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ナギサ様からお話から召集を受けてから2日が経ち、私は先日と同じ夜にティーパーティーテラスへと向かった。
「…来てくださりありがとうございます。ツルギさん、サクラコさん」
「まぁ、あのような話を聞いては、来ないわけには行きませんから」
ナギサ様は紅茶を一口含んだ後、私に視線を向けて話す。
「…では、早速、先日の答えをお聞きしても?」
「…その前に、一つ、質問したいことがあります」
「答えられるかはわかりませんが、どうぞ」
「何故、我々に協力を?こういった問題に我々が介入するのは、問題が起こるのではないでしょうか。組織のリーダーが目の前にいる状態で、こう言ってはあれですが、シスターフッドはティーパーティーに目の敵にされています。ティーパーティーの生徒会長、それも、代理とはいえ現ホストがシスターフッドを頼った、という話が露見してしまえば、ナギサ様のティーパーティー内での立場が危うくなるのでは?」
私がそう問いかけると、ナギサ様は頷きながら、私の質問に答える。
「良い質問、と言えます。……私はこのトリニティを変えたいと思っているんです」
「?…トリニティを変えたい?どのようにでしょうか」
サクラコがナギサ様に聞くと、ナギサ様は紅茶を飲み、一拍置いてから話初める。
「今のトリニティは、他者に対し疑いの目を向け、相手の弱みを握り、誰かを蹴落とそうと考えている方ばかりで、互いに手を取り合おうとする意識がありません。勿論、そうでない生徒もいますが、大多数は、そのような生徒です。それは、学園としての正しい形なのでしょうか?私はそうは思いません。…私は、このトリニティを、派閥など関係なく、あらゆる生徒が、互いに手を取り合い、協力し、一致団結して、この学園をより良いものにしようと動く。そんな場所に変えたいと、私は思っています。今回お二人に協力をお願いしたのは、このトリニティを変える第一歩になればと思ってのことです」
ナギサ様が真っ直ぐな目をして私たちにそう話す。嘘などではなく、本心でそう思っているようだ。正直、ナギサ様がこのような考えを持っていたことに驚きを隠せない。私はその話を聞き、ナギサ様に自身の考えを話す。
「…正直、ナギサ様が言った裏切り者の話は、まだ信じきれてはいません。ですが…ナギサ様のことは、信じてみようと思います」
「…ありがとうございます。ツルギさん。…サクラコさんは、どうお考えですか?」
ナギサ様は私に感謝を述べると、サクラコの方に話を振る。
「私も、答える前に一つ質問をしてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「私たちに協力を、といいましたが、具体的には何をすれば?」
「協力、といっても大してしてもらうことはありません。ただ、お二人には今起きている事態を知ってもらっておいてほしかった、と言ったところでしょうか。協力の内容で言えば、裏切り者とそのバックが動き出した際に、武力を貸してもらいたい。といったところでしょうか。事前に知ってると知らないとでは、連絡を入れた際に動き出せる速さが変わりますし、理由の説明も詳しくする必要もありませんから」
サクラコはナギサ様の話を聞くと、顎に手を当て少し考えてから口を開いた。
「…わかりました。ナギサさんの話を信じましょう」
「…ありがとうございます。サクラコさん」
ナギサ様はほっとしたような表情をし、紅茶を少し飲み話をする。
「では、これから何をするかを、お二人に説明します。…まず、私は裏切り者候補の白洲アズサさんを…懐柔しようと考えています」
「はい?懐柔?どうやってですか?」
「ええ。彼女がどこからか送られてきたスパイだとするならば…もし、この学校を退学してしまう、なんて事があれば、その学校に逆戻りしてしまいます。スパイなら、そんな事態は避けたいでしょう。ですので、彼女を退学するように仕向けます。私が知ってる中で、今期の生徒に、落第寸前の生徒が3名ほど居ますので、彼女たちと共に手を取り合わせ、退学しないように協力すれば、彼女たちとの間に深い絆が生まれ、こちらに協力してくれるようになるかもしれません。仮にしてくれなくても、退学させてここから去ってもらえばいい話ですから」
「…退学には様々な手続きが必要なのでは?」
私の質問に、ナギサ様が答える。
「シャーレの先生に協力してもらいます。シャーレの超法規的権限を使えば、様々な手続きを無視して退学させることが出来るでしょう」
