【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話   作:スーパー巨大特濃葛根湯

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【107】 旅の終わり

 鋭い直線を描いて僕らの脚(なお僕は地に足が着いていないので除く)を狙い放たれた矢の線は、しかしまるで吸い寄せられるが如く、届く直前で全て地に落ちた。

 風切り音をたてて空を疾走ったそれらが、まるで速度というものを奪われたかのように、推進力を喪って手前で力尽きていく。

 みなに矢が迫りくる様を見て、血が凍るような感覚を覚えていた僕は、深くエルフさんたちに感謝した。

 

「おー、ホントに効果あるんだねコレ。来るとわかってる矢くらい何本飛んできても避けれるとはいえ、避ける必要すら無いのは確かに便利かも。大事な物に万が一があったりしたらヤだし」

 

 悪王寺先輩は軽い調子でそう言って、胸元の膨らみに載せられた丸い木製のアクセに目を落とす。

 

 『矢避けのアミュレット』──僕らの首から下げられた、ドリームキャッチャーにちょっと似てる木と蔦で構成されるアクセサリー。

 エルフさんが作り、そして精霊の加護を篭めたこのアクセは、付近の飛来した矢に限ってその風の力を収奪する。

 エルフさんたちが古い時代に同族との争いの為に作り出した、対エルフ用の盾みたいなものだ。

 

 

「まさか、本当に持ってくるとは……! あのエルフたちが、他種族の者にまで用立てるなどありえない!」

 

 キングダムの後ろですっかり王城軍団一員と化している、鬼っぽい角の生えたハーフエルフさんの一人が、信じられない物を見たとでも言いたげに溢す。

 ひのふのみのよの……ハーフエルフはおよそ20人ってとこか? 横着せず数を数えるようになった辺り、旅の始まりから僕も随分成長したもんだ。

 

 まあ確かに。エルフさんにとって、こんなに敵に持たれたら致命的なアイテムもねぇものな。

 自分たちのアキレス腱を余所者に握らせてやるヤツは少ないだろう。

 実際先生が居たから行われているズルなだけなんだが、それでも衝撃的ではあるみたいやね。

 ハーフエルフさんには先生が風の方だと直感的にわからないみたいだから、その点も含めてってとこかもね。

 

「ふむ、間に合っておったか。余らが出発した時は、まだ用意が整っていないと聞いておったのだがな。ギリギリ受け取れる辺り、やはり"ショウヨウ"は運の良い面々である」

 いやそりゃどうかなぁ。

 もしも僕らの運が良かったら、こんなとこで面と向き合う必要も無かったように思うんだけど。

「さて、それはどうであろうな。少なくとも、そちらに立てているという事が幸運の証明であると、余は考えておる」

 

 王城さんは僕らを睥睨しながら、意味深な事を嘯いた。

 その表情は昨日となにも変わらないように見えて、しかし目に宿る決意はまったくの別物だった。

 まるで夜露に濡れた戦艦の砲塔みたいな、ひどく剣呑で薄暗く鈍い輝き。

 いびつな覚悟のシジルが渦巻く瞳に、あの明け透けな明るさは見当たらない。

 

 ……まあ、それも君の一側面ではあるんだろうね。

 けれど気に入らないな。

 その憤りも、嫉妬も、自己嫌悪も、悲嘆も、泣き言も、不安も、不満も、逃避願望や破滅願望すらも、全部全部彼女のものだ。

 コソコソ隠れて他人様の人生に茶々入れるしかできない根暗な陰険野郎が、勝手に手を出して弄くり回して良いわけねぇだろ。

 

 

「王城さん、知名君、闇無君! 大丈夫!? 怪我はしてない!? ……あぁ、無事で良かった……!」

 

 彼女らの姿が消えてから気が気でなかった先生は、しかしその様子を見てなお、鉾を取り落としそうな程に脱力して大きな安堵の息を吐いた。

 

「いやぁ〜、この状況は無事とは言いにくいんじゃないですかねぇ……?」

「怪我はしてないだろうね、少なくとも身体的には。先生にとっちゃそれが一番大事なんでしょ」

 

