現代異能バトルに、クソデカハンマーを振り回して殴り込みをかけるTS幼女   作:デカハン

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一 クソデカハンマーぶんまわし幼女

 なんやかんやあって、俺は異世界から帰還した。

 一人称は私になった、クソデカハンマーを振り回す幼女として。

 しかし不思議なことに、どういうわけか元の世界では最初から私は女の子だったことになっているらしい。

 部屋のタンスに詰め込まれた女物の下着――まぁ、色気のないスポーツブラが殆どだが――がそれを物語っている。

 加えて私が異世界に転移してから、時間は全く経過していなかった。

 そして私は自分で言うのも何だが、学校で友達と言える友達がほとんどいなかったのだ。

 なので女になっても、特段困ることはなく。

 友達のいない男子高校生が、友達のいない美少女女子高生になっただけだった。

 まぁ、もしくは私が女になって友達のいない美少女女子高生になっても問題ない世界線に帰還しただけかもしれないが。

 

 とにかく、そいつらと出会うまでは。

 私は、転移する前とさほど変わらない生活を送っていたのだ。

 目に見えないアイテムボックスに、異世界時代からの相棒であるクソデカハンマーを抱えながら。

 

 

 ◯

 

 

 夜の帳が降りる頃。

 私は空中を駆けていた。

 飛んでいるのではない。

 純粋な脚力で飛び上がり、目的の場所までジャンプしているだけだ。

 

 金髪ロリが空をゆく。

 背丈は百三十と少し。

 腰のあたりまであるゆったりとした金髪、衣服はドレスのようなアーマー。

 ファンタジー系のソシャゲの衣装といった感じ。

 そんな幼女が、空をゆく。

 つまり、私のことだった。

 

 風を切る音がした。

 最高到達点はすでに越え、落下体勢に入った私には重力が勢いよくのしかかる。

 空中からは、夜にしては異様な光景が広がる町並みがよく視えた。

 光っているのである、淡く白い光が街全体を覆っていて。

 それを、オタク知識からなんと呼ぶべきか、私は直感的に表現できた。

 

「――結界」

 

 結界は、建物を覆うようにしながら広がっている。

 建物が、淡い光を保っているのだ。

 そんな異様な光景の広がる世界を、私は自分の身ひとつで駆け抜けていた。

 やがて、間もなく着地という段において、私は自分の得物を虚空から取り出し、その名を呼んだ。

 

「――”ミョルニル”」

 

 北欧神話の神が手にする武器の名を冠したそれは、異世界のものだ。

 故にこの世界のそれと関係があるわけではない。

 形状は、とにかくでかい野槌。

 TSした私の身長が百三十程度であり、このハンマーの全長はそれを優に超える。

 測ってないけど、2メートルくらいはあるんじゃなかろうか。

 神話の武器と同じ名前をしているだけあって、装飾は豪華だ。

 西洋的な建築を思わせる、柱のような作りをしている。

 宝石のような飾りつけが散りばめられ、その価値は間違いなく現代でも高い。

 まぁ、これと私は一蓮托生なので売るということはありえないんだけど

 何せ――

 

「行くよ!」

『――()()()

 

 ――そのハンマーは、私の言葉にやたらめったら甘ったるい少女の声で返答するのだから。

 

 そして、その得物を手に私は、勢いよく空中で回転を始める。

 それはもう、幼女がハンマーに振り回されるがごとく。

 ハンマーを振り回す幼女という、ロマンあふれる光景を展開しつつ。

 

「でぇい!」

 

 

 地面にいた”妖魔”に、私は一撃を叩き込んだ。

 

 

 まさしくそれは電光一閃。

 いや、閃いただけでむしろ大回転していたけれど。

 勢いよく敵に突っ込んだだけだけど。

 とにかく、それでも一撃としては十分だった。

 私が粉砕した妖魔――大鬼は、何が起きたのか理解できず脳天をかち割られて即死した。

 見るも無惨に、頭が潰れている。

 クリーンヒットだ。

 

「よし、まず一匹」

『順調、順調』

 

