「俺はな!お父さんって呼ばれたいんだよ!」 作:フウカの父
☆8 幾億の星霜 さん
本当にありがとうございます。
励みになります。
起きた瞬間・・。朝日の入らない部屋とは対照的に、僕の心は少年の様に弾んでいた。
「さて・・今年も貰えるかな・・」
まったく、昨日から楽しみですぐに眠れなかったぞ・・・。
さて何故僕がこんなにも楽しそうにしているのか・・・
それは、今日が2月14日...バレンタインの日だからだ。
普段よりも軽快な足取りでリビングに向かう。
「おはよう、今日もいい天気だね。」
「あ、おはようございます。それと天気は…曇りだった様な?」
曇りか…。すまん、適当な事を言った。
そう・・・ここまでがテンプレ。僕の日常なのだ。
そう、ここからがバレンタインversionだ。
そうだきっと・・・・。
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顔をこちらに向けずに、黙って何かを差し出すフウカ。
「・・いつもありがとうございます。」
それをジッと見つめると、それがチョコであることに気づく。
「あぁ、ありがとう…」
それを包んでいる物を見ると、それが市販の物ではないという事はすぐに分かる。
「おぉ・・・わざわざ作ってくれたの?・・ありがとう。」
そう言っても、フウカはこちらを見ない。
「…その…いつもお世話になってますし…。」
そんな事をボソッと呟くだけだ。
やれやれ…だぜ(萌え死)
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「どうしましたか?何もない所で突っ立って」
しまった、自分の世界に入ってしまっていたな...。
「いやぁ~何でも無いよ。」
朝からは貰えないか・・・。
普段は、朝にパパっと渡してくるのに…。
まぁ、良いか。
会話でもしていよう。
「そういえば、今日は髪を下ろしてるんだね。」
バレンタインの事を考えていて、最初は気づかなかったが普段と違って髪を下ろしてたんだよなぁ。
髪を下したフウカを眺めていると、普段と違う印象を受ける。
可愛い…というよりも、美人だよなぁ…。
でも、いつものフウカと違うから何だか違和感を感じる。
具体的に言うとマキの声を初めて聴いた時くらいだ、すぐ慣れたけど。
「あはは…普段使ってる髪留めが切れちゃいまして…」
ふーん、エッチじゃん。
・・・え、子供に対して抱く言葉じゃない?失言?\サーセン/
「ところで、フウカ・・「はい?」・・いや何でもない。」
くそぉ、こっちからチョコの話をするとまるで欲しくてたまらない奴みたいじゃないか...。
一体どうすれば...。
貰えるのだ...。
考えろ…考えるんだ...。
ところがどっこい、そんな事を考える時間は、僕にはあるが学生にはない。
あっという間に、家を出る時間になってしまったのだ。
「それじゃあ、行ってきます…今日は玄関で見送るなんて...珍しい。どうかしました?」
「あぁ・・・・。な、何でもない...。」
そうだ…。
学校が終わってから・・・。
学校が終わってからさ。
それまで待っていよう。
後、数時間もすれば帰ってくるのだし…。
まだ慌てる様な時間じゃない。
何、チョコの事を考えるから楽しくないのだ。
他の事をして待とう。
そうだ。
部屋には、まだ読んでない本が大量にあるではないか…。
あれらを読む時間にしようか。
「あれ、もうこんな時間か...。」
読書をしていたら、いつの間にか12時になっていた。
確か、今日の昼も冷蔵庫に…
冷蔵庫を開いた瞬間。
カカオの香りが飛び出してきた。
冷蔵庫の真ん中の段…
そこに、置かれているボウルに入っているらしい。
「こ、これは…まさか…。」
一瞬、勝手に食べてしまおうかと思った。
だが、瞬時に手を止める。
“これは罠だ”そう思った。
チョコに飢えた男を誘い込む罠なのだ、何も考えずに食べた場合。
後で、怒られ軽蔑されるかもしれない罠なのだ。
「謀ったなシャア!」
危うく赤い彗星にやられる所だったぜ…。
平常心だ、平常心。
玄関が開いた音…フウカが帰ってきたけど気にしない。
フウカが帰ってきたけど気にしない。
平常心 平常心
「ご飯出来ましたよーー!」
ここまではいつもと同じじゃないか。
気にしない気にしない。
きっと、くれるとしたら。食後なんだよ、きっと。
「ご馳走様でした...。」
「はい。あっ、お風呂炊けてますよ。先に入っておいてください。」
「あぁ、・・うん。」
何と言う事だ・・ついに貰えなくなった...。
あぁ、昔の記憶も溢れてくる。
初めてのお菓子作り・・一緒に頑張ったよなぁ・・。
うん。か、悲しくなんかないぞ。
・・・悲しまなければどうということはないからな。
「いやぁぁぁ!やっぱり悲しいィィィィィ!」
突然の大声で驚き、身体をビクッと揺らすフウカ。
「ど、どうかしました・・?」
「毎年貰ってたのに!急に無くなって、もう二度と貰えなくなるんだぁぁぁ!」
「は、はぁ...。もしかして、チョコの話ですか?」
そう言うと、フウカが気まずそうな顔をした。
え、やめてその顔。
普段の(눈_눈)は?そんな深刻そうな顔をされると怖いんだけど。
「その...。」
や、やめてくれ。聞きたくないぞ。忘れていた以外の理由を聞きたくない。
“パパなんて嫌い!”とか言うんじゃないだろうな...。
「作ってはいたんですけど・・・。この間の…。」
“この間”・・なんだ?
