転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ   作:ストライダー信長

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みんな大好きアンドロメダ星人


第6話 梟と黒陽

 

 

 

「………なるほど、ブラックマーケットですか」

「うん。あそこなら、手掛かりが見つかるんじゃないかと思ってね」

 

 いまだにビリビリする両足でなんとかパイプ椅子の背もたれに止まりつつ、小鳥遊先輩の話を聞く。

 

「………ねぇ、タエ、アンタ、なんで座らないの?」

「あぁ、なんというか、こっちのほうが楽なんですよね。純粋に翼が邪魔で座りにくいのもありますし、それに………」

「それに?」

「本能的に落ち着くと言いますか」

「………アンタ、フクロウみたいよね」

「自分でもそう思います。………しかし、ブラックマーケットですか。危なくないのですか?」

「うへ、そりゃもちろん危ないよ?下手したら攫われちゃうかもね~?」

「それはどうでもいいのですが………ブラックマーケットって、かなり広いんですよね?むしろ迷子にならないかが心配で」

「じゃあ、私と手をつないでいましょうか?」

「十六夜先輩、私の羞恥心が死ぬのでやめてください」

 

 たわけたこと言ってきた十六夜先輩に、そう返して。

 

 

「ま、そう迷子になる事なんてないでしょうし、そこまで気を張る必要もないと思いますけどね」

「うへ~………おじさん知ってるよ。そういうのフラグって言うんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 その数時間後、私はブラックマーケットで孤立していた。

 

 

 いや、待って欲しい、言い訳をさせて欲しい。

 

 最初は、私だって皆様と離れないようにしていたのだ。

 

 だが、途中で武装ロボットの集団が大暴れしたのがよくなかった。

 

 先生の采配もあって撃退したは良いものの、放たれたグレネードランチャーを躱した拍子に勢い余って壁に激突してしまい、気づいたときにははぐれていた。

 私は悪くない、悪くないったら悪くないのだ。

 

 

「………しかし、どうしましょうか」

「お~い、そこのおチビちゃん、ちょっちい~い?」

 

 スマホはない、他の連絡手段もない、空を飛んで探そうにも、私が目で見たら、それは無差別テロと同義だ。

 

「へいへ~い、無視されると僕チン悲しいんだけどな~?」

 

 いったい、どうすれば

 

 

「そこの眼帯右腕欠損フクロウっ娘!チミだヨ、チィミ!!」

「………なんなんですか、さっきから。ぶち殺しますよ?」

「おぉ、こわ。………君さ、ちょっち、眼帯外してくんない?」

「イヤです」

「ん?……ぁあ、チミのその邪眼の事なら大丈夫だよ~ん。………ぼくは人間じゃないからね」

「………後悔しても、知りませんよ?」

 

 

 声の方を向いて、そっと眼帯を外し。

 

 

「ようやく目を見せてくれたね。………うん、思った通りだ、キミはやはり、僕たちに似ている」

 

 

 声の主は、白髪の壮年の男だった。

 

 それなりに整った、けれどどこか胡散臭い、どす黒い邪悪さを感じる顔立ちの男の背後には、無数の人形のパーツが吊られていた。

 

 ………出店の店主か、何かのようだが、

 

 

「………あなた、ロボットですか」

「違う違う。僕は人間だよ~ん。………まぁ、悔しいけど、分類だけで言えばロボットになるんだろうね」

「はぁ………。それで、私に何の用で?」

「………うん、やっぱ君は、どこかエレオノーラに似てるね。けれど、あの男の様でもある」

「………?」

 

 意味不明な妄言を吐き散らすグラサンのオッサン。

 ………なんかもう、付き合うだけ無駄な気がしてきた。

 私の眼を見ても傷つかない人間がいるのは嬉しい事だが、どうせなら小鳥遊先輩がそうであって欲しかった。

 

 眼帯を目に巻いて、立ち去ろうとして。

 

 

 