 私が重量感のあるハンマーをくるくると振り回しながら、地面に着地。

 ”ミョルニル”も、声をはずませている。

 

 周囲を見渡して状況を確認した。

 ここには魔力探知のスキルを使って状況を知り、一息で飛んできたからどうなっているかはさっぱりなのだ。

 みれば、周囲には無数の餓鬼がいる。

 地獄の鬼とされるそれは醜い容姿をしていて、この世界では最もありふれた妖魔である。

 そいつらは二つの人影を囲んでいて、一つはたった今私がハンマーで粉砕した。

 そしてもう一つは――

 

「――って、ミア?」

『おん? 知り合いか?』

 

 気絶しているのは、数日前に私が通う高校へ転校してきた女子だ。

 やたらと顔が良く、高校に転校してくるっていうのが珍しかったからよく覚えている。

 というか、定期的に声をかけられている。

 

「相棒は昼間ぐーすか寝てばっかりだから。もう少し私の学校生活にも興味持とうよ」

『ワシはこの世界に、現代の娯楽とやらを求めてやってきたのだ。あんなつまらん生活に興味などない。なぜあんなことに一日の大半を費やさねばならん』

「それは否定しないけど」

 

 しかし、よりにも寄って転校生が宿滅者(イレーサー)だったなんて。

 妙にこっちへ構ってくるあたり、私もいよいよ謎の覆面ハンマーロリでいられる時期は過ぎてしまったのかも知れない。

 物語の始まりを感じるね。

 

「なんにしても、この子は助けるよ。見捨てたら明日の朝飯が美味しくなくなる」

『同感だ、ここまでせっかく死者ゼロでやってきているのに、こんなところで被害を出すなどお前さんらしくもない』

 

 そう言って、私はミョルニルさんを構え直して向き合った。

 初手で潰したのは、餓鬼にたいして存在感も肉体的な強さも明らかに上の鬼だ。

 大鬼と呼ばれる妖魔で、下位、中位、上位、特位の四段階のうち、中位に属する妖魔である。

 いやまぁ、私も詳しいことは知らんのだけど。

 

「さて、残りは眼の前の餓鬼共だけだけど――」

 

 そして、残ったのは下位の餓鬼だけだ。

 はっきり言って雑魚である。

 そもそも、今日の襲撃はあの大鬼が主犯格で、残りはただのおまけ。

 大鬼さえ潰してしまえば、結界もそのうち消えるだろう。

 取り残された餓鬼共は、結界の外では存在を保てないので勝手に消える。

 なので、本来なら今日はこれでお仕事終了なのだけど。

 

「流石にミアを守らないとまずいだろうね」

『……思ったのだが、そもそもそのミアとやらは鬼に気絶させられたのではなく。お前さんが落ちてきた風圧で気絶したのではないか?』

「…………さぁて、餓鬼共を殲滅して帰ろうか!」

 

 よく見ればミア――露出の多いソシャゲみたいなデザインの巫女服の上に、防御力高そうな肩パッドみたいなのを付けた独特な衣装を身に着けている、おそらくは魔道具だ――はその肌に傷一つついていない。

 明らかに、大鬼にやられた形跡はなかった。

 

 さて、気を取り直して餓鬼共と向かい合う。

 すると餓鬼共は、お互いに視線を彷徨わせていた。

 ボスが死んで、この後のことをどうするべきか考えていたのだろう。

 だが、やがてひとつの結論に至ったようで――

 

「――オンナ、オカス、クウ、コロス」

 

 なんとも単細胞なゴブリンじみたセリフを吐いてきやがった。

 私の異世界のゴブリンと、餓鬼の生態はそう変わらない。

 人間は食料、男は食って殺し、女は犯してから食って殺す。

 なんて本能に忠実な連中なのだろう。

 

『たちの悪さでは、ゴブリンの方が上だがな』

「そうだねぇ、こいつらは本能で動くよう”造られた”生物だ。最初からそう設計されてるけどゴブリンはそういう生態ってだけだから」

 

