脳破壊なんてされない最強のナギサ様   作:shaf

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筆が乗り早めに出せました。
今回から本作アズサの過去を深掘りしていきます。
後、サンダウナーはMGRのキャラというより名前だけ借りたオリキャラのようなものと個人的には思ってます。


殺意の行方

──10年前

 

 陽が沈みかけ、夕暮れがアリウス分校の校舎──ではなく兵舎に差し掛っていた。その兵舎の廊下を、中学生程度には成長している青髪の生徒と、未だ幼いと言える年頃の白髪の生徒が歩いていた。

 先行していた青髪の生徒は、一つの無機質な部屋で止まると、そこの扉をノックする。

 

「あいあい、今開けるよ〜」

 

 ノックした部屋から、そんな呑気な返事が返ってくる。扉が開くと、そこから白髪の生徒と同程度の年頃の黒髪の子供の生徒が出てくる。

 

「ん?指揮官か……珍しいな、わざわざ俺の部屋に来るとは。用件……は、その後ろのガキか?」

 

 黒髪の生徒は後ろに居る白髪の生徒を指差しながら問いかける。

 

「ああ、新入りだ。新入りの同年代の中では最も優秀だった。この年頃の隊長を務めているのはお前だからな。世話をお前に任せたい」

 

 青髪の生徒、もとい指揮官と呼ばれた生徒は、黒髪の生徒に対し無愛想に話す。

 

「了解。世話を任せるってことは、こいつはここで俺とルームシェアってことか?」

「ああ。それと、こいつには何も教えてない。何処になんの施設があるかも教えておけ」

 

 黒髪の生徒は「わかった」と言うと、指揮官は連れてきた白髪の生徒を部屋に置いて去る。黒髪の生徒はそれを見送ると、ベッドに腰掛け、ニヤニヤしながら部屋に居る白髪の生徒に話しかける。

 

「……さて、まずはお前の呼び名を決めようか」

「呼び名?私にはちゃんと名前がある。()()()()()。これが私の名前だ」

「そうか。覚えてはおこう。だが、そもそもここに来た奴らにはコードネームをつける決まりがある。たまに居るからな、本名が同じ奴。それを識別するために付けるんだ」

「……わかった。ならお前が決めてくれ」

「おいおい、無愛想なやっちゃのう〜!なんか希望はないんか?ん〜?」

「特にない。それと、少し鬱陶しい」

 

 ベッドから降りてアズサの首に手を回し、顎のあたりに指をちょいちょいと煽る。

 アズサは鬱陶しさを感じ、それを顔に出すと「んんっ!」と咳払いをしてから黒髪の生徒が離れる。

 

「悪かった。少し気分が上がってた。良いだろう!俺が決めてやる。……だけど命名苦手なんだよなあ〜……ん〜……」

 

 自身の顎に手を当ててうんうんと唸る黒髪の生徒。それから程なくして「よし!」と勢いよく手を振って語る。

 

「じゃあ、ジャックにしようか!今のところここには居なかったはずだからな。今日からお前は()()()()だ!」

「ジャック……わかった」

 

 アズサが了承を口にすると、名前を決めた黒髪の生徒が微妙な顔をして頭を掻きながら話しかける。

 

「……あ〜、いいのか?自分で言っといてなんだが、"ジャック"っていうとちょっと女には合わん名前だろ」

「?……識別するために付けるんだろう?ならどんなものでも構わない」

 

 さも当然というような、何故そんなことを聞くのかがわからないというような態度で答えるアズサに、苦笑を浮かべる黒髪の生徒。

 

「そうか、結構あっさりしてるなお前。いや、常識が無いのか……?まあいい。じゃあ、一先ずここにある施設を一通り見て回るとしようか。ああそれと、暫くは俺と共に行動すること。単独行動は俺が許可を出すまで許さん」

「わかった」

「……っと、そうだ。俺まだ名前言ってなかったな」

 

