現代異能バトルに、クソデカハンマーを振り回して殴り込みをかけるTS幼女   作:デカハン

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三 宿滅者はハンマーロリを探る

『バカモノーーー!』

「うう、ごめんなさーい!」

 

 如月ミアは叱られていた。

 相手はミアにとっての宿滅者の師匠である。

 現在は、テレビ通話越しに話をしていた。

 画面の向こう側には、坊主姿のいかつい男性が立っていた。

 というか、服装からして住職である、坊主頭というか坊主だ。

 そしてミアがいるのはミアの自室、もうすでに夜も更けた頃のことである。

 

『俺は貴様が、一人でも大丈夫だと強弁するから、一人で樟葉市に向かわせたのだぞ!』

「だ、大丈夫なはずだったんです! それが――」

『言い訳無用。であればなぜ、昨夜は戦場で気絶などした!』

 

 坊主は怒っていた。

 あまりにも迂闊だと。

 実際にそれはその通りで、ミア自身もしそれで餓鬼や性欲特化の妖魔に襲われていたら、とゾッとする。

 それでも、ミアにはどうしても言わなければならないことがあった。

 

「じ、実はその……上から降ってきたんです」

『何がだ、妖魔であれば貴様の不注意だろう』

「――鉄槌乙女(アイアン・メイデン)、です」

 

 鉄槌乙女。

 イツキの宿滅者におけるコードネームだ。

 その言葉を聞いた途端、説教をしていた坊主の語気が一瞬でしぼんだ。

 なんかすまんかった、そんな気配が漂ってくる。

 いいってことですよ、ミアもまたそんな気配で返した。

 

『……あの女か』

「あの、乙女ちゃんは可愛い女の子なのであの女っていう呼び方は……」

『貴様は何を言っているのだ!』

 

 鉄槌乙女(イツキ)の名前に、苦虫を噛み潰したようにする坊主。

 宿滅者にとって、彼女の存在はなんというか――

 

『ヤツは……訳のわからん女だ』

「訳のわからない……ですか」

 

 前例にない存在。

 不可思議極まりない少女。

 訳のわからない女。

 鉄槌乙女(イツキ)を表現する言葉は、大抵そういうモノだ。

 

『訳のわからない存在である、という点では貴様もそう変わらんが……』

「ひどいですよ師匠!」

『貴様は、宿()()()()()()という点で、まだあの女よりはマシというものだ』

 

 何と言っても、鉄槌乙女(イツキ)は宿滅者ではない。

 そこが可笑しいのだ。

 

「えっと、宿滅者以外の人には、妖魔の存在を感知できないんですよね」

『妖魔が認識阻害をしているからな。貴様のように直接襲われない限り、存在を感知することはできない』

 

 だというのに、鉄槌乙女(イツキ)は妖魔の存在を認識できた。

 鉄槌乙女(イツキ)が初めて観測されたのは、今から少し前。

 突如として結界の中に入ってきて、妖魔を押し並べて鏖殺していった。

 以来、樟葉市に居座っては襲撃してくる妖魔を撃退し続けている。

 

『解っていることは、あちらに敵対の意志がなく、むしろこちらを助けようとしていることくらいだ』

「いいことじゃないですか?」

『いいわけあるか、であればなぜ我々に正体をさらさない!? あの女は間違いなく未知の認識阻害を使っているのだぞ』

 

 でなければ、素顔をさらしているのに正体が判明しないなんてことはありえない、と坊主は憤慨する。

 幸いなのは、それがどうやら妖魔の術ではなさそうということくらいだが。

 むしろ、そのせいで完全に鉄槌乙女(イツキ)の正体を探りあぐねているという側面もある。

 

「こう、恥ずかしがり屋だから……とか」

『その割には、毎日のように妖魔を撃退しているがな。あの女の一番の問題は、正体も考えも読めないということだ』

「解っていることと言えば――」

 

 とはいえ、鉄槌乙女(イツキ)が決して宿滅者とコンタクトを取ろうとしないかといえばそんなことはない。

 宿滅者が妖魔に追い詰められている時は、その救援にやってくることもある。

 今回のミアのように、だ。

 そして――その時、彼女は大抵の場合、彼女の得物を手にする時こう口にする。

 

『ミョルニル、北欧神話の神の武器と同名の武器を操るということだけだ』

「幼女がデカいハンマーを握ると、映えますよね」

『言いたいことはよく解るが、今言うことか!』

 

 若干オタク入っているミアの言葉に、同じくオタク入っている坊主は理解を示しながらも怒鳴る。

 とにかく、鉄槌乙女(イツキ)といえばあのクソデカハンマーだ。

 自身の背丈よりもデカいという、とんでもないハンマー。

 そもそもミアが気絶したのも、あのハンマーが振るわれた風圧をモロに受けてしまったからだ。

 何でも鉄槌乙女(イツキ)の攻撃は人間と妖魔を見分けているらしいが、すごい話である。

 

『とにかく、ミョルニルの名を冠する武器を操っているということは、北欧に縁があるのではという話もあったが――』

「すっごいきれいな金髪ですしね」

『――欧州の方でも、あの女の情報はなかったそうだ』

 

 とにかく、情報がない。

 それが鉄槌乙女に対する宿滅者の対応を悩ませている。

 おそらくは、味方なのだろう。

 行動を開始して数ヶ月、未だに鉄槌乙女は妖魔だけを排除している。

 大霊地――妖魔の大きな攻撃目標――である樟葉市を防衛してくれているというだけで、宿滅者にとっても非常にありがたい存在なのは確かだが。

 それでも、得体が知れないというのもまた事実。

 

「……せっかく、こうして樟葉市までこれたのに、お礼の一つも言えないなんて」

『……』

 

