我はぐれ者、神社に住まう 作:神輿と櫓
妖々夢始まりっす
そろそろ春が来てもおかしくはない頃なのだが。どうも春は来ない。どうやら春は外の世界で強烈に思い出されたものらしい。気候も忘れ去られて来てんのか。霊夢曰く、今年の冬は長引いてるだけらしい。んなわけねえだろとパツキンが乗り込むが、知らんぷり。
「…と、いうわけにもいかんしなぁ」
「な!霊夢を動かしてくれよ!」
「霊夢〜」
「何」
「このままだとお父さんは凍え死んでしまうぞ」
「嘘つかないでよ。お父さんの周りだけ雪溶けてるし」
「嘘つくなよ。お前死なねえだろ」
「…霊夢、これを異変と認識しなければお前を掴んで空へ投げ飛ばす」
「わかったわよ、行けば良いんでしょ」
「おう!」
「…パツキン、戻ってきたらお前は殴るからな」
「殺害予告?」
さて、二人が行った。ので俺は外でいつもの日課を済ませる。水を撒き、逆立ちをして、そのまま紫のスキマに蹴りをぶち込む。異変の時はいつもこいつがここにいる。こいつ主催の異変がない限りはこいつはここにいるだろうな。まあそれはそれで良いのだが…いや良くねえな。異変の度に殴るのは埒が開かん。
「毎回思うんだけどさ」
「なんだ?」
「どうやって私の居る場所が分かるわけ?」
「どうも何も…こう、空気の中でコリコリしてるところがあるだろ」
「何それ知らない」
「そんで、そこを掴むようにして破ると、当たる」
「何それ、貴方本当に人間なの?」
「まあな…ここ!」
今度は藍が見つかった。優しめに引っ張り出して、尾を撫でる。あー、尾の部分だけスキマでこっちに引き出せないかな。霊夢の苛立ちも多少はなくなるだろうし、パツキンの機嫌も良くなるだろ。それが無理なら一尾だけでも。九尾とは言わん、三尾だけでも。
「…どう?」
「私としても尾は邪魔ですからねぇ…」
「え、私の秘蔵のコレクションに毛が乗るのはちょっと」
「えっ」
「藍、こっちに住まない?」
「橙が…」
「私が理由じゃないの?」
「橙を入れても部屋の数は足りるぞ」
「…!」
「ちょ、ちょっと、やめて!?私の周りを丸裸にするのはやめて!?」
「俺としてはお前より風見幽香の方が好みなんだが」
結局藍には断られてしまったので断念。そもそも霊夢がなんて言うか、だな。巫女も狐は嫌だと言っていたし…その気があるかもしれん。犬と猫は良いとか体の良いこと言ってたし。でも巫女には割と世話を見てくれた恩はあるからなぁ…お盆の時だけ藍を追い出せば行けるか!?
「にしても、貴方下戸だものね」
「酒は飲めんのだな」
「その図体でねぇ…身長は何センチなのかしら」
「測るか」
柱に背をつけ足でメジャーの先端を踏み、思いっきり伸ばしてもらう。紫は…能力使ってんのかわからないけど140台だと言っていた。見るときによるが、148の霊夢より高いはずなのだが。霊夢よりは背を高くしていたいのだろうか?藍は170はある。絶対。紫も俺と殴り合う時は180くらいになるな。
「二百…二十…三、かしらね。二百二十三ね」
「デカくなったか?」
「前測った時は…確か、二百十五だったわね」
「お前の本当の身長は?」
「142」
…嘘つくな、と叩く。いつもの霊夢なら。もうそろそろ終わってもおかしくはないんだがなぁ。しかし季節単位の異変なら解決するのは次の季節に移り変わる時だけか。慧音先生からの手紙もあるし、さっさと終わらせて欲しい。紫に心当たりを聞くと、あると言う。詳しく聞くと、紫の知人らしい。というわけで、天誅。
「痛いわね!私じゃないでしょ!?」
「うるせぇ。そんならお前止めとけよ」
「はぁ!?異変解決は巫女の仕事でしょ!?」
「ウチの娘を巫女にするのは俺も先代さんも納得してなかったろうが!!」
「何よ!霊夢の親名乗ってるけど、先代の巫女とそういう仲だったの!?」
「んなわけねえだろ!話逸らすな!」
「ぁあ!?わたしが決めるんじゃないわよ!!普通にあの子が巫女に適任だっただけ!!」
「ほんじゃ今からお前退治して幻想郷最初の神主になってやらぁ!!」
「上等よ!やってみなさぁあごめんなさい!」
顔面を3回蹴りつけてると、空から霊夢が帰ってきた。紫の頭を踏みつけていた足を退けて、紫を神社の外へと蹴り飛ばす。全く。異変を解決したので霊夢には夕飯を振る舞ってやろうと言うと首を振られる。じゃあ、なんだ?パツキンに飯を振る舞うのか?と聞くと、パツキンがそれを拒否する。‥他に誰かいるのか?
「私です」
「うわ、パツギン」
「安直すぎないか??」
「しっかし、紫があんなふうに飛ぶのかね」
「蹴り飛ばしただけだぞ」
「…それもそれでおかしいだろ」
「人体があんな風に飛ぶこと自体がおかしいのでは?」
まあ良い。パツギンに飯を奢ることとしよう。何が良い?と聞くと。『私が作りたいのですが』と言われ、困惑していると。遠くから聞き覚えのある服が…いや、服を着ているだけの透明な何かが飛んできた。なんだあれ。横から見ると下着丸見えだな。怖、きも。
「…どうする、霊夢」
「そうね。ご馳走になろうかしら。」
「私も世話になるぜ」
「…え、この男も来るの!?」
「当たり前でしょ。私とこいつは誘われたらセットよ」
「…フランと美鈴が…」
「おいこいつ自分の甲斐性なしを押し付けてきやがるぞ」
「まあお嬢様」
「おいおいレミリア、今回は亡霊も連れて来るんだぜ?」
「…ねえ、これ何のイジメなの?私何かした!?」
「人里で食えるなら俺もそうしたいがな。そもそも人里に入れねえんだよな」
「何したのよ」
「人殺した。二人くらい」
慧音「あの時は参った。人里の外で、人が生きられるわけがない。せめての思いでご飯を持って行ったんだ。そしたら、妖怪を食べてたからな。駆け寄ってきた雄大に対して、神社に行くことを勧めたのは…なんだろうな。私が満足したかったと言えばそれまでかもしれないけどな。雄大が生きる唯一の術だと思うんだ。幻想郷で眠れる獅子なんてのは人間には出来ないからな。妖力やら霊力で周りに力を示さない限り、挑む妖怪はいるんだからな」