我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
バーサスフラン
「こいつか」
「そいつよ」
「お姉様、これは?」
「美鈴にタイマンで勝った人間。勝ったら食べても良いわよ」
何故私がこんなことを。巫女を説得し、この男を連れ、妹のところなんて…ぁあ、パチュリーから何を言われるか。図書館を荒らすな、だろうか。それとも、無茶をさせるな、だろうか。もしこの男が死ねば、美鈴がどう思うか。無論フランは巫女の逆鱗に触れたとして追いかけ回されるだろうが。
「レミリア!ここで良いのか!」
「弾幕ごっこじゃないの?ふーん」
首肯。
「じゃあやるぞ!」
「うん!ぎゅっとして─」
「おそい!」
速い。フランと男の距離は8メートルはあったはず。それをフランが反応するよりも早く移動して、そのまま蹴り飛ばす。これでは、私の勝ち目がないと言われているようなもの。美鈴と殴り合いをした時よりも速いことから、あの時は全力ではなかったらしい。
「強いじゃん!」
「喋んな!」
ヤクザキック。フランは飛ぶが、あれは分身。つまり今フランはフォーオブアカインドを使っている…人間相手に?いや、アレを人間と見て良いのか?アレを人間としたのなら、人間の振れ幅が大きすぎる。妖怪の血が幾らか混じっていなければありえない強さ。
「なんだ、増えんのか?」
「「「舐めないで!!」」」
「うるせえ!!」
両手でフランの頭を潰すように叩く。すると分身は消える。分身とは言え、叩くだけで消すなんて。この男の本気は私達は甘く見ていた。と、その時。男が飛ぶ。男の腹に刺さっているのは火の槍。だが刺さったにしては浅く、突き飛ばされたの方が正しい。
「握れる火なんて初めてだ!お返しするぜ!」
「はぁ!?」
フランのお腹を突き抜け、さらにその先の壁へと刺さる。図書館でやらなくてよかった。まず間違いなくパチュリーの逆鱗に触れるところだった。引きこもりのくせに、中々に強い。本気を出されたら私だって手を焼く。フランがお腹を再生していると、男の前蹴りがフランの頭を襲う。
「ぎゃっ」
「弱いなぁ。これじゃ弱いものイジメだ」
「言ってくれるじゃない。フラン!」
「ぎゅっとして!」
どかん、の声が聞こえることはなかった。男がその言葉を聞いた途端に足元の床を砕き、破片を持ってフランの方へ投げた。フランの喉元に刺さった残骸が、フランの声を邪魔した。
「かぼっ」
「その声が壊す能力の鍵なんだろ、じゃあやらせないのが一番だ」
そう言って歩み寄った男は、伏せているフランを蹴り始めた。数秒間、呆気に取られていた私も、流石にそれはダメだと考え直し、無理やり止める。これではもう勝負ではない、殺し合いになる。フランが勝った時も私は止めるつもりだったし、これは仕方のないこと。私が巫女に殺されないための処置で、フランが殺されないための処置。
「はー…はー…手加減とかって知らないの?」
「知っとる。だから美鈴の時は加減したし、あいつの能力妨害する時は本気だったし」
「あれで全力じゃないわけ?頭おかしいわよあんた…」
「風見幽香レベルじゃないと俺は本気を出さん。」
…しかし、金髪が二人出てきたぞ。パツキンの呼び方変えるか。呼び方…んー、子供の時の印象が金髪以外に無かったんだよな。それ以外であるのなら…あー、んー…えー?なんかある?決めた。妹の方を変えよう。七色…は、パツキンの友人と被るから…そうだな。妹伝で良いか。
「さて、こっからどうしよ」
「寝るならウチで寝ていきなさい。夜中に連れてきたんだから」
「あー、それもそうだな。寝とくわ」
「こちらです」
「お前は本当になんなの、急に出てこないで」
あいつ本当心臓に悪い。霊夢と同じくらいの年齢だから…若いと心臓強いのか?今度霊夢にもやってもらうか。目に悪い館じゃなくて、ウチで。翌朝目が覚めてさっさと家に帰ると、机の上で霊夢が伏せて寝ていた。目の前には冷めたご飯が。まさか、夜の帰りを待っていたのか。うーん、伝えておくべきだったな
「…あ、ようやく帰ってきたのね」
「うーす」
「ご飯冷めちゃったじゃない」
「いやいや、このまま食うけど」
「…そう」
少なくとも今後出かける時は遅くなるから先に食っとけって伝えなきゃな。一人で飯冷ましたまま寝られたら流石に良心が痛む。しかしまあ、こんな姿を紫か華扇あたりが見てれば放っておかないはずなんだが。そいつらは見てもないのか。まあ…あいつらって忙しかったか?…あんま忙しくなかったはずだろ?
「あ」
「げっ」
「何ですかその反応は。それで?霊夢に対して謝罪は?」
「した。帰ってきた時にな。美味そうな菓子包んで渡したら許してくれた」
「紅魔館の?」
「そそ、クッキー」
…華扇の奴はいた。あとは紫だが…こっちは来ないだろうな。そろそろあいつも冬眠の時期が近いし。冬眠が近くなったらあいつは出てこなくなるしなぁ。まあそれはそれで別に良いんだがな。俺は関係ないし。
「そういやなんでここに?」
「私は霊夢に巫女としての働きを説きに来たのですが…。ご飯がまだだから、と言って一晩待ってたんですよ。私にも、霊夢にもちゃんと謝ってくださいね」
「少なくともお前に謝る気はねえよ。俺を馬鹿にしてんのか」
「はぁ?」
「俺には巫女云々は知らねえからな。親代わりもマトモにしてないし」
「私は反対したんですけどね」
「人殺しが巫女の育ての親なんてー!とかか?紫の押し切りだったな、あれは。」
慧音「追い出されてから数日経ってな。雄大の様子を見に里の外に出たんだ。勿論安全な道は選んだ。雄大を見つけた時、雄大は何かを食べてたんだ。まあ、妖怪だな。それを遠目に見て、私は…間違えた、なんて思った。私に気付いて、私に駆け寄って。本当に…」