あの後もお昼くらいまでみんなで身体を動かした後、昨日集まっていた教室にセリカさんを除いたアビドスのメンバーと先生、それと私が揃って会議をしていた。
「先生、あの後セリカさんとはどうでしたか?」
「追いかけて話を聞いたけどあしらわれちゃった。これからバイトだって」
「はいはい、雑談はその辺にしてね~。これから対策会議だから」
議題は主にアビドスの借金問題とユメ先輩と私の戸籍及び学籍、それに紐づいた口座等の問題だ。アビドスの借金に関しては今までのペースだと完済までに300年ちょっと掛かるということもあり、ちょっと一筋縄ではいかなさそうだということを皆で再認識する形で終わった。
正直今のままのペースでどうにもならないなら外から融資なりなんなりを受けるしかないと思うのだが……まあ、多分そう言ったことはすべて試したうえでの現状だろう。
「金利としては確かに高いみたいですけど、まあ一応このキヴォトスでは合法の範囲内みたいですね。上限にも引っかかってませんし。まあ、学校──国家に貸す金利としては確かにかなり高いですが違法ではないですね」
「そうなんですよね……本当はもっと低い金利で貸してくれるところに借り換えするべきなんでしょうが、私たちの立場ではとても……」
法外な金利ということだったので、アヤネさんにタブレットをお借りして法律系のことを調べてみた。
外国に来たときはその国の憲法や刑法などの法律にはきちんと目を通すようにしているので、後ですべてに目を通すつもりだが、とりあえず利息に関して法律を調べてみたところ、ここキヴォトスで適応されている法律にはキヴォトス全体で適応されるものと、各学園自治区内で適応されるものがあるようだ。多分アメリカみたいな感じだろうか? アメリカの法律に詳しいわけではないけれど、確かそんな感じだった気がする。
その中のキヴォトス全体で適応される、連邦法と言われているものの中に金利についての定めがあった。大体日本と同じような感じだ。他にも飲酒と喫煙年齢、後は消費税率などの定めも此処にある。これも大体日本と同じ。
それによるとちゃんと合法。それどころか上限の金利にはまだ余裕があるくらいだ。今の金利が大体年10%くらいで、上限は15%。
確かにかなり高い。一時期問題になったどこかしらの国が他国に融資したお金の金利が確か9%弱だったはずだ。だが、間違いなく合法である。少なくともここキヴォトスでは。
「まあ、違法だったとしてもそれで大人しく引き下がる相手じゃないよ~。立場はおじさんたちの方が下なわけだしねぇ~」
「連邦生徒会に立て替えてもらえれば一番良かったんだけど……立場上どこか一つの学園に肩入れしすぎることは出来ないって言われちゃって。私が居たころはそんな感じだったけど、今でもおんなじ?」
「ん、おんなじ。それどころか連絡すらまともに取れなくなった」
「それに加えてここのところは連邦生徒会長さんが居なくなってしまって大混乱でしたからね~☆」
皆で話し合った結果、とりあえずは現状維持が最善手だろうというような雰囲気になる。まあ、10人にも満たない人数で9億返せっていうのが無理難題だし。それどころかちゃんと返済出来ているだけで物凄いことだと思う。
「ん、そういえばその連邦生徒会だけど、ユメとテウスの事どうなったの先生?」
「あ、うん。さっきリンちゃんから連絡があったよ。とりあえず手続きはするけど、一度連邦生徒会の方に二人とも出向かないといけないみたい。忙しいらしくてまた都合がいい時間を連絡してくるって。取り急ぎ口座だけは用意してもらったよ。ユメのは元々あったのが凍結されていたみたいだから、それを復活させただけだけど。テウスの方は正式な学籍が用意できるまでシャーレというか連邦生徒会の方で仮の立場を用意してあるから、安心してね。ユメの携帯もすぐに使えるように手配しておいたよ。ただ、少し型が古いみたいだから機種変した方がいいかもって。経費で落としてあげるから近日中にテウスを連れて行っておいで」
「何から何までありがとうございますっ。これでやっと満足に買い物が出来るよ~。ひとまず食料品から買いこまないと」
「私も後は買い切りのモバイルWi-Fiルーターでも用意すればモモトークでの連絡は出来ますね。ありがとうございます。そのリンチャンさんにもお礼を言っておいてください」
私の携帯端末に関してはWi-Fiに繋げれば使えるが、逆に言えばWi-Fiに繋げないと何もできない。
最初アプリのインストールも出来なくて困り果てていたのだが、先生が持っていた端末で何かしらすると勝手に必要なものがインストールされた。ハッキングしてどうにかしてくれたらしい。
