脳破壊なんてされない最強のナギサ様   作:shaf

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大変お待たせしました!!!
お読みいただく前に、お知らせが2つあります。
まず前話の一部分を書き直しています。ですので先に前話から読んでいただきますと幸いです。
次に、今回からの変更点としては、文章の視点変更、場面変更をわかりやすくするため罫線を付けました。それに伴い今まで投稿した小説の視点変更や場面変更の部分に罫線を付けます。
これからも応援してくださるとありがたいです。


平穏の崩壊

 

「……百合園セイア?」

 

 日が沈み、外は暗闇で染まっている時間。ごく一部のものしか知らない百合園セイアの秘密の部屋に訪れた者が一人。

 

「ああ、そうだよ。君を待っていたんだ。アリウス分校所属「白洲アズサ」」

「……待ってた?私を?」

「うん、夢でもこのシーンを見ていたからね」

 

 秘密の部屋に訪れた白洲アズサに対し、「夢で見ていた」と理解しがたいことを言うセイアにアズサは首を傾げる。

 

「何と説明するのがいいかな……まあ「予知夢」のようなだと思ってくれると良い。時々、そういう夢を見るんだ。後で現実になってしまう夢、それ以外にも色々な夢をね」

「……つまり、これから私が何をするのかも分かってる、と?」

「ああ、私のヘイローを壊しに来たんだろう?」

 

 セイアはあっさりと自身のヘイローを破壊する為に来た、と言ったが、その意味を理解しないものはこの世界に存在しないだろう。

 

「他にも仲間がいたようだけれど、君だけがここまで到達した。素晴らしい力だ、白洲アズサ」

「……分かってて、どうして逃げなかった?」

 

 当然の質問である。何故なら、ヘイローを破壊すると言うことは、死ぬという意味なのだから。それに抗わないセイアに疑問を投げる。

 

「……無意味だからさ」

 

 そう答えると、アズサは顔を強張らせる。

 

「「全ては虚しいものである」……アリウスの大好きな言葉だったね。同じことだ。未来が見える私にとって、足掻くことは無意味。「死」というものが、キヴォトスにおいて見えにくい概念であることは確かだ。それでもやはり私たちは生きているのだし、ともすれば「死」が隣り合わせでないなんてことはあり得ない」

 

 淡々とした態度で話していくセイア。

 

「「ヘイローを壊す」……つまり誰かが、私の死を願っている。そして君は、この秘密の部屋まで他の誰にも気づかれずに侵入してきた。ここまでのことが出来てしまうのだから、やはり足掻いても無駄さ……君の立場からだってそう思わないかい、白洲アズサ?」

 

 自身の死を受け入れているのか、それとも諦観しているのか。どちらかはわからないが、少なくとも自分がここに来た理由を知っているというのは事実であるとわかったアズサ。

 

「まあそれ以外にも理由がないわけではないが……ところで、君は以前にもヘイローを壊したことが?」

「…………ある」

「……おや?あるのかい?」

 

 アズサの答えに、先程まで無表情を貫いていたセイアが、心底驚いたような表情を見せる。

 

「ああ……10年前に、数多くの同胞の命を……この手で殺した」

「10年前……?」

「何十年も前から続くアリウスの内戦。そこに私は居た。そして……多くの人を殺した」

 

 そこまで話すと、アズサは腰に手を伸ばし何かを手に取りセイアに見せる。

 

「これは……ナイフ?」

 

 アズサが取り出したのは、全長30cmほどの、いわゆるコンバットナイフだった。

 

「……かつての仲間にこれを渡されて、多くの人を殺した」

「これで?それはあり得ない。この程度の物で私達のヘイローを破壊することは……」

「だが、実際に出来ていた。今の私たちのような年齢の者も、これで殺せた」

 

 セイアは珍しく、信じられないという表情を浮かべてしまう。

 

