【書籍化】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話 作:河葛幸狸/スーパー巨大特濃葛根湯
感想、ここすき、お気に入り、全部本当に励みになってます。
ぜひどんどこどんお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、どんな話が求められてるかの参考にもしていますので……。
クランハウスというのはクランメンバーにとっての家であると同時に、冒険者稼業を維持していくための様々な施設も有していることが多い。
例えば帝都の大手クランにもなればお抱えの鍛冶師なんかまで居たりするし、銀狼王の旅団においては元冒険者だった手先の器用なメンバーの一人が、伸びる爪を研いだり髪の編み込みを行う専属のスタイリストじみた仕事を担っているらしい。
……ま、とはいえ僕らにそういった特別な施設がなにか必要かと問われると、パッとは(巨大な金庫以外)思い浮かばないところではあるが。
「そうだね、コレに関しちゃ君ら只人にゃ縁遠いだろうさ。特に爪なんてのは、私ら獣人特有の話だし」
背を向けて座るクランメンバーの髪の毛を慣れた手つきで素早く編んでいるお姉さんは、そう言って朗らかに笑った。
指先が滑らかに動く度、魔法みたいに髪が編み上がっていく。
その様はまるで、流れてきたらつい最後まで見ちゃうshort動画のようだ。褒め言葉がドパガキ基準過ぎる。
ま、褒め言葉としちゃ微妙に聞こえるかもしれないが、こちらの想像の範疇にある事柄で、卓越した技術により極めて高い精度で芸術的な造形を描き出してみせるその様子は、まさしくその完成形みたいなもんである。
バズ間違いなし。この手の界隈は炎上もそんなに起こりにくいだろうし、日本に居たらぜひ動画配信をオススメしたところだ。
いやマジで神の手っすねぇ〜……。
まず間違いなく適切な観衆さえ整えば、それだけでいろんな人を虜にできると思いますよ。
ホントに、お世辞とか抜きで。
お姉さんのテクニックにはそれだけのポテンシャルがある。
「え、えぇ〜? なにさ、髪の編み込み一つでえらい褒めてくれるじゃん。でもここに観衆なんか呼び込めないし、ここ以外の場所でってのもちょっとねぇ」
えぇ、えぇ、それはもちろん。
単なる絶対的な評価であって、お誘いなんかじゃあないですからね。
というかそもそもみだりに人の目に晒したりすべきじゃあないものなんですよね?
こうして見せて頂いていることが幸運だし、光栄なことだと思います。
それになにより、女性の髪を見世物にしようなんて下世話な話もないですし。
「……ふぅん、なんだ。分かってんだね」
彼女がチラとこちらを見るも、その手は変わらず寸分の狂い無く独特な形に髪を織り上げている。
出会った当初はサーシャ姐オリジナルのオシャレなのかな〜と思ってたが、その編み込みは銀狼族伝統の意匠なのだそうだ。
彼女らにとって特別な、何らかの意味が込められた儀式的紋様。
軽んじてはいけない一線の存在が、ありありと伝わってくる。
こういうのはこっちの異世界にゃ結構多い。
獣人さんは多種多様なので、かなり細かく様々な種族固有の文化があるからな。
友人であるリス獣人の女の子はなにより尻尾の毛並みを重視するし、ヴォルバレイさんは加齢によって巻角の艶が喪われるのを神経質に恐れていた。只人族の薄毛みたいなもんらしい。僕も将来がこえーや。
「時々お互いにチャレンジしてみたりはするけれど、やっぱユウリが一番だよぉ」
「そりゃあこれで食ってますから? そこらの野良結いに負けてちゃ、母ちゃんに言い訳が立たないでしょ」
カラカラと陽気に笑う彼女は「ほい、出来上がり」と言うと、前に座る仲間の背中をバシンと勢い良く張った。
「ッつぅ……加減しろこのバカ!」
「なぁに言ってんの。私が現役ならこの三倍は痛かったんだからね」