ただ、データ通信に関してはどうしようもない。先生が近くに居る時は先生が持ってる端末からデザリングしてもらえるみたいだけれど、一人になった時通信が出来なくなってしまうのは問題だ。
一応私が使っているのはSIMフリー端末だから規格さえ合っていればここでも契約は出来ると思うので、どこかのショップで回線だけ契約か、モバイルWi-Fiルーターでも買うか、最悪端末ごと買い替えればいいのだけれど、その為にも今は資金が必要だ。
「とりあえず手持ちの私物を売って何とか資金調達できればと思うんですけど、何かアテがあったりしません?」
「私の伝手で捌けばそれなりの額になると思いますけど、何を売るんですか~?」
ちょっと相談してみたところ、ノノミさんが協力してくれるみたい。ショッピングが趣味だって言っていたし、そういう伝手が結構あるのかな? 中古品とか買わなさそうな人だと思ったんだけど……
「うーん……使用済みのキャンプ用品と……後は、これくらいですかね?」
カバンに取り付けていたテントとキャンピングクッカー。それと、ゴルシさんに貰った純金ゴルシちゃん像が入った桐の小箱を取り出す。
ゴルシさんの像に関しては売るかどうかかなり迷ったのだが、背に腹は代えられない。どうしても今はしばらく暮らしていけるだけの資金が必要だ。
「結構いいキャンプ用品ですね~。でも、多分中古なら合わせても高くて数万円くらいでしょうか? この箱、開けてみていいですか?」
「どうぞ。友人から頂いたものです」
ノノミさんが蓋を開けて、そのまま固まった。まあそりゃ純金像だ。それも14cmくらいの、精巧な作りの人形。しかもモデルは黙っていれば絶世の美女なゴルシさんの像。流石に驚くだろう。
「き、金の像ですか!? そんなものを持ち運んで!?」
「ん、すごいピカピカ。売ったらすごくすごい高そう」
「うへぇ……流石に鞄に放り込むには高価すぎるとおじさん思うなあ~」
「先生も金の像なんて初めて見たよ……ユメ、なんで距離取ってるの?」
「ち、近寄ったら壊しちゃいそうだなぁって……」
その像を覗き込んだアビドスの面々はそれぞれ驚いているというか、ちょっと引き気味だ。まあ、確かに鞄からこんなものが出てくるとはだれも思わなかっただろう。
「18金……いえ、これは24金ですね~。重さは……500グラムくらいですね☆ このサイズで、この造形なら安くても3000万くらいで売れると思いますよ~。地金分だけでも800はすると思いますし。でも、本当にいいんですか~? 相当な代物ですよ~?」
ノノミさんはあんまり驚いていない。どこかしらから取り出した白手袋で像を取り出して軽く調べて、簡単な査定を出してくれた。こういうことが出来るってことは結構お嬢様だったりするのかな? マックイーンさんやダイヤちゃんとかそういう審美眼に優れていたし。
「はい、大丈夫です。貰った人からは好きにしていいって言われてますし、最悪元の世界に帰ればそれくらいの金額なら補填できますし」
「わかりました~。ではこの像だけお預かりしますね~。私がなるべく高値で売ってもらえるように伝手をあたってみます。ひとまず手付としてこのカードを~。大体どこでも使えるプリペイドカードです。残高いっぱい、100万円までチャージしてありますので☆」
そっと箱にしまい、大切に鞄にしまった後ノノミさんがカードを渡してきた。前金ということだろうか? ありがたく受け取ることにした。
とりあえずこれでしばらくは大丈夫だろう。使い切る前に引っ越し業者のアルバイトでも探せば資金面は問題ない。大抵の力仕事ならこなせる自信があるし。
「うへぇ、ノノミちゃんそんなの用意してたんだ? もう、そういうのダメっておじさん言ってるじゃない」
「念のためですよ念のため~☆ 便利ですから~」
「ん、ノノミのおかげでテウスがお腹を空かせずに済む。今回は許してあげて」
お金のやり取りには少し敏感なのかホシノさんが少し怒ったような雰囲気を出したが、シロコさんが庇ってくれたおかげか直ぐに元に戻った。
そうしてわちゃわちゃしていると、お腹の音が鳴った。うん、もちろん、私のお腹の音である。
「あ、あはは……朝から沢山動いたのでお腹減っちゃいました……」
「そろそろお昼だもんね~。何処かでご飯食べよっか。私良い食堂知ってるんだ!」
「ユメ先輩がいつも行ってた食堂なら去年無くなりましたよ」
「ええええ!!!? そ、そんなぁ……うう、時の流れは残酷だよぉ……」
ホシノさんの無情な宣告にユメ先輩が項垂れている。まあ、この環境最悪のアビドスで営業を続けられる飲食店はそう多くないだろう。換気扇を回してたら逆に砂が入ってきそうだし。
「まだ柴大将のところはやってますから、そこに行きましょう。多分セリカちゃんもそこに居ますよ。バイトするならあそこくらいしかありませんし」