何かやらかしてしまったのか?
「以前の健康診断で、血糖値少し高めでしたから今年は渡すのを止めておこうかなと・・。」
血糖値...。あぁ、そういえば、そうだったな。
「確かに、僕は血糖値気にしないといけない人ではあるね。」
親戚に糖尿病の人が居たし、なりやすい体質ではあると思うが…。
…あれ?そういえばハレ大丈夫か?
「でも、せっかく作ってくれたのなら、血糖値なんか気にせずに頂くぞ。」
そう言うと、ますます深刻な顔になる。
「・・砂糖を気にし過ぎて・・・」
ん?
「何か言った?」
ボソッと呟かれても聞こえない。
「砂糖の量を気にしすぎて、苦いチョコが出来ちゃいまして…だから、今年はもう・・。」
血糖値とか、味がどうとかそんな事はどうだっていい。
「フウカ。・・・大丈夫だ、問題ない。」
味に関しては甘すぎるよりも苦い方が好きな自分にとってはむしろ好都合だ。
「・・・」
無言で件のチョコを差し出すフウカ。
さて、どんな見た目かな。
ほうほう、見た目は普通のチョコだな。
では、味は・・・・。
「フウカ・・・・」
親指を立てながら笑顔で言葉を紡ぐ。
「思ってたよりも、甘いじゃんね☆」
カカオ90...いや86%くらいの味だな。充分甘いよ*1。
「良かった・・でも、じゃんね?…」
ああ、君が将来おせちを口にシュゥゥゥーッ!!超!エキサイティン!!する人の語尾だ。
たとえ、一回しか言ってない事でも、“じゃんね”といえばミカなんだ。
「ああ、これで今年はもう何もなくても良いくらい満足したよ。」
うん、満足した。
流石に、何もないと寂しいけれど今はそう思えるくらいには満たされている。
「そんなに・・?もしかして、朝から変だったのもチョコが欲しかったからですか?」
へ、変だったか・・。まぁ、普段と違う行動ばっかりだったからか...。
「う、うん・・」
だって、欲しかったから...。今思えば、恥ずかしい。
何やってたんだ僕は・・・。
「チョコのお礼だ、一個だけならお願いを引き受けるぞ。」
「・・・掃除してください。」
「・・・・・・一か月後くらいには掃除するから」
そ、そんな目で見るなよ。
3/14・・?
グッドモーニング!世界!
さて、今日の天気は・・
窓を開けた。
「ぎゃあああああああああああああああああ!目がぁ!目がぁ!」
花粉がぁぁぁぁぁぁッ!!!!目がぁ、目がぁ!?
失明してしまうーーーッ!
鼻水も止まらねぇ!僕の鼻ハボドボドダ!
「約束した掃除は・・・・・。」
ふ、フウカ・・お前鬼か!?お前の血は何色だぁ!
「ひぃぃん!家から出たくないでごわす!」
3/14
・・なんつー夢だ。
この世界にはあの忌むべき花粉は日本ほど無いのだから、花粉症の症状が出るわけないのに・・。
僕の心に刻まれている春の記憶が蘇ったのかな?
というか3/14か・・・。
何かあった様な・・。
なんかあったっけ?
