「俺はな!お父さんって呼ばれたいんだよ!」   作:フウカの父

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・・ハッ!?もう1月13日だとぉッ!?
ありえねぇ...。

・・まさか、新手のスタンド使いかァ─────ッ!




年越し

 

寒さもピークを迎えつつある年の瀬。雪の中を震えながら買い物をする男が居た。

 

...ま、僕なんですがね。

 

予報では、これからもっと寒くなるらしい。

雪国出身ではない僕にとっては辛い季節ではあるが、どの季節にも良い面と悪い面があるからどの季節が好きとか嫌いとかはないけれども。

 

 

 

 

さて、年末と言えば・・年越し蕎麦である。

 

 

 

・・・いや、本当はそれ以外にも色々あるだろうが、僕にとっては蕎麦である。

 

そして、またその季節がやってきた。

 

だからこそ、蕎麦を買おうとしていた時。

あるロボットの男が話しかけて来た。 

 

「あなたが、竿谷さんですか?」

 

顔を見たが、おそらく知らない人だ。

 

「え、・・まぁ、そうだけど?」

 

誰だろうか?実は顔を覚えるのが苦手だからなぁ。

・・このせいで、昔お世話になった人に「初めまして」と言った時の場の雰囲気が忘れられない。

 

「知ってます?美味しい蕎麦の作り方を…。」

 

はぁ?・・いきなり何だろうか?というか、馴れ馴れしいな。やっぱり知り合いか?

 

「そ、蕎麦ですか?・・いったいそれがどうしたんですか?」

 

しかし、ソイツは僕の問いには答えなかった。

 

「いや、実はね...私その在処を知っているんですよ。詳しくはこれを見てください。」

 

ソイツは僕に一枚の紙を渡してきた。

いや、押し付けると言った方が良いだろうか。

・・これは…地図?

 

「へばな!」

 

そう言うと奴は何処かに消えてしまった。

 

 

おいおいおい・・まさか来いって事か?

 

先程渡された紙には少し遠くの住所が書かれていた。

 

…考えていても埒が明かないな…。

 

取り敢えず向かう事にするか・・・。

 

思っていたよりも近くだしな…。

 

 

 

 

 

件の場所には古ぼけた建物が存在していた。

 

「し、失礼しまーす。どなたかいらっしゃいませんか?」

 

・・誰も居ないのか?ならもう帰らせてもらうぜ...。

 

「待ちたまえ。」

 

男の声が響く。

 

「ギャンブルの才能を与えられ、必死に努力してきた。」

 

暗闇から、男が出てくる。

 

「・・・スタプラ持ちを待ち続け数十年。いつの間にか誰も来なくなってしまった。・・相手が、唯の地球人で良いから逝きたいのだ。もう。」

 

先程の男だ。

 

そして、その言動。

 

「あなたも、地球人ですか?」

 

男は苦笑交じりに肯定する

 

「ああ、もう肉体はないけれどね。今の私は、ロボットに意識を移しているだけだ。」

 

そうなのか。そこまでして生きるとは・・

 

「・・軽蔑するか?未練がましいこの姿を」

 

・・そこまでして生きようとしたのにはそれなりの理由があるだろう。

そうでなければ数十年間も待ち続けられないだろう。

 

「いや・・。むしろ、数十年以上生きてることには尊敬の念を覚えるよ。」

 

僕は一歩だけ男に近づいた。

男は話を続ける。

 

「・・・私は、あるキャラクターに憧れた。あの人の様なギャンブルの天才になりたいと思った。」

 

男は何処からか、テーブルとトランプを取り出した。

 

「そして、究極のギャンブラーになったが…。私が戦いたい相手は数十年待っても来なかった。もはやだれでも良い。」

 

いつの間にか椅子が置かれている。

 

すると、その椅子に座る様に促された。

 

「最後に…。ちょっとゲームをしないか?景品は言っているだろう。」

 

…見ず知らずの人間だが、最後の頼みくらいなら聞いてやるか。

 

「ただ、一つだけ...。条件がある。...聞いてくれないか?」

 

「だが断る。」

 

怪しい匂いがプンプンしますねぇ。拒否一択ですよこれは。

 

「・・・えぇ。」

 

あまりにも悲しそうなオーラを出すので、仕方なく話を聞いてやることにした。

 

「物を賭けましょう。」

 

「そうか。じゃあな。」

 

目にも留まらぬスピードで立ち去ろうとする。

 

「まってよ!」

 

男は僕の足を掴んで動かない。

 

それをされると動けないのだが…。

 

「ギャンブルは嫌いなんだ。分かってくれ。」

 

男はあからさまにうろたえる。

 

「ま、待ってくれ。俺の直感が言っているんだよ!あんたじゃなきゃダメだって。それに・・」

 

それに・・?

