漆黒の鋼鉄 if ~一つの奇跡の合流点~   作:うづうづ

1 / 4
ネタを書いていたら一話出来てしまったので供養代わりに投稿。暇つぶしにどうぞ。

時系列的にはブラックプロテウスが高等部に上がった後、つまり本編の未来のお話です。


第一章 対策委員会編
プロローグ


 某所の山の麓、そこに一人のウマ娘が大きな荷物を背負って立っていた。

 彼女の名前はブラックプロテウス。押しも押されもせぬ最強のスーパーステイヤーである。

 

「なんて、ね」

 

 ついそんなかっこつけたモノローグを入れるくらいに、今の私は上機嫌だった。

 

 去年に引き続き今年も予定している海外遠征前に貰った長期のお休み。トレセン学園はその特性上、レースの成績が非常に優秀なウマ娘は結構簡単に休みが取れる。

 

 私の場合は戦績が戦績なので、試験などの免除特権が付与されているくらいだ。実際に5月の半ばあたりから遠征に行く私としては期末試験の免除は助かっている。今はその遠征前の休暇で実家に帰ってきているというわけだ。

 

 休暇初日を実家で過ごし、両親と祖父母たちに甘えに甘え倒した私は、せっかくなので久しぶりに山で思う存分走って、ついでに一泊キャンプして帰ってこようと言う算段でここに来ている。

 荷物も万端だ。ワンタッチテント、食料に水、スポーツドリンクにコンパス。その他もろもろ、最悪山で迷っても何とかなるくらいの荷物を背負って今から山登りだ。山をなめてはいけない。

 そこにさらに出発前におじいちゃんに持たされた経口補水液を6本ほど追加で持っているくらいのちょっとした大荷物だが、ウマ娘である私には何ら問題ない。この倍くらいの重さでも十分登山が可能だ。

 

「お? なんだクウちゃんじゃねーか! 奇遇だな!」

 

 いきなり背後から見知った声に話しかけられて、振り返る。そこには長身でスタイル抜群の葦毛ウマ娘が、釣りで使うときのジャケットを着て釣竿を持って立っていた。でもなぜか水着を着ている。なんでだろう? 

 

「え? あ、おはようございますゴルシさん。クウちゃんって……なんで私の幼名知ってるんですか?」 

「おめーのおばあさんとさっきばったり出会ってな! ちょっと話してたんだ!」

 

 クウちゃんというのは私の幼名だ。この名前を知っているのは親戚くらいしかいなかったのだが、ゴルシさんに知られてしまったらしい。まあ、可愛くてちょっと気にいっているので別に呼ばれても構わないのだが。

 

「いいおばあさんだな! おにぎり貰っちまったぜ! あ、そうだ。お返しにこれやるよ! クウちゃんのおばあさんは受け取ってくれなかったからな!」

「え、あ、はい。どうも……?」

 

 そう言って小ぶりの箱を渡してくる。蓋を開けてみると、そこには――

 

「ゴルシさんの像……? 金色ですけど、これは?」

「1/12スケールゴルシちゃん純金像だ! 手作りだぞ! じゃあこれから渓流釣りに行くからまた後でな! その像は煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」

「ええ!? いただけませんよこんな高いもの! って、もう見えなくなっちゃった……」

 

 あまりにも精巧な作りの純金ゴルシちゃん像を渡され、返そうとするも既に走り去ってしまった。今の大荷物ではさすがに追いつけそうにない。

 まあ、トレセン学園で会った時に返すか、拒否されたら部屋にでも飾ろう。

 

 空きの少なくなった鞄にゴルシちゃん像入りの箱を詰め込み、山登りを開始する。それほど標高は高くない、どこにでもありそうな山。多少手は入っているけど万全とは程遠い登山道。ところどころ危ない道もあって、場所によっては滑落の危険もある。子供のころはよく遊び場にしていたものだ。ここならどれだけ全力で走っていても誰にも迷惑を掛けなかったから。

 

 山頂付近は結構なだらかで、平らなところも多い。いつもここでキャンプを張るので、とりあえずそこを目指す。

 ウマ娘基準でゆっくりペースで進んでも1時間くらいしかかからないくらいの距離を進み、山頂につくかつかないかくらいのところで急な濃霧に襲われた。

 まともに手元すら見えないほどの濃霧だ、ツイていない。運にはあんまり自信がなかったから仕方ないけど。いくらもう少しで山頂だからとはいえ、この天候で登るのは流石に自殺行為だ。滑落しても精々荷物がバラバラになる程度だろうけれど、お母さんにこっぴどく怒られるのは想像に難くない。

 

 ひとまずその場に待機し、霧が晴れるのを待つ。最悪今日はここでビバークしないといけないかもしれない。テント自体はすぐに展開できるタイプのものだ。雨風を凌ぐくらいは出来るし、水も食料も3日分くらいあるから何とかなるだろう。最悪コンパスだけ持って全力でまっすぐ下れば下山できるし。

 

「うわっ……ちょっと流石に危ないかも……」

 