 部屋の扉に向かう所で、自己紹介をし忘れたことを思い出し立ち止まり、アズサに歩み寄り手を伸ばす。

 

「俺の名前は()()()()()()だ。これからよろしくな、ジャック」

 

 

 

 

 

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──現代

 

 先生とハスミ、ヒナタは撤退し、それをミサキと他のアリウス生が追いかけていた。古聖堂跡にはイヴとツルギが残っていた。

 

「まずは小手調べといこうか?」

「ッ!」

 

 戦いが始まると、まずイヴはツルギの眼に向けてリボルバーを1発撃つが、当然ツルギは避けてから距離を詰める。だが、イヴはその避けた隙を逃さず、距離を詰めようとしたツルギに眼と傷口に1発ずつ撃ち距離を詰められないように牽制する。

 

「キエェェェェェ!!!」

「流石に駄目か……」

 

 だがツルギは眼の銃弾だけ避け、傷口への銃弾は避けずに距離を思いっきり詰め、イヴ目掛けて自身のショットガンを放つ。

 

「キエェァァァ!!!」

「んぬぅ!」

 

 間一髪のところで避け、転がりながらツルギの傷口にリボルバーを1発撃つが、ツルギはそれを回避する。

 

「全く、戦車のようだな貴様は!」

「キエェェェェェェェ!!!」

「何故奇声を発しながら突撃してくるんだか!」

 

 悪態をつきながらもイヴは傷口目掛けて2発発砲するが、それを難なく距離を詰めながら避けるツルギ。

 それに対しイヴは距離を取りながらリロードをしてリロードし終えた直後に6発全てをツルギに向けて撃つ。流石に6発は厳しいのか、足を止めて回避するツルギ。

 

「(……知ってはいたが、凄まじい速度のリロードに射撃……リボルバーの異名も納得がいく)」

「フフン。流石はトリニティ最強。一筋縄ではいかないか……」

 

 愉快そうに笑うイヴ。それを黙って見据えるツルギ。互いに様子を見る状況になった。

 だがすぐさまその状況は崩れ去る。

 

「だが……遊びは終わりだ。そろそろ本気でいこうか──ん?」

「っ!」

 

 イヴが何かを感じ取ったのか、先生達が撤退した方を向くと同時に、チャンスと言わんばかりにツルギが駆け出すが、振り向きもせずリボルバーを6連射するイヴ。その全てが正確にツルギの傷口に放たれている。

 

「チッ……」

「……まあ、隙を見せた私が悪いか。それにしても随分と早かったな。ここからが面白くなるところなのだが……」

 

 何の話だ──そう口を開きかけたツルギだが、イヴがガンスピンを披露しながらホルスターに収めるのを見て、開きかけた口を閉じ、代わりに疑問符を浮かべる。

 

「?」

「残念だが、貴様との勝負はここで終わりだ。アリウスとしての任務はここで終わりにさせてもらう」

 

 イヴは両手を上げ降参のポーズをする。ますます意味がわからない。

 とはいえ、イヴが敵であるということは現状変わっていない。その為、少しでも情報を聞き出そうとツルギはイヴに問いかける。

 

「……何が目的だ」

「私の主が待っているのでな。ここらで辞めにさせてもらいたい」

「……主とは誰のことだ」

「そんなことより、さっさと先生の元に向かった方がいいんじゃないか?」

 

 話をはぐらかすイヴだが、言っていることは正しくもある。

 時間をかけてイヴの銃弾が切れるのを待てば勝てるかもしれないが、ツルギにとって今重要なのは、イヴと戦うということではない。先生を安全な場所まで連れて行くことである。

 イヴは背を向けて何処かへと去っていく。それを見てツルギも先生の元へ走って向かう。

 そして、何処へと向かいながらイヴが呟く。

 

「……深手を負っていてくれて助かったな」

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 先生が撃たれたのが見えた。

 私は足を更に速める。先生を乗せた救急車と入れ違いになる。

 

