。よろしくお願いします、アカネさん」

「えっ、あっ、はい、よろしくお願いします………?」

 

 こっちの先輩は、少し気弱なのか。

 

 顔を見れないので少しもどかしいが、声と匂いと気配を紐づけて覚えるしかな。

 

 

「あれ?対策委員会って5人だけじゃなかったっけ?」

 

 がらがらとドアを開けて、誰かが入ってきた気配がした。

 思わず、そっちを振り向いて。

 

「なんていうか、シロコちゃんが拾ってきた感じ?行く当てないみたいだから、アビドスに勧誘しちゃった」

「なるほど?………ええっと、お名前は?」

「根切タエ、です。………多分ですけど」

「………なるほど、訳アリみたいだね。とりあえず、自己紹介からさせてもらうよ。私の名前は独活ノ木イワナだ。連邦捜査部シャーレの特別顧問をしているが………まぁ、体の良い何でも屋のようなものだ。これからよろしく頼むよ、タエちゃん」

「あ、ええと、よろしくお願いします?」

 

 

 ………不思議な声だ。

 

 無条件に信頼したくなるような雰囲気と、飄々としていながらも、私を確かに気遣っていることがわかるような、優しい声。

 

 ………声色からして女の人だとは思うが、この人は、どんな顔をしているのだろうか。

 

 見ることなど、一生叶う事はないのだろうが、それでも少しだけ気になってしまった。

 

 差し伸べられた左手に、握手を返そうとして

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 うなじを奔る、雷撃じみた直感。

 

 

 柔らかな手を引っ掴んで抱き寄せ、床に押し倒し

 

 

「伏せてッ!!」

 

 

 轟音と、腹の底に響くような衝撃波。

 

 

 咄嗟に、窓の外に目をやって。

 

 

 

 

「オラオラオラオラ!!撃てぇっ、撃ちまくれッ!!」

「ヘルメット団舐めんじゃねぇぞ!!」

 

 

 ヘルメット被った、ガラの悪そうな女生徒の集団が、手に手に銃火器を構えて好き勝手にぶっ放して。

 

 

 

 

 

 全員が全員、血を噴いて斃れた。

 

 

 

 

 校門付近、廃材で作られたバリケードのあたりに、血だまりが、ゆっくりと広がっていく。

 

 

 

 ぁ、あぁ………ッ、

 

 

 

 

「オンギャァアァアアァァアアアアッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 




タエちゃんはまぁまぁな頻度でバブ味を求めて暴走します。
可愛いですね。

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  • 激戦!アビドシアンデスワーム!!
  • 恐怖!キヴォトシアンデスマグロ!!
  • 邪眼は春眠を貪る
  • 邪眼は蒼月を背負う
  • 邪眼は機構を喰らう
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