 しばらく待機していたが、強風も吹いてきた。足元もまともに見えない中でのこの強風は流石に堪える。人間の短距離走で行うクラウチングスタートのような姿勢になり、ひとまず風を凌ぐ。主に冬の山で行う技術だ。この5月の時期にこれほどの強風が吹くことは珍しいが、ここは山。何が起こってもおかしくないのが山というものだ。最悪荷物をどこか吹き飛ばないところに避難させておく必要があるかもしれない。

 

 しばらくその体勢のまま風が収まるまで待つ。今日は一日快晴だと聞いていたのだが……まあ、山ならたまにあることだ。

 

 それにしても風が強い。先ほどから細かい砂が身体に当たってくる。まるで砂嵐だ。まあこれも山ではよくあることだ。

 心なしか今いる地面も砂地のように感じて……いやこれはおかしい。先ほどまで確かにここは普通の土壌だったはずだ。こんな砂地、この山にはなかったはず。

 

 確かめようにも、この砂嵐がやむまで待つほかない。今見えるのは今いる場所が砂地になっていることだけ。顔を上げても一面砂嵐で何も見えない。

 

 

 

 そうしてしばらく、およそ十分ほどの砂嵐を耐えきると、急に嵐が晴れた。何事もなかったかのように強い日差しが、真上から差し込んでくる。いつの間にか霧も晴れていたようだ。

 

「嘘、でしょ……?」

 

 そして顔を上げて辺りを見渡して、絶句した。

 見渡す限り、砂、砂、砂。今私がいる場所は山ではなく、見渡す限りの砂場――おそらく、砂漠。

 鳥取砂丘には行ったことがあるから、おそらく砂丘ではない。正真正銘の砂漠だ。

 

 とりあえず立ち上がって辺りを探る。建物の影すら見えない。嫌になるほど砂ばかり。とりあえず今どのあたりか調べるためにスマートフォンを取り出すも、圏外表示。登山用に入れてあったオフライン地図を起動するも、GPSすら拾えないらしく現在地は全くの不明。

 空を見れば何か円環のようなものが浮かんでいる。オーロラ……? いや違う、それ以外の何かだ。よくわからない。なんか光の柱みたいのも見えるし。

 流石にまずい。何も手掛かりのない状態で闇雲に彷徨えば流石の私でも命に係わる。だが、ここから一歩も動かないのもまずい。脱水症状で動けなくなるまでが勝負だ。一応水を10リットルくらいと経口補水液を3リットルほどは所持しているが、これだけじゃ多分三日も持たない。

 砂漠にしては気温はともかく気候は普通なのが救いかもしれない。話に聞くほどの乾燥は感じられない。まあそれでもとても暑いのでウマ娘の私には過酷な環境下だが。

 

 とりあえずここで悩んでいても仕方がない。コンパスを鞄から取り出して、ひとまず北に向かって進んでみることにした。何処か一方に進んでいけばそのうち砂漠の外か海に出られるはずだ。地球は丸く、そしてどこまでも陸続きというわけではないのだから。

 

 

 

 そうして進むこと数分。私の目の前には一人の女性が砂に埋もれて倒れていた。

 

「……噓でしょ……? えっと、大丈夫ですか?」

 

「ひぃん……もうダメ……ああ、ごめんねホシノちゃん。頼りない先輩で……」

 

 ちょっと呆然としつつも、助け起こし脈拍を測りながら呼びかけてみる。こちらの呼びかけには反応しない。意識はあるようだが、混濁しているようだ。この暑さでも汗を一滴も掻いていない。まだ手足の痙攣は起きていないが、非常に厳しい状況だ。

 その厳しさを表すかのように、彼女の頭上に輝く天使の輪っかみたいなもの――輪の中心に太陽と、それを囲むような菱形が描かれているものだ――も明滅している。

 とりあえず今はこの不思議な輪っかは今は置いておこう。カフェさんのオトモダチさんと同じようなものだと仮定すればまあ、そういうこともあるよねとしか言えない。

 

 一刻を争う状況だが、ここがどこだかわからない以上医療機関に駆け込むなんてことは出来るわけもない。ひとまずここでできる限りの処置をしておく必要がある。

 鞄の上部に取り付けておいた収納袋からテントを取り出し、展開する。ワンタッチテントで助かった。紐を引っ張るだけで展開できるものだ。暑さ対策もばっちりの私お気に入りの品である。

 そこに倒れている女性を運び込み寝かせる。日陰にはなるから、少しはましだ。

 

「えっと、ごめんなさい。処置するので少し服を緩めますね」

 

 聞こえているかわからないが一応声をかけ、ネクタイを緩め上半身についているベルトのようなものを外す。叩くと冷えるタイプの保冷剤を持っていた分ありったけ取り出し、まずは半分程度使用して彼女の頸部、腋の下、脚の付け根当たりの太い血管が通っているところを重点的に冷やす。あまり首のあたりを冷やしすぎると悪影響があるので、過剰にならない程度に気を付けないといけないが、今だけは過剰なくらいでも良い。

 

「次は……これ、飲めますか? 飲めるなら飲んでください、お願いします」

 

「う、ん……ありがと……」

 

 私が蓋を開けた経口補水液を手渡すと、何とか受け取って飲んでくれた。飲んでくれなかったら正直危なかったのだが、何とかまだ飲める状態で持ちこたえてくれていたらしい。

 

