「俺はな!お父さんって呼ばれたいんだよ!」   作:フウカの父

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一人暮らしをしようとするフウカとそれに嫌な顔をするオリ主君のお話


日常4

 

 

 

沖縄の離島では中学校までしかないから、高校に行くには島を離れる必要があるらしい。

 

 

 

そして、僕が今住んでいるところは人の少ない田舎だ。

 

 

 

 

 

つまり、何が言いたいかというと。

 

 

 

 

 

 

ゲヘナ学園に行くためには此処を離れるしかない…という事だ。

 

 

 

 

 

 

 

う~む、一人暮らしか…

僕も高校受験の時、寮のある高校も視野に入れてたっけ。

…結局、家から近い高校に通ったけどな。

 

 

あっそうだ。フウカも家の近くの学校に……………無かったわ。

 

 

 

 

 

ああああああああああああああああああああああああ

 

 

 

 

また一人暮らしかよ!何だよぉおもおおお_またかよぉおぉぉおおおお

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寂しいよなぁ…」

 

別に死別ではない…成長して巣立っていくのは良いことだ。

 

「…そうだ。」

 

僕は、押入れを開けた。

 

 

 

 

 

 

_____________

 

この家ともあと少しか…。

そう思うと、寂しい気持ちはこみ上げてくる。

 

それをまぎらわすために料理を続けた。

 

パシャパシャ

 

急にシャッター音が聞こえた。

 

振り返るとカメラを手に笑っているあの人が居た。

 

 

 

「…何やってるんですか?」

 

「何ってフウカ…見たらわかるだろう?写真を撮っているんだ。」

 

そんな事は分かっている。分からないのは何故、今撮っているのかだ。

 

「今の内に思い出を残しておかないとね..たった今、できる事だから。」

 

あぁ、この人はいつも遠まわしにしか言えないのだろうか…

もうちょっとハッキリ言わないと人とうまくやっていけないよ…

 

________________

 

 

 

懐かしいカメラを見つけた。昔はよくこれで写真を撮ったものだ。

 

電源点くだろうか…少しの沈黙の後、カメラは無事に動いた。

 

 

 

…何を撮ろうか。そう思いながら、台所に行くとフウカが料理をしていた。

 

パシャパシャ

 

シャッター音に気付いてフウカが驚いた顔で振り向いた。

 

 

「…何やってるんですか?」

 

「何ってフウカ…見たらわかるだろう?写真を撮っているんだ。」

 

..これが最後の思い出作りだ。

 

「今の内に思い出を残しておかないとね..たった今、できる事だから。」

 

最後まで、二人でいい思い出を作っていこう。…それが僕にできる事だ。

 

 

 

 

 

それから、毎日写真を撮り続けた。

 

何気ない日常、何気ない風景、ちょっとした幸せ。

 

それを忘れないように撮り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、お別れの日が来た。

 

幸い、すぐ近くまでハイランダー鉄道学園の鉄道が走っている。朝早くに出発という事は無かった。

・・・・終着駅ではあるが。

 

 

 

 

やはり駅前ということもあり、商業施設とホテルが賑わっていた。

 

ホテルが賑わっても嬉しくねぇなぁ。

 

 

 

駅までの道を僕は無言でフウカと歩き続けた。

 

二人とも無言ではあったが、とても良い時間だった。

 

そんな時間はすぐに過ぎ気づけばもう駅に着いていた。

 

日本のJRでも、駅の入場券という改札内に入って家族や友人を見送ったり、改札内のお店を利用したりするためのきっぷがあったが、それはこちらでも変わらなかった。

 

 

…できる限り、一緒にいたかった。

 

 

 

 

 

 

電車が来るまではまだ時間ががある

 

「…最後に、二人で写真を撮らないか?」

 

...最後の写真は、二人で映りたかった。

 

 

「…うん。」

 

 

パシャ

 

「うん、いい写真だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も沈黙が続く。

 

 

「...手…握っても良い?」

 

フウカがそんなことを言った。もちろん、手を差し出す。

 

「…もう少しだけ、もう少し。もう少し。」

 

普段なら、すぐに放しているだろうに。今日はなかなか離さない。

 

…こんなわがままも久しぶりだな。

 

 

 

…そうだな。

 

 

 

 

僕も、もう少し。

 

 

 

 

もう少しだけ。

 

 

 

 

こうしているのもいいかもな。

 

 

______________

 

 

…急に手を握りたくなった。

 

小さな時から握っていたあの手は昔と違いとても細く感じた。

 

触れた刹那に雪の様に溶けて消えてしまいそうな…そんな気がした。

 

だから、最後まで握っていた。

 

 

 

 

少しして、列車がやってきた。

 

名残惜しい気持ちを抑えて、手を放す。

 

故郷とも、家族ともお別れだ..。

 

 

 

 

私は泣かなかった。もう少しで泣いていた。列車が動き出してから、窓から首を出して、振り向いた。

 

小さく、見えなくなるまで見つめていた。

 

________________

 

 

「行ってしまったか…」

 

もう見えなくなってからかなりの時間が過ぎていた。

 

 

「...とりあえず、写真でも現像しに行くか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

 

返事は無い。

あるのは暗い部屋だけ、それがより孤独を強調させているような気がした。

 

 

 

 

そうだ、昼飯を作らないとな。

 

幸い、料理の腕はあまり落ちていなかった。トリニティ時代のヒモ生活がここで役立つとは..。

 

 

 

 

 

掃除もしないとな...

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…こんなもんか」

 

そこそこ綺麗になった。…もう夕方だ。

 

作りすぎてしまった昼食の残りを解凍し、皿に盛る。

 

春だというのに、やけに寒い夜だった。

 

心臓を言いようのない物が満たす。

 

…この感覚も久しぶりだ。

 

 

 

夕食を食べ、部屋に戻る。

 

 

 

 

 

生きている限りいつかは別れる。

 

 

その別れを惜しみ、悲しむも1つだ。

 

 

でも一緒に居た時を、思い出して少しでも楽しくなれたら。

 

 

笑顔になれたら…それはもう幸せだ。

 

 

 

 

今日の写真を保存するために、物置の奥底からアルバムを取り出す。

 

 

 

一つ一つを眺めていく。

 

桜の写真が一番多いな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを見終わったころには深夜になっていた。

 

 

 

そして、ここに新しい写真たちを貼っていく。

 

 

 

 

最後の写真、フウカとの写真、自分の肩ほどまで成長した彼女を見て時の流れを改めて実感する。

 

 

 

 

大切な思い出(たからもの)を宝箱にしまう。

 

 

 

 

 

 

アルバムを閉じたとき、風が吹いた。

 

 

冬の終わり、桜を知らせる風が僕の部屋に入ってくる。

 

 

一つの季節の終わりに寂しさを感じつつも、どこか安心した気持ちを抱いた。

 

 

 

 

あの子も向こうで新生活を頑張るだろう。

 

なら、僕も精いっぱい頑張ろう。

 

そう思った時にはもう、1人になったさみしさも無くなっていた。




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フウカも完全に自立したんですよねぇ。ウレシイ。
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