「そんな上手くいくのでしょうか?それに、その先生とやらは、信頼出来る方なのですか?」
「SNSでの評判はかなり良いものですよ。まぁ内容は猫探しや街の掃除、宅配便の配達などのものが多いですが、生徒の悩みに真摯に付き合っているという意見が数多くあります。信頼は出来るかと」
「…私も、先生とはお会いしたことがありますが、先生は信頼にたる人物だと感じています」
私がそういうと、サクラコは難しい顔をして「ですが」と話す。
「これはトリニティの問題です。部外者であるシャーレを招くのは流石に反対せざるを得ません」
「トリニティ内部だけで解決する問題ではないから招くのですよ」
ナギサ様がそういうと、ナギサ様とサクラコが睨み合う。そして、サクラコが「はぁ」とため息をつく。
「…わかりました。そこまで言うのであれば、従います。…それで、その落第寸前の生徒というのは?」
「イヴ」
「はい。こちらが、落第寸前の生徒三名の名簿になります」
今まで沈黙しナギサ様の後ろに控えていた生徒が、三つの名簿を取り出し、話を始める。
「まず、阿慈谷ヒフミ。2年生。理由は不明ですが、前回の試験の際に何故か欠席をしていますので、現在落第寸前となっています。次に、下江コハル。1年生。正義実現委員会に所属している方です。どうやら飛び級をするために2年生の試験を複数回受けているようですが、結果は振るわず、現在落第寸前となっています」
ナギサ様の秘書の言葉に思わず頭を抱える。正義実現委員会にそんな奴が居たとは…。やはり、もう少し周りに気を遣うべきなのだろうか。私の様子に、ナギサ様が心配の声をかける。
「…えっと、大丈夫ですか?ツルギさん」
「………えぇ、大丈夫です。続けてください」
「…はい。最後に…浦和ハナコさん。2年生。1年生の時は非常に優れた成績をしていた方ですが、何故か2年生になってからは成績が急激に落ちており、現在落第寸前になっています」
サクラコが驚いた顔をしながら話始める。
「…ハナコさんが、落第寸前に?」
「えぇ、不思議ですよね。彼女、1年生の時点で2年生だけでなく3年生の試験まで受けて全科目満点を取っており、1年生の時点で次期生徒会長とも言われていた方が、2年生になった途端、奇行を繰り返し、試験も赤点を取り、落第生になってるんですから」
「1年生の試験だけでなく、2〜3年生の試験を受けて尚、全科目満点…ですか…!?しかも、一般の生徒でありながら、1年生の時点で生徒会長の候補として挙がる…!?」
ナギサ様の言葉に私は驚きの声を上げる。
「彼女自身になんらかの心境の変化があったんでしょう。これに関しては直接聞かなければわからないことですが…まぁ、概ね予想はつきます」
「ほう?ナギサさんはハナコさんの身に何があったとお思いで?」
「私のは単なる予想です。聞いたところで、それが真実とは限りませんから」
ナギサ様の言葉に、サクラコはもう少し詳しい話が聞きたい様子だったが、ナギサ様がこれ以上は語らない姿勢を見せ続け、渋々といった感じで話を切る。
「…そうですか。まぁ、確かにその通りです」
「…では、彼女たち三人と、白洲アズサさんの四人を纏めた部活に、先生を顧問として付ける。名付けて、補習授業部を作ろうと思います。ツルギさんとサクラコさんは、何かがあった時のために、迅速に動けるようにしておいてください。よろしいですか?」
私は頷こうと思ったが、一つ、聞きたいことがあったのを思い出し、ナギサ様に話しかける。
「ナギサ様、一つ、よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「…ミカ様のことは、どうお考えなのですか?裏切り者候補の一人にあげておられましたが」
「………ミカさんは、恐らく今回起きた事件の首謀者でしょう。セイアさんと私を殺害し、トリニティでクーデターを起こそうとしていると考えています」
「………ナギサ様とミカ様は10年来の幼馴染なのですよね?彼女がそのような事をする人物だと、ナギサ様は思っているのですか?」
私がそう聞くと、ナギサ様は手に持っていたカップをドン!と置き、頷きながら口早に言葉を言う。
「ええミカさんは些か頭が緩いので考えたらすぐに実行する困った人なんですよどうせ今回も思い立ったが吉日とでも言うかのように碌に考えもせず行動したら取り返しのつかない所まで来ちゃったから突っ走ろうとしてるに決まってますよ本当に面倒くさくて嫌になります大体───」
「ナギサ、そこまでだ。二人が困ってる」
後ろに控えていた秘書の生徒が、ナギサ様の話を止めにかかる。…秘書がタメ口を利いても良いのだろうか。
「………すみません、少し熱くなりました」