 たいしたもんだとでも言いたげな悪王寺先輩のその言葉は、しかし確かに正鵠を射ていた。

 例えむこうがどんな立ち位置にいようと、先生にしてみれば生徒であることに変わりはなく、そして生徒が無事であるのならそれ以上のことはない。

 彼女はそういう人であるし、それが僕らにとってどれだけの救いとなっていたかは言うまでもないだろう。

 そんな彼女の様子に、眉をひそめて知名君が口を開いた。

 

「……先生、僕たちは今あなた方と敵対しているんです。心配をするべきは、自分たちの方なのではありませんか?」

「いいえ。敵になろうとなんだろうと、あなた達は私の生徒です」

 

 先生の言い切るような言葉に、彼は虚を突かれたような顔をする。

 否応無しに全員が一個の人として生きざるを得ない環境にもかかわらず、それでも自分を庇護しようとする保護者がいる事を改めて突き付けられて。

 自分の人生をかけた決断が、未だ大人に見守られる子供の発育過程なのではと錯誤しそうになって。

 彼の心が揺らいだのがわかった。

 ……そうなった原因の僕が言うのも憚られる事ではあれど、今の彼は不安定だ。

 だからこそその隙に付け込まれ、こんな事になってしまっている。

 

「どこへ行こうと一切の遺漏無く、みんなを保護する責任が私にはある。……今ここに居ない子たちだって、私は心配でたまらないわ」

「そんな、そんな甘い話が通用する世界でないことは、先生だってわかっているでしょう! 僕らは今、これだけの戦力差を揃え、暴力をもってそちらを制圧しようとしている! 手加減などしない……まかり間違えば、死人だって出るでしょう。その時も、あなたはそんな甘い事を言ってられ「そんな事にはさせません」

 

 知名君がまるで自分に言い聞かせる様に募る言葉を遮って、彼女はキッパリと断言した。

 まっすぐに相手の目を見て、一切の衒いをもたず。

 問答無用とばかりに、言語道断とばかりに、それだけはやらせないと宣言する。

 

「だって、そんな事をしたらあなた達はとても後悔するわ。悪い人に唆され魔が差して取り返しのつかない事をしてしまえば、その悔いは一生付いて回ります。そんな不幸は私が起こさせません。教え子が道を踏み外しそうになったら、それを諭し正しい道へ戻してあげるのが教師の仕事です」

 

 弓を携え剣を手にする軍勢を前に、彼女は微笑みすら浮かべて生徒の心を案じる。

 先生は異世界へ来てからこっちも、いつだってこうだった。

 自分に胸が張れるように"教師"を貫き、子供は大人を頼りなさいと一時も欠かさず保護者でありつづけた。

 成長を褒め、へこめば励まし、暖かく見守って、身を挺して先頭に立ってきた。

 

 そしてそんな彼女だからこそ、もしも生徒が悪事に手を染めそうになったら。

 

「ッ──だから! そんな甘い事をッ!」

「ですので、ブン殴って目を醒まさせます」

「……は?」

「むろん、体罰は良くないですが……この世界では、そんな甘い事は言ってられませんものね? それにホラ、身体を動かせばスッキリするでしょ。考える時間も大事だけど、動き出さなきゃ始まらない」

 

 ゲンコツ落としてでも、正気に戻してくれるだろう。

 

「迷わばやれよ、やればわかるさ。……理由は後で聞きますから、まずはかかって来なさい。胸を貸してあげるわ」

 

 そう言って彼女は微笑んだまま、パンと拳を手のひらに打ち付けた。

 大人としての度量で自分たちの反抗を受け止めて、それでいて見捨てるつもりも責めるつもりもない先生の態度に、知名君は明確にたじろいだ。

 そんな彼の胸に、横から手が添えられる。

 大きく、頼りがいのある手。

 誰かの拠り所になるに足る力強さを感じさせるそれは、まさしく手当ての語源の如く、彼の不安定な精神に均衡を取り戻させる。

 そのまま知名君を一歩下がらせて、王城さんが先生と彼の間に割って入った。

 

