「俺はな!お父さんって呼ばれたいんだよ!」 作:フウカの父
窓を滝のように水が伝う。それを静かに眺める。
雨がザアザアと瓦屋根に打ちつける音が響く。
それを見て一言言ってみたかった言葉を言う。
「…ちょっと田んぼの様子みてくる」
「ちょっと田んぼの様子みてくる」とはいわゆる死亡フラグと呼ばれるフレーズだ。
台風の時に「ちょっと田んぼの様子みてくる」と言い、その後に用水路などに落ちてしまうといった事故がよくあるからなぁ。
まぁ、うちの場合。山と川がすぐ近くにあるからそっちの方を気にした方が良いんだけどな。
「…危ないですよ。それ…」
当然、フウカに止められる。それもそうか、大雨なんて学生の時しか喜べない物だ。
J〇Rはすぐ止まるし、フェリーとかも止まるし、長い橋とかは通行止めで帰れなくなるからな。
「そういう仕事じゃないから関係ないけどな」
こういう時は在宅勤務だよな。
「…暇ならお仕事したらどうですか?」
おっと、フウカ。今日はダメだ。雨がうるさくて集中できん。これは仕方がない。
というか、フウカも暇なのかな。
「フウカも暇なのか?」
(눈_눈)
「...私は料理の仕込みがあるので。」
おっと、すまない。本当にすまないと思っている。家事任せっぱなしだったなぁ。
こうして話をしている間も雨は強まっていく。
光る雷光が家を揺らす。
「…この家大丈夫かな…」
フウカ…大丈夫だって。築年数もそこまで経っていないし、大丈夫だろう。
「ほら、フウカ。触ってみろ。この頼れる土壁をさぁ」
夏は涼しいだろう?(なお、冬は…)
「後、怖いのは雨漏りだけかな..。」
そんなに心配ばっかして..。
「大丈夫だって」
と思ってた時期が僕にもありました。
台風や強風によって瓦がずれると、隙間から雨漏りが発生することがある。
…そんな事もっと早くに気づけば良かった。
「ど、どうしましょう?」
慌てるフウカ。それも当然か、なんせこの家は…木造だからね..。湿度は天敵だよ。
まずは冷静な僕が落ち着かせないとな..。
「お…お、落ち着け。まだ慌てる様な時間じゃない。」
ほら、フウカこれを見ろ。…防水テープだ。後は分かるな?
「…じゃんけ「いや、フウカ頼む」ええっ!何で!?」
「いや、僕ヘイロー無いんで…」
これは、しょうがないね。うん。強風で飛ばされたら死ぬ。というか立ってられない。
(눈_눈)「......」
黙ってテープを受け取るフウカ。
「すまない。本当にすまないとおもっている。」
何も言わずにレインコートを纏ったフウカは外に出た。
雨は止むどころかますます強さを増していく。
フウカだけに辛い思いはさせられないなぁ..。
...仕事するか..。
「……ブウウウ…………ンン…………ンンン…………。」
完了だ。
僕は、ブログや本などで前世でのヒット作を書いている。
幸い、文学少年だったので、宮沢賢治などの児童文学や志賀直哉、堀辰雄、江戸川乱歩など有名どころはかなり読んでいたので、ある程度書けるのだ。
決して、著作権侵害ではない。僕は皆にあの名作を知って欲しいだけなんだよ…。
しかし、これくらい稼いでも、8割が養育費で飛んでいくんだよな..。
「やれやれだわ…」
…本当に同じ声優かよ..。
いつの間にか、雨はやんでいた。
リビングに行くと、フウカが机に顔を伏せていた。
「……………ふ、フウカ..。どしたん?」
おっと、昔の口癖が..。
「…今日は何だか疲れた。」
ひ、酷い..。誰がこんなことを..。
「風呂入って、寝るのが一番だよ。」
…久しぶりにどこかに誘おうかな..。
釣りとか…いや、渓流釣りは熊がなぁ。
海なら、朝か夜だけど。浮かんでるからなぁ偶に。砂浜にブルーシートと警察がいたときはビビったな。
…今日は皿洗いくらいは手伝うか..。
「はぁぁぁ」
おいおい、顔色がストーンフリーだぞ?