背中を押さえて呻くファラさんは、ブツクサと文句を言いながらカウボーイハットを被り直すと、たった今編まれた髪が見えるように調整した。
説明を受けた僕がユウリさんのお仕事に興味を示したところ、案内をしてくれていた彼女が「そろそろ時期だし丁度いい」と、実演するところを見せてくれたのだ。
面倒見が良いってレベルじゃねぇ。絶対ケルセデク土産を調整してファラさんの分も捻出しなきゃだわ。
その後、話の流れで「無論ユウリさんと比べるのも恥ずかしいが、僕も時々仲間の髪を結ぶ事がある」と話すと、「今度見てあげるからまた一緒に来なよ」とお誘いを受けた。
いやぁ、お遊びでやってみてと言われて何度かやったことがあるだけなのに、流石にプロに見せるのは躊躇われんね。
……でもこんなありがたいお誘いもないので、お言葉に甘えさせてもらおうかな。
なんせ彼女は、その腕前だけで一人分の食い扶持を冒険者のクランからもらっているプロなのだから。
それだけ聞くと随分贅沢というか、豪気な話だと思われるかもしれないが、獣人にとっての毛や爪というのは只人のソレとはかなり意味合いが異なる。余裕がある只人が行うようなのとは違い、彼女らにとってのソレは「かなり優先的に、時には食えずともしなければならない」ことだ。
その行為を只人のなにかに例えて言うのは難しいが、何はなくとも──むしろ何もない時こそ、信仰や祈祷をおざなりにしないのと似ているかも知れない。
武器持たねば魔物と抗えぬ只人と違って鋭い爪や牙を持つ獣人であろうと、爪をしまってその手を合わせ、口をつぐんで牙を見せず、神か祖霊か精霊かにすがらねばならぬ時もある。
人より優れた力があろうとも、どうにもできない現実を前に、信仰という杖を携えねば歩いて行けぬ日がいつかは来る。
……紹介された彼女は一度も椅子から立ち上がらなかったし、身動ぎする時に不自然な体幹の動きも見受けられた。長く冒険者を続けていれば、いつか戦えなくなるクランメンバーが出てくることは避けられない。
祈りを最も必要としているのは、きっと彼女本人なのかも知れなかった。
次来る時までに、良いお店を探しておこう。
そんなに歩かない場所で、座ってゆっくりできるとこが良い。連れてきたみんなと、のんびり交流できるような店を。
◇ ◇ ◇
そしてユウリさんと別れた後。
倉庫はこんなもんで大事なもんは各自自室保管だの、冬場はクソ寒過ぎるので魔術師による温熱魔導具は各部屋必須だのといった説明を受け、どうしてかサーシャ姐の自室まで「特別だよぅ」と見せてもらったりしてから、最後には食堂でご飯をいただけることになった。
あまりにも手厚くもてなされ過ぎている。これが噂に聞くバスツアーってヤツなのか? ホントにここまでしてもらっていいんですかね。
そんな厚遇をされたもんだから、思わず伸びかける不本意扶養のオーラを引っ込めるためにめちゃくちゃお腹に力を入れ続けている状態だ。
ここでだけは絶対に出させねぇ……! こんなとこでバフおっぱじめたらどこまで繋がっちゃうかわかったもんじゃねぇだろうが……!
とんでもないタコ足配線になって、それを火元としてクランハウスが焼け落ちたら目も当てらんねぇ。もはやテロだろそこまでいくと。
「なぁに遠慮してんのさぁ。アオには普段から色々もらってるし、これくらい良いんだよぅ?」
「う、うん、ありがとうね……っ! 美味しいっす……っ!」
丹田というか腹筋というかに力を込めて踏ん張ってるから食の進みが遅くなると、サーシャ姐がこれも食べなあれも食べなと大皿から取り分けてくれる。
その度に腹から飛び出しそうになるバフを押さえようとビクンビクン震えながら、僕はつとめて笑顔でフォークを伸ばした。まるでウマ過ぎるとオーバーリアクションするグルメ漫画のキャラみてぇになってるかも。覚えてもらいやすくて良いな。キャラ付けなんてハッキリしてればしてるだけ良いんだから。そう思いません?