「知名、気圧されるな。ここぞという時に迷うのは、お前の悪いクセの一つだ。それとも、やはりあちら側に行きたくなったか?」

「……適当を言うな。単に拍子抜けしたに過ぎん。もう、言うことも無い」

 

 うーん、きちんとリーダーしてらっしゃる。

 やっぱトップに求められるのは頼りがいと腕っぷしなんだなぁ。

 つまり両手落ちな僕はやはりリーダーに向いてないと思うので、帰ったら職を辞する事に決めた。総選挙のお時間です。

 まさか賢明なメンバーの民意がヒモを再選するハズもあるまい……。フラグだと自分でもわかるから嫌んなるな。

 

 ウチのガバガバ民主主義は置いといて、王城さんが暫定むこうのリーダーポジなのは厄介だ。てかなんでハーフエルフさんの上にまで立ってるんです? 王気が強過ぎて、どこでもトップに立たざるをえない宿命なのかも知れん。

 なにせ彼女は意志が強い。

 腹を決めるまでは慎重だが、一度決めてしまえばこれと貫く胆力がある。

 揺らいでいた昨夜はともかく、覚悟が完了した今は早々意見を翻さないだろう。

 ……悪口は趣味じゃないので口に出すのは控えるが、前者は未熟故の臆病さ、後者は稚気じみた頑固とも言い換えられる。

 だからこそ、彼女の説得は困難を極めるのだ。

 振りかぶってしまった拳を下ろすのは、幼い者ほど難しいものでしょ?

 理屈で説得できる大人と違い、子供は感情で納得するまで折れないかんね。

 でも、きっとだからこそ、僕はこの人を放っておけなかったんだ。

 子供のワガママくらい、聞いてあげたいものじゃないか。

 

 

「ま、センセは論より拳みたいだから、一応ボクが聞いとこっかな。ねぇ、琥珀ちゃん。ボクらを裏切ってまで、そっちについた理由は何なんだい? こう見えてウチのグループは、誰かさんのおかげで釈明を聞き慣れててね。たいていの事なら水に流し、話し合いのテーブルにつけると思うんだけど」

 

 ジリジリとした一触即発の空気を、あえてまるで無視して悪王寺先輩が問いかける。

 後ろに並んだハーフエルフさんが臨戦態勢ながら律儀にこちらの問答を待っているあたり、どうやらホントに王城さんたちを筆頭と認めているらしい。

 たった朝の数時間で何があったんだよ。

 

「……それはきっと、無理な相談でしょうな。そもそも余らは志を同じくしているわけではない。各々がそれぞれの目的の為に、ただ今この時同じ方向を向いているに過ぎません。余とてココでは王ではないのです。後ろの連中も、余らの中に見た何かに従っているだけである故」

「ふーん……なんか色々理屈捏ねてるけど、結局明言避けてない? 言ってみなよ。言うだけならタダなんだしさ」

 

 煙に巻こうとしているのはお見通しとばかりに、爪の先までピンと伸ばしたしなやかな指で、彼女は王城さんを指差す。

 名探偵の無慈悲な指摘に晒された彼女は、ほんの僅かな時間静かに目を閉じた。

 そして、その瞼が再び開かれた時。

 もう僕らは行くところまで行くしか無いのだと、理解させられた。

 

「……余の要求は、日本への帰還を取り止める事である」

「そんなもん、別に誰も止めないでしょ。勝手に自分で好きにしたらいいんじゃないかい?」

「勘違い召さるるな。この場に居る全員が、だ。今ここにいる人間は、誰一人地球に帰さないと言っておる。……飲めるハズがあるまい。なんせ、先輩の腕の中にいるそちらのトップの望みと相反するものだ」

 

 いやもうホント、お構い無く……。

 そうです、こんなに真剣な場面なのに僕は未だ悪王寺先輩に抱っこされています。叙述トリックやね。

 もう終わりだよ僕の社会的地位は。

 