「あぁ、待って、まだ行っちゃダメだよ。………実は、ある人から君に贈り物があってね。渡さないと僕が怒られてしまう」

「………なんですか」

「えぇっと………ちょっと、ぼくの前に座ってくれるかな?………そうそう、それで、左手の人差し指をこうやってくれ。ちょうどETみたいにさ」

 

 ………正直、脳天に一発ぶち込んでおさらばしたいが、今コイツは、「私に贈り物がある」と、そう言った。

 

 真偽は不明だが、それでも、私の過去に、絶無の暗闇に通じるものを持っている可能性がある以上、無視するわけにもいくまい。

 

 おとなしく、指を重ね合わせて。

 

 

「『分解』」

「ッ!?!?」

 

 

 ゴキゴキゴキと音がして、体が動かなくなった。

 

 全身の筋肉が、筋が、関節が、私の意思を拒絶したかのようにピクリとも動かない。

 

 

 

 しくじった!!

 

 

 どうする!?どうすればいい!?

 

 殺す逃げる助けを呼ぶ何とかするどうやってどうやってどうやって!?

 

 マズい、考えろ、考え

 

 

「そんなにこわがんないでちょ。大丈夫、痛くはしないから」

「っ、ふざけ」

 

 

 目の前の怪人物の右腕がバカㇼと裂けて、無数の物々しい工具が剥き出しになる。

 

 数秒後に襲い来るであろう激痛に耐えるべく、歯を食いしばり。

 

 

「………よし、流石ボクだ。施術に3秒も掛けないとはね」

「………え?」

 

 

 私の右手に、左腕がついていた。

 

 なにか大型のからくり人形からそのままもぎ取ったような、大きな木製の左腕が。

 

 思わず外そうとして、ピクリともしない。

 

「ちょっ、なっ、何ですかこれぇ!?」

「『あるるかん』………かつてそう呼ばれた、懸糸傀儡の左腕さ。こうやって、ちょっと手首を捻ってごらん?」

「えっ、あっ、はい」

 

 少しだけ愉快そうな目の前の怪人に言われるがまま、手首を捻り。

 

 

「うわぁっ!?なんか出た!?」

 

 ジャキィイン!!と金属音を鳴らして、私の身長ほどもある長大な銃器が姿を現した。

 

「村田銃………結構な古式の銃だけど、キミなら十全に扱えるはずだよ。色々と改造してあるけど、まぁ、そのうち慣れるでしょ」

「えぇ………」

 

 ………しかし、なんというか、見れば見るほど心が騒めくというか、不安になってくるような銃だ。

 ………よく使いこまれ、丁寧に手入れの施された良い銃だが、それを差し置いても、只ならぬものを感じる。

 

「それと、その義手の手首のところにツマミがあるでしょ?ちょっち捻ってみ?」

「………今度は何を仕込んだんですか」

「どっちかっつーと元からあった機能だけどね。いいから捻ってよ」

「………」

 

 言われるがまま、手首のつまみをガチャリと捻り。

 

 

「セント・ジョージの剣!!かつて並みいる自動人形を屠ってきた、曰く憑きの逸品だ!!あぁ、威力については保証するよ。こいつに両断できないものなんてほとんどない。あとチェーンもついてる」

 

 ジャキィイン!!と金属音を鳴らして、前腕部の中ほどから湾曲したのこぎり状の刃が生えた。

 

「あっ、ちなみに使う時はこうやって刃を引き出して使ってね?」

 

 刃の中ほどを摘まんだ怪人が刃をスライドさせ、なんだか死神の鎌めいた構造が剥き出しになる。

 

「………コレ、戻るんですよね?」

「戻れなきゃトイレでお尻が拭けないだろ?ほら、刃の真ん中をこうやって押せば重ねられるから、安心してちょ」

「………ならいいんですけど」

 

 

 なんだろう、この一瞬で、すごく、すごく疲れた気がする。

 

 あとこの刃、薄っすら曇ってますけど、これ、拭いきれなかった血とかじゃないですよね?