「フンフンフンフンフン……ん、うん、そう思うな」
未だに僕の肩付近を嗅いでいるルゥさんに同意を求めれば、マジで聞いてないんだろうなって感じの相槌が返ってきた。
この人数時間近くずっとニオイを嗅いでるもんだから、もうなんかそういうもんかなって慣れてきちゃったわ。サーシャ姐も途中から諦めて気にしていないし。
間もなく夕飯時を迎える食堂には、すでに十数人の銀狼族さんたちが集まっていて、友人とお喋りしながらや一人のんびりとだったり三々五々それぞれに食事を取っていた。
こんな大規模なクランであれば当然としても、そうでなくとも大抵クランと呼ばれる程度に人数が増えたトコの拠点には食堂くらいあるもんだそうだ。
一人一人が外食なり自炊なりするより、大量の飯を一気に作った方が安上がりなのはどの世界でも同じだからな。
そしてその量の調理をするならば、キチンと技術を持った人間が必要になるだろう。事実今僕が食べてるチキン煮込みもメチャウマだ。ホントにウマい。屋台出してくれ。
他の部分で多少ゴリ押すのはともかく、食事ってのはダイレクトに身体にフィードバックされる。
大人数分の調理をしたことない素人が適当に続けてると良くないのは、火を見るよりも明らかだろう。
まあ金には困ってないし外食でもいいと言えばいいんだが、どうせ我が家ができるのならばみんなとお家で食べたいという気持ちになってしまう。
で、ウチはそこらへんこれまでメイちゃんに依存していた(なおなぜか依存されてもいる(ここのとこご飯をせびらないと不安そうな目をする時がある(ご飯代が僕だけ「マイナス表記」になり、食べるとお金が貰えるシステムに変わりかけたのは流石に説得して止めた。フードファイターじゃねんだぞ)))ので、クランハウスを買う場合は色々と考えなきゃならないのだ。
いやホントにね。ホントに色々考えなきゃマズいんだよ。どうしてあんな風になってしまったのかとんと分からないから怖い。なにもしてないのに。まあそら仲良くなろうとはしたが、仲良くなった結果こうはならんだろ。
……メイちゃんから続いて『斑猫の尾』のことも連想する。
女将さんにはエルフの国へ行くよりも前から、それとなく宿から出るかもしれない事を相談してあった。
キングダム加入前の時点からかなりの人数になっていて、『斑猫の尾』のキャパギリギリだったからだ。
山算金パーティーがこっちの宿に来た時点で部屋はパンパン。人手も足りず、近所のバアちゃんが宿の従業員として雇われてるくらいだもん。
だもんで、キングダムの面子も頻繁に顔出したり話し合いの場を設けたりすることを思えば、もはや新たな居場所として大きな家を用意するというのはある種必要に駆られてのことだった。
しかしいきなり埋まっていた部屋が全部空くなんてのは、それこそ経営が傾く程の大事になってしまう。
物事を軟着陸させるためには、まずは報告連絡相談が大事だからな。
それしないと後でお客さんに迷惑かけるタイプの失敗して、上の人とかから消えて無くなりたいくらい怒られるんだ。思い出すと嫌んなってきた、鬱鬱鬱~! この身体は、きっと無限の黒歴史で出来ていた……。
「なーなー、アンタヒモしてるってホントなのか? 只人族ってそういう習性してたっけ?」
扶養我慢とついでにフラッシュバックのせいでビクンビクン震えていると、もの珍しげにこちらを見ていた銀狼族さんが、ふと思い出したように訪ねてきた。
マズい、人類全体に対するバチクソヤベー風評被害だ。一匹白いカラスがいても全てのカラスが白いワケじゃねぇ事を、人類悪としてキチンと説明して差しあげねばならない。
いやいやいや、お姉さんそりゃデマですよデマ。
ただ水晶玉にヒモって表示されたってだけで、つまりは公式が勝手に言ってるだけなんすよね。ウチのシマじゃアレノーカンだから。
僕はちゃんと冒険者クランに入ってますし、只人族は男の人も女の人も働き者が多い勤勉な習性をしています。(種族に対する貢献+1)
そりゃもう直前の依頼だって、荷物持ちから情報収集に道中の話し相手と、自分にできることを十全にこなしてきたとこなんだから。
「ふーん……ん? 結局、冒険者としてのジョブは何を──」
まあまあそう話を急がないで。会話は相互理解が基本だ。一方的にこっちの話ばっかってのもなんだし、そう言うお姉さんのジョブは……いや、当てて見せようかな。
そうだなぁ、まずあなたは前衛職だ。
動き回るよりも待ち構えるのに向いた筋肉の付き方だし、なおかつ周りが気にしている異物である僕へ真っ先に飛びかかる勇猛さと、まず一番に自分が壁となる意識がある。
それに腕には大きな傷がいくつか。普通に戦っている時にはなかなか傷がつかない場所だ。恐らく仲間を庇った時の物だろうね。となれば前衛の中でも仲間を守る"盾"の役割を担っているんじゃないかな。
手のタコの場所と広背筋の発達から、多分使うのは両手持ちの大剣だと思う。知り合いにもデカい剣を使ってる人がいてね。その人と似てるからすぐわかった。