翌日、フウカは風邪をひいてしまった。
…理由しか思い当たらない。
「しかし、どうするかな…」
フウカの食事はレトルトのお粥があるからそれでいいだろう。問題は自分の食事だ。
「どれを食べたらよいのか…」
種類が多い。今までの食事の残り物をパックして冷凍していた。
うちの母親を思い出すなぁ。本当は二人、会ったことあるんじゃないのか?
皿を洗い終え、食事を終える。
フウカの部屋の前を通る時、覗いたがまだ寝ていた。
…やることも無いし、外に行くか。
鏡で自分の容姿を確認する。
「なんだかんだ言って、髪の毛は大丈夫だったな。」
遺伝子的にはげると思っていた学生時代。父親の頭を見ながら戦々恐々していた。
はげてザビエルの頭みたいになるくらいなら、いっそのこと丸坊主にしようと思っていたが、それは杞憂だった。
帽子を被り家を出る。
家を出て、歩くも周りは田んぼだらけののどかな景色が続いていた。
ふと、用水路を覗くと太陽の光を受けエメラルドの様に輝く藻にヤゴが引っかかっていた。
何となくそれをほどいてやった。
これでまた、秋にこの田んぼの上を飛び回るとんぼを見れるかな...
そういえば、小さい頃のフウカは虫が触れていなかったなぁ。
用水路に沿って歩いて行くと川が見えてくる。昨日の雨の影響か、少し濁っていた。
桜の名所である土手の桜並木には、花ではなく葉がしげり、桜のすぐ下ではアジサイが花を咲かしていた。
「フウカを引き取った日に、二人で通ったな…」
あの日、僕らは初めて一緒に歩いた。
会話も無いまま、この桜並木に通りかかった。
手を繋ぎながらもフウカは桜に夢中になっていた。
それから、毎日の様に通っていたが日に日に減っていく花びらを惜しんでいたな。
それで、随分と悲しんでいたっけ。
「フウカ…桜はね、また来年咲くんだ。だから、来年も来よう」
そんな約束をした。
土手を歩いていくと小さなベンチが見えた。そのベンチに腰掛ける。
「フウカ…」
最初はこんな感情も浮かばなかったのに..。長く一緒に居ると情が移る。
そんな事は分かっていたのに。
でも先が短い自分では..。
大切だから…傷つけたくないから遠ざけたいのに、離れたくない気持ちが強くなる。
悶々とする自分とは
対照的に空は何処までも青く澄みきっていた。
その青空の下で自分で握った塩むすびをほおばった。
「ただいまー」
すっかり夕方になり、あたりも薄暗くなっていた。
「おかえりなさい」
返事がした。
台所まで行くと、フウカが料理をしていた。
寝たら治った様だ。
「この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます。」
あぁ..出来立てほやほやは美味いよ..。
「今日は珍しく外に出てたけど、どこに行ってたの?」
何だか、引きこもりが家から出たみたいな驚きを感じる。
「あぁ…桜並木を歩いてたんだ。
…また、来年にも花見をしような…」
「そうですね..。」
フウカをジッと見つめる。
「…どうしましたか?」
きょとんとするフウカ
「いや・・・・・・」
人間…幸せだと思えることが大事なことだ。
だから、そう感じれている自分を喜ぼう。
今が永遠に続かないと分かっているのに、それを求める自分が居る。
何もしなくても時は進み、物は移り変わる。
それなら、…少しでも前に進める様に努力しよう…
「…いつもありがとう。助かってるよ」
「…そうですか。お粗末様でした」
そう言うフウカのヘイローが何故か嬉しそうに動いたような気がした。
オリ主君にもフウカにとっても、もう既に互いに大切な家族だと思っています。
・・・口調こそ他人行儀なところのあるの二人ではあるけれど
だからこそまだ踏み出せないラインがあるんですよね。
オリ主君のまだ言えないこと。フウカの聞きたいこと。
お互いにそれを言ってしまい、今の関係が崩れるのを恐れている。
壊したくない大切なものだけど、失って後悔しないように