「それは……君以外の生徒も?」

「……ああ。戦っていた奴らも、私の仲間も。殺せていた。だが……7年前、内戦が終わってからは殺しあうことも無くなって、「生徒」が殺し合っていたなんて話を知っている者は、殆どいない。それこそ、内戦に参加していた生き残りくらいだろう」

「そうか……ではそのナイフで、私を?」

「……いや。さっきも言ったが、これを持っていることを知っているのは、ごく僅かの人間だけで、私の過去を知っている者も、ほとんどいない。だから、これを渡された」

 

 そう言うと、ナイフを仕舞って別の物を取り出す。

 

「この、特殊な爆弾。「ヘイロー破壊爆弾」を渡された」

「「ヘイロー破壊爆弾」……聞いたことない技術だが……なるほど。アリウスはそういう研究をしていると。「ヘイローを破壊する方法」、即ち「人を殺す方法」を」

「……ああ」

「そうか……アリウスはそこまで……」

 

 アズサの話を聞き、悲しみか、哀れみか、落胆か。そんな表情を浮かべるセイア。

 

「……白洲アズサ、一つ聞かせてほしい。君は「私」に何を求めている?」

「……」

「さっきも言ったろう?私は「予知夢」を見ることがあると。その夢で、君が「人殺し」になることを恐れる君の姿を見た。だが、君の話を聞く限り、君は既に「人殺し」だ。そして、「人殺しは人殺しである」。この明確で絶対的で、何よりも絶望的なまでに分かりやすい命題を、君が乗り越えたとも私は思えない。君もアリウスなら知らない筈が無い。「vanitas vanitatum」……この世界の真実を。しかし私は知っているんだ。君がこの言葉に同意しながらも、どこかで否定しているということも……そうだろう?その花を見つめながら、君はそう考えていた。「全ては虚しいもの」だ……しかし、それでも足掻かなければならない。これが君の根幹に根差すもの、君を現す心象……私にはよくわからなかったけれど。となると、君は……」

 

 例え話を長々と話してから本題を話すセイア。アズサは長くて殆ど聞いていなかったが、一区切りつき今から本題を話すのだろうと薄ら理解すると、手放しかけていた意識を戻す。

 

「……私を殺しに来たのではなく、私に助言を貰いに来たんじゃないのかい?君がこの先、どう足掻くべきなのかについて」

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

「……ん。朝か……」

 

 陽射しに照らされ、目を覚ます。なんだか、トリニティに来たばかりの頃の夢を見たような気がする。また()()()()()長話を聞く羽目になるとは思っていなかった……。

 

「…‥今は……7時半か……」

 

 時間を確認してベッドから身体を起こす。今日はエデン条約締結日で学校は休みだが、補習授業部のみんなと補習授業部卒業祝いを11時からする約束があるから、その準備をしないと。

 そう思いベッドから立ち上がると、ふと、部屋の隅に置いていた、かつての自分の武器。()()()()()()()()なんの変哲もないコンバットナイフが目に入った。

 ……平和な日々に、充実した衣食住、正しい教育。それに、かけがえのない友人や思い出……充分幸福だと言える。それなのに……ここに来てから、心にずっとモヤがかかっている。

 本当に自分は平和な生活をしていていいのかと。自分は罰せられるべきだというのに、こんな穏やかな時間を過ごしていいのか。自分は「人殺し」だと言うのに、「普通の人」達と過ごしていいのか。セイアの命を助けた、その一回限りの善行で、許されていいのか。

 そんな考えが、頭の中で走り続けている。

 

「……いいや、私は……平和な生活を送るために、戦ったんだ。だから、いいんだ」

 

 自身に暗示を掛けるように言う。自分は悪くないと。平和な生活を送っても良いのだと。

 だが、心のどこかで、それを良しとしない自分が居る。それでもそれを見ないフリをして、「普通」の生活をする。いつか、過去(人殺し)に追いつかれると分かっていながら。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 あれから約束の時間になり、私と補習授業部のみんなで集まり食事を摂っていたのだが……。

 

「……騒がしいな」

「今日はついに、あのエデン条約が締結される日ですからね!特別に学校も休日扱いですし、街も人でいっぱいです!」

 

