犬仲間の斉藤さんは、まだまだ帰宅部をやめられない   作:あきと。

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第四話 「猪突猛進の転入生」

 

「折れたポール同士をパイプに通して……」

 

「ガムテープで外れないように補修する」

 

野外活動サークルの三人から、ポールの命運を任された颯と恵那は協力して折れたポールの修繕を始める。

 

「なるほどな。タカナッシーが持ってきてくれたガムテープとの合わせ技だな!」

 

「そのニックネームは確定なんだね……」

 

実際、大垣さんと話したのは今日が初めてだというのにいつの間にか俺の呼び名が定着している。いや、してしまっている。さすがはクラスのムードメーカーだ。

 

「出来た。これでどうかな」

 

颯たちからあおいにポールは手渡され、それを見た一同は目を輝かせる。

 

「これならなんとかできそうやない?」

 

「よっしゃ! さっそくやってみようぜ!」

 

それから再度設営されているのを横で見ているうちに、テントらしい形となっていく。

 

「「980円テント完成ー!」」

 

感動を覚える喜びようだ。三人とも両腕を挙げてはしゃいでいる。

 

「おぉー! 980円だけどちゃんとテントしてるよー」

 

「材質はそれなりだけどな」

 

大垣さんと、見慣れない髪色の明るい子が中へと入っていく。

 

「キャンプとか行った事ないから、ちゃんとしたテント見るなんて初めてだ。でも980円って何だ?」

 

「テントの値段やでー。ネットでお買い得だったんよ」

 

疑問を口にする颯に、あおいが優しく教えてくれる。

 

「えと、犬山さん? テントってそんなに安く買える物なの?」

 

「んー? それなぁ。実はな、このテントうちのサークルでほっとかれてた激安テントなんよ」

 

「激安? てことは、普通のはもっと高いんだ」

 

「せやで。諭吉さんが何人も必要になる物もあるんやで」

 

ボソッと付け加えられた情報に、颯は目を見開く。想像よりも遥かに高い金額に一学生が簡単に手を出せないことを理解する。

 

「高っ!? アウトドアって、かなりお金かかるんだ」

 

「まぁ、言うなれば大人の趣味やね」

 

いくら安くなってたとはいえ、それでもあんな壊れ方したらショックだよな。本来ならそれだけ高い物なんだし……。

三人が大声で騒いでた事に納得がいった颯。

 

「君、あきと同じクラスの高梨くんやろ?」

 

「あ、うん。どうも」

 

「私は犬山あおい……って、高梨くんは私の事知ってたみたいやけど」

 

「うん。大垣さん、クラスだと目立ってて、二人でいるのをよく見かけてたから、それで自然と」

 

あとは、犬山さん男子にそこそこ人気があるから噂で耳にしてたんだけど。それは言わないでおこう。

 

「なるほどなー。まぁ、改めてよろしくなぁ」

 

「うん、よろしく。あれ? でもなんで犬山さんも俺の事知ってるの?」

 

名前を教えたわけでもないのに自然と苗字を呼ばれたことで違和感を覚える。

 

「高梨くんも各務原ちゃんと同じ転校生やったからな。高梨くんの事はあきから聞いとったし」

 

「各務原ちゃん?」

 

「あきと一緒にテント入っとる子や。各務原なでしこちゃん。今日から来た転校生やで」

 

「へぇ」

 

やっぱりそうだったのか。ていうか、すごい名前だな。インパクトあって覚えやすい。

 

「それより、高梨くんの方こそ。斉藤さんとはどういう関係なん?」

 

「え、俺たち?」

 

「うん。二人で来てくれたって事は知り合いなんやろ? 仲も良さそうやし」

 

「私たち家が近所なんだー」

 

「そうなんや。それにしても、二人ともあんな事よー知っとったねー。ありがとう助かったわ」

 

「どういたしまして。テント出来て良かったねー」

 

「もしかして、斉藤さんらもテント持っとるの?」

 

「あ、違う違う」

 

「あそこの子に聞いたのよ」

 

「「?」」

 

恵那が図書室のある方の窓を指差した。

それをテントにいた二人も含めて全員が見る。

窓の向こうで座るリンも視線に気付いて、こちらを見た。

 

「おい」

 

余計な事を…。とでも言いたげな表情のリン。

 

「あーっ! あの子!!」

 

「おー、しまりんじゃん」

 

「しまりん!?」

 

彼女の顔を見て、なでしこは過剰に反応する。

俺同様に、大垣さんは誰かにあだ名を付けるのが好きなのか? いや、フルネームではあるんだけど。イントネーションが……。

 

「ゆるキャラみたいな言い方やめーや」

 

犬山さんの言うとおり。まさにそれだった。

 

「志摩は苗字。名前はリンだよ」

 

恵那の言葉を聞いてなでしこは大きく息を吸った。

 

「リンちゃーん! 同じ学校だったんだー!!」

 

リンを発見したなでしこは、テンションがマックスとなり一目散に駆け出していく。

 

「ちょっ! 各務原さん!?」

 

「まさに猪突猛進だねー」

 

「斉藤さん。そんなこと言ってる場合じゃ…」

 

おいおい、あんなに勢いよく走っていって大丈夫か。志摩さんの目の前まで突進するような勢いだぞ。走るというより、もはや突進だ。

 

「あれ、止まれるのか」

 

「この間はありがと…へぶっ!?」

 

「あちゃー。駄目だったね」

 

中庭と図書室を繋ぐ窓ガラスに、案の定なでしこは顔面をぶつけて崩れ落ちていく。

 

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