「…………」

「……ここでお前が出てくるのか」

「まさか姿を現すとはね……そのまま逃げ出しても良かったのに」

「えへへ、お久しぶりですね……」

 

 息を切らしながら先生を撃った者達の前に出て睨みつける。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「……どうだ、アズサ」

 

 先生を撃った者──アリウススクワッドのサオリが、私に話しかけてくる。

 

「どうして、どうして……」

「私の言ったとおりだっただろう。トリニティにも、シャーレにも、お前の居場所は無い」

 

 サオリは一拍置いて、目を瞑って続ける。

 

「私たちみたいな「人殺し」を受け入れてくれる場所なんて、この世界には無いんだよ」

 

 ──内戦を経験していない癖に、随分と達者な事を言うじゃないか……

 

 内心でそう思い、口にも出かかるが直前で止める。

 彼女たちは私の過去を、内戦に参加していたことを知らない。だから言っても意味がない。それに、私が内戦を経験しているなんて、知る必要は無い。

 それよりも、聞くべきことがある。

 

「どうして、先生を……!」

「そんな場所があるように見えても、全ては儚く消える……あの「先生」のようにな。……全ては無駄だ。それなのにどうして足掻くんだ。アズサ」

 

サオリいぃぃぃぃっ!!!

 

 何も聞きたくない。その一心で叫びながら何も考えずに突撃する。

 

「まだ甘い夢に酔っているのか……仕方ない、手伝ってやろう」

 

 

来い

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

──9年前

 

「サンダウナー、一つ聞きたいことがある」

「ん〜?なんだ?」

 

 ベッドで寝転がってだらけている奴に質問を投げる。

 

「お前は何故戦っているんだ?」

 

 私がそう言うと、サンダウナーは一瞬動きを止める。そして、横にしていた身体を起こして、真面目な顔をしてこちらを見据えた。

 ──ああ、これはまた何かを考えられそうだ。

 まだ1年の付き合いしか無いが、殆ど一緒に居た為こいつのことはそこそこわかる。大半はふざけたことを言ったりしてるこいつだが、この顔をするときは、少し話が長くてややこしくなる。だけど、その話には必ず道理があって、私に意味のある話をするときだ。

 

「そういうお前は、なぜ戦う?」

 

 奴から逆に質問をされた。これは言わないと話が進まないパターンだろう。

 

「……私は生きるために戦う」

「なら、生きて何をする?」

「生きて……何をする?」

 

 思わず繰り返す。

 

「ああ。お前はこの戦いで生きて、何をする?」

「それは……」

 

 奴の問いに、答えることが出来ない。私はただ生きたいが為に戦ってきた。生きて何をしたいかなんて、考えたこともない。

 

「言えないか?まあそうだろうな。生きるために戦うなんて馬鹿げた事を言う奴の大半は「生きて何をするか」を考えない。ただ漠然と生きるために何かをする」

 

 サンダウナーの発言に思わずムッとしてしまう。少し不機嫌になりながら、私は催促する。

 

「……なら、お前は何のために戦うんだ?」

「色々ある。だが主に上げるなら二つ。戦いで得られる快楽に酔いしれる為。誰かの為になるから」

 

 サンダウナーはそこまで言うと立ち上がり辺りをふらふらと歩きながら話す。

 奴の癖が出てきた。いよいよ長くなりそうだ。

 

「いいか?俺たちは常に何かを犠牲にして何かを得ている。動物の命を犠牲に栄養を得る。時間を犠牲に睡眠を得る。他人の幸福を犠牲に自身の幸福を得る。これはどの世界でもそうだ。生き物が生き物である限りこれは変わらん」

 

 予想してた通りだ。

 

「……何の話だ。またいつもの長例え話か?」

「お前もこの例に漏れないということだ。お前も何かを犠牲に何かを得ている。他者の幸福を踏み躙り自身の幸福を得ようとしている。お前が今まで殺してきた奴らは皆、まだ生きたいと願っていただろう──だがそれでもお前は殺してきた自らの幸福のためにな」