 そう。ヒフミが言う通り、今日はエデン条約締結日。それ故に多くの人がいるのだが、それがかなり騒がしい。いや、賑わっていると言った方がいいか。これほど賑わっている状況に居るのはヒフミと先生で行った夏の海以来だ。

 ハナコとコハルがカーマだなんだと話していたが、いつもの言い争いだと感じ眺めていると、ふとヒフミから話しかけられる。

 

「あれ、アズサちゃん。もしかしてそのぬいぐるみ、ずっと持ち歩いてるんですか?」

 

 ヒフミが言っているのは、ヒフミから貰ったこのペロロ博士のぬいぐるみのことだろう。

 

「うん。大事な物だから、やっぱり持ち歩かないと」

「そ、そこまででしたか……いえ、ありがたいのですが!モモフレンズの世界は広いですし、せっかくなら他にも色々集めてみませんか?今度ぜひお店とかにも……」

「うん、楽しみにしてる」

 

 他ならぬヒフミからの頼みだ。断る理由は無い。

 私が当然のように頷くと、ヒフミは眩しい程の笑顔を浮かべる。

 

「はい、ぜひ!今度ペロロ様の冒険アニメも公開されることですし!」

「……アニメ?」

 

 アニメ……確か、テレビでやっている創作映像作品だったはずだ。アリウスにいた頃は一度も見たことがなかったし、ここに来てからも、そんな時間はなかった。

 

「はい!仲間たちと力を合わせて悪を打ち砕き、共に苦難を乗り越え、最後にはみんな笑顔で終わるというそのエンディングがすごい感動的だそうで……!」

「それ、だいぶネタバレじゃない?」

 

 コハルがそういうと、ヒフミは焦ったように「忘れてください!?」と言うと、ハナコがヒフミに話題を振る。

 

「ふふっ、ヒフミちゃんはそういったハッピーエンドが好きなんですか?」

「は、はい、そうですね。やっぱり普通過ぎますかね……?」

 

 ヒフミはいつもの気弱な表情で私達に聞いてくる。

 

「……悪いとは言わないけど、ちょっとありきたりじゃない?最終的にはみんなで仲良く大団円とか」

「……私も、ハッピーエンドはよく分からないな。頑張ったところで世界はそうそう変わらない、傷は無かったことにならない。それがこの世界の真実だから」

「あうぅ……みんなダーク寄りなんですね……私はそういうのはちょっと辛くって……やっぱりみんなで幸せになれるハッピーエンドが好きです」

「まあ、好みは人それぞれですからね。ちなみに私はヒロインが目を蕩けさせて、涎を垂らしながら許しを請うタイプのエンディングが好きです♡」

「ばっ、バカじゃないの!?そんなエンディングあるの!?」

「うーん……結構あると思いますが……」

 

 二人のいつものやり取りを眺めながら、ヒフミの言ってた"ハッピーエンド"について考える。

 ……私にはあまり理解は出来ない。さっきヒフミが言ってたアニメのように、私もアリウスの内戦で数多くの苦難を仲間と過ごした。だが結果で言えば、最終的には戦いを共にした仲間と殺し合い、袂を分かち離れ離れになった。その仲間の一部とは、この間再会したが。

 そもそも、私達が戦っていたのは善悪でもなかった。()が言うには、私達が戦っていたのは時代だった。アリウスの内戦が起きていた時代。そこで生きるために戦っていたのだと。それでも──

 

「……とはいえ、ヒフミが好きなら悪いものだとは思わない。それもそれで良いのだと思う」

 

 私にとって、ヒフミはこの世界の光だ。この世界で生きる、"普通の人"だ。なら、ヒフミの言うことは普通のこと、良いことなのだろうと、私は思う。

 

「アズサちゃーーーんっ!」

 

 私の考えを言うと、ヒフミは大きな声を上げて私に抱きついて来る。突然のことで驚いた。こういったコミュニケーションも、普通なのだろうか?