「そちらの前提が『パーティ全員での帰還』である以上、余らの歩み寄りは不可能であろう」

「あー、なるほど。そりゃ無理だね。決定的に無理だ」

 

 うーん、それにはハイとは返せないかなぁ。

 確かに「全員で日本に帰りたい」の言い出しっぺは僕であるが、しかしそれはもはやみんなと話し合ってそれでいいよと認められたウチのパーティ方針だ。

 というかそもそも僕の要望なんかこの際無視するとしても、パーティ内には「冒険が終われば帰りたい」とこちらに来た当初から考えていた人だって、もちろん何人か居るワケで。

 流石に他の転移者の帰還の権利を奪う……なんてのは、傍若無人が過ぎると言わざるを得ない。

 それは明確に“認められないこと“の範疇になってしまう。

 

「ボクらは青海クンの意志を尊重する。これは今しがた『異議無し』のリアクションスタンプで満場一致した結論だ。……確かに、今更帰っても仕方ない場所ではあるから、戻る気しない気持ちはわかんないでもないけどさ。でも彼との学生生活なんて言葉の響きには、心躍るものがあるからね。甘酸っぱいスクールライフって、こちらじゃあ望めそうにないだろう?」

 

 あ、そっちスか? 各々の希望にそぐわないからとかでなく僕の意志メイン? 脳内discordを確認したらマジだった。スタンプもこんなに増えちゃって……。

 ま、まあ結果は同じだからね。この際理由はどっちでもよかろう。

 成り行きを見守っていたら流れるように決裂してしまったが、譲れない所で衝突したならやむを得ないことだ。

 しかもなにが難しいって、両極端な方向を指し示す要求がぶつかりあうので、間を取るみたいな譲歩が一切できない点か。

 王城さんの言葉に反応を示さないところを見るに、闇無君や知名君も理由は違えど僕らの打倒を目指しているのだろう。なら、この交渉はご破算である。

 

 

 とはいえ、正直わかっていたことだった。

 遭遇後から僕がほぼ言葉を発さない置物となっていたのは、はなから察してしまっていたからである。

 ハーフエルフを含め彼女らは、もう矛を交える以外のルートを断ってしまっている。

 少なくとも今の時点では、交渉の余地が存在していないのだ。

 まるでセメントで塗り固められたみたいに全員の心が凝固して、解決の糸口を固く閉ざしている。

 

 チラ、と流し見た明星先輩が、やりきれないように首を横に振る。

 どうもサイレント祈祷による洗脳解除は不発に終わったようだ。

 バフのオーラが不可視化できるなら、祈祷の演出も気合いでスキップできるのではという思い付きは上手くいったが、本命の方はハズしてしまったらしい。

 つまり“魔王が行っているのは洗脳ではない“か、もしくは“魔王の洗脳に今の段階の先輩の祈祷は通じない“という事になる。

 なんにしろ、こうなったらもうできる事はない。

 

 どれだけ言葉を重ねようも、そもそも彼らが聞く耳を持つ気がサラサラないなら無意味なのだ。

 山算金のスキルですら、嘴を差し挟む余地がない。

 バーサク状態の先生に効果が無いのと同様に、ほんの少し気を逸らすくらいが関の山だろう。

 覚悟を決めた人を前にすると、僕や彼女みたいな口八丁組はひどく無力だ。

 

 けれど、だけどさ。

 嘘をつくのもごまかすのも、あれだけ嫌がっていたってのに。

 本音を聞こえの良い虚飾で覆い、自分の気持ちから目を逸らしてごまかしている今の君を。

 どうにかしてあげたいと考えているのは、僕の本心なんだ。

 だから、なんにもできない僕が言うのもカッコつかない話だけど、殴りあってでもその呪縛から解放してあげなきゃな。

 

 

 

「で、あろうな。闇無は言いたい事はないのか。仲良くおしゃべりできるのは、これが最後となるやも知れぬぞ」

 