 

 身振り手振りを使いながら、口早に言うサンダウナー。これも奴の癖だ。

 

「俺もそうだ。誰かの幸福を踏み躙って今を生きている。俺はそれを許容している、それが当然だと思っているからな。お前はどうだ?何故他人の人生を、幸福を踏み躙ってまで生きる?」

 

 私に指を指しながら言う。というか──

 

「……それ、確か入隊試験の際にも言ってた気がするんだが」

「ああ言った、だがあの時とは聞きたいことが違う。俺が聞きたいのは──ジャック。お前は何をするために生きる?」

「何を……するために」

 

 他人の命を奪ってまで生きて、何をするか。何を成すか。

 奴はそれを問うているのだろう。だが、私は逆にそれを奴に問う。

 

「なら、お前はどうなんだ?何故生きる?」

「楽しいことをしたいからだ」

 

 私がそう聞けば、すぐに返事が返ってきた。あっけらかんと、あっさりとそう言った。「楽しいことをしたいから」と。

 

「……人を殺して、楽しいのか?」

「そうじゃない。人を殺すのは単なる弱肉強食、俺たちが"今"を生きるためにやっていることだ。まあ勿論殺し合いにも楽しさはある。だがそれは別の話だ。今話してるのは、俺が生きる理由だ。──楽しいことをしたいから生きる。誰かと楽しい遊びをして笑い合う。そういう単純な事がしたいから生きる。わかったか?」

 

 ……つまり、必要が無いなら人は殺さなくても良いということか。なら──

 

「楽しいことがしたいだけなら、戦う必要はないんじゃないのか?」

「世の中人を殺すことを是としない者が大半だ。だが俺のように人を殺すことを是とする者がいる。だから、戦争というのは俺のような奴がするべきことだ。俺のように、殺し合いを楽しめる奴がな」

 

 全く持ってその通りだと思った。

 でもこいつの言ってることは理想論だ。だがそれはこいつも理解はしてるだろう。

 

「……戦いを楽しめるから、戦うということか?」

「まっそういうことだな。で?お前は?俺の答えで何か得れたか?」

 

 ……正直、まだわからない。殺して、生きて、何をするのか。

 そう思い悩んで顔を俯かせていると、サンダウナーが私が座っていたベッドに座ってきて、優しい笑みで話しかけてくる。

 

「まあ、そんな深く考える必要なんて実は無いんだけどな」

「えっ?」

 

 ここまで話を広げておいて、深く考える必要がない?

 

「適当に生きてりゃ人生なんとかなるもんなんだよ。どっかで大切な物が見つかって、どっかで譲れない何かが出来て。そうやって人生ってのは出来てくもんだ」

 

 私の頭を撫でながら、語る。

 

「とりあえず生きとけ。そんで、今を楽しめ。未来なんて誰にもわかんねぇんだから、とりあえず周りと楽しくやるんだよ」

「…………」

 

 ──こいつは、いつもそうだ。

 私達と1〜2歳程度しか違わないというのに、大人のような事を言う。まるで親のようだと言う奴もいれば、先生のようだと言う奴もいる。

 

「……お前も、そうやって生きてるのか?」

「当たり前だろ。深く考える必要はない。人間なんてどうせいつか死ぬんだ。今を楽しむのが俺たちの生きる意味だと、俺は思ってる」

「……今を、楽しむ、か」

 

 真っ直ぐとした目で、私を見つめてくる。

 

「まあ、俺の考えはこんなとこだ。後は自分で考えろ。──最後に一つ。後悔なんていくらでもしろ。最終的に笑えたなら、それは勝ちなんだよ」

 

 右手をぶらぶらとさせながら部屋を出ていくサンダウナー。時間的に恐らく風呂でも入りに行ったのだろうが、こういった話をした後、基本的に奴は私を一人にしてくれる。

 

「後悔なんていくらでもしろ、最終的に笑えたら勝ち、か……」

 

 ──私が心から笑える日は、来るのだろうか。

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

──現代

 

「端末では……ここら辺だな。ドローンや記録媒体のような物も確認出来ない……人の気配もない……よし」

 

 端末に写っている赤い点を目印に、古聖堂跡地で何かを探すイヴ。

 どうやら目標を見つけたようだが、周辺にあるのは瓦礫だけで、何か物があるようにも見えず、人の影もなかった。

 イヴが手に持っていた端末を操作する。

 

ドゴォォォォォン!!!