 ハナコは「あらあら♡」と温かい目を送ってきており、コハルは何故か顔を赤らめている。

 ヒフミに抱きつかれながら、私は今、平和を感じている。この日々が、ずっと続けばいいと思う。

 

 

 

 

 

 だけど、心の奥底で、何かが燻っていると感じていた。その正体はわからないが、良いものではないと感じ、心の奥底に閉じ込めたままにしておく。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「失礼します。ナギサ様、お時間です」

「……もうそんな時間でしたか」

 

 エデン条約締結日。

 調印式の時間になるまで自室でティータイムを嗜んでいた桐藤ナギサたったが、どうやら時間になったようで、秘書の猫山イヴが呼びにきた。

 ささっと支度を済ませ、イヴにエスコートされながら、特別な日に使用されるトリニティのティーパーティー専用車に向かう。

 

「……随分と嬉しそうですね。ナギサ様」

「おや、そう見えてしまいますか?」

「ええ、私から見れば、明らかに普段とは顔色が違いますので」

「そうですか……であれば、問題ありませんね。しかし、仕方ないでしょう?昔からの私の()()……その()()()が、これから始まるのですから」

 

 これから大勢の前に立つため、相好を崩さぬように尽くしているが、夢を語った時は、誰でも見てわかる程に微笑んでいた。

 

「……そうですね。私も、楽しみで仕方ありません。ですが、そろそろ着きますので、体裁を保つようにお努めください」

「勿論、わかっていますよ」

 

 そう話しているうちに、ティーパーティー専用車に着いた。

 そこには他のティーパーティー役員もおり、ナギサの姿が見えた役員達は、ナギサに対して「お待ちしておりました」と口を揃えて言う。

 イヴにエスコートされながら、専用車に乗り、古聖堂へと向かう。その途中で、ナギサは窓の景色を見ながら、これから起こることに思いを馳せる。

 自分の理想が、夢が、今から始まるのだと。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 そろそろ調印式が始まる時間。

 ふと外を見てみると、凄まじい速度で飛来する()()が見えた。

 

「……っ!?」

「あれ、アズサちゃん……?どこに行くんですか?」

「聞かなくても良いでしょ、トイレよ!」

「えっと、ですがトイレはあちらではなく……」

「……えっ?」

 

 急いで銃を背負い外に駆け出していく。

 後ろから何処に行くのかを聞く声が聞こえてくるが、構わず走り出す。

 レストランから出て街の広場に出る。空を見上げてみると、凄まじい速度で飛来してくる物がはっきり見えた。

 

 

ヒュオオオオオォォォン!!!

 

 

「今、何か変な音が……?」

「な、なに!?」

「何かが、飛んで……!?」

「きゃあああ!?」

 

 周りの生徒もけたたましい音が鳴っている飛来物──ミサイルに気付き、ざわつき始める。

 

「(……まだ、終わってなかった?)」

 

 ミカを利用してセイアとナギサのヘイローを破壊し、アリウスでトリニティを乗っ取る。そういう計画だと考えていた。だからもう終わりだと思っていた。だけど……

 

「(いや、これから始まる……?サオリ、まさか……!?)」

 

 

ドカアアァァァァァン!!!

 

 

 激しい爆発と音。そして、悲鳴が聞こえた。

 アリウスの思惑を止めなければならない。そう思って急いで着弾地点付近へ向かう。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁっ!?」

「こっち、こっちに怪我人が……!」

「けほっ、けほっ!だ、誰か……!」

 

 先程まで古聖堂があった場所は、ミサイルが直撃した結果、正に地獄と言える場所と化していた。

 

『緊急事態です!古聖堂が、正体不明の爆発で炎に包まれ……!これは一体……せっ、尖塔が崩れています!』

「……ナギちゃん?」

 

 トリニティの独房にあるテレビで中継を見ていた焦った表情でミカはそう溢す。

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁっ!!!」

「気をつけて!そっちは……!」

 

 別の場所では、ミサイルの余波によって数多くの建物が倒壊し、一部の建物には火が登っている。

 

