我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
先生〜!!
「どういうことだ。あそこに、お前いなかったろ」
「いたよ。二人で見に行くぞって、言われたから」
…知らない。そんなはずがない。俺は、確かに見に行った時は一人だけだった。だから、あり得ない。でも、もし俺の記憶が本当だとして、俺から話してもない巫女の話について、霊夢は知ってたんだ?もしかして、俺は何か忘れてる?誰かの仕業か?それとも、何かあったのか?
「…一つだけ、言わせてもらいます」
「藍…何か、知ってるのか?」
「私は、貴方の記憶について知っていますし、貴方と霊夢での齟齬も説明できます」
「話せ」
「…はい。」
簡単にまとめれないが、まあ。藍によれば、霊夢の言い分が正しく。先代の死体を見てから先。ほぼ記憶のない部分は慧音先生が食い、その前後を紫が補填。正しい事の経緯は。俺が霊夢を連れて行き、死体を見つける。その後、霊夢と共に神社に戻る。が、ここで家出。巫女になったから、と思っていたが、どうにもその間人殺しをしていたらしい。
「…藍。紫を助けろ。他もだが、紫に恨み言がある」
「わかりました」
「霊夢」
「何、お父さん」
「慧音先生のところに行く。お前も来い」
「ん、わかった」
人里上空。空に立ち、そのまま大きな声で慧音先生を呼ぶ。何度も。何度も。何故霊夢の記憶はそのままで、俺の記憶だけが弄られたのか。呼べば呼ぶほど、声に怒気が入っていく。
「…先生」
「なんだ」
「最近の人里は、どうですか?」
「あ、ああ。宗教の効果もあるが…霊夢が、そこら中の大妖怪を退治してくれているおかげでな。随分と、穏やかなものだぞ」
「慧音先生」
「…本題か?」
「俺の記憶、どんな味でしたか?」
「思い出さないようにしているよ」
慧音先生から話を受ける。何もせず、何も聞きたくないのに、聞かなければ。どうか、神様ってのが祀られてるなら。俺の知ってる先代の死に方の記憶よりは幾分かマシの死に方であってほしい。のに。慧音先生曰く、クワで足を刺し、そのまま内臓を引き摺り出すまでずっとクワで人体を掘っていたらしい。
「…先代を殺した奴を殺したのは、俺?」
「うむ。私は、その殺した部分の記憶を食い、紫という大妖怪に頼んで記憶に細工をした。」
「じゃあ、なんで霊夢だけ」
「霊夢には細工する意味がない、と八雲紫に言われたからだ。それでは意味がない、と」
何かが崩れていくような感覚。
「今までお前を騙していてすまなかった」
霊夢はあの末路を知らないだろうと思って、俺だけの不安だと。そう思っていたのに。
「…お父さん?」
「雄大。詳しいことは八雲紫から聞いてほしい。私も事後報告で、詳しくは」
本音、なのだろうか。私の主人は、とある男を旦那様、と呼んでいた。本人の前ではそんなことは言わずに。となれば、私も仕えることは必然で。橙に会わせたことがないのは不安だが、八雲藍としての仕事はするつもりでいる。そのつもりでいた。紫様が男を妖怪にした方法は、妖怪にするというよりも、依代を使った、どちらかと言えば仙人のようなやり方で寿命を無くしている。
「…ぅ、あ」
「紫様!」
それが成功し、雄大様は死に戻った。雄大様が死んだ時、紫様が歓喜していた様子は忘れることはない。『彼が手に入った』と、騒ぎながら布団の中に入っていった様子なんてものは、あまり忘れ難いものだ。おそらくは。紫様の喜びも、賢者に言われた霊夢の独り立ちも、どちらも紫様の本心。
「ら、藍…」
「落ち着いてください。雄大様は、人里に向かいました」
「まあ…でしょうね。そういう人だもの、私の旦那様は」
「あら、そんなことを言う余裕がまだあったなんて、驚きだわ」
「幽香。諦めなさい。彼は私の━」
紫様が、霊夢に捕まったのは。それこそ、霊夢が弾幕ごっこで勝ったのもある。が、それとは別に。風見幽香の所へと自慢に行ったこともある。そこへ霊夢が駆けつけ、二人とも。聖白蓮に関しては、そのあとに捕まったようで。どうやら、霊夢が心当たりを一つ一つ潰していったようだ。
「じゃあ、続きをしましょうか」
「私と?良いの?貴女が負ける言い訳はできるけど、その時はもう死ぬだけなのよ?」
「そっちこそ。死んだら結界も危ういのに、どうするのかしら。今から楽しみね」
「次は…」
その時。突然、嫌な予感がした。何か。どうやらそれは私だけなのか、紫様と風見幽香は見向きもしない。気のせいならばそれで良いが。聖白蓮の回復がまずは先、か。此方は、不老長寿。死ぬ時は死ぬのだから、早く回復せねば。
「藍」
「っ、雄大様!?」
「まあ!私が妖怪にしても全く変わらない格好良さ!」
「…っ」
「藍。紫を殺しても、結界に影響はあるか?」
「いえ…今の博麗の巫女が居るうちは。引き継ぎなどがあれば、まあ…」
「…そうか。」
「紹介するわね、幽香。私のだん━」
「触るな」
明確な拒絶。紫様は少し間の抜けた顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻り、いつもの調子に戻る。そういえば、霊夢は。人里に連れて行ったはずなのに、霊夢が見当たらない。上にもいない。何か、あったのだろうか?考え事から頭を離し、紫様を見れば、雄大様が手を握りつぶそうとしている所だった。
「雄大様、どうか、おやめください」
「ん、そうか…」
「ねえ」
「なんだ、風見幽香」
「…いえ、なんでもないわ。その様子だと、死に戻ったこと以外は紫の妄言らしいし。」
霊夢「お父さん早すぎ」
慧音「…(何故私も?)」