 

 すると、突然一部の瓦礫の山が弾け飛ぶ。

 瓦礫が弾け飛んだ地点に行くと、服と身体がボロボロになっている、ティーパーティーの生徒会長の一人、()()()()()だった。

 

「──ふぅ。やっと出れました。狭くて暗い最悪な環境でしたよ」

 

 腕や肩をゴリゴリと音を鳴らしながら動かすナギサ。

 何らかの爆弾で出たのかと思いきや、どうやら自身の膂力で出たらしい。

 

「お待たせして申し訳ありません。ナギサ様」

 

 先程までトリニティの武力担当である正義実現委員会の委員長と戦っていたイヴは、トリニティのティーパーティーの生徒会長の一人であるナギサに謝罪をする。

 

「構いません。それより、古聖堂倒壊からどれほど経ちました?」

「大体30分程は経過したかと」

「トリニティの状況は?」

「アリウスの存在を確認出来ておらず、混乱状態です。更に、パテル分派の者は今にもゲヘナと戦争を始めそうになっています」

 

 うんうんと満足そうな表情で頷くナギサ。

 

「順調のようですね。もう少し経ったらトリニティに向かい、()()を実行します」

「お待ちください。二点ほどお伝えしておいた方が良い情報がございます」

「?なんでしょう」

「「シャーレ」の先生が、先程撃たれたとの情報が入りました」

 

 イヴから聞いた情報に、ナギサは顔を顰める。

 

「ふぅむ…………少し展開が早く動くかもしれませんね。あの方を慕っている方は数多く存在しますから、トリニティの混乱が更に加速しそうですね」

 

 だが、ナギサは先生に対し、心配の声は上げず、寧ろ自身の計画が大きく変わる可能性を考える。

 

「いかがなさいますか?」

「……先生を監視するよう部隊員に伝えるように。先生が目覚めたら、計画を実行します。それで、もう一つは?」

「白洲アズサがアリウススクワッドと接触しました」

「……となると、サンダウナーもそろそろ動くということですか」

「恐らくは」

 

 顎に手を当て考えるナギサ。

 サンダウナーが言うには、白洲アズサは私達の計画の一番の障害になり得るものであり、私達の一番の戦力になる可能性がある者と評していた。

 前者は何ら問題ないと考えている。それほどまでに自身の計画は完璧であるという自負があった。故に、必然的にナギサは後者を得れると考えサンダウナーにあの()の開発を許可したのだ。

 考えが纏まったのか、ナギサはイヴに話しかける。

 

「サンダウナーに連絡を。アズサさん──ジャック・ザ・リッパーに接触する際は連絡をするように伝えてください。私はそれまで身を隠しています」

「畏まりました。では安全な場所まで案内いたします」

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

「……」

「あ、あぁ……い、痛そうですねぇ……」

 

 何も考えず、アリウススクワッドにただ我武者羅に突っ込んだ結果、当然の如く私は大した抵抗も出来ず膝をつく形になった。

 

「……相変わらず未熟だ。何も考えず突撃とは、正気かアズサ?」

 

 それはこっちの台詞だ……!

 そう声に出そうとしたが、力が出ずに出せなかった。

 

「お前の特技はゲリラ戦、その中で相手の隙を突くことだ。それは自覚しているだろうに、私と正面と戦って勝てると思ったのか?」

 

 ……確かに私の特技はゲリラ戦だが、最も得意としているのは、そんな生優しい物じゃない……知った風な口を聞くな……!