 ひとまずはこのまま処置を続けていれば回復が見込めるだろう。彼女の体力がまだ残っていて本当に助かった。最悪十分に身体を冷やしつつ全力疾走で街がありそうな方向に駆けていくという博打を打つことも考えていたくらいだった。

 

 様子を見つつ、彼女を改めて観察する。

 

 髪は膝ほどまであるロングヘアーで緑がかった薄い水色。服装はチェックのスカートに入れた白いシャツ。あとはネクタイにハーネスのようなベルト。そのベルトには学生証のようなものと、ホルスター。そこにはオートマチックの拳銃が入っている。あまり使いこまれたようには見えないが、とりあえずここは銃社会のようだということはわかった。

 身長は……多分170あるかないか。ちょっと羨ましい。私もこれくらい身長が欲しかった。体型はまあ、私と同じくらいだろうか。非の打ちどころのない美人さんだと思う。

 今は三本目の経口補水液を美味しそうに飲んでいる。まだダメみたいだ。経口補水液を美味しいと感じるうちはまだ危ない。でももうだいぶ意識がはっきりしてきているようで危ないところは乗り切ったようだ。頭の上の輪っかも元気に輝き始めた。

 結構回復が早いということは見た感じよりマシだったのかな? まあ、それなら何よりだ。土地勘のある人なら街まで案内してもらって、海外であるなら大使館辺りまでの道を聞こう。流石にパスポートは携帯していないので不法入国扱いになっているだろうが……まあ、ちょっと根回しすればお叱りを受ける程度で済むだろう。持つべきものはコネである。

 

「ぷはぁ……生き返ったよ~。ありがと~、貴女は私の命の恩人だよっ」

「いえ大したことは……あの、ところでここはどこなんですか? 気が付いたらいきなり砂漠に居たんですけど……」

「へぇ~、珍しいこともあるんだね~。ここはアビドス自治区の砂漠だよ~」

「アビドス……自治区……? えっと、ここはどこの国なんでしょう?」

「国? う~ん、学校が国みたいなものなんだけど……強いて言うならキヴォトス、かな?」

 

 キヴォトス? 聞いたことのない国名だ。まあ全ての国の名前を知っているわけではないけど、ウマ娘のレースがある国ではないと思う。でも、そうだとするとおかしい。なぜなら私は今日本語で話している。彼女の口の動きも確実に日本語を話している動きだ。謎の力で翻訳されて聞こえているという線はない。

 

「それにしてもあんまり見ない娘だね~? 貴女はどこから来たの?」

「えっと、私は日本の東京にあるトレセン学園の生徒ですけど……」

「日本……? 東京……? 聞いたことない地名と学園だね~、どこかの自治区かなあ……?」

 

 話がかみ合わない。どこかしら認識の相違がありそうだ。ひとまず認識をすり合わせるため。情報の交換を行うことにした。

 

 

 そうしておよそ一時間ほど会話した結果、分かったことがある。まずは彼女の名前と遭難していた理由。

 彼女は梔子ユメ。アビドス高等学校の生徒会長で三年生。先輩だったか、大人っぽいとは思っていた。遭難した理由は悪天候に見舞われたのとコンパスを忘れてしまったことが原因のようだ。まあ、それはいい。なにもおかしくはない。

 

 問題は他のことだ。このキヴォトスの地図、現在の日付、そして周りの国の情報。それらすべての事柄が、今まで私が培ってきた常識を全て覆すものだった。

 

「……うそでしょ……?」

 

 今日何度目だろう、もうこの言葉しか出てこない。

 まずはこのキヴォトスと呼ばれる地域だが、見せてもらった地図だけでも少なくとも北米大陸並みの広さがある。多分もっと広い。このアビドス自治区ですら半径400kmくらいある。もはや国家と言って差し支えない。大雑把に半径400㎞の円だとしたら面積は約50万㎢。ちなみに日本の国土面積は約37万㎢だ。それは土地勘があろうと遭難してもおかしくない広さだと言える。

 全く覚えていないがもしかしたら前世にはキヴォトスがあったのかもしれないが、前世が男性だったか女性だったかすら覚えていない私にはわかるわけもない。

 ひとまず言えるのはウマ娘として生を受けて今まで、キヴォトスという単語は聞いたことがないということだ。もしかしたら何処かの都市名としてはあるかもしれないが、その程度の認識だ。

 

 ここまでならまあ、まだいい。私の知らない大陸が一個あっただけだ。でも、まず暦が違う。

 一年は365日だし、閏年もあるし、一日は24時間なのも確認した。でも、西暦ではなく神歴。西暦はこのキヴォトスでは全く使われていない。

 もちろん、国によっては独自の暦があるのは把握している。日本には皇紀や和暦があるし、仏教があつく信仰されている国では仏歴を使っているところもある。

 だがそれでも、世界で普遍的に使われている西暦を知りもしないというのはあまりにもおかしい。鎖国でもしているのかこの国は。

 そして周りの国。日本をはじめ、アメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、アイルランド、中国、ロシアなど思いつく国名を片っ端から聞いてみたが、どれも心当たりがないという。

