我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
すると、少し震えるんだ。びくっ、って。
そしたらな。そしたら、そのまま頭が上がってきたところをな。こう、撫でていた手で床に押し付けて、許さない旨を伝えるんだ。こうして、こうして僕は生きていける。
「ぁー、極楽」
「本当ね」
「こんな風に仕切るかね」
目の前には、霊夢が香霖堂という場所から拝借してきた変な仕切り。んー、この向こうにパツキンと霊夢がいる。はずである。まあそれは良しとして。パツキンが入った経緯はともかく、俺は普通に疲れたから入っている。あの程度でようやくウォーミングアップというわけだな。というか。金髪の鬼に対して妙に力が入ったのは何故だろうか。
「お父さーん」
「なんだー」
「湯加減どうー?」
「そーだなぁー…十分だぞー」
「はーい」
ちなみに。最近変なやつを拾った。変、というのはあれか。なんだかわからん…手のひらサイズの何か。正体不明で、尚且つ触れてるのに触れてる気がしない。温泉の近くに落ちていたから拾ったのだが、何か…何か、あるのだろうか。大体こういうのは意味があるはずだが。
「…わからんな。」
「だろうね。全裸の君、それを渡してはくれないかな」
「お父さーん?なんか妖怪いなーい?」
「いるー」
「おいおい、よしてくれ。私は頼まれてそれを集めてるだけなんだ」
「…これか?まあ、やるけど…」
「有難いね。お礼は何が良い?ご飯かい?それとも、何か宝物かな」
…どうやらこの妖怪にとって謎の物はとっても欲しいものらしい。ふっかけてもいいんだが、欲を出せば謎の物の価値を知らんのがバレるし。適度にもらうか…この妖怪の容姿を見る限りは、ネズミかな…ネズミだな?
「あー、でもなぁ…俺はこれが何か知らねえし。やるわ」
「お、悪いね。それじゃあ」
「…霊夢〜」
「何〜?」
「ここまで結界伸ばさないか〜?」
「無理ー」
「パチュリーにでも頼むかー?」
「引きこもりにはきついだろ」
温泉から出て、服を着る。そうして神社に戻り、布団を敷く。眠たいが、今寝るのはなぁ…って。でも今日はやることないので、早く寝ます。パツキンと霊夢は隣に、俺は別室で。暗いな。
「よっ」
「…」
「おーいー…無視はないだろ?」
誰だこいつ。暗くてよく見えない。が、その喋り方は…えと…悪酔いした紫…?いや、違うな。声が違う。とすれば…あれだな。威勢だけは良かった、青髪の桃を頭に乗せてた…そう!あの…あー、総領娘とか呼ばれてた、あいつ。謝罪に来たのか、はたまた。
「萃香様が来てやったんだぞ〜」
目玉を抉って寝る。目玉で済ませてやったことは感謝してもらいたい。ほんとに。
「…」
「どうした、華扇」
「な、なんで萃香が」
「お、華扇か」
「…」
「なんでいるのよ」
「そりゃお前、夜這いだよ」
「夜這い!?」
「まあな。知ってるか?勇儀も負けたんだってよ」
「だ、だからなんですか!貴女がここに来る理由ではないでしょう!?」
「今の俺、どういうふうに見えるよ」
「眠そう」
「こんな時間だものね。健康なのは良いことよ。」
「お前らが邪魔で眠れないんだよ。わかったら寝させてくれ」
「…あ、そうだ。霊夢に渡そうとしてたものが」
「あ?」
「おー!私もだ」
俺の手元に渡されたのは。先ほどあの妖怪に渡した、謎の物であった。うん。ゴミ捨てたらゴミが2倍で帰って来た。どうしてこうも変なものを拾うんだか。こりゃ、パツキンもそのうち拾うぞ。霊夢には拾うなって言っとくか。
「…良い朝だ」
「そうですね」
「お前がいなければもっと良い朝だったぞ華扇」
「貴方には神社に住まう者としての礼儀などをですね」
「え…やだ」
「や?」
「そもそも、俺は神社にいるだけの人間で。お前の説教の対象にはなり得んぞ」
「その礼儀が霊夢に移ったらどうするんですか?貴方は責任が取れるんですか?」
霊夢は他に流されるような人間じゃない。…と、言いたいが。確かに霊夢は里の人間に対して礼儀が悪いことはある。若干否定できないことになっている。まあ先代も同じような態度で紫と話し合いしてたし。後マジな事言うと、先代の末路考えたら人間相手に礼儀良くても意味ねえしな。華扇は…里では好かれてる方だし、まあ…な。
「お前にゃわからんかもだが、俺はあれで良いと思うぞ」
「…言ってるでしょう。先代のアレは…」
よく聞こえないことにして、さっさと起きるか。華扇はまあ食べる方だからな。多めに作らなきゃならんか。そもそも、こいつはここで飯を食うのか?それなら昨日渡してきたアレはいらないものだったろ。空飛んでて見つけた?遊覧飛行かお前。…まあ、それは置いておくか。
「霊夢ー、朝飯ー」
「ん…」
「霊夢!そんな態度で巫女が務まりますか!?」
「これでも娘は成り立つから良い」
「はぁ!?」
「華扇…人の家で飯食うなら口煩く説教すんじゃねえよ。」
「なんですって!?私は貴方達のことを」
「あーうるせえうるせえ。俺に説教かますのは慧音先生と閻魔で十分。お前が入り込む余地はない。」
「私も〜。紫が入って精一杯〜」
「…雄大」
「久しぶりに呼ばれたわ」
「…あの、霊夢って間延びした返事してました?」
「あー?知らねえよ…霊夢、あんま寄せ箸すんなって言ってんだろ」
「はーい」
「…もー、訳わかんない」
華扇がらしくない声をあげ、1日が始まった。あの妖怪に米と引き換えで渡したいものが出来たし、探しに行くか。…それなら普段いる場所も聞いておけばよかったか。あー、失敗。
「華扇、ネズミの妖怪って知らないか?こう、変な棒持って歩いてるネズミなんだけどさ」
「妖怪ですか…」
「なぁ」
「ん?」
「私を置いて朝飯食べないでくれるか?」
「…忘れてたわ、パツキンのこと」
「娘の友達忘れるなんて、酷い父親だな」
「すまんな」
ナズーリン「…そもそもなんでわたしだけが集めてるんだ?」