我はぐれ者、神社に住まう   作:神輿と櫓

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雄大君は霊夢に傷がついた瞬間殺しに行く人間です


第11話

安直な表現ではあるが、私の弓に関する動作は誰よりも上だと自負している。月にいる教え子達からは、取り出す動作、弓を引く動作。そして発される矢の速さ。どれを取っても、教え子達からは見えない速さと言われるほどだ。そのはずだ。なのに、地上の人間に、全力の矢が。

 

「さっきから投げてきてよ!危ねえだろ!」

 

「っ」

 

掴まれた挙句、投げ返される。投げる動作から方向はわかる。だから、避けられる。でもそれは、矢が見えるわけじゃない。私が射る矢を私は見える。でも、真向かいの、あの男から飛んでくる矢は全く見えない。その後ろに潜む少女らから飛んでくる針や光る玉の方が逃げ道を潰す。

 

「このっ」

 

「おい紫、このままじゃめんどくさすぎるぞ」

 

「他にも来るはずなんだけどねぇ…まさか、ここまで行動が遅いなんて」

 

「そんな話してる暇あるの?せめて、魔理沙くらいの火力があればね」

 

「…あ、ならあるぞ」

 

話が聞こえない。話し合っている間も、隙がない。私も弓を引く手を緩めてはいない、なんなら全部本気でやってる。なのに、少女らに向けて矢を放てば、大男が取る。全て。その上で、その矢を私以上の速さで投げ返して来る。どういう理屈なのか、私よりも速いなんてものじゃない。気を抜けば針が刺さるし、光る玉も当たれば爆散して、体が揺らぐ。

 

「ぁ」

 

当たる。

 

「おお!当たりよった!」

 

聞こえる。相手の、喜びの声が。私がいなければ姫を守る者がいない。罪悪感が募る。地上人に負けるなど、あってはならない。地上人に負けるのなら、月の使徒に勝てるわけがない、私の教え子も強くなっているはず。

 

「…っ!」

 

矢の一本が刺さったからなんだ。私も不死なんだ。それなら、一本刺さるまでに何本でも射れば良い。そうすれば、相手がなんであろうと関係ない。一回死んでも、その後少しだけ相手を足止めさせれば良い。死に戻って、またやり直しが─

 

「よっ」

 

「!?」

 

なぜ突然後ろから?どうやって。いや、それよりも。まずはこの男をどうにかしなければ。いや、この男がここにいるなら、この場に男がいるなら、先ずはあの少女らから。

 

「そっちに弓向けんな、霊夢が死ぬだろ」

 


 

「うらっ!」

 

「ごっ」

 

「地上に降り立つんだったら、まだ手加減できたんだけどな」

 

「時間をかけてはダメ。出来るなら一瞬で。」

 

空で相手をぶん殴るのは初めてだったので、膝と拳で挟んで横腹を潰すように攻撃するのが精一杯だった。というか、それ以外だとあんま力入んないかなって。そう思ったんだが…どうにも、力が入りすぎたせいで。俺の膝にも一撃入ってしまった。つまりは、貫通した。

 

「っ…!」

 

「うわ!」

 

「まだ生きてる…いえ、当たり前ね」

 

「あ?」

 

「別に良いけど、さっさと月戻しなさいよ。鈍臭い」

 

「死に返ったばかりの人になんて言い方。親の程度が知れるわね」

 

「よし紫次会ったら殺してやる。今逃げる時間は与えてやる」

 

「じゃあずっと一緒にいれば殺されないってわけね。」

 

三発ほど殴って、目が覚めたであろう変な格好の…こいつも銀髪かよ…いや白髪か。じゃあなんて呼べば良いんだか。まあどうでも良いか。赤青に説明する。顔面を少し歪めた紫が。

 

「ってことは、私は無駄なことを…」

 

「あー、楽しかった。霊夢、帰るぞ」

 

「はーい」

 

「…待って」

 

「ん?」

 

「なんだ」

 

「貴方達、本当に親子なの?どう見ても、そんな関係には」

 

「死んだ奴が生きてる奴の事考えんなよ。考えるくらいなら呪っとけ」

 

博麗神社で眠ろうか。夜明けも近いだろうしな。つーか、あの赤青が悪い。月をすり替えるとか、どんな術使って実現させてんだか。空まで飛びやがって。無期限で奉仕しもらわなきゃ許されたものじゃない。

 

「…寝れねえ!」

 

「でしょうね」

 

「体内時計が狂って眠れねえ。あの赤青、もう何回か殴っておくべきだったな。」

 

「赤青って呼んでるの?」

 

次の日。赤青が変じゃない格好で謝りに来た。それにも驚いたが、それ以上に驚いたことがあった。赤青が俺の事を研究したいなどと言ってきたのだ。凄まじい迫力だった。そうだなぁ…俺が初めて会った時の紫が良い比較対象だな。あいつの場合俺が親代わりしていることに関して聞いてきたが、あの時の迫力は直接俺ではなく俺と霊夢の関係に目がいっていたからそこまでだったのだが。

 

「駄目?駄目ならせめて細胞だけでもどう?娘さんでも良いけど!」

 

「駄目に決まってんだろ!ウチの娘だぞ!」

 

「駄目よ!ウチのお父さんに手出すな!」

 

「じゃあ、じゃあ唾液だけでも!」

 

「きもっ」

 

「そこから、新しい貴方を作りたいの!」

 

「え、何、俺増えんの?」

 

「お父さん増えるの?」

 

「そう!」

 

「…ダメだな」

 

「これ以上コレが増えるのは嫌」

 

「えっ」

 

「ちょ、ちょい!」

 

「なんだ紫」

 

「増えるの!?じゃあ、私のところに一つ頂戴!」

 

「はぁ?」

 

といった具合に、クローンの俺を作るかどうか、作ったらどうするか、ウチに寄越せなどいろいろあったが、全員俺が殴り倒した。作るなの一言で終わり、さっさと寝る。まあまず不貞寝。あ、そういや今日俺晩飯担当だな…あの赤青に飯作らせてーけど…なんか薬盛ってきそうでこええからいいや。

 

「…」

 

「えー…このスプーンで口の中を…」

 

「霊夢」

 

「わっ」

 

「お前俺が何人もいたらさ。食費がやべーぞ」

 

「あっ」

 

「しかも人里出禁が増えるんだからな。慧音先生への返事も何枚書けば良いのか」

 

「…やめとくわ」




慧音「噂じゃ、鬼と殴り合ったりしてるらしいじゃないか。異変にも首を突っ込んだりな。そんなに貢献しているんだ。それなら、人里からの追放を取り消してもいいんじゃないかと思って、その手続きをしたんだ。もう、良いだろう?私は全部話した。あとは妹紅から聞けばいい」
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