今あげた特徴を総括してそんなジョブをなんと呼ぶかというと、一般的なとこでは『重戦士』になるのだろうけれど、銀狼族は森や狩猟に関した職に就く事が多いと聞くから……なんだろ、適した名称が浮かばないや。結局当てられないんかい。尻切れトンボになっちった。すいませんね。
「……いや、驚いた。凄いねアンタ、ほぼ正解だ。名前は? 私はアデプトナイトのリュネル」
「この子はねぇ、アーオーミっていうの。ウチのだからあげないよぅ」
「なんだよ、ケチケチするなってサーシャ。取って食やしない。単にもうちょっと話してみたくなっただけで」
「だからソレがマズいんだってぇ。外堀を埋めるつもりだったのに、そっから伏兵ワラワラ出てきてシャレなんないんだけどぉ」
よし、
へへへ……姉さん、ヒモに追求なんて一番しちゃいけませんぜ、こういう手合は口から出るもんで飯食ってるんですから。有無を言わさず牢屋に入れるのが正解なんです。
なお僕は今、正解に辿り着いた仲間たちが僕専用Prisonを用意するのをお手伝いしている真っ最中である。「お前を一生外に出さない方法」を聞かれたイルカみてぇになっちゃった。自業自得。
ヒモであることの追求から逃れたことにホッと一息ついていると、ジトっとした視線が向けられていることに気づく。
視線の先をたどれば、ファラさんが胡散臭いものを見る目でこちらを見つめていた。
……いや、違うんですよ。
「なにが」
いえ、なにも……僕はヒモのカスです……。
なにはともあれ犯行現場を見られた現行犯らしく否定から入ったが、なにも違うところは無いのでおとなしく容疑を認めた。
一番僕を危険視していた人にヒモの証明たる口車の一部始終を見咎められ、しおしおにしなびてしまった僕を前に、彼女は鼻を鳴らして肩をすくめた。
「なんもしてないのに、そんなにしょぼくれるんじゃない。……悪かったな、食ってかかって。人伝ての情報に踊らされ、サーシャが悪い男につけこまれているんじゃないかと警戒し過ぎた」
そう言って彼女はきまり悪そうにそっぽを向く。
あー、そりゃまあ当たり前の警戒ですし……なによりそんな僕をわざわざ案内までしてくださったじゃないですか。
なにか嫌がらせをしたとかならともかく、疑いつつも怪しいヤツに時間を割いてくれたワケで、そんな悪かったとか言うような事じゃないですって。
「だからだよ。ずっと付き添ってたのは、お前がサーシャに変なことしないか見張る為だった。結果、お前から妙なアクションを起こす事は一切無く……むしろサーシャの方がちょっと暴走してるくらいだった。それにルゥがずっとついて回ってたろ。コイツは鼻が利かないが、第六感じみた嗅覚は鋭い。ルゥがこれだけ遠ざけなかったから、まあ悪いヤツじゃないと判断できた。……どんなに言葉を重ねても、色眼鏡で見てたことは事実だ。すまなかった、今度詫びはする」
え、なんだって? お詫びとか聞こえた気がするけど聞き間違いかな。まずですね、あんだけ親切にしてもらっといて、その上詫びも何もあったもんじゃ無いんですって。
まずはこっちから恩を返させてもらいますよ。ファラさんのお好きな物はもうお聞きできましたからね。
ドライフルーツならケルセデクで山ほど買ってありますんで、今度クランメンバーと来る時に詰め合わせを持ってきます。あっちのフルーツマジで飛ぶ程ウンマいんで覚悟の準備をしておいてくださいね。
あ、気に入ったのあったらまた気軽に言ってもらえたら用意できますからね。それこそ商会の倉庫単位で色々あるんで。僕も消費者の生の声が聞きたいし。
「変なとこで押し強いなオマエ。わかった、楽しみにしてるよ」
「おっ、ようやくファラの誤解も解けたかぁ。まったく、ルゥもあわせてずーっと付いてくるんだから。あ、そーだアオ、クランハウスについてまだ何個か教えときたいことがあってさぁ」
「ああ、そういやその為に来たんだったな。お前からももう質問とかはないのか? 今のうちに全部聞いておけ」
あ、じゃあ何点か聞いときたい事とかあってさぁ。それってのも、もし小耳にはさむ事があればでいいんだけど──。
そうして聞いておかなければならなかった事や、ちょいと頼み事などをしていると、自然僕らがどういうクランハウスが欲しいかの話になった。
今のとこ出てる要望やらを伝えれば、彼女らは現実的な落とし所を考えてくれる。マジでデカい借りが現在進行形で出来上がってしまっている……今度自腹でハムのお歳暮を贈ろう。肉屋で買ってその足で持ってくるわ。焼いて一緒に食べよ。
「ま、鉄格子は鍛冶屋にでも頼みなよぅ。……あとさ、あとねぇ、アオの部屋には窓とかから出入りしやすい仕組みもあったら良いんじゃないかなぁ。男の子って隠し扉とか、そういうギミックが大好きでしょぉ?」
え、待ってそれめちゃめちゃワクワクするかも! うわー、男の子の気持ちをわかり過ぎている! 流石サーシャ姐!