「………いえ、大丈夫です。ナギサ様がミカ様のことをどう思ってるかはわかりました」
なんか惚気てる気がするが、流石にそんなことはない…ないだろう。
「もう聞きたいことはありませんか?」
「私は特にありません」
「…私も、聞きたいことはお聞きできましたので」
「…では、これからよろしくお願いしますね。サクラコさん、ツルギさん」
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セイアちゃんを殺しちゃってから一週間。ナギちゃんから大事な話があると、ティーパーティーテラスに呼ばれた。なんだろう。もしかして、今回の事がばれちゃったのかな。ナギちゃん、結構鋭いし、あり得るよね…
そんな事を考えながら歩いていると、ティーパーティーテラスの前に着く。少し、息を飲んでから私はいつもの調子でテラスに入る。
「ヤッホー!ナギちゃん!きたよ〜」
「おはようございます。ミカさん。最近、調子はどうですか?」
「ぜ〜んぜん問題無し!そうナギちゃんは?」
「えぇ、私も特に問題はありません。イヴも居てくれてますし」
「…っあ〜、そっか。それもそうだよね!」
猫山イヴ…3年前くらいから常にナギちゃんの隣にいる生徒。今もナギちゃんの後ろに控えている。正直、鬱陶しく感じる。ナギちゃんの隣はいつも私だったのに…そんな黒い感情が私の中で渦巻くの感じる。
「………セイアさんが亡くなってから、もう一週間が経ちました」
「!………そう、だね。それが、どうかした?」
「あれから色々と考えたのですが…このトリニティ内部に裏切り者がいると、私は考えました」
「………裏切り者?」
まさか、本当にバレちゃった?だとしたら、ナギちゃんになんて言われるんだろう。貴女はトリニティを裏切った魔女です!もう貴女とは金輪際関わりません!このトリニティから追放します!!……とか言われちゃったら、死んじゃってもいいかも。
なんて思っていたら、ナギちゃんが話を続ける。
「はい。エデン条約終結を阻止しようとする裏切り者…それが、このトリニティ内部にいると思ったのです」
「…ふーん、それで?」
「ですので、私はその裏切り者の候補を、ある場所に纏め、退学させようと思います」
「…何言ってんの?退学って、そんな簡単に出来ることじゃないよ。例えホストの権限を持っていても、色んな面倒な手続きが必要になるんだし」
「その面倒な手続きを省ける方法が、一つあります」
「へぇ、どうするの?」
「ミカさん、シャーレはご存知ですか?」
シャーレというと、確か、最近連邦生徒会が作った超法規的組織で、その顧問として外から来た大人である先生がいる場所…だったかな?
「うん、知ってるよ。あそこがどうしたの?」
「シャーレには超法規的権限があります。それを使います」
「…そんな簡単に行くかな?それに、シャーレが協力してくれるとも限らないよ?」
「ミカさんも、もっとSNS等を拝見した方がいいですよ。いつまでも箱入り娘のままでは時代に置いていかれますからね。シャーレの評判は中々のものです。特に、先生は、生徒の悩みに真摯に付き合ってくれる。という評判が多いです。まぁ…尊敬出来るかどうかは、置いときましょう」
さり気なく馬鹿にされている雰囲気がするが、指摘すれば話が進まないので一旦無視することにする。
「…じゃあ、仮にシャーレが協力してくれるとしてさ、その裏切り者の候補って、誰?」
「…候補としては、四名居ます」
四人…多分、私がいる前で私の名前は流石に出さない、と思う。この中にアズサちゃんが居たら…ナギちゃんは、私がしたことを知ってるかもしれない。
「まず一人は阿慈谷ヒフミさん。彼女はよくブラックマーケットに赴いているという情報と、最近ではそのブラックマーケットで名を馳せている犯罪者集団と関係を持っているという噂もあります」
阿慈谷ヒフミ…確か、ナギちゃんが何故かわからないけど、よく親しくしている生徒だったはずだ。彼女のことを疑っているなら、私のことも疑われてそうだなぁ。とりあえず、何故疑っているのかを聞こう。
「ねぇねナギちゃん、そのヒフミちゃんって子、よくナギちゃんと仲良くしてた子だよね?どうしてヒフミちゃんが候補に?」
「…親しくしているからこそ、怪しく見えてしまっているのです」
「………そっか。それで?他の三人は?」
「もう一人は浦和ハナコさん。1年生の時は非常に成績優秀な生徒で、その優秀さから一般生徒でありながら、次期生徒会長に立候補されていた程です。そんな彼女ですが、2年生に上がってからは試験では赤点、普段の様子も、奇行を繰り返し自身の評判を下げることばかりしています。…彼女は間違いなくこのトリニティで一番と言える優秀さがあるというのに、何故自身の評判を下げるようなことをするのかが理解できない…それ故に、彼女を縛っておきたい、ということです」
