我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
「…どんぐらい土地を歩き回っとるんだ、俺たちは」
「そうね…歩いた土地全部傾いてるからわかりやすくて助かるわぁ」
「あら、歩いた土地が枯れてるの、忘れてなぁい?」
すっかりガチギレに移行しており、まあこれはこれは…少なくとも俺は知らんぞ。異変の首謀者の体が三割消えてても知らん。と、ボケーっとして土地を渡り進んでいると。前方から変な天女が凄まじい速度で走ってきた。どれくらい早いかというと、土地と土地の行き来が少ししか見えないところ。速い。
「んぁ?」
「おや、貴方が」
「俺が?」
「ええ。噂には聞いていますよ。博麗の巫女に手を出したら真っ直ぐに突っ込んでくる、妖怪の山を一人で下した男ですよね?」
「風見幽香、俺はどれくらいこっちにいたっけ?」
「そうねぇ…私の体感が狂ってなければ、二日はこっちに居るはずよ。」
「霊夢に言ってねえからあいつ飯も食ってねえんじゃねえかな」
「…じゃあ、そうね。私が今から伝えに行くから、二人でこの異変解決してくれる?」
「まかせろ」
と言うわけで、恐らくは空腹で机の上に眠っているであろう霊夢に想いを…まて。ん?噂してんのか。そうか、なら、今の状況はなんだ?なんでこいつは俺の前にいる?俺の前に出て来て何をしたい?…つまりは、こいつは、俺の娘に、手を出した?
「お前、まさか」
「博麗神社で起きた地震、ご存知ではなかったのですか?」
「は?」
「それを知らせるために地上に行ったら、金髪の魔法使いに邪魔され。降りている間に地震が…と、言った具合でして。」
「パツキンは後で殴るとして…」
「私を許していただけるのなら、異変の首謀者を教えてあげますよ?」
「…どうするの?」
「あの女は助けようとしてたみたいだし無罪だ。」
「ちなみに、神社が倒壊したのはその首謀者のせいでもありまして」
「よし殺すぞ。おい風見幽香」
「二人でボコしましょう。お互いに全力で。」
末路を決めたところで、案内してもらう。なんだか二日くらい練り歩いたのが無意味とも思えるようで、なんだかな。どうやら案内人の女は永江と言うらしい。下の名は聞きそびれた。そんで、永江の一応の主人である総領娘が首謀者なんだとか。変なやつだ。3年殺してやる。
「…こちらにいた、はずなんですけど」
「はっはー!私はこっちよ!」
声がした方に俺と風見幽香二人して振り返り、石とビームが宙を舞う。
「あっぶなー!でも楽しめそうね!」
うざったい。風見幽香が天井を壊したのと同時に屋根に足をつけ、覗き込むような形のケツの突き出し方してる女であろう尻を蹴り飛ばす。風見幽香に任せても良いが、こいつに関しては三十発は殴る。蹴った感触からで言えば中々に硬いはずだからな。なかなかに楽しめるだろうか。
「よっと」
「ふぅー…」
「お、あんがーまねじめんとってやつか?意味ないぜ」
「思いっきり殴るために息溜めてるのよ」
瞬間、レーザーが走る。青い髪した女はそれを避け、転がるようにこちらに来た。ケツを蹴られた仕返しだろうか?それに対して首を掴み、そのまま地面に激突させる。そのまま風見幽香が地面にビームを放つ。少し巻き込まれたが、どんなことでもない。霊夢に何しやがった、このアマ畜生。
「ぁ〜…良いわね。暇つぶしって感じ」
「っ!」
「あら、そう?じゃ、暇つぶしらしく楽しみなさい」
傘で飛ばされてきた青髪に蹴りを入れ、その場で回転させる。そのまま宙を浮き、地面を掴み、浮かぶ大地で青髪を叩き抜く。どれほど硬いのか確かめる目的もあったが、地面よりは硬いらしい。傷はあっても大怪我と呼べるものはなく、なんとも。
「あんた、力持ちじゃん。私のこと思いっきり殴らないの?」
「その前に聞くぞ。神社に何した?」
「何って…そんなの、私も知らないわよ。ただ、遊んでたら神社壊れちゃったけど。でもそれだけ、それ以外については私は知らないの」
「そうか」
腕を掴む。暴れる身体を風見幽香のビームの通り道として、そのまま腕に噛み付く。そのまま、皮、肉、骨、皮。食い進めて、そのままポイ捨てをする。味だけで言えば、こいつは人間だ。妖怪とは違うし、神様は人間のような味はせんだろう。口の中に広がる肉片などは全部吐き捨て、今度は足を掴む。
「ちょ、やめてよ!それは違うでっ」
「あら、暇つぶしなんでしょ?片腕が何かしら。私はその男に首をやられたわよ」
「はぁ!?それは違うでしょ!」
「暇つぶしで私の花は全部枯れたのよ。死になさい」
足も概ね腕と同じような構成だが、大してうまくはない。肉片を吐き出し、手を離す。仮にも人間、紫に何言われるかわからない以上、迂闊には手を出さないのが一番。首元に本気のチョップを打ち込み、地面に叩きつける。切り落とすつもりが、どうにも相手は硬いらしい。
「ぁ…っ!衣玖!どこよ!」
「なんでしょうか?」
「暇つぶしにしてはやりすぎじゃないの!?」
「今回の総領娘様の動きで大切なものを傷つけられたか、失った者と思われます。はっきり言えば、命で償う以外にないかと。」
「はぁ?そんなの、また作るか買うかして貰えば良いじゃない。大体、それが何?私は━」
「はいどーん!」
中々に隙だらけだったので、足を踏みつける。殴り合いは好かんか、ゴミ。
「あら、貴方達の方が早かったの?」
「紫か。霊夢はどうなってる」
「貴方を探し回ってるわよ。まあ、そのおかげかそのせいか。地震で崩れた神社の下敷きにはならなかったけど」
「そりゃよかった…」
「まあそれでもこの娘には幻想郷を無茶苦茶にしてくれたからね。殺す一歩手前の調節は得意だから、慎重に壊して生きなさい。幽香も」
「…チッ」
きっとお父さんは私が巫女になるのを嫌がったんだと思う。お父さんに何を見せても、お父さんは私を褒めてくれなかった。私にとっても強い思い出になっている。あの時とは違って、異変を解決したら口で褒めてくれるようにはなった。お父さんがいなくなってから一日。異変だなんだと騒いだ人妖が増えた。お父さんがいなければ、私は誰に誉められるのか。数年前に会った魔法使い?寺子屋の教師?人里で、話したこともない人たち?…そんなのじゃ、嫌だ。お父さんが良い。確か、お父さんは風見幽香の場所に行ってたはず。そこから探さなきゃ。異変なんて解決しても嬉しくない。