我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
「よっ」
「あ、お久しぶり…ではないですね」
紅魔館にて。俺は美鈴の主人から門番をやってみないかと言われたので来ている。が、美鈴一人で十分だろ、と言いたい。幻想郷で好戦的な奴はそんなに多くない。その上、そういう奴は大体弱い。まあ弾幕ごっこは…な。そういう奴だし。美鈴は苦手らしいじゃん。
「最近だと心地の良い暑さで助かるよなぁ」
「一日中外にいる身分としては、日差しはない方が助かるんですけどね」
「で、美鈴はなんで肌が焼けないんだ?」
「…乙女の秘密を晒すつもりですか?」
「そんな歳で乙女を名乗るなら俺は赤子だ。紫に世話でも頼もうかね」
「まあ、そんな冗談は置いて。日焼けしないってことだけなら、御友人様…パチュリー様が作られています。ほら、お嬢様が透明になって神社に行ってますよね。アレの劣化版です」
…じゃあここの当主にもそれ使えば良くない?と思ったのだが、これでは少々肌がヒリヒリピリピリして不快…なのだとか。意味のわからん拘りだ。我慢しろ、我慢。いや、河童とかに無理強いしてる俺が言えたことじゃないか。まあでもあいつら俺に負けたんだし、良いだろ。別に
「どうにも、我々のお嬢様はこだわりが強く、我儘なようで。その点、妹様は本以外を求めませんし」
「無学な奴に対するヘイトスピーチって奴だろ」
「さあ?ま、門番は今から始まったんですから。独り言だけのいつもよりはマシですよ」
「…全く理解できん」
「そんなぁ。あ、でも知ってますよ。最近は…そう、聖と言う人と仲が良いんですよね。年齢も年齢ですし、くっついたらどうです?」
「仏教が必須条件ぽくて嫌だ」
「あはは」
後、年齢が云々言ってたけどな。一応言っておくと、アレは俺より長生きだからな。俺の年齢だけで決めるには差が大きすぎる。弟が死んだのが何百年前で〜とか、指折り数えて教えて来るような女だぞ。世代の差よりも情緒と倫理がおかしい。まともな人間でよろしくしたい
「じゃあ、ウチの咲夜さんなんかどうです?そんなに歳の差はないと思いますけど」
「頭に刺さってるナイフを抜いてから言え。嫌だぞ、結婚した後の喧嘩で殺されるのは。この館なんか、倫理のかけらもないだろ」
「あっはは。お、貴方の場合は掠るだけで許されましたね」
「普通は言葉だけを返すんだよ」
とまあ、こんな感じに話が進み。気付けば色々と面倒な方向へ。客人として(重要)鬼が呼ばれてたり、なんか話を聞きに来たのか、妖精が集まったり。赤青が日焼け止めの魔法について聞きに来たりな。いやぁ皆さん心地よくお過ごしのようで。
「…はぁ。最近は人里が荒れてるしなぁ」
「え、そうなんですか?」
「なんとも。仏教が流行ってもモリヤが流行っても、どうにもその教えにムカつく奴がいるってさ。何が気に食わんのか」
「まあ、関係ないでしょうね。文句言いたいだけなんですよ
、そういう人は」
無論それはわかっている。人間の価値観なんてそんなものだし、聖もモリヤも、何故あんなにも躍起になっているのかがわからない。躍起になれば何かが変わるのだろうか。変わるのであれば、俺も何かに躍起になるべきだろうが。
「…あ?」
「別に。私はこのままでいいんです。ここに来る人や妖怪の顔を見て、『ああ、時間が経ったな』なんて思うことが少ないですし」
「…俺は、まだ一回しかねえな」
「おや?誰ですかね。気になります」
「…霊夢」
「やはり霊夢さんでしたかぁ。まあ、そうなりますよね。」
「あとは先代の墓見てだな。墓を見て、あー、ここに苔が生えてる、とか」
「苔?墓石にですか?」
話が弾み始めたな。こいつ、いつも喋らないような生活してるくせになんでいつもハキハキ喋れるのだろうか。案外喋れるということか。わからん。
話せば話すほど、私はこの時間が嫌になる。話が弾めば、口が軽くなれば、出て来る単語は、霊夢やら先代やら。私の名前が出るのは多分、目の前で話しているから。きっと、私から離れれば、私の名前は出てこないのだろうと思ってしまうほどに、彼からは二人しか出てこない。死んだ人間も含めれば三人だが。
「そうですねぇ。私も墓に花を捧げたり、なんてことはしたことありませんが…生きるのに苦心しすぎて墓場泥棒をしたことはありますよ」
「死んだら畜生道か餓鬼道だな」
「まさか、妖怪に死生観なんてものはあってもないようなものです」
「…じゃあ俺も妖怪になろうかな」
「霊夢さんがなんて言うかは知りませんよ?」
この関係、この距離が一番。だからこそ私は、もう神社には行かない。行けば、じっと見せつけられる。彼と、霊夢の二人を。何百年も生きて、武術を学び、今こうして敗れた相手と話している。
「久しぶりに戦います?最近動いてないんですよねぇ」
「断る。代わりに鬼連れてこい」
「鬼ですか…いやぁ、下した相手二人じゃつまらないでしょ?」
「いや、地底にいる鬼も呼んでこい。楽しめるぞ」
「…」
そうして、冒涜される。妖怪として屈辱。武道家としても屈辱。なのに私は、この人間を。気持ちで言えば横恋慕である。だから、私と貴方の戦いに二人も余分を出したくない。
「…そう、ですね。うーん、地底かぁ…」
言いたいことを飲み込んで、応える。
「霊夢に言えば案内してくれるぞ」
「雄大さんが案内するのでは??」
「…なんで?」
「えぇ!?なんでって、そもそもですけど!多分この感じだと霊夢さんは地底の鬼を知りませんからね!?」
「…あー、会わせてなかったわ。スイカとか言う鬼いるからそいつ連れてけ」
「えぇ…」
紫「幻想郷崩壊の危機…!!」
藍「スキマの中で…!?」
━八雲家の最大プロジェクトが今始まる━
霊夢「なんで私まで」
紫「結界術なら貴方のほうが上手だからよ」
永琳「私は」
紫「いざとなったら、蓋してもらうわよ」