漆黒の鋼鉄 if ~一つの奇跡の合流点~   作:うづうづ

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かなり短いけど話の区切りが良いのでこの辺で……


第四話

 

 私がユメ先輩と一緒にアビドス高校まで駆けつけるころには、先生を含め全員が教室の一室に集合していた。

 

「お待たせしました~!」

「ん、それほど待ってないから大丈夫。それじゃ先生。説明をお願い」

 

 その言葉を合図に先生が手元のタブレットを皆に見えるように見せてくれる。地図と、何かの位置を表す光点が表示され、光点が移動していく様子が見て取れる。

 

「ここは郊外の砂漠地帯の近くですね。以前にもカタカタヘルメット団の出入りが確認されているエリアです」

「今度は人質でも取って脅迫しようってことかな」

 

 アヤネさんの言葉にホシノさんが返事をするように返す。普段の穏やかさは感じられない、何処か尖ったものを感じられるような口調だ。

 

「考えていても仕方ないよ! 急いでセリカちゃんを助けに行こう!」

「そうですね☆ アヤネちゃん。車の運転、お願いしますね~」

「はい! あ、でも何人かは荷台に乗ってもらうことになりそうなんですけど……バギーには多分運転手含めて4人くらいしか……」

 

 そう言って人数を指折り数えてアヤネさんが困った顔をする。今ここにいるのは7人、3人は荷台に乗らないとダメそうなようだ。

 

「ん、それなら私と……テウスとホシノ先輩がいいと思う。私たちなら振り落とされないと思うし」

「最悪私なら走って後を追えますからね。ともかく行きましょう」

 

 バギーがどの程度の速度を出せるのかは知らないけれど今の私の身体能力なら問題ないだろう。駆け足でバギーが止めてあるという倉庫に移動して、荷台に乗り込む。丁度いいところにバーのようなものがあったので、掴まっておく分には問題なさそうだ。

 

 そうして全員バギーに乗り込むと1秒でも惜しいと言わんばかりに急発進した。作戦決行は夜もとっぷり暮れていたころで、そろそろ日が昇りそうな頃合いだった。

 

 

 

 

 

 

「ところでアヤネ! こんなバギー、どこで運転を覚えたの!」

「説明書を読んだんですよ! ともかくしっかり掴まっていて下さい!」

 

 そうして朝方、結構荒っぽい運転に先生がちょっと悲鳴のような声を上げながらも砂漠地帯に突入。時折ドリフトのような軌道を描きながら猛スピードで疾走している。

 

「──見えました! 方位そのまま──砲撃、来ます!」

 

 砂漠地帯の先を見ていると車列が見えてきた。どうやらあちらからも目視されたようで、砲弾が飛んでくるのが見える。

 アヤネさんの華麗なハンドル捌きで銃火の雨霰を回避しながら、隙を見てシロコさんがドローンを飛ばした。足止め目的のようだ。

 

「ん、テウス。いける?」

「本当にやるんですか? まあ、私は構いませんけど……振り落とされないでくださいね!」

 

 シロコさんを背負いバギーの荷台から飛び降り、そのまま砂漠の上を駆け出す。砂漠を走ったことはなかったし、誰かを背に乗せて走るなんて初めてだったけれど意外とスムーズに走れる。これならいけそうかな? 

 

「なっ、生身でなんて動きだ!? うわぁあ!?」

「曲芸師か何かかよぉ!?」

 

 私が走ったり飛んだり跳ねたり気の赴くままにランダムな動きをしている中、背中に乗っているシロコさんはドローンを操作したり撃ったりなどしているとヘルメットを被った娘たちが混乱したような声を浴びせてくる。曲芸師になったつもりはまったくないけれど、混乱してるならヨシ! 

 

「ん、テウス。パターンBで行こう」

「何ですかパターンBって! 知りませんよ! よし、そろそろ降りて戦ってください。私は戦車を止めてきます!」

 

 十分に戦場を掻き乱したところでシロコさんを背中から降ろし、3台ある戦車の1台に突っ込む。そのまま側面に取り付き、車体に手をかける。

 

「な、何をして……うわぁぁぁあ!!!?」

「よっこら、しょっとぉ!」

 

 そうしてそのまま戦車を持ち上げ逆さまにして地面に落とす。これで簡易的な無力化は完了だ。もう二台の戦車も同じようにひっくり返しておくと、戦車後部から這う這うの体でヘルメット団の娘たちが出てきたので、ハンドガンの弾を数発撃ちこんで無力化しておく。