 何より、ミアはどうしても鉄槌乙女に言いたいことが会った。

 お礼、何のお礼か――

 

「……私、あの子のお陰で命を救われたんです。妹も、無事に助かって。あの子がいなかったら、私はともかく……妹は、この世にいなかったかも知れない」

『……そうだな』

 

 今から数ヶ月前、ミアは鉄槌乙女(イツキ)に命を救われていた。

 妖魔に襲われていた所を、妹とともに助けられたのだ。

 その時、もしも鉄槌乙女(イツキ)が間に合っていなかったら、おそらく妹は命を落としていた。

 だからこそ、礼を言いたい。

 それがミアの本音である。

 そして、坊主にしてみてもミアの妹が鉄槌乙女(イツキ)に救われたのは、ある意味で宿滅者の落ち度だ。

 何より、鉄槌乙女(イツキ)が去った後にミアたちを保護したのがこの坊主なのだから。

 故に、そのことに対して坊主は何も言わない。

 

『ミアよ、貴様は数奇な運命に導かれ、その年にして宿滅者に覚醒した』

「……はい」

『それは非常に稀なことであり、前例もほとんどないことだ』

 

 宿滅者とは、強い信念を異能として覚醒させる。

 そのためには、その信念を幼い頃から強固にするよう育てられる。

 そのうえで、特別な儀式で宿滅者として”目覚めさせる”のが一般的だ。

 ミアは、幼い頃から宿滅者としての教育を受けてこなかったにも関わらず宿滅者に覚醒した異端児である。

 

『そして、異端児であるからこそ、鉄槌乙女が助けたことには意味があると俺は考えている』

「私の樟葉市行きを許可してくれたのも、それが理由……でしたよね」

『ああ。宿滅者というのはな、非常に因果な存在なのだ。運命は様々な理由で絡みつき、因縁を一つに収束させる。……解るか?』

「……? はい!」

 

 ミアはとりあえず理解らなくても元気に返事をするタイプだった。

 

『……まぁ、よい。樟葉市で貴様が活動していれば、自ずと道は交わるだろう。中位妖魔を討伐できるようになった今なら、貴様を樟葉市で活動させることに否はない』

「ありがとうございます!」

『故に今貴様がするべきことは――』

 

 するべきことは? とミアは小首をかしげた。

 

『まずは、鉄槌乙女の鉄槌の風圧を耐えられるようにすることだな』

 

 つまるところ、中位の妖魔なら一撃で吹き飛ばしてしまうような攻撃の余波を耐えろという。

 

「む、無茶いわないでくださいよー!」

 

 ミアの泣き言が、室内に響き渡った。

 

 

 ◯

 

 

『――ミアが単独行動?』

『珍しいのか』

 

 休日に街をウロウロしていると、私はミアが一人で行動しているのを見つけた。

 

『ミアが私に話しかける時以外で、一人でいることなんてありえない。休日はいつだって友人とディスコで踊り明かしてる人種だよ、彼女は』

『そういう人種に対する偏見がにじみ過ぎではないか。というか、答えはわかりきっているだろう』

 

 嘆息のミョルニルさん。

 甘ったるい吐息が念話越しに聞こえてくる彼女の言う通り、ミアの狙いは解りきっている。

 というか、私と同じ理由だろう。

 

『それを言うなら、お前さんは休日はいつだって日差しの入らない部屋でスマホを見ながらベッドで横になっているだけの人種だろう』

『――つまり、彼女の狙いは妖魔ってわけ』

 

 格好をつけて帳尻を合わせようとするな、とミョルニルさんに咎められる。

 というか、ミョルニルさんがスマホっていうの未だに違和感あるぞ、私。

 ミアの目的は単純であり、彼女が休日に一人で行動するのが珍しいのと同様に。

 私が休日に外へ出るのも珍しいことだ。

 

「――スキル、”隠密”」

 

 すでに行使していた隠密スキルをかけ直しつつ、私はミアを追って町中を進む。

 目的地が同じだからだ。

 私達が向かう先には、昼間にも関わらず妖魔達が展開した結界が広がっている。

 連中は夜に行動することが多く、昼に現れるとしてもこないだのように界道を通ってこっそり入ってこようとする場合が殆どだ。

 だから昼に結界を展開するというのは異様なことで、なにか理由があるのかと思うが――

 

『……妖魔の質が落ちてるからだろうなぁ』

『妖魔は強いヤツが偉い傾向があるからな。強いやつを順々に狩っていった結果、妖魔の質が落ちている可能性がある』

 

 ――今回は、単純に頭の悪い妖魔が短絡的に結界を展開しただけだろう。

 宿滅者側で、それがどこまで把握されているのかは知らないが。

 

『とにかく、ちょうどいい機会だ。先日の夜にあの大鬼と対峙してたってことは、ミアにはあいつを倒す算段があったってことだろう』

『今回の相手に、負ける要素はないわけだな』

『うん、だからミアの実力を拝見するにはちょうどいいね、って』

 

 そうこうしている内に、ミアは結界の前にたどり着いた。

 私とミョルニルさんは念の為、物陰からそれを観察している。

 まぁミョルニルさんはそもそもアイテムボックスの中だけど。

 どうやらあの異空間の中でも、外の様子が解るらしい。

 インテリジェンスアイテムって凄いなぁ。

 

『なかに入るぞ』

『わかってる、追いかけて私達も突入だ』

 

 ミアの身体が、何もない空間に消えていった。

 早速追いかけて、私達もなかに入ることにしよう。




イツキが正体を明かさないのは今はまだゆっくりしてたいから
イツキがすでにメス堕ち気味なのは作者の好みだから
何事にも理由はあります
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