 

「ぐっ、うぅっ……!サオリ……この状況、何が目的だ……!」

 

 拳を握り、力を振り絞って何とか情報を聞き出そうとする。

 

「……ミサキ、残りの時間は?」

「あと5分ぐらい。そろそろ状況を把握して、両学園の予備兵力が到達する頃だと思う」

「十分だな……起こせ」

 

 サオリがそう命令すると、ミサキとアツコが私の腕を掴み起こす。

 

「お前がわざわざ来てくれて、手間が省けた」

「……」

「お前の裏切りによって、多少計画にズレは生じたが……まあ誤差の範疇だ」

 

 遠回しに、私のやった事は無意味だと伝えていると感じた。

 

「本来ならこの場に来るのは、ミカだと読んでいた。しかしあのバカはもう使えない。となると危険分子はナギサだったが、幸いにも何の疑いも無く調印式に参加した。シスターフッドまで一気に処理できたことは、まあ予想外の成果だったな」

 

 淡々と告げるサオリ。

 

「……何が起きているのか、教えてやろう。私たちは、「エデン条約」を奪い去った」

「……」

 

 奪い去った……?

 

「条約が締結される古聖堂に巡航ミサイルをねじ込み、邪魔者たちを片付けた。そして条約の内容を捻じ曲げたのさ」

 

 何を言ってるんだ……?

 元からおかしな頭が、更におかしくなったのか?

 

「「理解できない」、という顔だな」

「……アズサ、忘れた?私たちには「トリニティ」としての資格がある」

「……」

「この条約は「第一回公会議」の再現。あの時までは各派閥がそれぞれ権力を持っていた。そして公会議当日、全ての派閥が集まって新たなトリニティとなった……ただし、私たち「アリウス」を除いて」

 

 第一回公会議……確か、トリニティが出来た理由、だったか?

 

「だから私たちは何も変わっていない。まだ形式としては、権限を持っている。「トリニティとゲヘナの間で紛争が起きた時、「エデン条約機構」がそこに介入し、紛争を解決する」……」

 

 不味い、何を言ってるのか全くわからない。そもそもエデン条約機構というのはなんだ?初めて聞いたぞ。

 

「これがエデン条約。ただそこに、「エデン条約機構はアリウススクワッドが担う」と書き添えた。ただそれだけ」

「そ、それだけでは大して、意味がないように思えますが……戒律は本物なので、複製(ミメシス)出来れば……」

 

 ヒヨリがそこまで言うと、ガスマスクにシスター服を着た………………凄い角度のハイレグ着てるんだが、これは正常なのか?

 

「「ユスティナ聖徒会」。戒律の守護者にして、トリニティの伝統的な武力集団。正確にはその複製(ミメシス)だが、戒律を守護する存在だ。すなわち、私たち「ETO」を助けることになる」

 

 話入ってこないんだが。

 この服装で守護者はちょっとやばいんじゃないか?本当に武力集団なのか?相手を誘惑するとかそういうのが目的だと思うんだが、それが伝統は不味いんじゃないか?

 

「トリニティとゲヘナの敵対行為は、神聖なる戒律への違反行為。つまり紛争の原因であり、鎮圧対象だ」

 

 不味い、あんまり聞いてなかったから核心をつけるような事が言えない。

 これも全てサンダウナーのせいだ!あいつがいつもこういう細かい部分に突っ込むから、部隊の者は大体あいつのノリに感染してこういうちょっと疑問に思う部分を深掘りしすぎて重要な話を聞かないことが多々あった。今もそれが続いているとは……!くそっ!

