我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
「なんだよ紫。呼び出しやがって」
「最近、里が荒れてるのよね」
「宗教でなんともならんのか?」
「なってないのが現状。だから、今回は貴方に協力してもらおうかな、と」
「どういうふうに?」
「…貴方を妖怪にする」
妖怪にされるらしい。しかしそうなれば俺は霊夢に退治されてしまうので。断りたいのだが、紫がこういうふうに頼むときは大体その霊夢が関わって来る。だからまあ、俺としては受けることになる。いやぁ、何故俺が。納得のいかないことにはなるが、まあ、うん。
「里が荒れてるのを、貴方を通して博麗の巫女に解決させる。というよりも…貴方がいると、博麗の巫女が機能しているのかを疑問視する声があるの。」
「脳がない老害か」
「いや…賢者」
「はー!だとしたらあれか!えーと…あの、黄色い奴」
「そう。それで、まあ…貴方を巫女から離す。同居人なら天邪鬼がいるし、問題はないと思うけど」
「…ちなみに、このまま放置したら霊夢はどうなる?」
「次代を急ぐことになるから…まあ、うん」
「よっしやるわ。妖怪になるにはどうすりゃ良いんだ?」
まず。死にますと。その後に、閻魔と冥界に話を通してその魂を連れて来る。連れてきた魂を使って、妖怪にする。聞いた途端、はぁ。という声しか出なかったが、まあそれは良い。しかし問題は、妖怪になった後、霊夢に退治されてもなお生きていたのなら。どこで暮らそうか。
「どうやって死ぬかな」
「貴方そもそも死ぬの?」
「そりゃ死ぬだろ。人間なんだぞ」
「…まあ、そうねぇ…それこそ、窒息死とか?死体はこちらで処理するから、霊夢にはバレないし…ただ。私のやり方でやる場合、妖怪として分類はされても、種族はないに等しいわ」
「スキマ妖怪とかみたいな奴か」
「そう。だからその点は注意。じゃ、息吐いて」
その後。俺は息を吐き出した後に水に頭を突っ込まれる。薄れ行く意識の中、ふと。『これもしかしなくても、自殺じゃね?』と思った。
「ん」
「あ、ようやく起きましたか」
「藍か。ようやくってのは?」
「…死んでから、大凡二週間ほどです。紫様もかなり心配していました」
「だろうなぁ…霊夢は」
「霊夢は…」
「?」
「ご自身の目で、どうか」
へんな言い方をされた。ので、藍のスキマを使って覗いてみると。なんだか荒んだ神社。二週間くらいで、これ?降りて見に行っても良いが…正邪は?あいつはどこだ。あーもう面倒だな。スキマもう超えて良いか?ダメ?ダメか…で、肝心の霊夢は?
「…もう超えるぞ」
「あ、ま、待ってください」
「じゃあさっさと霊夢写せ」
「…わかりました。でも、私達を責めないでくださいね。」
その言葉に最悪の考えが浮かぶ。自殺?霊夢が?んなバカな。俺だって、そういうのは頭から消え去っているのに。一体何があった。
「…」
「おい、藍。ここに霊夢はいないが?」
写されたのは神社の物置。神社の物置に霊夢はいない。が、一体何があるのか。暗いからよく見えないと思えば藍が光を照らしてくれた。紫色の服やら、見た覚えのある尼が着てる服やら。つまりこれは、紫と聖。その奥を見てやれば、風見幽香。
「…一応、生きてはいます」
「これどうすんだよ」
「とりあえず、私も一緒に出ますので。出たとこ勝負です」
「…まじ?」
神社に降り立つ。立って、初めて気付く。荒れてるんじゃない。どこか、雰囲気が重いのだ。その上で更に。正邪が賽銭箱の上で胡座を描いている。何か、正邪も様子がおかしい。藍を見てやれば、険しい顔をしている。
「お、ようやく来た」
「正邪。この重苦しい雰囲気の正体とかわかるか?」
「二週間も待たせやがって。まあ、そうだな。とりあえず」
「おーい?」
「なんでお前が妖怪になってんだ?」
「…正邪?」
少しだけ、身を引く。話が通じない。無視?違うな。目がおかしいのはきっと俺の感覚だが、重苦しい雰囲気は違わないはず。どこからか、階段を上がる音が聞こえる。藍を見てやればそれこそ重大なミスを犯したかのような汗を流していた。なんだ。なんかあったのか?
「お父さん」
「うわっ…霊夢か」
「お父さん」
「なんだ。」
「お父さん」
「…おい正邪、何があった?」
「なんで妖怪になったの?」
「お前もか」
「藍。あんたは何か知ってる?」
どちらも話が通じない。とにかく、物置から妖怪を連れ出て話を聞く。するとどうか。俺を探すために大妖怪を攫ってボコって聞いていたそうだ。聖は妖怪だったのか…?次に紅魔館らしく、そりゃお疲れですねと挨拶して去りたいんだが去れないなぁ。じゃあこういうやつに出来ることといえば。
「霊夢。お前、親離れしろ」
「何言ってるの?お父さんが、でしょ」
「正邪を育てるも良し、博麗の巫女として生きるも良し。少なくとも俺はここには寄り付かん」
「は?なんで?お父さんだって、私と離れたくないでしょ?」
「俺は妖怪になった。妖怪らしく自由に生きる」
「お父さんが消えてた二週間、その分の当番だってあるよ?」
「正邪、すまんな」
「ねえ、お父さん。私だって、まだお父さんと一緒にいたいよ。ずっと、ずーっと」
正邪は何も言わない。それに、霊夢も。こりゃ困った…どうするかな。やっぱり、何かで決着をつけるのが一番か。そうなると…霊夢に合わせるなら弾幕ごっこ。俺に合わせるなら殴り合いだな。…なんでこうも、断ち切ってさよならができないのか。
「霊夢」
「嫌だ」
「弾幕ごっこだ」
「ずっと一緒だって、言ったでしょ」
「ルールはそっちに合わせる」
「お母さんの死体を見た帰りに、言ったじゃん」
「…は?」
「頭撫でながら、言ったでしょ。」
慧音先生「…」