 でも名古屋は聞いたことがあると言っていた。とり天が美味しいらしい、今度食べに行きたいと。とり天は名古屋めしではなかったと思うのだが……多分、同じ地名がキヴォトスにあるだけなんだと思う。

 鎖国しているのかと思えば外の世界とは交流があるらしく、ただ人間というよりは犬猫がそのまま人になったかのような獣人、そしてロボットが相手。少なくとも彼女、梔子先輩は外の世界の人間は見たことがないという。

 ちなみに私のような耳……いや、馬耳と尻尾が生えている獣人は初めて見たそうだ。馬は図鑑で見たことがあるらしいが。前世の記憶にうっすらと残っている馬の特徴とも合致している。ウマ娘の代わりに馬が居た、もしくは馬の代わりにウマ娘がいたのかもしれない。

 というか、トレセンに入ってから馬のことはすっかり忘れていたし、気にもしなくなっていた。今もそういう種族なんだなぁ程度の思いしかないけど。気にしても仕方ないし。

 

「……つまり今私は自分でもわけのわからないところに居るということはわかりました。ひとまず梔子先輩の学校へ向かいましょう。ここに長居は出来ませんし」

「そうだね~。コンパスがあるなら何とか帰れると思う。私に任せて~。今は予備の銃しかないけど、多分大丈夫だから~。私の楯、どこに落としちゃったんだろ……?」

  

 ふにゃりと人のよさそうな笑顔を浮かべる。とても穏やかで優しい笑顔。太陽のような安心感がある。流石は最上級生。頼りになりそうだ。

 

「では道案内お願いします。歩けないなら私が抱えていきますけど、どうしますか?」

「ううん。大丈夫~。でも、いざとなったらお願いしようかな。ありがとね、えっと……ブラックプロテウスちゃん。珍しい名前だね~」

「ウマ娘としてはそう珍しい名前でもないと思いますが……そう言うってことはこのキヴォトスにはウマ娘、居ないんですね。まあ私のような姿の人を見たことがないと言ってた時点でわかってましたけど」

「うん。私が知らないだけかもしれないけどね~。ひとまずは聞いたことないかな? 外の世界のことだし、帰ったら連邦生徒会に問い合わせするね­­~」

 

 ひとまず問題なく動けるようになったみたいだ。このキヴォトスの住民、特に生徒と呼ばれる女学生たちはヘイローという円環を頭に浮かべており、身体能力はそれの影響なのか非常に高い。銃弾を食らっても気絶程度で済むらしい。人によっては猛スピードで突っ込んできたトラックを盾で弾き返すことが出来るとか。

 なんだろう。このキヴォトスの生徒たちは結構おかしいのでは? 私が神様に貰った加護をほぼ全員持ってるに等しいってことだよね? 多分私もやろうと思えば同じことは出来ると思うけど、さすがにちょっと驚いた。

 ちなみに件のヘイロー、どうやら私にも浮かんでいるらしい。後頭部の後ろにあるらしく私からは直接見えないが、梔子先輩曰く蹄鉄型だとか。この形も結構珍しいらしい。他の生徒は円形だったり幾何学模様だったりするとか。

 梔子先輩は『外の世界の人にもヘイローがあるんだねえ~』とか言っていたけれど、少なくとも今までヘイローなんて見たことなかったのでとっても驚いた。これ、もし元の世界に戻った後もついてたら騒がれる……よね? 大丈夫かな?

 

「じゃあちょっとコンパス借りるね~。えっと……タワーの光がこっちに見えて、この輪がこっちにあるから……今は多分ここかな? よし、分かったよ~」

 

 ポケットからくしゃくしゃになった地図を取り出すと空を眺めて少しうなりながら現在位置を特定し、笑顔で答える。道案内してくれるようだ。

 

「ほんとはホシノちゃんに連絡がつけばよかったんだけど。なんか携帯使えなくなっちゃったみたい。壊れちゃったかなぁ、今お昼くらいだと思うのに時計が16時になってるよぉ」

 

 ちなみに梔子先輩の端末から電話を掛けて救助を呼ぶ案は最初から頓挫している。契約が切れているようだ。何よりここはほとんど圏外になることが多いらしい。砂嵐の影響だとか?

 というか、私が認識している時刻とも少しずれがある。少し濃霧や砂嵐をやり過ごすために待機していたとはいえ、朝から登り始めて2時間もたっていないのに、日は中天にさしかかっている。間違いなくお昼だ。だが私のスマートフォンはまだ9時頃を表示している。明らかに日の位置がおかしい。

 まあこれは私がいた場所とここでは時差があったとすれば全然説明はついてしまうので気にしても仕方がない。今がもう非常事態なのだから、悩むのは後にしよう。今はこの砂漠から抜け出すことが先決だ。

 

「ひとまず最寄りの街を中継してから、学校に帰るね~。その方が結果的に早くつけそう。最寄りの街からならまだ使える道もあると思うし。砂漠は歩きにくいからね~。道も砂で埋もれちゃうし」

「お願いします。お話には聞きましたが大変なんですね、アビドスは」

「そうなんだよね~。でも、きっと大丈夫。奇跡はちゃんと起こるんだってこと、わかったから。だからこのアビドスもきっと、奇跡は起こるって思うんだ~」

 