「そうなんだ! 柴大将はまだやってくれてたんだねえ……」
「ん、あそこのラーメンは安くておいしい。私も好き」
「セリカちゃんのバイト姿も見てみたいですし私は賛成です~☆」
「そうですね、とりあえず今日の会議はここまでにしましょうか。皆でお昼です」
もう会議する雰囲気でもなかったのでそのままお開きになり、皆で荷物と銃を持って出かける。
こうして改めて考えると凄い世界だな……でも、このキヴォトスでは銃を持たない人は全裸で出歩く変質者より珍しいらしい。まあ、先生は銃を持っていないようだけど、私にとってはそれが普通なのであまり気にならない。先生=銃を持っていない人みたいな感じになっているし、多分彼の性格上今後も持たないだろう。勧めたとしても『生徒に向ける武器は持ちたくないかな』とか言われるのがオチだ。
私も携帯するか迷ったのだが、郷に入っては郷に従えとも言うし、持ち運ぶことにした。対物ライフルと重機関銃という携帯するにはあまり向かなさそうな武器だけれど、ノノミさんはミニガン持ってるし、多分ここでは普通だろう。大した重さでもないし。
しばらく歩いていれば結構すぐにそのラーメン屋に辿り着いた。それほど大きくはない。でも、なんだか雰囲気が優しい、そんなお店だった。外観を見ただけでわかる。この店は本当にいいお店だ。
ノノミさんを先頭にしてお店の中に入る。室内もとても落ち着いた感じのお店。お客さんも何人か居る。この荒廃したアビドスでこれだけの客入り、やはり結構な名店なのだろう。
そんな中で店員さんが一人こちらに寄ってきた。今朝方見たばかりの娘。というかセリカちゃんだった。
「いらっしゃいませ、柴関ラーメンにようこ……わひゃぁあ!!!?」
「あの~☆ 7人なんですけど~」
「あ、あはは……セリカちゃん、おつかれ……」
「み、皆、どうしてここを……先生! やっぱりストーカー!?」
「やっぱりここでバイトしてたんだね~。アビドスでバイトするならここくらいだろうっておじさん思ってたから。うん、制服とっても可愛いねえ。いつからバイトしてたの~?」
「くっ、ホシノ先輩だったか……一週間くらい前から……ああもういいでしょ! 席にご案内します! そしてさっさと注文して!」
「アビドス高校の娘たちか。セリカちゃんのお友達ならサービスしてやらないとな。お? ユメちゃんじゃねーか。久しぶりだな、行方知れずだって聞いてたから心配してたんだぜ」
「いろいろ事情があって~……」
わちゃわちゃとはしゃいでいると、大将さん──柴犬のような外見だが、とてもいい声の人……人? が呵々大笑していた。
キヴォトスにはこんな人種も存在するんだなあと思いつつ、メニューを見てみる。
公用語が日本語みたいで良かった。英語かフランス語ならなんとか日常会話くらいは出来るけど、それ以外となると厳しかったからこのキヴォトスに来て言語で困らないのはとても助かっている。
まあ、なぜ公用語が日本語なのかを考えだしたらキリがないのでその辺りは考えないようにしておこう。色々な単位が日本と同じ単位だけど気にしたら負けだと思う。
「うーん……」
皆が思い思いに注文していく中、私は少し迷っている。この世界の物価があまりわからない以上、あまり無駄遣いは出来ない。先生がいる間は弾薬などは全部支給してくれるらしい。私が使ってる銃用の弾も出かける直前に届いたので補給は万端だけど、いつまでも先生のお世話になっておくわけにもいかない。
来る途中で見た自動販売機に銃弾が売っていたけれど、私が使う銃の規格に合う弾はなかった。私の使っている銃はどちらも車両に装備されていたものだ。一個人が持ち運んで使うことをあまり想定されていないため、自動販売機のようなポピュラーなものを扱うところでは手に入りにくい、というのがアヤネさんの話だった。
正規のお店で纏めて買えば多少は安くなるだろうけど、口径が大きい銃の弾は値段も高いらしい。9mmの拳銃の弾が安いやつで100発入り1,000円とかで手に入るけれど、私の使う弾は安いものでも1発300円くらいするとのことだった。収入源が確立されるまでは節約しないと……
「テウスちゃ~ん、遠慮せずに頼みなよ~。先生が奢ってくれるって~」
しばらく悩んでいると、そんな声が隣から聞こえた。周りを見てみればもうすでに皆注文も決まってしまっているようだ。よくわからないけれどなぜかセリカさんが先生を睨んでいる。一流ウマ娘もかくやとばかり思われる気迫だ。
そんな視線もどこ吹く風か、ホシノさんが先生の懐を探って一枚のカードのようなものを取り出してひらひらとさせていた。あれはクレジットカード……かな?