「ふふふ、だよねぇ? あとはぁ、聞いた話なんだけど、弱いロックゴーレムの石材を壁に貼ると、どうしてか冬の寒さが部屋に入って来ないらしいよぉ。値段は高くついちゃうけど、クランハウス買えるお金があるなら考えてみるのもいいんじゃなぁい?」
へぇ〜、そんなのが。底冷えする地域では断熱性があるかどうかで快適さが天と地だろうし、それはちょっとみんなに提案してみるべき事ですね。
やっぱ先輩冒険者の話ってタメになるなぁ。
「……あとまあこれはついでなんだけど、部屋の中の音も外に漏れにくくなるんだってぇ……まあそれはどうでもいい話だよねぇ……べつに悪いことじゃないしぃ……」
なるほどなるほど。
え、スゲー良いじゃん。防音機能付き個室なんて今時超人気物件でしょ、配信者垂涎だぞ。
ムムッ、待てよ……?
密室、侵入経路、防音……僕の中のシャーロック・ホームズが、今まで挙げられた要素から一つの"答え"を導き出す。
つまりそれらの要素を足し合わせると──飲み足りない夜とかにみんなの共有スペースを通さず窓から僕の部屋に招いて、騒がない程度に飲み明かしたりできる……って、コト!?
……名探偵が時間取って思いつく事か? これが。
残念ながらホームズはホームズでも、アルコール大好きな側面が色濃く反映されたバーサーカークラスだったらしい。仲良くできそうだ。これからも上手くやってこう。
今日は目黒さんの部屋の観葉植物で寝てるけど、同居人であるのじゃロリご長寿エルフさんとも仲良くしてくれな。
「……おぉ! その通りだねぇ、アオは凄いなぁ。ぜひそうしなよぅ。建物が見つかったら、リフォーム手伝うから声掛けてねぇ……あ痛゛ッ!? なにすんのさファラ!」
「ダメだ危なっかしくて見てられん。その時は私も呼べ。このバカトラッパーがカギに細工しないか見ておかなきゃならん」
「しっ、シっツレイなぁ~ッ! ウチはそういう小細工はしないよぅ。大抵のカギなら正面からちょちょいのちょいで」
「堂々と犯行を予告するんじゃないこのバカ! 他のクランに迷惑かけるんじゃない、抗争になったらどうするんだよ!」
まあまあ、サーシャ姐は善意で言ってるんですし、そんなに怒らないであげてくださいよ。
「アオミもアオミだぞ! お前も少しは危機感を持て!」
しきりに口元を拭いながら半目でこちらを見つめるサーシャ姐と、そのドタマにゲンコツを一発落としたファラさんの賑やかな言い合いは、光りはじめた腹を必死に隠した僕がなんとかご飯を食べきるまで続くのであった。
いやぁ、最初はどうなることかと思ったが、サーシャ姐のお友達とも仲良くなれて良かったぜ。なおかつ仲良くなり過ぎて飼い主が増える事もなくなによりである。
なんで人と付き合う度に、強すぎず弱すぎずちょうど良いトコでゲージ止めるみたいな事しなきゃなんないんだよ。人付き合いってみんゴルなの?
だから社長とかの偉くてコミュ力が高い人はみんなゴルフやってんのか。社会の謎がまた一つ解けちまったな……。