 

「何かあるのか?」

 

「・・賭け事に敗北したうえで、例の蕎麦を渡さないと逝けない様にプログラミングしてしまっているんだ。」

 

ぇぇ・・・。何その縛りプレイ。ドMかな?

 

「どのみち、蕎麦は渡すから...。な?な?な?」

 

むぅぅぅ。これを信じられる人はかなりのお人よしだけだと思う。

急に誘われた賭け事に慎重になれない人は、かなりの問題があるだろう。

 

 

 

・・ん?何だあれ。

 

男の後ろに鉄の箱が見えた。

 

「何だそれは?」

 

「あぁ、金庫だよ。お宝が詰まってんのさ」

 

ふぅ~ん(ニヤリ)。

 

ちょっとなぁ、乗り気でないなぁ。その中身を賭けてくれたらなぁ...。チラチラ

 

「そうだなぁ、最初の賭けで負けたらそれもくれ。」

 

「むぅ…。仕方ないか。最後の八百長以外で負けるはずないし。」

 

その言葉を待っていた。

 

「それなら、してくれるか?」

 

ここまで譲歩させたのだから、断ることはしない。

 

「もちろん」

 

僕は迷わず承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

長年待ち続けた瞬間が今…やっと来た。やっと、自分も楽になれるのだ。

 

何時からか、この俺。ギャンブルの天才に挑む者が居なくなってしまった時は焦ったが。やっと来た。

 

最初に負けるとコレクションを渡すことになるが・・持っていても仕方がないとはいえ、渡したくはない。

 

 

「俺は、例の物を賭けるぞ...。ククッ」

 

あぁ、何だか懐かしい。いつぶりの賭け事だろう。

命がけでは無いが、この雰囲気が懐かしい。

 

「ならば、僕も賭けよう。」

 

奴はそう言うと、懐から取り出した紙に何かを書き始めた。

 

「何とだ?分かってると思うがこれに見合った物をな…「賭けるのは。シュンだ」」

 

・・ん? 

 

「な、なんだと?」

 

き、聞き間違いか?人名が出たような気がしたが。 

 

「・・賭けるのは、シュンの年齢だ。」

 

年齢極秘のシュンのね、年齢だとぉ?

 

「な、なぁっ!?何だと!?」

 

・・いや、冷静に考えれば2月生まれで3年生なので確実に17歳だ。落ち着け。なんてことは...。

 

「そ、そんな情報は...。大した価値は無いだろう・・もっと他に無いのか?」

 

 

奴は俺の言葉に反応せず呟いた。

 

 

「飛鳥馬トキ、鬼方カヨコ、花岡ユズ...。」

 

 

 

何を言っているんだ?

 

 

 

「おい、その三人がどうかしたか?」

 

急に何の関連性も無い生徒の名前を呟いた。 

 

「いやぁ、別ぅにぃ?何でもないけど?」

 

 

 

・・この状況でこんな事を言うか?何かを見落としたか?

 

 

 

 

 

 

 

いや、待てよ。この三人。留年。

 

 

 

 

 

・・まさか、シュンが…?

 

 

 

「まさか、シュンが留年してるというのか?」

 

 

 

「あり得るよな」

 

 

「くぅ…っ!」

 

 た、確かに…もし留年してるとしたら…。その情報は欲しい。

 

「それに、」 

 

ば、馬鹿な...。まだ賭ける物があるのか…。

 

「セイアがどんな声か・・その情報も賭けよう。」

 

な、あの未実装でネタにされたセイアの声・・だと?

 

「おい…何で、シュンの年齢を知っていてセイアの事も知っているんだ?」

 

まさか…。

 

「・・ん?貴方もいるでしょう。」

 

こ、子供か・・。にしても、別の学園の人に手を出すとは恐ろしいまでのフットワークの軽さ。

 

「まぁな。そのために呼ばれたのだし。」

ちなみに娘には汚物扱い。息子にはクズ扱い。子供よりもギャンブルに傾倒した結果がそれだ。

 

「ああ、後・・」

 

それから奴は数十人の生徒の情報を語りだした。中には、モブ生徒の事さえあった。

正直いって、聞き入ってしまう程には面白かった。

 

「こんなものかな。もう思いつかないよ。」

 

「え?」

 

こ、こいつ…。まさか賭けられる物を全部かけたんじゃ...。そうだったら、俺は自ら負けに行くしかない...。

 

「ほ、他には無いのか?」

 

「無い。」

清々しい笑顔だった。

 

あぁ、こいつやったな。俺は初めて、負けるためのイカサマをする事になった。

 

 

 

 

 

 

___________

 

 

 

 

ギャンブルごっこが終わり、意外にも奴は満足そうな顔をしていた。やっぱりドMだったか…(呆れ)。

 