「先生、こっそりこれで払ってください」
「いや、大丈夫だよ。若い子たちに食事を奢れるのは大人の特権だからね。後一応これでも高給取りだし」
ノノミさんが何らかの手回しをしようと小声で話しかけているが、先生はやんわりと断っている。周りの皆には聞こえていないようだ。まあウマ娘の私には丸聞こえなのだが……言わぬが花かな。
「テウス、遠慮しないでなんでも頼んで。お代わりしたっていいからね」
「でも……私、結構食べますよ? ウマ娘は人間に比べて燃費が悪いので……普通の人間より小食のウマ娘も居ないわけではないんですけど、大抵のウマ娘が人間の三倍は食べます。私だと十倍くらいですかね」
「それならこの柴関ラーメンスーパージャンボがオススメよ! 十人前のシェア用メニューで、お値段は並5杯分くらいの税込3000円! 大将~! スーパージャンボお願いしま~す!」
「あいよ、スーパージャンボ一丁」
私が渋っているとセリカさんが助け船を出してくれた。というかもう頼まれちゃった。十人前かあ……足りるかな?
「うへ~。足りないかもって顔だね? じゃあセリカちゃん、トッピングも全部追加で乗せたげて~」
「ん、それでも足りなかったら替え玉頼めばいい。替え玉は150円。大盛りのだとちょっと量が多かったはず」
「ご飯が欲しくなりますね~☆」
「2年前には限定メニューでチャーハンがあったような……大変だからってやめちゃったんだっけ?」
「わあ、柴大将のチャーハンですか? 食べてみたかったですね」
注文を持つ間追加のトッピングを頼んだり過去の柴関ラーメンについて話したりとわちゃわちゃしている。世界が変わってもこういうところは変わらないなあ。私は走ること以外の話題が少ないから会話についていけなかったことが多かったっけ……今後は直さないとかな。ここにはレースもなさそうだし。あるとしたら戦車でも走らせてるんじゃないだろうか? 戦車ダービー、ちょっと見てみたい。
「お待たせしました~。ノノミ先輩がチャーシュー、シロコ先輩が塩、アヤネちゃんが味噌にホシノ先輩が特製味噌のチャーシュー乗せ、先生とユメ先輩が柴関ラーメン並ね。テウスのは次持ってくるから待ってて!」
話しているとセリカさんがラーメンを持って来た。一度に六つ。両手に一つずつと両腕に二つずつ。どうやって保持してるのそれ? プロ過ぎない? バランス感覚はかんぺき~ってやつなんだろうか。
「はいお待たせ! 柴関ラーメンスーパージャンボよ!」
そして両手で運んできたそれは、10人前のメニューというだけあって結構大きかった。そして沢山のもやしやコーンやメンマ、海苔は15枚乗っているし、半分に切られた煮卵が10個。チャーシューに至っては20枚くらい乗っている。追加でトッピングを頼んでいたとはいえ元々はどれだけ乗っていたんだろう。流石に倍量になっているということはないだろうけど……
「じゃあ、いただきます!」
ユメ先輩の号令で一斉に食べ始める。人によって拘りがあると思うが私は先に麺を食べる派なので、最初の一口は麺から。
「わ、美味しい……」
つい言葉が漏れてしまった。元の世界で食べたラーメンを含めても、5本の指に入るくらい美味しい。もし自由に行き来できるようになったらファインさんに紹介しよう。多分気に入ってくれるはず。
これでにんじんが入っていれば最高だったのだが……いや、ウマ娘が居ないこの世界だとにんじん入りのラーメンは珍しいのかな? そんなことを考えつつするすると食べ進めるといつの間にか全て無くなってしまった。お腹は……うん、八分目くらいかな?