・・あ、買い物頼まれてたんだ。
「・・家から出たくないでごわす!」
反射的に出た言葉が、奇しくも夢の中発言と一致・・というか、そういう性格だからな。偶然じゃなくて、必然だわ。
あ、でも。チョコのお返しを買わないといけないのか・・。
ホワイトデーか・・・本命のお返しは買ったけど、間に合わないか・・。
自分だけ当日に貰うのも、変だし。
買い物のついでにチョコレート詰め合わせでも買うか。
ヤバイ。チョコの数多すぎ。聞いたことも無い種類の奴多すぎだろ。なにがなんだか・・
お、これ色々入ってる。・・・リキュール・・?あ、聞いたことがあるな。
僕でも聞いたことのあるチョコなら・・良いか・・。
食材ってこんなにも重かったのか・・。皆バーサーカーなの?凶化で筋力上げてるの?
「うへぇ、重い・・。」
・・・あ、もう梅が咲いている。
やっと、帰ってきた・・。
・・荷物置いたら、寝るか。
チョコは・・夕食後に渡すか。
「ご飯出来ましたよーー!」
・・え、もうそんな時間?最近時間の進みが速過ぎる・・。
「そういえば、来週は用事で家に居ないかもしれない。」
「・・珍しいですね。」
普段ずっと家に引きこもってるわけでは無いのに・・。
どうしてそんな事言うの?
「ごちそうさまでした。・・あ。」
チョコ渡さないと。
「・・今日ホワイトデーだから...ほらお返しのチョコ。」
「あ・・これは・・。ありがとうございます。」
・・もしかして値段知ってるのかな?
そんな反応だったぞ。
値段なんて、気にせずに食べてほしいなぁ・・。
「じゃあ、風呂入ってくる。」
「はい。」
・・・・・普段だったら、洗濯機のボタンを押す音がするのに・・。
・・明日雨だったっけ?晴れだった様な・・。
「・・上がった。」
・・さっきと同じ所に座っている。
「・・・最近温かくなって…まだ寒い日もありますけど、もう春なんですね・・」
なんか急に話しかけて来た。
「…まぁ、梅とかも咲いているしね。もう春だよね。」
振り返ったフウカは、惚けた顔をしていた。
「えへへ・・凄く温かい・・タケオさんもそう思わない?」
ふ、フウカッ!?ま、まさか・・。
入っていたチョコの名前を検索する・・
このチョコ・・アルコール入ってるじゃないか!
やっちゃった・・・・。
待てよ・・、今なら言わせる事が出来るんじゃないのか?
「・・ちょっと、僕の事をお父・・いや、いいか」
言わせるものではないしな。
「・・・・ZZZZ」
・・・もう寝た・・。
よくこんな場所で眠れるよ・・・。
「じゃあ、しょうがないな・・うッ!」
こ、腰が・・。
この体もう無理かも・・・。
何とか、部屋までは運べたか・・・。
「疲れたぁ・・。」
結局、普段通りの呼び方だったなぁ・・・。
「最後まで・・こうなのかなぁ・・。」
・・いつかその言葉を聞ける時が来るのだろうか・・。
でも、僕はそれでも良い。
独りぼっちだった君の家族に成れたのなら・・。
これからも・・僕なりに、へたくそでも・・一緒に歩みたい。
そうやって生きれば、僕は長生きできないけど・・。
君は一人ではないだろう。
それならいい。
ただ・・やっぱり、残念だ。
溜息をついて、部屋から出た。
「ごめんごめん。本当にすまないと思っている。」
「・・・・・。」
口きいてくれない。
どうしてぇ・・。
ピンポーン
お、もしかして...。
急いで荷物を受け取りに行く。
受け取った荷物を見ると、やはり想像していた物であった
「おっ。やっぱりか。」
「フウカ、本当に申し訳ない。アルコール入ってるって知らなかったんだよぉ・・」
「・・・・」
相変わらずのむすっとした表情。
「だから、これ・・本命のお返しだよ。」
例の物を見せつける。
「・・・・あ、これ・・。」
表情が和らぐ。・・チョロい。
「いや、この前一瞬だけ見てた気がしてさ。似合うと思うし、偶にはこういうプレゼントも悪くないかな・・・って。」
白いワンピース。
NTの僕には分かったぜ、とてもつもなく似合うってな。
「ありがとう「ございますは良いよ」・・ありがとう。」
凄い良い笑顔じゃないか。
・・・・今まで、調理器具ばっかり送ってたのを後悔するくらい。
ウゾダドンドコドーン!
私服フウカ・・・最高だった・・・。