 

「んふふ~教えたげな~い♡」

「………怒りますよ?」

「ま、ある意味で血のようなものではあるね。………人血を喰らって動く恐ろしい人形たちの、病毒を撒き散らす銀色の血を吸い続けた、その証のようなものさ」

 

 

 ………今思えば、私はきっと、無意識のうちに目の前の怪人を恐怖していたのだろう。

 

 殺人人形などという、本来なら、正気ならば一笑にふすような、そんな与太話を、「ばかばかしい」と切り捨てる事が出来ない程度には、私は、確かに恐怖していた。

 

 じっとりと、嫌に汗ばんだ、左手を、庇うように隠し。

 

 

「さぁ、キミに渡す最後のプレゼントだ」

 

 

 

 『ソレ』を見た瞬間に私が抱いた恐怖は、消え失せた記憶を合わせたとしても、きっと間違いなく過去最大の物だった。

 

 

 不俱戴天の仇を目前にしたような、鷹に狩られる鼠のような、そんな、本能的かつ根源的な恐怖心。

 

 思わず、体が竦み。

 

 

「あれ?思ってたのと違う反応だな。………ま、ぼくが気にすることじゃないか」

 

 

 それは、なにか猛禽の類を模したような、純白の、手彫りの石仮面だった。

 

 目元だけを覆う構造のソレの眼の部分は、だが、赤黒い蠟のようなもので潰され、何も見れないように封じられている。

 

 

「『白面』………黒服………頼んできた奴に、これだけは何があっても君に渡すよう言われてね。………まぁ、ボクからしてもコレは良いものだよ。よくできてる。………こんなものを押し付けられる君が、少しかわいそうではあるけどね。でも、チミのその目が誰かを傷つける可能性を減らせるなら、安いもんだろう?これなら、そうそう壊れたりもしないだろうし」

「………お願い、です」

「ん?」

「それをっ、それを捨てて、いいえ壊してください!!跡形もなく、粉微塵に、今すぐに!!」

「悪いけど、そいつは聞けないねぇ。僕だって仕事なんだ」

「………そう、ですか」

「まぁ、うん、腕に不調が出たらいつでもおいでよ。ただでメンテナンスしてあげるからさ」

「………ありがとう、ございます」

「それじゃ、そろそろサヨナラだ。そっち行ったら君の御学友もいるからさ。またねん」

 

 そう言ってプラプラ手を振る目の前の怪人。

 

 仮面を握りしめ、立ち去ろうとして。

 

 

 

「………あの」

「なに?」

「………あなたの、お名前は?」

「名前………名前、ね」

「はい」

「アンドロメダ星人だ、みょーーん!!」*1

「………」

「………駄目、かな?」

「ダメです」

「………そっか、じゃあ、せっかくだし名乗ってみようか」

 

 

 

 その瞬間、私は、名を聞いたことを後悔した。

 

 

 

「ある時は錬金術師のバイ・ジン、またある時はしろがねのディーン・メーストル。はたまたある時はサイガ財閥のトップ、才賀貞義。しろがねOのリーダー、フェイスレス司令なんて呼ばれた事もあったね」

 

 

 

 だって、その男の顔が、笑顔が、サングラスの奥に除く漆黒の、一切の光のない瞳が

 

 

 

 

「でも、今はこう名乗らせてもらおうか」

 

 

 

 あまりにも、あまりにも、

 

 

 

 

「『ゲマトリア』………神秘の研究と探求を目的とする者たちの1人、フェイスレス。それが今の僕だ」

 

 

 

 

 恐ろしかった、ものだから。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、お代はタダでいいよん。タダより高い物はないっていうもんね」

「………何がしたいんですか、あなたは」

 

 

 

 

*1
フェイスレス司令、渾身の変顔

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  • 激戦!アビドシアンデスワーム!!
  • 恐怖!キヴォトシアンデスマグロ!!
  • 邪眼は春眠を貪る
  • 邪眼は蒼月を背負う
  • 邪眼は機構を喰らう
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