 

「化け物めえええ!!」

 

 側面からライフルを構えた娘たちが私に乱射を浴びせてくる。どうやらヘイトを買いすぎたらしい。けれど、私ばっかりに気を取られてると──

 

「さてと~、お仕置きの時間ですよ~☆」

 

 さらにその側面からミニガンを構えたノノミさんによる掃射により、一網打尽にされてしまった。ちなみに跳ね返った弾がちょっと私にも当たりそうになってびっくりしたのは内緒。

 

「ん、泣きっ面のセリカ、発見した」

「セリカちゃん! 良かったねえ~」

 

 いつの間にか近くまで来ていたユメ先輩がシロコさんと一緒にトラックの荷台を開けてセリカちゃんを確保していた。ヘッドセットを渡したらしく、私たちが付けているヘッドセットからセリカちゃんの声が聞こえてくる。ホシノさんとノノミさんに揶揄われて恥ずかしがっているあたり大きなけがとかはしてなさそう。良かった。

 

「無事みたいで安心したよ、セリカ」

「なっ、なんで先生まで……!」

「伊達にストーカーじゃないからね!」

 

 何よそれ! というセリカさんの突っ込みを聞きつつこちらは残敵掃討に移る。あまり使っていなかった重機関銃の方を構え薙ぎ払うように斉射。気分はノノミさんだ。彼女のものより大口径だから、撃たれる方はたまったものじゃないだろうけれど。

 

「よくもさらってくれたわねぇ!!」

「もう手加減しないよ~」

 

 残りのヘルメット団にはセリカさんと、ホシノさんが追撃している。もうほとんど壊滅状態だけれど気が済まないようだ。

 

「ダメだ、てったい、てった~い!!」

「こりゃかなわん……戦車を生身でひっくり返すなんて反則だぁ~!!」

 

 まだ動いていたトラックに気絶した十数名のヘルメット団を残りの人員が運び入れ撤退をし始める。戦車はここに放棄していくようだ。まあ、普通は動かせないよね、うん。

 

 セリカさんも必要以上の追撃をするつもりはないらしく、皆と一緒に見送る。

 

「状況終了、ですね。皆さん、お疲れさまでした。セリカちゃん、怪我はない?」

「うん、アヤネ。私は大丈夫よ。この通りぴんぴんして──」

 

 そう言うや否やふらっとセリカさんが倒れ、そのまま意識を失ってしまった

 

「セリカちゃん! ──良かった、気を失ってるだけみたいです」

「Flak41の対空砲を受けてピンピンしてる方がおかしいよ。休ませてあげよ~。座席に寝かせてあげるとしてー、ゆっくり帰ろっか。あ、そうだ」

 

 優しくセリカちゃんをバギーの後部座席に寝かせたホシノさんがこちらに歩いてくる。どうかしたのかな……? 

 

「せっかくだしこの重戦車一台貰っていこうか~。慰謝料がわりってことで」

 

 そうして逆さまに突き刺さっている戦車をポンポンと叩く。ほぼ無傷で鹵獲したからそれもいいのかな? 

 

「ん、なら私が運転する。大丈夫、マニュアルを見ればわかる」

「アビドスに戦車が……とはいってもこの人員では運用が……」

「最悪売っちゃえばいいと思いますよ~☆」

 

 皆で戦車をどうするか相談し始めた。とりあえず私は一番状態が良さそうな戦車をもう一度持ち上げてひっくり返し直し、走れる状態にしておく。

 

「ふんっ! よーし、上手く行きましたね」

「やっぱり力持ちですねえテウスちゃん。私も力には自信があったんですけど流石に負けちゃいそうです~☆」

 

 褒められてちょっとこそばゆい。少し照れ隠しに頬を掻いていると早速と言わんばかりにシロコさんが戦車のハッチを開けて乗り込み、エンジンをかけた。

 

「ん、多分動かせる。でも運用はちょっと難しいかも……ドローンのようにはいかない、残念」

「帰りの脚になるだけでも十分だよ~。それじゃ、帰ろっか~」

 

 そう言って戦車の上に座るホシノさん。どうやら戦車内には入らずそのまま上に乗っていくらしい。戦車内には武器をバギーの荷台に乗せたノノミさんとユメ先輩が乗り込んだ。後二人乗れるらしいが、狭そうだったので丁重にお断りして私は走って帰ることにしたのだった。

 

 

 なお、その夜先生とセリカさんが話し合いをしたらしく無事仲直りできたそうだ。めでたしめでたしである。

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