「な、何ですか、これは……」

 

 爆発が起きたことで事態を確認するため、先ほどまでレストランに居た補習授業部の3人は外に出たが、あまりの光景に呆然としてしまう。

 

「あっ、アズサちゃんはどこに……!?」

「せ、先輩たちが……!?」

「コハルちゃん、ヒフミちゃん!待ってください!状況が把握出来るまで、動くのは得策ではありません!」

 

 ヒフミは大切な友人を、コハルは尊敬する先輩達の心配をし、安否の確認をするために駆け出そうとしたが、それをハナコが冷静に抑える。

 

「で、ですがアズサちゃんが……!」

「アズサちゃんも正義実現委員会も、少なくとも自分の身は守れます!今はそれよりバラバラに散らばることの方が危険です!」

「で、でも……!」

「ハナコちゃん、コハルちゃん……私たち、どうすれば……」

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「……い!」

 

 遠くから聞き慣れた声が聞こえる……。

 

「先生、目を覚ましてください!」

"アロナ……?"

 

 聞き慣れた声の正体はアロナだった。でもなんでアロナが?私は確かさっきまでエデンの条約の調印式のために、古聖堂にいたはずで……。

 

「先生、大丈夫ですか!?気を確かに……!」

"いったい何が……"

「古聖堂が爆破させられて……何とか先生を守ろうとしたのですが……」

 

 そんなことが……。

 状況を把握しかけた所でアロナが苦しそうな表情をしていることに気づいた。

 

「もう、これ以上は…………しっかり……力が……」

"アロナ……!?"

 

 大丈夫!?

 そう声をかけようとした所で、アロナの姿が見えなくなり、景色も崩壊している青空教室から炎と瓦礫に囲まれた場所になっていた。

 本当に爆破されたのだと認識していると、ふと視界に等身大の何かが見えた。それは、人とは思えず、まるで木の人形のようなものであった。

 

"(今のは……!)"

 

 見たことはないが、恐らくゲマトリアであろうと推測出来る見た目だった。

 

「……先生!」

 

 突然誰かから話しかけられる。 姿を確認すると、話しかけてきたのは爆破されるまで話していたヒナタだった。

 

「せ、先生……けほっ、こほっ……ご無事でしたか!」

"(身体が動かない……)"

「良かったです、辛うじて瓦礫の隙間に……待っててください、すぐに私が……!」

 

 ヒナタはそういうと、私の身体の上にある瓦礫を退けてくれた。凄い力だ……。

 

「これだけの力があることに、感謝します……先生、立てますか?」

 

 頷きながら身体を起こす。ヒナタに感謝しつつ、身体の状態を確認する。

 

「お怪我は……無さそうですね。あの爆発に巻き込まれてほとんど傷一つ無いだなんて、本当に奇跡のようです……」

「──先生!ご無事でしたか!」

「せ、先生……!」

「正義実現委員会のみなさん……!」

 

 別の場所から聞き覚えのある声が聞こえ、そちらを向くと、そこには怪我を負った正義実現委員会の姿があった。

 

"みんな、すごい怪我……"

「これくらい大したことはありません。ですが先ほどの爆発で、正義実現委員会のほとんどは戦闘不能になってしまいました。それに、ナギサさんやサクラコさん……それ以外にも多くの方が見当たらなくって……」

 

 ハスミはそこまで言うと、辺りを見渡す。

 

「……ゲヘナ側も、ほとんど見当たりませんね。これは一体どういう……」

「──っ!!」

 

 突然ツルギが驚いたように振り向く。するとそこには……。

 

「作戦地域に到着、正義実現委員会の残党を発見。……いや、訂正。残党じゃなく、正義実現委員会の真髄だ」

 

 マスクを着けているため、素顔の全貌は不明だけど、ロケットランチャーを持ち、周りにはガスマスクをつけた者たちがぞろぞろと揃っている。

 

「ツルギにハスミか……兵力をこっちに回して。これより交戦に入る」

「アリウス分校……!?」

 

