「俺はな!お父さんって呼ばれたいんだよ!」 作:フウカの父
何も無い…真っ暗な世界を進む…
何かが見えてくる
何故か・・・明晰夢だと気づく。
それでも歩き続ける。
あと少しあと少し
そして絶望する。
そこにはトイレがあった。
ダメだ..行ってはいけない..
意思と反して体はトイレに近づいていく。
馬鹿!やめろォ!
チャックに手をつける。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
______________
という夢を見た。
この年になってこんな夢を見るとはな…
顔の横には既に冷えた湯たんぽがある。
「ふぅ…良かった。」
日課の朝の日光浴をしようと思い窓の前に立った。
唐突だが冬...僕は冬が好きだ。
海と言えば、僕はテトラポットを..。
冬と言えば、僕は雪というだろう。
それくらい雪が好きなのだ。
・・・いや、テトラポットはあんまり好きではないかな…。
まぁ良い。
前世でも豪雪地帯に住んでいたわけではないから雪への恨み言なんてなかったし
童心に帰ることのできる数少ない物だからな…。
季節は冬。山もすっかり白くなり、冷たい風が部屋に入ろうとする。
そして今、僕の目の前には太陽で神々しく光っている銀世界が映っていた。
ん…?
「何だあれ・・」
家の前に見慣れない物がある。
窓から身を乗り出して観察しようとした時。
ガーガー
あっこれは雪かきの・・・
そう思った瞬間、頭に冷たい物が落ちてきた。
ぎゃああああああああああああああああああ
思わず飛び出してしまった…
さっむっ!
背中から地面の雪に着地をしたものの、思っていたより痛かった。
薄いのは頭皮だけで勘弁してくれよ..
「あっ、ごめんなさい。」
屋根で雪かきをしているフウカが謝る声がした。
少し文句を言うのもアリではあるが、朝早くから雪かきをしてくれているし、身を乗り出したのは自分だ。
「いや、大丈夫だぁ」
雪を払いながら答える。
これだったか…
家の前の見慣れない物は、ただの雪ダルマであった。
「う~む、何かが無いような」
そうだ、バケツを被ってないな。
被せてやろう。
そう思い近くにあった鉄バケツを被せる。
ドッシャー!
ぁ…。鉄バケツに耐えられずに崩壊する雪ダルマ。
「し、しまった…。」
フウカが悲しむ…。作り直さないと。
素手で雪をかき集める。
ひーーー!ジンジンきたきたー!
「あれ、どうしたんですか。手を真っ赤にして..?」
雪かきを終えたフウカがコチラの様子を見に来たようだ。
「いや、何でもないよ…。」
もちろん、何でもない訳では無い。
手の感覚が無いよー。動いてないのに寒いよー。
「あぁ...ユメ…。ごめん」
一人で気分を悪くしている僕を置いてフウカは雪ダルマの横に立った。
「・・・こんなに大きかったかな?」
…ちょっと大きくしすぎたかな..。
【緊急事態】ワイ、手がかじかみ過ぎて服を脱げない。
やべえよやべえよ...
手がかじかんで濡れた服が脱げない→濡れた服で体温低下→手がかじかむ→無限ループ突入。
あぁーー逆に熱くなってきたかも。もっと服が脱ぎたくなってきた(矛盾脱衣)
・・・手を温めなければ。
何処かに温かい物無いか?
・・・フウカ。
暖かそうなマフラーを巻いているな..
(やるしかないか…)
仕方がないね、手は手袋で温かさを感じられないし..
「フウカ・・・悪い。」
手を突っ込む。
「きゃああああああああああああああああああ」
その瞬間、僕の体は180度回転した。
なんだよ…
一切攻撃手段を持っていないという完全なるサポート役なのに、
結構痛いじゃないか・・・・
頬をさする。
「あぁ…酷いことするなぁ。人の心とかないんか?」
ビンタされた頬が痛む。
ちょっと冷たい手で脅かしただけじゃないか…。
「ご、ごめんなさい…。」
フウカ…別に謝らなくていいのに..。
むしろそれ僕のやる事だからね…。
そう言いながら、フウカは外出の準備をしていた。
「何処か行くの?」
「買い物」
「やはり買い物か…私も同行する」
と言ったものの、特にやることの無い僕はフウカの買い物を眺めているだけだ。
ふと、大通りを見るとホテルに入って行くカップルらしき人が居た。
「今年もホテルは賑わうねぇ…」
ボソッと呟いた。
「え?ホテルですか?」
頭の上に?を浮かべている様にフウカが聞いてきた。
「え、いや、その…今年もスキー客が多いなって話さ」
危ない危ない。全然スキーとかないけどね
「スキー客?」
ちょっと怪しんでる・・・・
「そうだ、何かプレゼントしよう。」
何でも良いぞ。
そう言うと嬉しそうに駆け出した。
そうそうこれこれこういうのでいいんだよこういうので、子供は笑顔じゃないとさ!
その顔の為なら18種の料理だって食ってやらぁ!
「お、決まったか?」
うんうん、柳刃包丁 中華包丁 麺切包丁…全部包丁じゃないか..フウカ..君さぁ…。
さすが、大型スーパーに行っただけで喜ぶ奴だ。面構えが違う。
「というか、まだ持ってなかったんだね。」
意外だなぁ。
「…うん、実は…。」
「まぁ、そろそろクリスマスだし。普段からお世話になってるから、感謝の気持ちも込めて..」
なんか..釈然としないが…まぁ、良いか。
______________
今まで使ってきた小さな包丁を持つ。
初めてのプレゼントと今日買ってもらった包丁を見比べる。
…もう小さくなってしまった包丁。
いつもなら、いらなくなってしまった物は捨てているのに…それをしたくないのは何故だろう。
「あ、懐かしいな。ソレ。」
あの人の声がした。
「どうした?何か悩み事でもある?」
しまった、そんな顔をしてしまっていたのだろうか。
「......」
何となく自分の気持ちを言いたくなった。
「…なるほどね。IQ114の僕が思うに…
それは『捨てたくない』って言う気持ちだね。」
でも、要らない物を置いておく訳には…
「…人生に無駄も無意味も無いよ。思い出だって消えはしない。」
でも…
「それに、ここはもう君の家なんだからね。もう、何も気にしなくていい。」
そうだ…ここはもう私の家だったんだ。
偶には…こういうのも良いかな。
「…うん、ありがとう。やっぱり捨てたくない」
「おう、好きにしろ。」
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好きにしろと言ったが、こんなことをするとは思わなかった。
台所に神棚の様に祀られている包丁を見てそう思う。
本人曰く「初心を忘れないために…」って言ってるけど、危機管理を忘れていないか?
「あ、おはよう」
まぁ、前より明るくなったような気がするし。良いかな…
…近からずも遠からずな関係性。でも、確かに心は繋がっているような気がした。
昔から思ってきたことをつい口に出す。
「…もっとワガママ言っても良いと思うけどな。」
料理に集中しているフウカには聞こえなかった様で反応は無い。
もしかしたら、これが最初で最後の君なりのワガママになるのかな…
「さっき、何か・・・どうしてそんなに笑顔なんですか?」
急にフウカが振り返った。
そうか…笑っていたのか僕は。
「…使えない物を残す楽しさをようやく分かってくれた様で嬉しかったのさ」
ミニマリストも良いが、偶にはこういうのも良いだろう?
「だからさ…僕のコレクシ「ダメですよ」えぇ…」
やれやれだぜ…
でも…こういうやり取りも嫌いではない。
「聖夜…セイヤ..。セイア!?!?」