 強いて言うなら、ゴブリンと餓鬼ではゴブリンの方が倒せば報酬がもらえるというメリットがある。

 でも、それにしたって今の私からするとお小遣いにもならないし、ぶっちゃけどっちもどっちって感じ。

 しかしまぁ、哀れなのは妖魔の方かも知れないな。

 

「オカス、オカス――オンナ、オンナ! クウ、クウ!」

 

 じりじりと、餓鬼共がこちらににじり寄ってくる。

 包囲網は少しずつ狭まり、連中の不躾な視線が私の露出したへそと――それからミアの胸に集中している。

 大きい方が好みか、正直な連中め。

 

「本能でしか動けぬ愚かな妖魔共よ、私に喧嘩を売ったことを後悔するといい」

『実力の差も測れぬ哀れな子鬼共を、――イツキ。葬ってやるのだ』

 

 そう言って、私も――おそらく、ミョルニルさんも顔はないけど、イメージとして。

 獰猛な笑みを浮かべた。

 

「――()()()!」

 

 そうしてミョルニルさんと同じように返した私は、その場でミョルニルさんを振るう。

 結果、

 

 

 私とミアを囲んでいた餓鬼が、ことごとく吹き飛んだ。

 

 

 ただの一撃だ。

 いやそもそも、一撃ですらない。

 ただミョルニルをその場で振るって、風を起こしただけ。

 その暴風だけで、餓鬼共は吹き飛んだのである。

 後ろで倒れているミアは吹き飛ばない。

 そういう(スキル)だからだ。

 

「ギ、ガアアアアアアア!?」

「ナ、ナニガ!?」

 

 吹き飛ばされる餓鬼、数が数十体くらいいたから、一撃で全滅したわけではない。

 後ろの方は前の餓鬼が肉壁になったおかげで、一命をとりとめている。

 それでも、何が起こったのかわからず困惑しているようだ。

 致命的な隙である。

 私はふるったミョルニルさんを地につける形で構え直し、飛びかかる。

 

「はあ!」

 

 生き残った餓鬼の一角が、文字通り吹き飛んだ。

 跡形もなく消し飛んだのである。

 中位以上ならともかく、本当にただの雑魚でしかない下位妖魔にこれを耐える方法はない。

 一歩で飛びかかったので、脚はその後地面につく。

 それを軸足として回転し、更にもう一振り。

 私よりも大きなハンマーに、私が振り回されるような態勢で餓鬼を捉え消し飛ばしていく。

 

 その後も、縦横無尽に私はハンマーをふるった。

 やがて残った餓鬼は一匹となり、私の前で尻もちをついている。

 もちろん逃がすつもりはないが――

 

「……哀れだなぁ、しかし」

「ギ、ギ――」

 

 こいつらは、私が一瞬でも手を止めると。

 

「オンナ、オカス、クウ!」

 

 もはや詰んでいる状況にもかかわらず、こちらに襲いかかってくるのだ。

 それがこいつらの”本能”であるがゆえ。

 

「本能に突き動かされし哀れな妖魔よ、しかしお前たちには最も大事な本能が足りない」

 

 私はミョルニルさんを振り上げて。

 

 

「――生存本能、生き残ろうとする意志のない本能ほど、哀れなものは無いよ」

 

 

 妖魔を、叩き潰した。

 

 

 ◯

 

 

 私が帰還した世界には、妖魔と呼ばれる怪物がいた。

 怪物は、人間が持つ当然の欲求――本能に突き動かされる怪物で、奴らは人を襲い、食い、犯し、殺す。

 放っておけば、この平和な現代の世は一瞬にして混沌に塗れるだろう。

 故に、それに対抗するものがいた。

 

 

 宿滅者(イレーサー)

 

 

 彼らは異能者だ。

 神燃(プライド)と呼ばれる特異な力を用いて戦う、この世界の守護者。

 そして私――笹木野イツキは、そんな宿滅者とは一切関係ない――異世界帰りのクソデカハンマーを振り回すTS幼女(高校生)である。




というわけで現代異能とファンタジー系クソデカハンマー幼女です。
対戦よろしくお願いします。
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