「で、蕎麦は?」

 

泥棒の気分で金庫の中身を袋に詰めながら、そう聞くと罰の悪そうな雰囲気を出した。

 

「実は…。」

 

用意したが、劣化してしまったらしい。

 

奴はレシピの紙を渡してきた。

 

「いやぁ、君。性欲魔人だね。途轍もない人数じゃないか。」

 

こっちもなりたくてこうなったんじゃないんだけどな。

 

「…確かに。君の話は面白かった。でも、俺の直感に来る程のものでは無かった。・・君、周りに料理人は居ないか?」

 

料理人か・・。

 

「フウカと暮らしている。」

 

 

「・・OH。まじか、それなら安心だ。」

 

「これを賭けた奴の顔を、今になって思い出す。あの目はきっと…。」

 

電源が落ちる。それはもう二度と起き上がらないだろう。

 

「これを託されたからこそ、自分が消えてしまう前に...。僕にこれを渡したかったのか...。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…でも、紙だけ渡されても困るなぁ。

 

時間もあまりない。

だから急ピッチでそばを打ち始めた。

 

幸い、この紙には途轍もなく細かく情報が載っており、意外と作るのが簡単だったのが救いだった。

 

もっとも、補助(フウカ)ありではあるが。

 

「今年はそこから作るんですね・・こんな時間に。」

 

うん、そうだね。

ちょっと遅いもんね。ごめんね。

 

「でもね、今回はちょっと特別なんだ。・・手伝ってくれない?」

 

(눈_눈)「・・今回は美味しいと良いのですが・・」

 

少し前にゲテモノを作った時の事を言っている。

確かに、アレはまずかった。ハーブを煮詰めてたからな。良かったのは後味だけだ。

 

・・今回は大丈夫なはず。

 

 

 

「今回は・・大丈夫そうですね。」

見た目はいたって普通の蕎麦だ。途中に変な物も入れていないし・・。

 

 

 

じゃあ、食べてみるか。

 

おっ。思っていたよりも・・

 

「・・あれ?このお蕎麦…。凄く美味しい。」

 

そう呟くフウカに紙を渡す。

 

「あぁ、これがレシピだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が僕に伝えたように、僕も伝えよう。これを作った人もその方が嬉しいはず。

 

これのお陰で、未来の給食部が賑わうかもしれないなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、あっという間に。

新しい年が始まった。

 

 

 

除夜の鐘が鳴り響く。

 

「「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」」

 

 

そういえば昔は、12時まで起きているのは難しかった…。

だから、そんな年末が特別な日だった。

でも今じゃ、いつの間にか過ぎているんだ。

特別感も薄れてしまった。

 

だからこそ、日々の生活に新しい物を取り入れて。特別な日にしようとするのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________

 

これはまだ、彼のカジノに人が居た頃の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの様に、自分に挑んでくる人を打ち負かす。

そして、賭けた物を受け取る。

 

「ははは。アンタのお宝を渡しな。」

 

年を取った犬顔の男が紙を手渡す。

 

「これを...。私は若くないから持っていても仕方がない。」

 

彼はその紙の中身を見て少し顔をしかめる。

 

「こ、こんなの渡されてもなぁ...。」

 

所詮、ダイヤモンドも人々が求めなければ唯の石。

そして、彼にとってその紙は石同然だった。

 

「それなら、・・いつか、腕のいい料理人に会えたら渡せばいい。」

 

乗り気の無い彼に犬顔の老人は言う。

 

「おや、あなた程の方にも出来ない事が有るんですね。」

 

その言葉は、彼の眉を顰めさせるのに十分な威力があった。

 

「・・まぁ、良いぜ。俺が絶対に、このレシピを腕の良い料理人に渡してやるよ。」

 

少しイラついている彼とは反対に犬顔の老人は穏やかな顔をしていた。

 

「・・名店を継ぐことにプレッシャーを感じて、家を飛び出して。結婚もせず。継ぐ人もいない。唯一の心残りも、これで…良いんだ。」

 

それを聞いて、彼は思った。

自分には子供はいるけれど、このギャンブルの技術を継ぐ人はいない。

目の前の老人と同じ状況だというのに、その老人はまるで自分の事を“負け組”の様に言っているのが気に食わなかった。

 

「俺は、アンタの人生が“間違い”だとか“失敗”と思わないな。」

 

「自分の人生も、無駄ではなかったのか・・。あぁ、良かった。本当に良かった。」

 

 

 

 

この約束をした後、彼は気づいた。

 

 

「そもそも、ギャンブルする奴に料理出来る様なまじめな奴は少ないのでは・・・」




給食部の一番人気のメニュー・・それは、蕎麦である。
ということで明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

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