我はぐれ者、神社に住まう   作:神輿と櫓

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そのままの環境でも生きていけるけど、決して苦しくないわけではない、泥水のぬるま湯。


第32話

俺の人生のほぼほぼを話す。どーたらこーたら。まあ、俺自身忘れてることもあるわけだが。少なくとも食生活だけで言えば誰にも負けないほどにキモいものを食べてきた自信がある。虫が食えれば御の字、虫以外を食う時だってある。まあ、全部虫の方がマシな飯なんだがな。

 

「…さ、お前は?」

 

「…私は…」

 

曰く。飯はあった。曰く、住処はあった。ただ、生きるための最低限をいくつか削っての生活だったらしく。日毎に削るものを選ばなければまず何もできない。その上、住処も飯も強いやつに持って行かれる。どこの労働所だ。まあそちらもそちらで過酷そうではある。

 

「でも、死ぬことはなかったんだろ」

 

「一人も死ななかったよ」

 

「じゃあ、閻魔も見逃すわけだ」

 

「なんでさ」

 

「そもそも、俺の環境で出会った閻魔になんて言われたと思うよ」

 

「…死ね?」

 

「言わねえよ流石に…『餓鬼道から地獄道への片道切符、今なら渡せますよ』だってさ」

 

「なんだそれ」

 

「簡単に言えば、飢えて罰受けろってさ。」

 

簡単に説明する。俺も一度だけ行ったが、特に。餓鬼道はそんなに変わらず、地獄道も。何人も殺して罰無しはおかしいだろう、と。

 

「ま、そんなこと言っても仕方ねえ。んでどうする天邪鬼。小人族を騙したままか?」

 

「はっ、知るかそんなこと。騙される方が悪い」

 

「そうか。」

 

「あ?なんだよ、腕掴むなよ!」

 

小人の前に連れて行く。放り出す。謝罪させて、許して貰えば良いのだが。小人族の長は天邪鬼の事信じきってたし、まあ良いだろ。俺の知ったことではない。真横で謝るまで腕組んで待つしかないがな。こっちみんな、相手見て謝れ。頭踏み潰すぞ。

 

「はぇ…正邪の言ってたことは嘘…」

 

「そういうことです」

 

「…なーんだ!あー、心配して損した!じゃあ私たちは表に出て良いのね!」

 

「良いんじゃないか?」

 

神社に戻る。天邪鬼を新しい家族に加えれば、罪も軽くなるだろ。罰もだけど。そうじゃなかったら一生やらん。まじで。出てみると閻魔はいなかった。恐らくは死んでからのお楽しみということか。小賢しい、と言うか。なんというか。

 

「…ん、霊夢か」

 

「お父さん、その女誰?」

 

「こいつか。天邪鬼だ。さっき拾った」

 

「…まさか」

 

「霊夢、家族が増えるぞ」

 

「嫌だ!!」

 

「なっ、私だって嫌だ!こんなボロっちい家なんて!」

 

「はぁ!?」

 

「…とりあえず夕飯だな。二人とも話し合ってろ」

 

「‥チッ」

 

「今舌打ちした?なあ、したよな??」

 

あの二人は犬猿の仲だったか。天邪鬼だからか、妖怪だからか、性格の問題か。性格の問題であってほしい。俺が面倒だから。

 

「…おーい、できたぞ」

 

「痛い!」

 

「はーい!」

 

振り返れば。口と手を針で刺された天邪鬼と、それを横目にもう一本、と針を手繰っている霊夢の姿。この二人、そもそも仲良くできるのか?

 

「…新しい家族に何やってんだ霊夢」

 

「巫女としての仕事果たしただけ」

 

「お前なぁ。ほれ、天邪鬼も立て」

 

「せ…じゃ…!」

 

「あん?」

 

針を抜いて聞いてやると、名前を言っていたらしい。正邪、なんだとか。こいつはよくもまあ…親がいなさそうな場所で名前がついていやがる。羨ましいもんだ。自分で考えたにしろ親が考えたにしろ。

 

「このあとなんかあるか?」

 

「何も」

 

「風呂だろ」

 

「正邪に風呂の使い方教えてやれ、霊夢」

 

「はぁーい」

 

「嫌だ!」

 

「…だって」

 

「はぁー…ほれ、こっち来い」

 

「なんでお父さんの言うことだけ聞くのよ」

 

「お前みたいなやつの言うことは」

 

「はぁ?」

 

「っ」

 

風呂の使い方を説明する。ウチの神社はツテとかそこら辺を辿れば飯は豊富だ。まあそれでも米とかは少しやばいんだが。紫に仕入れて貰えば余裕は持てる程度で、そもそも異変の解決に動けば慧音先生辺りからお礼がもらえる。そのお礼で暮らしたりもするくらいには元々の余裕があるんだ。

 

「正邪」

 

「何」

 

「絶対に水遊びすんなよ。」

 

「はぁ!?私を何歳だと思ってんだ!」

 

「知らん。とにかく、無駄遣いはないようにな。あとは布団だが…河童に言えば買えるか?」

 

「閻魔の差し金なら閻魔に言えば良いでしょ」

 

「そうは言ってもな霊夢。最近だと紫はこっちに顔出さねえから呼び出せねえんだよ」

 

「あ、そうなんだ」

 

会話に置いてかれてシャワーをいじり出した正邪を抑え、抱える。細いなほんとにこいつ。それはそれとして。紫が最近来ないのは何故だろうか。やっぱりスキマで暴れたのが不味かったか?それなら、多分スキマの修理に…何ヶ月かかってんだろうか。

 

「…仕方ない。物置にあったろ。まあ身長は同じくらいだし使えるか」

 

「物置?」

 

「?」

 

物置にある布団を取り出す。今の霊夢の身長は150後半。そのため、子供用には少しでかい布団が少し使えなくなっている。代わりに今の霊夢は先代が使っていた布団を使っている。つまり、霊夢が小さい頃使ってた布団のお下がりである。客用は、パツキンの分でもあるので使えない。これで寝る準備は万端。

 

「寝るか」

 

「そうね」

 

「私のなんか少し小さいぞ」

 

「仕方ねえだろ、霊夢のお下がりなんだから」

 

「私は嫌なのに」

 

「あー、でもあったかぁ…」

 

「お父さん」

 

「何?」

 

「お父さんが欲しいものって、何があるの?」

 

「…そうだなぁ。結構あるけど、別に良いかな、望める限りは叶ったみたいなものだし」




美鈴「養子縁組をしたと聞いて」
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