我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
ちょっと…死にたくないので…ね
「迎えに来たよ。遅くなってすまない」
「…あ、えーと、ナズーリン、だっけ」
「名前覚えてるなんて珍しいわね。魔理沙とか覚えてないのに」
「パツキンはなぁ…子供の時はこの呼び方で喜ばれてたんだが」
まあそれは良いとして。さっさとネズミ…ナズーリンについていく。先程から雨が降っているので傘を忘れずに。見たところ、ナズーリンは傘を持っていない。来る途中に振られたのだろうかね。物置かどっかに傘が一本あったはずだが。先代のやつだな。
「…ちょっと中で待ってろ」
「ん、何か用事かい?」
「気遣いよ」
少し埃被った傘を使ってぬかるんだ道を歩く。いやぁ、雨は良いね。無言が苦じゃない。まあ、喋らんのはそれでどうなんだという感じがするから普通に話すが。
「申し訳ないね」
「いや、良いよ。俺はこの傘使うのに憧れてたしな」
「そりゃまた…なんでだい?」
「些細なことだ。んで、お前が言ってた寺ってのはどこだ?」
「ああ、あっちだ」
「…お前が言ってる寺ってのは、なんだ。門の前で組体操してる寺なのか?」
「あれは…村紗達だ。雨の中でやることじゃないだろうに…」
それとは別に。門の前で傘をさして待っている見覚えのある黒いやつが一人。正体不明、鵺だ。紫曰くではあるが、腐っても大妖怪。そんな評価だったはずだ。詳しい評価?知らんね。紫に聞くか、藍に聞け。門の前に立ち、さて復活した人間とは誰なのかと辺りを見渡す。ちらほら人間がいるので、わからん。聞くか。
「ナズーリン、復活した人間ってのは?」
「村紗、聖は?」
「聖?聖は…どこ?一輪は知らない?」
「姐さんは…人里に布教しに行ったはずだよ。星もそれに着いて行ってる」
「すまない、今はいないらしい」
「ほー。しっかしまあ、人里に近いところで寺なんか。妖怪だらけのはずだろ、ここ」
「聖が選んだって聞いたよ。ま、詳しい理由は聖に聞くしかないけど」
「…その聖ってのは、なんだ。大男なのか?」
「いや、大きいけれど、まあ私目線からだね。」
「…何センチとか」
「確か…160とか、170とかだったはずだよ」
「…男?」
「いや、女だ。」
「勘違いしてた」
ま、それはそれとして。聖とやらを待つことだな。今は昼過ぎだし、どうすっかねー。律儀に待つのも良いんだが…さっきから鵺がこっちを見てるし。まあなんでも良いんだがな。でも慧音先生が許可したのは意外だったな。案外無断で置いたか、押し切ってたり。慧音先生もそんなに強いわけじゃないし。縁側ひっく。腰きっつ。寝転がるか。
「そういや、だがな」
「なんだい?」
「妖怪だらけなのによくこんな信仰者集めれたよな」
「ま、立地の話だろうね。人里から近いし。」
「…そういうの、よくないと思うが」
「何故だい?」
「それだけ何でもいい人間が多いってことだな。それだけ離れやすいから、標的にもならんが」
「標的…?」
「簡単な話、石を投げられるかってことな。俺は投げられねえけど。」
「ふぅん…まあ、妖怪退治も異変解決とやらも巫女の仕事だ。私たちが石を投げられることはないだろうね」
人間ってのはいちゃもんつけて来るから怖いんだがな。さて、寺の中にいる人間からしたら俺はどうだろうか。ペラペラと寺の関係者と話す、妙にデカい男。関係者と見られてんのか、新しい僧とでも見られてんのか。そしたらあり得ん口の聞き方だとは思うが。
「…なんだよ」
「前は、ごめんなさい」
「おう。どっか行け」
「…ぬえと会ったことが?」
「馬鹿にされたからな。九尾に仕置きをさせた」
「ふぅん…九尾!?」
「知らん知らん。で。今、星と帰ってきたのが聖か?」
「あ、うん。そうだけど…」
なるほど。へんな服だが、確かに。あれは強い…と思う。少なくとも、横に立たせてる星よりは強い。星も強いはずなんだがな。なんでだろ…まあ、僧だから強さは関係ないのか。あ、星がこっちに気づいた。なんだ、こっち見ながら聖ってやつになんか言ってるぞ。
「…ぬおっ!?」
「お兄さん、ウチを信仰しにきたんですか!?」
「人の上に寝転がるな。殺すぞ」
「いやぁ、嬉しいですねぇ。お兄さんも見たところ妖怪の…よう?」
「俺は妖怪じゃねえ。人間だ」
「人間???」
「星、はしたないですよ。それで、本当に人間なんですか?」
「ナズーリン。お前にはどう見えるよ」
「…正直言って、巫女の隣に座ってるのを見て退治された後だと思ってたよ」
その場にいる奴を小突いて起きる。やっぱ低いわこの縁側。立ってみると聖とやらとの身長の差が明らかで。どっちかっていうと星の方がでかいな…と思うくらいの身長だった。しっかし聖か…字が気に食わん。姐さんとか呼ばれてたし、そっち方面で呼ぼうかね?
「あんた、名前は?」
「名乗らせたいのなら、自ら名乗るのが礼儀では?」
「…春飯雄大。ほれ、あんたは?」
「聖白蓮と言います。皆からは聖と呼ばれています」
「俺は…俺はなんて呼ばれてるかね。俺の周りの女はどーも男の気配がないからなぁ…」
「あら、では春飯さんと呼ばせていただきますね」
「…じゃ、こっちからは白蓮って呼ぶわ。」
周りの時間がピタッと止まる。あれ、なんかやらかしたか?名前が嫌だったら名乗らねえよな?じゃあ、あれだ。周りから呼ばれることがなくて固ってるか。それか、なんだ。それ以外は知らんぞ?
「ところでお兄さん、僧には」
「ならん。一応親だからな。子供に影響与えたくねえし」
「親…?」
「おう。親って言っても親代わりだけどな。」
「なるほど…なら、春飯さん。親子揃って仏教に、どうですか?」
「ざけんな、ウチの娘は巫女やってんだぞ。」
「巫女…と、言いますと。紅白の?それとも、緑色の?」
「紅白だな。緑はモリヤ。紅白の巫女の親代わりやってるから、神道ならまだしも、こればっかりはね。」
「…それは、仕方ありませんね」
今気づきました。春飯雄大、浦飯幽助と半分同じだ。