 王城さんは断られるとわかっていたかのようにあっさりと話を流すと、背後で地面に突き刺した抜き身の剣にもたれかかって座り込んでいる闇無君に話を振る。

 先程から彼女はパーティメンバー全員に一声かけて、その意志を確認している。

 まるで、言い残したことは無いかとでも言いたげに。

 今ならまだ、むこうに回っても構わないぞと告げるように。

 

 それはきっと、本当に僕らと袂を分かつことを、王城さんが受け入れているからだ。

 もう、猶予は無い。

 時が満ちようとしている。

 

 そんな気遣いを知ってか知らずか。

 一言も発することなく、僕らのやりとりをつまらなそうに眺めていた闇無君は、さしたる興味も無いように首を振って気怠げに立ち上がり、突き刺さった剣を引き抜いて、軽々と肩に担ぎあげる。

 簡素で無骨な青銅の剣は、今の覇気のない彼にどうしてかよく似合っていた。

 

「……別に無いさ。結局彼女らも変わらなかった。なにもかもがいつも通りだ。どいつもこいつもみんな、瑕疵だらけの欠陥品だった」

「そうか。であれば、終わらせるとしよう。余とて楽しくてやるのではない。気の進まん事は、さっさと片づけたいたちだ」

 

 途端、彼女らから黒い輝きが立ち昇る。

 見る者を不安にするそのオーラは、僕らに妙に縁がある見覚えあり過ぎるモノ。

 トロールやリッチキングが纏っていた、この世で最も悪逆な存在との繋がりを示すシンボルマーク。

 それに呼応するように、背後のハーフエルフたちもそれぞれ武器を構えた。

 深いよどみの奥底から沸き上がるようなおぞましい力の奔流。

 自身の内なる闇より這い出たソレが、神より"天職"の力を授かった転移者たちの力を更に増大させる。

 三人からほとばしる"気"の膨れ上がり方に、そういうのに鈍い僕ですら無意識に息を呑む。

 こりゃまた……三人とも見違えたみたいな悪堕ちじゃねぇか。

 すっかり魔王軍四天王の風格じゃん。一人足りないのは「ヤツは四天王の中でも最弱」枠を先に切って捨てといたからなのかも知れん。

 ……闇と光が合わさったら最強なのはお約束で証明されてっからさぁ、相手方にそれをやられるとたまったもんじゃないんだよな。

 

 

 スマートな肢体がまるで溶鉄を吹き込まれたかのように膨れ上がり、筋肉の鎧へと形を変えてゆく。

「地球に帰るワケにはいかない。おまえらに魔王は倒させない。なに、命までは取らんさ。余は処刑を好む暴君ではない」

 

 ローブの裾から取り出されたのは、革装丁の分厚い本。辞典のようなそれを片手で開き、空いた手ではすっかり使い込まれた杖を握って、杖頭をこちらへと差し向ける。

「フン……それはコイツの理屈だ。僕は別に魔王と地球、どちらにもさして興味はない。だが、やろうとしている事に異論は無く、都合が良いならば利用しよう」

 

 陽光の下で放っていた煌めきが鳴りを潜めた剣を肩に担ぎ、リラックスした姿勢のまま僕らを感情のない瞳で見つめている。

「いつも……いつも、いつもいつもいつも、つまらない遊びに付き合ってきた。馬鹿は夢を見るな。無能は大言を吐くな。出来損ないは身の程を知れ。なにも出来ない選ばれなかった者が、分不相応に輝こうとする姿は、あまりにも醜悪で見るに耐えない。だから俺は、何度だってそれを速やかに終わらせてきた。……そして今度も、そうしよう」

 

 きっとこれまでの冒険でそうしてきたように。

 理不尽なこの異世界で、生き抜こうと抗ってきたように。

 ただ、自分たちの願望を成就させるために。

 

 

         君

「「「ここが おまえ 達の旅の終わりだ」」」

          貴方

 

 

 ──"キングダム"が、僕らへと刃を向けた。

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