 そう言って梔子先輩は私に微笑んで、テントの片づけを手伝ってくれた。

 奇跡? いったい何のことだろう。まあ私が外の世界から砂漠のど真ん中に放り込まれたのは奇跡というか不思議現象というか、そういってもおかしくないものだとは思うけれど。

 

「それじゃあ、しゅっぱ~つ! おーっ!」

「お、おー!」

 

 片付け終わってしっかりとした足取りで歩いていく梔子先輩。先ほどまで脱水症状で死にかけていた人物とは思えないくらい元気だ。回復力も私と同等って……ひょっとして私はもともとこの世界の住人で、加護をもらったと思っていたけれどこの世界では普通のことだっただけなのでは……? この世界に戻ってきてヘイローが復活しただけなのでは……?

 そんなことを考えつつ、梔子先輩の後に続いて歩きだすのだった。

 

 

 

 

 少し進めば街にたどり着いた。これは街が近かったわけではなく、私と梔子先輩の移動速度が速かったからだ。歩いているうちについついペースが速くなってしまい、気がつけば速歩を越えて駈歩くらいの速度で進んでいたためかなり速いペースでたどり着いたみたいだ。

 

「うーん、少し前まではここにも人がいたんだけど……いなくなっちゃったかあ……」

 

 その街の様子を見て、私は言葉が出なかった。

 

 半壊した家がある。傾いた電柱がある。砂に埋もれて動かせなくなったトラックがある。何処か日本を思わせる情緒のある都市が、尽く崩れ落ちている。

 そこにある光景を表すなら、まさにこの言葉しかない。

 

「街が、砂に沈んでいる……」

 

 確かに、話には聞いた。原因不明の砂嵐で、自治区は砂に埋もれていっていると。けど、まさかここまでとは……

 

「……昔はね。キヴォトスでも一番古くて、一番大きくて、一番たくさんの生徒が通ってたんだって、このアビドスに。でも、数十年前から砂嵐に襲われて、今ではどこもかしこもこんな感じ。私は昔みたいに、ここにたっくさんの人を集めたいんだ。そして、お祭りがしたいの。アビドス砂祭り、他の自治区からも沢山人が集まった、アビドスの一大名物の復活。そんな奇跡みたいなことが起きたらいいなって。それが、私の夢」

「……大変だと、思います。どれだけ努力したって報われないかもしれません。結局は何もかもすべて砂に埋まってしまうかもしれません。でも、素敵な夢だと思います。私も、その夢のお手伝いをさせてください。梔子先輩」

 

 この広大なアビドス自治区。彼女はそこを復興させようと、彼女なりに必死に努力しているんだ。私は、そういう自分の夢に一直線な人に滅法弱いみたい。知り合って間もないが、此処にいる間はずっと彼女の味方でいることを決意するくらいには、彼女のことを気に入ってしまったようだ。

 

「……うん、ありがとう、ブラックプロテウスちゃん! あ、後私のことはユメって呼んでほしいな。苗字で呼ばれるの慣れなくって」

「わかりました、ユメ先輩。ひとまずこのトラック動かせないか試してみましょう。砂に埋まってるだけならもしかしたら動くかもしれません」

「よーし、砂掘りなら任せて! スコップ探してくるね!」

「あ、大丈夫ですよ、今から持ち上げてみるんで」

「え?」

 

 ユメ先輩の戸惑う声を尻目に、トラックに手をかける。

 

「よい、しょぉっ!!」

 

 気合の声とともに力を目一杯込め、引き上げを試みる。かなり重そう。私はパワーにはそれなりに自信があったが、流石にこの大きさのトラックを持ち上げられるかは自信がなかった。ちょっと苦戦するかも? くらいの気持ちでやってみただけだ。

 それがどうだろう。今までの力に何かさらに外から力が加わったかのように、簡単に引き上げることに成功した。そのまま引っ張り上げるとそれは、トラックというか大きな砲が乗ったハーフトラックだった。

 多分自走砲とかそういうやつ。荷台には大きな砲一門とそれを挟むように機関銃っぽいものと、おっきなライフルが各一丁ずつ。扉は半開き、窓は全開になっていて、鍵は付けっぱなし。スタックして動けなくなったのをそのまま放棄したような感じに見える。よほど大きな砂嵐に見舞われたのだろう。

 運転席の砂を人一人座れるくらいまで掃除した後、エンジンを掛けようとしてみるが……掛からない。完全にバッテリーが上がってしまっているようだ。流石に虫が良すぎたようだ。

 

「ダメですね、動きません。やっぱりここからも自分の足で行くしかないみたいですねえ」

「わー、ブラックプロテウスちゃん。力強いんだねえ。トラックはだめそうだけどこの重機関銃と対物ライフルは動きそうかも? ちょっと軽く整備してみるね」

 

