我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
後、ちょっと刃牙要素入ります。消力(シャオリー)って現実には存在しないんすね。
あれから数日。私、紅美鈴は。主人であるレミリア様同席の元。博麗神社にて雄大さんとの再戦をしています。どうにも、レミリア様はあまり期待はしておらず、賑わっているのはその外側、魔理沙さんや霊夢さんの二人。後奥に金髪の変な方。何もない空間から身体を乗り出して見ている。
「…では、参ります!!」
「来いやぁ!」
棒立ち、完全に油断している。まずは雄大さんのお腹を踏むようにして蹴って、そのまま回転するように顎を蹴り上げる。と、回転した頭を掴まれて投げられる。すごい投擲だ。地面に落ちることなく、近くの木々に。ぶつかる寸前回転して木々を足場に跳ぶ。雄大さんはその間、やはり棒立ち。
「素晴らしい余裕ですね」
「まあな。今の蹴りが全力ならもう負ける気しな─」
油断を突く。上を向き喋っている喉元を狙って、手刀。私の手刀であれば、レミリア様にも褒めていただける程にはなかなかの切れ味を持つ。はずである。今、そのはずと言ったのは。
「何より、武術の出し方がなぁ」
「…っ!」
「中国拳法とか言うのに限らず、全力で戦っとくれ」
完全にスイッチが入る。まずは横腹に蹴り。雄大さんの身体が揺らぐのを感じて、そのまま反対の足で跳び、顔面にドロップキック。反動で距離を取り、武具を取り出す。ただの棒に見えるソレは、決して壊れることのない屈強な武具。私が信頼できる、
「せいっ!」
水月を狙い、一突き。その後人中も突いて、棒を回して股間を潰す。男の弱点、これなら多少の痛みは感じるは─
「らぁ!」
「っぁ!」
力を完全に消し、相手の力にしたがって、ダメージを減らす技、
「っぁ?」
「身を引いた程度で俺の力を受け流せるかよ」
ああ、なるほど。つまり、私の持つ受けの力ではまず持って勝負が成立しない、と。そういうことだ。では、攻めはどうだろうか。体を揺らがせる事はできた、つまり多少は通用するということ。なら、攻撃を受けなければ良いこと。今まで以上に集中して、走り出─
「うらぁ!」
「がっ」
これは、ラリアット。人間なのにも関わらず、なんて威力。一瞬、記憶が飛ぶ。更に、地面を見れば。大きなクレーター。やはりこの人、人間ではないのでは?と考え、素早く立つ。先日のようなことはしない。雄大さんを探して、カウンターの構えをとる。
「カウンターか。良い判断だ」
「今度はそんな簡単にやられませんよ」
今までの雄大さんは力だけの人。であれば、カウンターが一番効くはず。そう思ったのも束の間、何かが飛んできて、私の横を掠める。雄大さん足元を見れば、酒瓶。空の酒瓶を投げて来た。距離を詰めざるおえない状況。刀を取り出して、棒を牽制に投げ飛ばす。
「もらったぁ!」
「どうでしょうかね!!」
刀を振り下ろす。棒で受け止められるのは想定済み、その時に空いた横腹をもう一つの刀で切る。どんな妖怪でも、どんな達人でも、この刀で切れなかった者は私の主人であるレミリア様以外にはいない。自信を持って、振り始めたその時。
「マジマジと見てんじゃねえ!!」
「ぶっ!?」
顔面を殴られた。その場で半回転して、頭を強く打つ。まずい、このままでは首を掴まれるか頭を踏まれる。全身で身を飛ばして、ヌンチャクを取り出す。もう片手には縄。取り出した後、雄大さんを見つけようとして、周りを見てもいない。上か。
「危なっ!」
「随分と余裕だのう!!」
後頭部を叩いたヌンチャクが、逆に弾かれる。あり得ない光景を目にして、自分の目を疑いたくなる。縄を手繰り、顔面の側で空気を引っ叩く。流石にこれには堪えたか、耳から血を流した。さらに足も止まった。これならば、どうだ。雄大さんは立ち止まったまま、自分の血を見つめている。その姿が何か、恐ろしさを伝えて来る。
「どうしました、鼓膜でも破れましたか?」
「うらっ」
予備動作のない、本機の投擲。脇腹に棒が刺さる。まさか、まさか。あの人は、全力ではなかった?まさか、あの日。初めて会ったあの時だけが、本気だった?確かに、握力だけで私の頭蓋にヒビを入れられる人の殴打があれほど優しいわけがない。棒立ちだったのもそのせい?
「…本気じゃ、なかったんですか?」
「さあな」
意地悪なウソをつく。妖怪として、人間に舐められたことにムカつく。武術家として、手加減されたことにムカつく。私の本気の一撃だけでも入れてやりたい。なんて考えていたら。耳が切り落とされた。投げられた刀によって。もはや野次馬だった霊夢さんたちはなんの反応もしていないというのに。
「本当に酷い人だ」
「俺の身体から血を出させたのは過去に三人だけだ。誇りに思って良いぞ」
「それは、どうも」
遊びのような感覚でもう一本の刀が刺さる。今度は切られずに、お腹に突き刺さる。これでは本気の一撃はもうできない。どうやら、私がスイッチを入れるのが遅すぎたようだ。やはりわたしも舐めていたのだろうか。妖怪として、人間を。武術家として、力だけの野蛮人を。
「や、やめやめ!流石にこれ以上はまずい!」
「し、死ぬわよ!?中華料理食べれなくなるわよ!?」
「む、それもそうか…」
「あの美鈴が…」
「質問、良いですか?」
「なんだ」
「雄大さんに血を流させたのは、誰でしょうか」
うーむ。風見幽香と、八雲紫と、あとは誰だったか。んー、そうだ。人里だな。アレを個人換算するとめんどいから、一人で数えてる。だってあいつら、クワとか使って来るからな。流石に多勢に無勢、死ぬところだった。頭に刺さった時はもうほんとに死を覚悟した。
「そんくらいだな」
「美鈴」
「あ、はい!なんでしょうか!?」
「帰るわよ」
「え!?」
「帰るわよ」
「…まあ、そういうことです!それでは!」
「なあ、やっぱもう一本行けたんでねえか?」
「頭じゃないからなぁ」
慧音「あいつが起こした面倒事の中でも困ったのは、アイツが父親を殺した時だな。母親も側で死んでたんだが、そっちは知らないと言い張ってな…親殺しは人里じゃかなりの大事件で、追放もあり得る。あいつの起こした殺しはこれ以外に一つあるが、そっちも話しておこうか。こっちは人里の偉い人間でな。代表者のような奴だったんだ。その人は周りからよく嫌われていてな。まあ、私は…いや、違うな。そんな中、雄大はその人を殺したんだ。しかも惨くてな。下の内臓から潰して行ったらしい。恐ろしいだろ。この時、あいつはまだ十になったばかりなのに、だぞ。」