転生してキヴォトスに来ちゃった系フクロウ 作:ストライダー信長
「………それで、その腕貰ってきたと」
「はい!!」
「返してきなさい!!今すぐに!!!」
「ひあっ!?」
貰った右腕………左腕?をプラプラしてみせて、セリカさんに怒鳴られてしまった。
むぅ………なんというか、少し納得いかない。
「うへぇ………タエちゃん、知らない人からの贈り物とか、受け取っちゃダメだよ?何が仕込まれてるか分かんないから」
「それはわかっていたのですが………どうもあのフェイスレスという人は、私について私よりも知っているようでした。私の喪った記憶の手掛かりが見つかるかもしれないと思ったのと………」
「と?」
「………あの場で、あの男の機嫌を損ねるのは、得策ではないと判断しました。このキヴォトスに来てから、皆様ほどではないにしてもそれなりには場数を踏んだ気でいましたが、アレは………アレは、駄目です」
ヘルメット団や賞金首が『殺す殺す』と言うのとはまるで違う、自らの手を、暗い喜悦で以て血に染めた事がある人間特有の、どす黒く邪悪な死臭。
……あるいは、アレは
「例えるなら、『黒い太陽』とでも言えばいいのでしょうか。アレは、自らの正当性を、意志を、決して曲げないでしょう。自分が正しいと信じ、何もかもを犠牲に真っすぐに突き進み、全てを焼き尽くす黒い太陽………アレは、そういう類のものです。………この邪眼が通じるなら、ドライアイになるまで直視してやりたいくらいです。正直、もう2度と会いたくありません」
少しだけ冷静になった今だから、理解できてしまった。
アレは、真の意味で純粋無垢なのだ。
純粋に、自分の事以外何も考えていない。
あの男の頭の中には『善悪』など存在しないのだろう。
幾千幾万幾億の屍を踏みつけて、そのうえで、奴は何も変わらず、平然と巫山戯るのだろう。
快不快、自分が楽しいか否かだけの、正真正銘の腐れ外道。
「しかもあの男、『げまとりあ』なる組織の一員だと名乗っていました。流石にアレが下っ端の構成員という事はないと思いますが、アレの同類か、それ以上に気色悪いモノが蛆のように湧くかもしれません。皆様も、気を付けてください」
「うへ………待って、今、ゲマトリアって言った?」
「?言いましたが………小鳥遊先輩のお知り合いでしたか?」
「………ううん、何でもないよ」
「………そうですか」
なんだか歯切れの悪い口調の小鳥遊先輩。
何か因縁があるのだろうが………首を突っ込むべきではないだろう。
「小鳥遊先輩」
「なぁに?」
「何かあったら言ってくださいね。微力ですが、微力なりに力になりますので」
「………うん、ありがとう」
「いえいえこちらこあばーーーっ!?」
「タエちゃん!?」
真正面からの衝撃に吹っ飛ばされて後ろに倒れこむ。
なんとか、起き上がろうとして。
「だだだっ、大丈夫ですか!?」
「えっ………あぁ、はい、大丈夫です」
「そう、ですか。よかったぁ………じゃなくて!早く逃げ」
「まちやがぷべらっ!?」
前方から殺気剥き出しで向かってきた男に即座に発砲し、速やかに次弾を装填しつつ村田銃を左手に持ち替える。
手首のつまみを咥えて捻って、刃を露出させ。
「試し切りには、ちょうどいいですね」
「ちょっ!?」
私は敵集団へ突貫した。
「………タエ?」
「言わなくてもわかってます、セリカさん。人間には使いません」
あかん、あかん、これ。
人に使ったら死んでしまう。
銃身を一出来でバターでも圧し斬るみたいに切断したのは、まだいい。
『切れぬものなどあまりない』みたいな口上たれたんだ、それぐらい出来なきゃ困る。
だが、いくら何でも、主力級の武装ロボットが一撃で爆発四散*1したのはマズい。
というか、なんで刃物で切って爆発四散したんですかね?