 荷台にユメ先輩が乗り、荷台に乗っていた機関銃とライフルを解体整備し始めた。せっかくなのでそれを見学させてもらう。

 結構慣れた手つきだ。やっぱりこのキヴォトスは銃社会なんだろう。銃の整備は基礎知識ということか。だとすると私はこういう分野には全くの役立たずだ。

 飛び道具の扱いは結構得意な方だが、弓ならともかく実銃なんて全く使ったことない。お祭りの射的で使う空気銃なら百発百中だが、実際の銃だとどうなるか……撃てるかどうかすら怪しい。

 このキヴォトスで生きていくならせめて銃火器の使い方は覚えないと。ただ流石に銃弾飛び交う中で戦闘する度胸はまだない。後方支援辺りから始めよう。最悪銃が撃てないなら投石とかで何とかするしかない。

 後は私がどの程度銃弾に耐えられるかが問題だ。何処かで試さないといけないかな……

 

 そんなことを考えていると突如銃声が聞こえ、数発トラックに着弾した。ついでに荷台に居た私やユメ先輩にも数発当たった。

 ただ、ちょっと首を傾げる。間違いなく被弾したのに、私もユメ先輩も出血すらしていない。それに全然痛くない。ここに来る前に襲ってきた嵐の時に身体に当たってきた小枝や石くらいのダメージだ。つまりノーダメージである。

 

「ひぃんっ!? な、なになに!?」

「銃撃? いったいどこから……」

「あ! あれ! ブラックマーケットのドローン!? なんでこんなところに!?」

 

 ユメ先輩が指さした先にはふよふよと浮く一台のドローン。ちょっと飛行が不安定だ。どこかしら故障しているようで、多分それが原因でブラックマーケットというところからここまで一台だけで飛んできてしまったのだろう。こんな何もないところにドローンを飛ばす理由がわからないし。

 

 ドローン下部についている機銃っぽいものが再度こちらに火を噴く。機械にしては狙いが定まっていない。数十発発砲してくるのに、私たちに当たるのはせいぜい2発とか程度だ。

 

「わわわ、どうしよう……今拳銃しかないのに……」

「今の銃、どれくらいで直りそうですか!?」

「えっと、多分撃つだけならすぐにでも出来るよ? ただ、連射できるかどうかはわかんないかな……」

「一個貸してください!」

 

 もう銃を撃ったことないとか言っていられる状態じゃない。もしこの狙い最悪の機銃がトラックの燃料タンクをぶち抜いた場合流石に無傷じゃ済まない。

 修理が終わったであろう大きなライフルを受け取り、片手で構える。銃の構え方なんて知らないけど、確かタイキさんはリボルバーをこう構えていた。空気銃も片手で撃ってたし、これもそんな構え方でいいだろう。狙いをつけ、まずは一発撃ってみよう。

 

「そんな構え方じゃ危ないよぉ!?」

「大丈夫でっ、うわあ!? み、耳があぁあぁ!?」

 

 すぐ撃てるようにしておいてくれたらしく、引き金を引けば簡単に発射された。結構適当に撃ったが偶然にもそれは命中し、ドローンは墜落していく。ビギナーズラックみたいなものだろう。弓と同じイメージで撃ったのもよかったかもしれない。

 強い反動が腕を襲うが、まあそれはいい、片手で十分扱えるくらいだ。問題は発砲音だ。あまりの音に鼓膜が破裂するかと思った。というか私じゃなかったら多分ひどいことになっている。あまりの音にくらくらし始めた、

 頭の上の耳を抑えて蹲る。ウマ娘の聴力にこの音はきつい。早急に耳栓を用意しないと大変なことになりそうだ。ひとまずはトレーナーさんに貰った耳カバーを装着することにしよう。確か鞄に入れていたはずだ。

 

「そのうち慣れるよ~。それにしてもナイスショットだったねぇ。あとで構え方とか教えてあげるね~」

「うう……ありがとうございます……」

 

 ユメ先輩はこちらの様子を窺った後、私が立ち上がったのを見て特に問題ないと判断したのか、機関銃のほうを仕上げるとトラックの装甲材を引っぺがし、取っ手を無理やりつけて楯をでっちあげ始めた。ないよりマシ、ということらしい。

 力尽くで取っ手をめり込ませているので耐久性はお察しだ。というかこの砂漠で金属板を持ち歩くのは自殺行為だと思うのだが……まあ、持ち歩けなくなったら捨てるだろう。砂漠は彼女の方が詳しいだろうし、口出しはしないことにする。

 

「とりあえずこれでばっちりだよぉ~、どっち持ってく? 一応両方ともにベルト付けたから持ち運びもばっちりだよぉ。シートベルトを加工しただけだからちょっと持ちにくいかもしれないけど~」

「ありがとうございます。せっかくなので両方持っていきましょう。私が持っていきますね」

「えっ、大丈夫? 対物ライフルと三脚付きの重機関銃合わせて80キロくらいはあるけど……」

「それくらいなら問題ありません。行きましょう」

 

 ベルトを身体に通し、重機関銃を背中側、対物ライフルを小脇に抱える。ちょっと心もとないけど、まあ問題ない。何処か落ち着いた場所についたら調整しよう。

 ただ、重機関銃の横にくっ付いてる箱型の弾倉がちょっと持ち運びには邪魔だ。沢山弾が入ってるみたいだしちょっとうるさくもある。まあ、これも我慢。

 

「学校までもうすぐだからちょっとだけ頑張ってね! 学校に行けば電話があるし、ホシノちゃんも居るだろうからブラックプロテウスちゃんのことも何とかなるよ!」

「テウスでいいですよ? でも、ウマ娘がいないこの世界で過ごすならここでの名前を考えた方がいいかもしれませんね。私の名前、ちょっとここだと浮きそうですし」

「私は可愛いからいいと思うけどなぁ。でもここに馴染みたいって気持ちはとっても嬉しいよ~」

 

 命名法則はよくわからないが、何となく日本人名が良さそう。お父さんの苗字に幼名でも組み合わせてみようかな?