うーん、多分優秀すぎて色んなところからアプローチが来たけど、それが嫌で断り続けて、それでも来るから評判を下げるようなことをしてるんだろうけど、ナギちゃんならそれくらいわかると思うんだけどなぁ。
「うんうん。それで?」
「次に下江コハルさん…まぁ、彼女は正義実現委員会に対する人質のようなものです。正義実現委員会はこのトリニティで最強といえる戦力を有していますので、彼女たちの予期せぬ暴走を止めるため、といった理由です」
「なるほどね。それで、最後の一人は?」
「最後の一人は…白洲アズサさんです」
!…やっばり、私たちのこと、知ってるのかな?態々最後に言うってことは、裏切り者候補の本命ってことだろうし。
そう考えていると、ナギちゃんは話を続ける。
「彼女はこのキヴォトスで見ても珍しい転校生なので、明らかに怪しい人物です。…まぁ、そのアズサさんを連れてきた張本人の前で言ってしまうのはあれですが」
ナギちゃんは私にじとっ、とした目をこちらに向ける。うん、やっぱりナギちゃんはどんな顔をしても可愛いな。…じゃなくて、これに関しては私が悪いので、ちゃんと謝っておこう。
「アハハ…まぁ、これに関しては私も悪いと思ってるから、許してよ〜」
「…もう過ぎたことですから、構いませんよ。それに、彼女自身、既にこのトリニティ内で頻繁に暴力事件を起こしていますから、制御できるようにしておかねば危険です」
アズサちゃんのことを疑っているのなら、流石に私のことも疑ってるよね?でも、そんな事を聞いても素直に答える訳がないので、ナギちゃんに彼女たちをどうするのかを聞こう。
「…ん〜、裏切り者の候補と、その選別理由はわかったよ。でも、どういう名目でその子達を一箇所に集めるの?」
「彼女たちは全員成績不振者で、落第寸前の生徒です。ですので、先生には、表向きは落第寸前の生徒を救うため、と言います。そうすれば、先生も快くこのトリニティに足を運んでくれるでしょう」
「うわ〜…ナギちゃん酷いね〜。善意で来てくれるお客様を騙そうとするなんて」
「………とにかく、彼女たちを一纏めにし、いざとなれば退学させこの学園から追い出します」
「でも、真の目的を知って、シャーレの先生は協力してくれるかな?」
「してくれますよ。何せ、あらゆる生徒の味方、なんですから」
?…ナギちゃんはどこか気に食わないような感じで先生のことを評する。なんなんだろう。聞いてみればいいか。
「…ナギちゃん、もしかして、シャーレの先生と会ったことあるの?」
「?…何故そう思ったのですか?」
「いや、だって…なんか、先生のことが気に食わない、みたいな感じで言ってたからさ。なんでかなって」
「……………まぁ、会ったことはありませんが。確かに、少し…先生という方は、嫌いです」
「…ふーん、そっか。それなのに先生のことを頼るんだね?」
「致し方のないことです。このトリニティは今、転換期を迎えてるんですから…邪魔をされるわけにはいきません」
「………うん、そうだね」
私は、心の奥でどこかもやっとした気持ちなる。話は終わり、暫くお茶会を楽しんで、今日はお開きとなった。
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コンコン、と扉をノックすると、扉の先から「どうぞ」という声が聞こえ、私は扉を開け、ティーパーティーテラスに入る。
「こんにちは、先生。こうしてお会いするのは初めまして、ですね。私がティーパーティーのホスト、桐藤ナギサです」
最初に話しかけてきたのは、私に入室を許可した声の生徒だった。ナギサは「こちらが」と隣にいるピンク色の髪が特徴の、お姫様のような生徒を紹介する。
「同じくティーパーティーの聖園ミカさんです」
ナギサがミカのことを紹介すると、ミカは私に笑顔で手を振ってくる。そして、ナギサは続けて後ろに控えている、金髪をウルフカットにし、私がこのキヴォトスに来てからは初めて見た、SAAを携帯している生徒を紹介する。
「私の秘書兼護衛を務め、次期生徒会長の猫山イヴです」
紹介を受けたイヴという生徒は、私に対し少し会釈するだけで、それ以外は特に何もしてこなかった。そして、ナギサが続けて話す。
「改めまして、お初にお目にかかります。私達がトリニティの生徒会、ティーパーティーです」
次はエデン条約1章最後まで行こうかなと考えてまする。