いくら生徒が頑丈でも関係ない、こんなもんで斬られた日にゃ上半身と下半身が泣き別れすること間違いなしの過剰威力。
危うく半分になりかけた不良は、小便漏らしたのか泣きながらマーケットガードに連行されていった。
………せっかく、使いやすいサイドアームが手に入ったと思ったのに、これじゃオーバーキルだ。
鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いんとは言うが、牛刀どころかクソデカチェーンソー使うようなもんだ。
こんなもん封印だ、封印。
物騒な刃を格納した腕を撫で、
「………あの、ところで、アビドスの皆さんはどうしてここに?」
おずおずと話しかけてくる、さっき出会った少女。
阿慈谷ヒフミと名乗った少女………『とりにてぃ』なる大規模な学園のお嬢様とのことだが、趣味の蒐集物のためにブラックマーケットに来て、普通に身代金目的で攫われかけたとのこと。
『ぺろろさま』とやらについて狂信的「 あはは………なにか?」………熱烈に語ってくれたが、荒事慣れなどしている歩図もない学生がブラックマーケットに来るとは、凄まじい度胸だ。
………しれっと人の施行にインターセプトしてくるのは本当にやめて欲しいが。
「あぁ………なんというか、もう売ってないある物と、タエの武器を探して………だったんだけど、タエが貰ってきたから、探し物だけね」
「なるほ」
「いたぞ!あいつらだ!!」
「舐めた真似しやがって!ぶちのめしてやる!!」
ギャーギャー喚きながら突っ込んでくるバカが数人。
即座に村田銃を引き抜いて撃ち放ち、
「皆様。前衛は努めます、援護を」
羽ばたき1つ、逃げる人々の間を極低空で縫うように飛び、全力で蹴っ飛ばす。
「うげぇ!?」と悲鳴を上げる生徒をぶん殴って気絶させ、全身を狙う殺気の導線。
至近距離からの乱射を全弾回避して接敵、足で足を掴んで転倒させて顔面に一発、真横のバカの鳩尾にストックを全力で叩き込んで昏倒させ、右手でもう1人の顔面を引っ掴み。
「動くな!!指一本でも動かせばコイツの頭がトマトみたいに潰れる事になるぞ!!!」
「あだっあだだだだだ!?!?」
アイアンクロー……は身長差で無理なので普通に顔面を引っ掴んで締め上げる。
使って分かったがこの義手、出力が半端ない*2。
頭を潰すのは無理でも、掴まれればえげつなく痛むだろう。
味方の惨状を目にして、案の定、不良が動きを止め。
「砂狼先輩!!」
「ん。隙あり」
「うぎゃあっ」
「あだっ」
「あばーーーっ!?」
ドパラタタタと乱射音が響き、何人かの不良が行動不能になる。
ラスト1人に突貫し、体当たりで押し倒す。
呻き声をあげる奴に跨り、展開した刃を首筋に当て。
「動かないでください」
「………はい………」
泣きそうな声とともに状況が終了した。
「はふぅ………」
「うへぇ………タエちゃん、よく食べるね」
「あぁ、すみません、つい」
旨い。
タイ焼き旨い。
モチモチと香ばしい皮と、しっとりとした餡子の組み合わせが絶妙に過ぎる。
ラーメンに勝るとも劣らない圧倒的口福。
おいタイヤキ旨すぎるぞいい加減にしろ。
十六夜先輩が買ってくれた熱いお茶を啜り、パリッと焼かれた尻尾を口に放り込んで。
「ふぅ………ご馳走様でした」
「タエさん、本当に美味しそうに食べますよね」
「あぁ………なんといいますか、いわゆる記憶喪失というものでして。美味しいものを食べた記憶がないもので、つい」
「………そう、ですか」
「タエちゃん、口の端に餡子ついてる」
「わぷっ………すみません、イワナ先生。ありがとうございます」
「どういたしまして」
仮面で塞いだ視界に、ハンカチで私の口を拭ってにこりと笑う先生が映った気がして、なんだか少しドキッとしてしまった。
妙な熱っぽさを振り払うように、頭を振って。
『みなさん!そちらに武装した集団が接近中、マーケットガードです、気を付けてください!!』
「うへ、間が悪いなぁ~………」
「言ってる場合ですか!?さっさと隠れますよ!」
「ん、襲って身包みを*3」
「シロコ先輩?襲ったらダメですよ☆」
「………ん、我慢する」
「ほら、タエちゃんもこっち来て」
「はい」
小鳥遊先輩に手を引かれるまま、物陰に身を潜め。
「………闇銀行に入っていきましたね」
「………あれ?あいつ、毎月うちに来て利息を受け取ってる、あの銀行員………!?」
「………あぁ、聞き覚えのあるエンジン音だと思ったら、そういう事でしたか」
………うん?
闇銀行って普通に犯罪者集団………というか、限りなく黒に近いグレーな事やってる集団だったよな?
あれ?
「私たち………ブラックマーケットに資金を提供していたのでは?」
『「「「「「」」」」」』
「………さっきサインしてた集金書類、アレが手に入れば……」
「………ん。たった1つだけ最良の方法がある」
「どうするつもり………って、先輩、まさか」
「ん。銀行を襲う」
無感動気味な、けれどどこか愉悦を孕んだような声音で、砂狼先輩がそう言った。
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激戦!アビドシアンデスワーム!!
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恐怖!キヴォトシアンデスマグロ!!
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邪眼は春眠を貪る
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邪眼は蒼月を背負う
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邪眼は機構を喰らう