 少し前に起きた事件。トリニティクーデター事件を起こしたミカに協力をしていたアリウス分校の姿が、そこにはあった。

 

「ど、どこからこれほどの兵力が……!?どうやって、周辺地域は全て警戒態勢だったのに……」

 

 ハスミはアリウスの兵力に驚く。一体どこにこれほどの生徒がいたと言うのか。

 そう思っていると、ヒナタ「まさか……」と溢してから話す。

 

「まさか、地下から……?古聖堂の地下にある、あのカタコンベから……!?」

「…………なるほど。つまりこの状況、あなたたちアリウスの仕業と考えて良いでしょうか?」

 

 目を瞑り、若干震えながら話すハスミ。まずい、明らかに冷静さを失ってる……!

 

「……許しません。その代償、今ここで……っ!」

「……ハスミ」

「……!」

 

 ハスミを落ち着かせようと声をかけようとしたが、その前にツルギがハスミに話しかける。

 

「落ち着け」

「……はい、そうですね。ありがとうございます、ツルギ。今は先生の安全が最優先……先生を連れてここから離脱します」

「あぁ……暴れるのは──」

「悪いがそうはいかない」

 

 

 ババン!!!

 

 

「っ!?」

 

 突然、言葉と共に銃声がなる。ツルギは素早く反応し、自身に撃たれたものと判断し避ける。銃声が鳴った方に振り向くと……。

 

"えっ……!?"

「ナギサさんの秘書の……猫山イヴさん!?」

 

 そう。ハスミの言う通り、そこにはナギサの秘書をしている筈のイヴが、手に持ったリボルバーをクルクルと回している姿があった。

 ヒナタは困惑しながらもイヴに問いかける。

 

「何故、どうして私たちに攻撃を!?」

「何故もどうしても、私がアリウスから送られたスパイだからに決まっているだろう」

"……っ!?"

「なっ……!?」

「そんな……!?」

「っ!?」

 

 そんな……!?イヴが、アリウス分校から送られてきたスパイ……!?

 

「剣先ツルギ……貴様の相手は私がしてやろう」

「……」

 

 未だに手に持っているリボルバーをクルクルと遊んでいるイヴを、黙って見据えているツルギ。でも、いくら手負いと言っても、イヴがツルギに勝てるとは思えない。

 

「まずいですね……まさか"あの"イヴさんが敵に回るとは……!」

"……イヴってそんなに強いの?"

「イヴさんはナギサさんの秘書をやっていなければ、私たち正義実現委員会にスカウトしたいほどの逸材です。その実力は"リボルバー"の異名で知られるほどです」

 

 リボルバー……。確かに、よく見てみると小銃を持っている様子が無い。

 

「その通り。そしてこれは世界で最も高貴な銃。シングル・アクション・アーミーだ!」

 

 リボルバーの弾を排莢し、装填しながら言い放つイヴ。その姿は自信に満ち溢れている。

 

「6発だ」

"?……6発?"

「これまで6発以上を受けて立っていられたものは居ない。私が何故リボルバーと呼ばれているのか……その身にじっくり味わせてやる」

 

 弾を装填した後も慣れた手つきでクルクルとガンプレイで戻す。

 かっこいい……!けど今はそう思ってる場合じゃない。イヴは完全に敵に回ったと見て良いだろう。

 

「ツルギ、イヴさんの相手は任せました!」

「……ああ」

「準備は出来たな?」

 

 ツルギの正面まで歩き、いつでも銃を抜けるように構えるイヴ。

 まるで西部劇のようで、思わずワクワクしてしまうが、そんな場合ではない。でもワクワクする。

 

「……っ!」

「──行くぞっ!!!」




お読みいただきありがとうございます。
次はなるべく早く投稿したいですが、気力が続いたら出ます。
応援してくれてる方が結構居ますし、どういう話にしたいかも決まってるので、以前にも言った通りエタる気はないです。気長にお待ちいただけると幸いです。
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