「ふう、ごちそうさまでした」
「は、速いですね!? まだ食べ始めて5分も経ってないですよ!?」
「うへぇ……健啖家だねえ。おじさんはもう身体が脂っこいのを受け付けなくて……って何ですかユメ先輩、その目は」
「ううん。ただ今のホシノちゃんは私と同い年だし、ホシノちゃんがおじさんなら私もおじさんなのかなあって」
「ん……ホシノ先輩のこれは冗談。だってチャーシュー増しとか頼んでるし」
「ホシノ先輩は好きなものは沢山食べますからね~☆」
「テウス、足りないなら私のも食べる? それかお代わり頼んでもいいけど」
私の……というかウマ娘の食べる速度に驚かれてしまった。ちなみに私は早い方ではあるが、上には上がいる。トレセン大食い三強は多分1分くらいで完食するだろう。
お代わりに関してはちょっと心惹かれたけれど食べ過ぎも良くないので遠慮させてもらった。アビドスに居る間はいつでも食べられるわけだし。沢山食べるのは自分でちゃんと働いてお給料をもらってからにしようと思う。後先生の分を食べるのは流石に遠慮した。私は慎み深いのだ。
「とりあえず早めにアルバイト先見つけないといけませんね。力仕事とかがあるといいんですけど」
「うへぇ、このアビドスだと難しいかもねえ。ここから出ていく人の引っ越しのお手伝いとかはあるかもだけど」
「うーん、私が知っている割のいい仕事だと賞金首のお尋ね者を捕まえるくらいしかないですね……」
アルバイトについてちょっと相談してみたが、この辺りにはあんまり良い仕事はなさそう。まあ、逃げる相手を捕まえるくらいなら私でも出来るかな? 相手が車で逃げたとしても追いつけるだろうし。
「お、なんだ嬢ちゃん。アルバイト探してるのか? そうだな、セリカちゃんが休みの日にここでバイトしてくれると助かるんだが」
「え、いいんですか? じゃあお願いします! あ、でも身元を保証できるものが何もないんですけど……」
「いいよいいよ。セリカちゃんのお友達なんだろ? なら問題ないさ」
そんなことを話していると大将さんが助け船を出してくれた。この人本当に聖人か何かなのでは? 今後三女神様の次に柴大将に祈ることにしよう。
そうしてアルバイト先を確保し、美味しいご飯も食べて満足して柴関ラーメンを後にするのだった。
「──それで、ここはこんな風に──」
「ふむふむ……慣れれば結構簡単にできそうですね。蹄鉄打つよりは楽かも」
「私としてはそのシューズの蹄鉄を自分で打ってたことが驚きだよー? あ、ごめんね電話みたい。ホシノちゃんからだ」
「まあおじいちゃんが鍛冶師だったので、それで少しは。気にしないでください、もう終わりましたし組み立てなおしておきます」
そうしてその夜。お風呂に入りおわりジャージ姿でユメ先輩に銃の手入れを教わりながら過ごしていると、ユメ先輩の携帯が鳴った。
「はい、ユメです。こんな夜遅くに何かなホシノちゃん? ──うん、うん……へぇあ!!? そ、それは大変だね!? すぐ学校に行くから!」
そうして急いで電話を切ると急いで準備を始めるユメ先輩。どうかしたのかな? 一応私も着替えておこう。銃の組み立ては……よし、これでいいはず。
「どうしたんですか、ユメ先輩? またあのガタガタヘルメット団? とかいう輩の襲撃ですか?」
「カタカタだよ、テウスちゃん。そうじゃなくて、セリカちゃんと連絡が取れなくて先生にちょっと調べて貰ったら市街地の端の方で襲われた可能性が高いんだって! なので学校に集合して助けに行くよ!」
「それは大変ですね、大急ぎで行きましょう。銃は一応組み立て終わったので確認しておいてください」
「はーい。え、なにこれ、私より上手なんだけど……???」
私が組み立てた銃を見てユメ先輩が宇宙猫みたいになった。こう見えて手先は器用なのです、えっへん。
そうして学校に集合し、セリカさん救出大作戦が決行されることになったのだった。