我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
素晴らしきかな。
我、美しき也。
正邪が来てから数週間が経った。俺は眠い目を擦って朝飯を作っている。正邪は喚きながら飯を待ち、そんな正邪にムカつきを隠さない霊夢が静かに待っている。出来た飯を置き、背筋を伸ばし、紫をスキマから取り出す。お前が把握してるうちの話では、近い間に異変は起きないことを誓ってもらった。
「なんだ、二人とも」
「なあ、やっぱこいつおかしくね?」
「そうね…ウチのお父さんに常識ってないから…」
「感覚の話だから仕方ねえだろ。なあ紫」
「私がスキマを開く時は能力使ってるけど…藍は考えて使ってるわよ?」
「式はなぁ」
実際、藍は結界術の延長でスキマを使っているらしく。紫に拒否された瞬間に同じスキマは使えず、スキマが開けなくなるかもしれない、らしい。 まあそうなったら藍がどんなことするかと言えば。放浪するだけだろうな。特に何もしたいことがあるわけじゃないだろうし。
「でも、実際。貴方の能力とかは気になるのよね。感じることができる力?それとも、力そのもの?」
「そういう鑑定所はないのか?」
「ないわね。皆が皆、憶測と経験から言ってるだけ。例えば、このお酒だって。呑んだ経験のある人間が、合う肴を憶測で出して、結果美味しくなるのよ。」
「あーはいはい。お前の話は寺子屋中退の俺にはわかりにくくて嫌だわ」
「あら、この程度も分からなかったの?ごめんなさ━ぶぁっ」
鉄拳制裁。霊夢と正邪は何か用事があるらしく。霊夢は里へ。正邪は…よりによって、命蓮寺らしい。あー、星と白蓮が変なこと言ってないと良いんだが。マジで。あいつらの良心にかける。二割くらい。残りの八割はナズーリン。小さい知将らしいからな。
「で、そんな中お前か」
「何、悪いか?」
「いや、何も。ムカつくことを思い返すくらい」
「じゃあ、今からでも構わないよ。私は」
モリヤの神。その本人が来て、御柱を投げつけてきた。掴んで止める。神社を崩させるなんかダメだし、調子に乗らせるのはもっとダメ。モリヤごと山をもう一回殴りに行くか。それも俺は良いんだが、なぁ。
「…やめろ」
「聞きたいことがあってね」
「何?」
「お前さん、博麗の巫女と血がら繋がってないだろ」
「まあな」
「理由は?親代わりしてる理由。」
「縁あってな」
「そりゃ、ここの神様と?」
「…え、ここに神様いるの?」
「博麗の巫女はなんて?」
「知らねって。俺も詳しいことは知らんが、まあ八雲紫くらいだろ。知ってるの」
「ちなみに、私が信仰されてるわ」
突然出てきた紫に蹴りを入れる。巷じゃ、こいつも神様見たいって呼ばれてるから嘘と言い切れない。神様から見てこいつも神なのか、神じゃないのか。そもそもそれがわかるやつはいるのか?それこそ、巫女あたりじゃないのか。だとすれば霊夢だけになるな…
「…いや、私はあんなふうに胡散臭くはないぞ。歴とした神だ」
「まあそうなんだろうけどさ」
「…いや、私は」
「なんでお前同じこと二回言ってんの?またボコされたいの?」
「沸点低すぎだろお前。さてはモテないな」
「モテたって、ウチの娘に嫌われたら台無しなんだがね」
「親バカだろ、お前」
「そっちの娘は何か必死になってるけど?それに比べて、こっちはゆったりのんびり。幸せはこっちだ」
「神のいない幸せは辛さだ。何せ、神託がないからね」
よく口が回る奴だ。無視しよ。そもそも学がないんだよ俺は。そんな俺に学のある話を求める方が悪い。つーか、神託ってなんだよ。…神様からの、何か?そんなもんウチの神社には必要ないし。じゃあこいつの言ってることに耳を貸す意味は?…ないな。帰したらへんな奴がもう一人。今日は客がよく来る日である。
「先日はどうも」
「お主か!太子様を地面に埋めて慣らしたのは!!」
「…え、そんなことあったんですか?」
「その分も含めたお礼をしに来たのさ。」
変なやつである。最も、こいつが何をしに来たのかは知らないし、言ってることが事実なら、周りにいる奴らもこの変なやつの取り巻きであるはずで。
「私は豊聡耳神子と言う。今後は、是非私たちの力になってもらいたい」
「…弱い奴が、俺を使おうとするんじゃねえ。また埋めるぞ」
「はぁ?」
「やはり野蛮な男ですぞ太子様!」
「これほどに真っ直ぐ断られるとは」
「それに、来るなら一人で来い。なんで取り巻きと来てるんだ」
そう言って取り巻きを埋める。白いやつは皿を投げてきたが、残念俺の方が硬い。皿が割れる。緑色の方は電気を放ってきた。が、残念俺の方が早い。豊聡耳神子とかいうやつを盾に、肩チョップで埋める。
「…うわ、出てきた」
「私はもう死んでるからな。埋まらん」
「…これではまともな話し合いができないな…布都、屠自古。一旦帰ってくれると助かる」
「はい。…埋まってるやつはどうします?」
「無理にでも連れていけ。人外なら死なん」
「はいよ」
さて、話し合いが継続されたところで。こいつ、変だから嫌なんだよな。命蓮寺の奴らは妖怪としては普通なんだけど、こいつは人として変。人としてっていうか、生物として変。しかもなんか見透かしたような目で見てきやがるし。死ねや殺すぞ。
「それで、どうかな。私たちと同じように、仙人を目指したりは。」
「道を外れるのは嫌いじゃないが、輪廻の道なら話は別だ。帰れ」
「死神に追われるのは嫌かな?」
「娘に嫌われたくない」
娘「お父さんもいつかは死ぬのよね…私が初めて会った時よりは大きくなってるけど、老けてるようには全然。ていうか、老けてるの?」