 私のお父さんの苗字は弘原海(わだつみ)だ。全国的にもかなり珍しい苗字らしい。でも梔子なんて苗字は私は今まで一度も聞いたことなかったし、この世界なら全然珍しくなさそう。

 幼名と組み合わせて弘原海クウ。うん、いいんじゃないかな? 正直弘原海さんと言われて返事できる自信が全くないけど、この世界でしばらく過ごしていくなら慣れないといけない。

 

 ユメ先輩にそのことを言ってみると、素敵な名前だねぇと褒めてくれた。この人実は全肯定の人なのでは? 純粋すぎて心配になってきた。私が守護らねばならない人なのでは? 

 アイネスさんが自分のトレーナーをちょっと怪しい目で見ていたことを思い出した。きっと今の私と同じ思いだったのではないだろうか。

 そんなことを思いつつ、機嫌が良さそうに小走りで進んでいくユメ先輩の後を追うのだった。

 

 

 

 30分ほど進んで辺りにちらほら建物が見え始めると、それより大きな建物が見え始めた。多分、学校? あれがユメ先輩の学校かな? ちゃんと緑も残っていて、此処が砂漠だとは思えないくらい。まあ、私砂漠はアビドスの砂漠が初めてなんだけど。

 

 そしてまあ、正直近付いているうちにわかってはいたのだが……

 

「学校、襲われてません?」

 

 学校の正門前に20人くらいのフルフェイスヘルメットをかぶった集団が、学校を襲撃している。それをここから見る限り4人が迎撃している形だ。戦力差は1:5か1:6くらいかな?

 

「うわぁ、ほんとだねぇ~。でも、何人か迎撃してくれてるみたい? 心優しい人が助けてくれたのかな? ん~、でも、アビドスの制服着てる? 私が留守にしてる間に転校生でも来たのかな?」

「アビドス高等学校って今生徒はユメ先輩含めて二名だけなんでしたっけ? その辺りもどうにかしないといけませんね……」

 

 私にはいいアイデアはないけど、流石に全校生徒二名とか流石に詰んでいる。一応もう一人は1年生らしいけど、ユメ先輩が卒業するまでにせめて新入生の目途をつけないと廃校待ったなしだ。

 これからの私の居場所(仮)でもあるので、それは困る。というか、生活費どうしよう。ユメ先輩にここの通貨について聞いたが、通貨単位は円。ただし、キヴォトス造幣局が作った言うなればキヴォトス円なので、日本銀行や日本の造幣局が発行する日本円は一般には使えないみたい。

 外の世界との取引はあるらしいので、キヴォトス中央銀行なら両替出来るかもしれないとは言われたが……多分、硬貨の地金分の価値くらいしか認められない気がする。貨幣コレクターとかに売ればちょっとしたお金にはなるかもしれないが……

 

「とりあえず私たちも援護にいこっか。ホシノちゃん達だけに任せておくわけにはいかないからね~」

「あ、はい。正直これを人に向けて撃てる気がしないんですけど……が、頑張ります」

「無理しないでいいからね~。あれくらいの人数ならホシノちゃん一人でも大丈夫だし」

 

 ユメ先輩が駆け出し、私も対物ライフルを構えなおして後に続く。正直、まだ交戦前なのに手が震えている。人に向けて本当に撃てるのだろうか、私。

 ユメ先輩が言うには、対物ライフルが直撃しても気絶程度で済むから大丈夫らしい。小口径のアサルトライフルなら至近距離で30発受けると1時間ほど気絶するとか。

 なんでそれで気絶で済むんですか? とは口にしない。多分私でも同じことになるからだ。やっぱり私キヴォトスの住人だったのでは?

 

 とりあえず銃を構え、スコープを覗く。今回は両手で構えている。ユメ先輩に教えてもらった構え方だ。確かにこっちのほうが安定する。これなら反動も問題なく抑えられそうだ。

 でも、手が震えて狙いが定まらない。引き金を引こうとする指が凍ったように動かない。

 そんな中、ユメ先輩は気にせず急造の楯を構えて突っ込んでいく。勇気のある人だ。銃撃戦は日常茶飯事と言っていたが、それでも尊敬する。

 そんなユメ先輩の一番近くにいたフルフェイスヘルメットの人物が彼女に気付き、手に持っていた銃をユメ先輩に向けた。

 

「――っ!!」

 