 とにかくそれっぽいことを言わなければ、またよくわからない話をされる。奴も言っていた。こういう時は見栄を張るのが大事だと。

 

「……ようやく理解した」

 

 本当はそんなに理解していないが。話を聞く限りこんな感じだろう。

 

「この襲撃は単に各学園の首脳部を狙った物でもなければ、事態を混乱させるためのものでもない。エデン条約の……書き換え。それによって、あの不可思議な兵力を確保することが目的だったのか……」

「(スッ、ススッ、スッー)」

 

 アツコが腕を動かしている。何をやってるんだコイツ?

 恐らく手話なんだろうが、私は手話等勉強したこともなければやったこともないからよくわからない。

 何を伝えているのかは不明だが、こういう時もとりあえず見栄を張る。

 

「……アツコ、それは出来ない」

「やめておけ、姫。今は無駄だ。あいつの意地を折るのはそう簡単じゃない……前々からそうだろう?」

 

 どうやら今の受け答えで良かったらしい。

 

「……その意地を、思いを、すぐ傍で煽る存在がいたんだろうな。この世界の真実を隠し、事実を歪めて、嘘を教える……そんな悪い大人が。まあ、その先生も既に片付けた。だから後はもうゆっくり教え直せば良い」

「……っ!!」

 

 私は思わず驚く。

 コイツ……勘違いしてる!

 この意地は生まれ持ってのものだし、この思いを煽り続けてきたのは今も昔も()だ。

 私の人生の(先生)は、間違いなく──サンダウナーだ。

 後、私はコイツから何かを教わったことは殆どない。だって興味が無かった。同じことを繰り返してて正直つまらなくて聞き流していた。

 

「……トリニティでは楽しそうだったな。あの生活は楽しかったか?好きな人たちと一緒にいること、お前を理解してくれる人たちと一緒にいることは」

 

 サオリの話を聞きながら、ぼんやりと思う。

 ──ここで「はい!楽しかったです!」って言ったらどうなるのかな……

 

「……虚しいな」

 

 出たよいつもの決まり文句。何回も聞いた。

 

「思い出せ。お前を理解して受け入れてくれるのは、私たちだけだ。ここがお前の居場所だ」

 

 内戦を知らないくせにいけしゃあしゃあと……。

 

「お前はその真実から目を逸らし、甘い嘘に目がくらんだ。そしてその弱さが、お前をこうして敗北させている」

 

 ……確かに、私は真実から目を逸らしている。

 

「……私たちを止めたいか?ならば私のヘイローを破壊してみろ、白洲アズサ」

「……っ!」

 

 ヘイローを破壊する……人を殺す……過去に何度もやってきた。だが……辞めたことだ。

 

「条約の主体である私たちが存在する限り、この戒律は永続していくだろう。ヘイローを壊しでもしない限りはな」

 

 ……()るしかないのか。

 

「今のお前に足りないのは殺意だ……しかし、お前にそんなことができるか?あのセイアの任務からも逃げたお前が」

「……っ!!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、身体が震えた。

 ──今の私に足りないものが……殺意?

 思えば、私はいつ殺意を失った?

 思えば、私は何故人殺しを辞めた?

 

「私たちを騙そうとしてま──」

 

 サオリが何か喋っている。だが聞こえない。

 私はどうして人を殺すのが怖くなった?

 私は──いつから、どうして()から逃げた?

 

 

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

「っ!?」

 

 突然の轟音でハッとなる。

 拘束が解け、急いで大切なぬいぐるみを拾いサオリ達の元から去る。

 

「また逃げる気か、アズサ!!!」

 

 後ろからサオリの声が聞こえるが、無視して走る。

 その最中も、先程の思考が脳をよぎり続ける。

 ──自分は、何故サンダウナーに恐怖を覚えたのだったか。




MGS2の無線の雷電がこんな感じだったし、そりゃアズサもこんな感じになるよ。
イヴvsツルギからのアズサの間の展開としては、ツルギ合流からヒナに受け渡しって感じで殆ど原作と一緒。なので端折ってます。
後、今更ながらログインしてない方でも感想書けるようにしました。ハーメルンエアプなのでそういう設定あるの知らんかったです。
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