 それを見て咄嗟にその人物をスコープに収め、引き金を引く。弾は……外れた。それでも威嚇にはなったのか、焦って遮蔽物に隠れようとしている。

 その隙を逃さず、ユメ先輩が急造楯で殴りつけ、その後拳銃を数発撃ちこんでいる。ヘルメットの人は動かなくなった。

 というか、撃ち込まれたところの服は破けたようだが出血はしてないように見える。どれだけ丈夫なのここの人たち? ユメ先輩の言う通り、ライフルの直撃くらいじゃ本当に問題ないのかもしれない。少し手の震えが止まった気がする。

 

 防衛側のアビドス生徒たち(仮)もこちらの発砲に気付き少し警戒したようだが、援護射撃だと気付くとそれを考慮した動きになりはじめた。こちらの射線を邪魔しないような立ち回りに変わった気がする。

 いきなりの乱入者に混乱せずここまでの連携が出来るのか。ド素人の私でもわかるくらい優秀な指揮官が防衛側についているらしい。

 一名、ショットガンと楯を構えたピンク髪の生徒がユメ先輩をガン見して放心しているのが気になるが、特徴的に多分あれがホシノちゃんだろう。聞いていた話と髪型が違うようだが……

 

 一方侵攻側だと見られるヘルメット集団(仮)はいきなりの乱入者に混乱している。形としては挟み撃ちのような形だ。仕方がないだろう。

 前衛で楯を構えながら拳銃で応戦するユメ先輩を後方から支援する形でもう一発発砲する。カスっただけだが、戦闘続行は出来なくなったのか掠った相手は蹲ってしまった。でも、死んではいなさそう。やっぱり戦闘不能だけで済むんだ……

 こちらの弾は今弾倉に残ってる分で終わりだ。後は背中の機関銃だが、狙いが上手くつけられない今の私だとこれは下手に撃てない。ユメ先輩が引き付けて足が止まった相手になら何とか掠らせるくらいは出来る程度の射撃精度しかない私に機関銃なんて扱えるわけがない。下手しなくてもユメ先輩に当たる。

 でも銃は砂に埋まっていたので結構ボロボロ、射手は銃を握って30分のド素人。掠らせられるだけでも御の字なのではと思う。得意の弓だって習い始めは的に届かせることすら出来なかったし、これから慣れていけばいい。

 

 そうして戦闘していると、間もなく戦闘は終わった。というか、殆どアビドス生徒たちが片付けてしまった。優秀な指揮官が居て、兵の質がけた外れに違えば多少の量の差など気にならないということだろうか。

 一名手持ち兵器とは思えないほどの重機関銃を乱射していた生徒が制圧射撃を行っていたのも特徴的だ。なんかゴテゴテしたものが大量についているから多分あれ全部合わせて100kgくらいありそう。力もウマ娘並みなのかな、ここの人たち……

 

 銃の安全装置を掛けてから、ユメ先輩のもとへ向かう。ユメ先輩も一息ついてこちらに手を振っている。彼女も無傷なようだ。良かった……

 

「――動くなッ! お前たちは何者だ! 答えろッ!!!」

「ちょ、ちょっとホシノ先輩!? 助けてくれた人に何をっ……」

 

 私がユメ先輩のところに合流し、学校へ一緒に向かおうとすると先ほどまで放心していたピンク髪の生徒がいきなり突進し、私が反応する前にショットガンを目の前に突き付けてきた。

 速い、速すぎる。ウマ娘の私でも追いつけるか怪しいほどの敏捷性だ。ツインテ黒髪の生徒の静止の声が届くころには既に私たちの目の前に居たほど。

 

「ひぃん……ホシノちゃんどうしちゃったの? もしかして私のこと忘れちゃった? 酷い、2日くらい会ってないだけなのにぃ……」

「今思えば砂漠で2日遭難して良く生きてましたねユメ先輩」

「まあ一応水と食料は少し持ってたからねぇ」

「コンパスは忘れてましたけどね」

「ひぃんっ……」

 

 このアビドスではかなり大事なものなんじゃないのかコンパスは。こういう天然さが放っておけないって思っちゃうところなんだろうなあ……

 

「早く、早く答えろッ! どうして、どうしてその人がここにいる! その人に、ユメ先輩に何をした! 言えええっ!!!!」

「別に何もされてないよぉ、むしろ命を助けてもらったくらいで……ひぃん、ホシノちゃんがよくわからないことになってるよぉ……落ち着いて、ホシノちゃん……」

 

 ショットガンの銃口をゴリゴリと私の頭に突き付けられた。この距離でショットガン受けたらどうなるんだろ。痛いで済めばいいなあ……

 私が遠い目をしながら何とか説得しようとしているユメ先輩を見守る。多分私から何か言ったらそのまま引き金を引かれるからだ。とりあえず両手を上げておこう。これが本当のお手上げ状態だ。ははは……助けてスズカさん……

 

 この膠着状態は、後ろから駆けつけてきた生徒たちとユメ先輩が5人がかりでホシノ先輩を宥めるまで続いたのだった。

 

 




多分続かない

ブラックプロテウスが名乗る名前はどっちがいい?

  • 本名(ブラックプロテウス)で通す
  • 偽名(弘原海クウ)を名乗る
  • 通常は偽名で親しい子にだけ本名を名乗る
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。