【書籍化】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話 作:河葛幸狸/スーパー巨大特濃葛根湯
感想、ここすき、お気に入り、全部本当に励みになってます。
ぜひどんどこどんお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、どんな話が求められてるかの参考にもしていますので……。
「な、る、ほど……狼、獣人、さん……です、か……狼……良い……!」
「今の話を聞いて気になったのがそこなのかい? いやまあね、獣人の方々が"良い"ことは否定はしないよ? 只人族とはまた違うエキゾチックな魅力があることは確かさ。それこそもふもふでつやつやなお耳で感情を露わにされると、背筋にぞくぞくと言いしれぬ感覚が走るのは認めるね。でもさ、今一番気にすべきは助手クンの節操の無さじゃない?」
ムフンムフンと興奮気味の目黒さんとは対照的に、その隣を歩く悪王寺先輩はむくれながらシラーッとした目でこちらを見つめてくる。
二人とももこもこダウンがよう似合っとる。
漆黒と白銀の対比が美しいっすねぇ。対となる精霊みたいだ。可愛らしいフォルムなのに華麗で可憐なんだよな。
「フフン、そりゃ僕は何を着ても似合うさ。こういうのは着こなし一つでいかようにも魅せられる。それに黒井さんもスラッと背が高いから、まぁるいシルエットの服でもちんちくりんにならないんだよねぇ〜」
「あ、う……えへ、へ……」
褒められることなど日常茶飯事である悪王寺先輩は当然のことのように僕の言葉を受け入れたが、しかしその頬はまんざらでもなさげに緩められている。
目黒さんの方はこの類の賞賛に慣れていないのか、悪王寺先輩からの言葉も相まって、戸惑いながらも心底嬉しそうに胸の前で両手を合わせた。
可愛い……。
「うん、キュートだ……。普段の黒装束は隠密らしさがあるけれど、やっぱり可愛い女の子は色々着なきゃ損だよ損。また服見に行こうね。……っと、違う違う。今はキミの話だよ助手クン、話を逸らすんじゃない」
おっと、逸したつもりはなかったんですけどね。あと可愛いのは先輩もです。
というか、そもそもが節操なんてそんな大袈裟な話じゃなくてですね、その証拠に僕は誰にもバフをかけていないんですよ?
それはつまり、僕はあちらさまのクランハウスにて一切養われることなく、健全な時間を過ごしたって確たる証拠なワケです。
「当たり前だろ。一般的に人はそうそう初対面の相手に養われないよ」
そらそう。胸張って言うことじゃなかったわ。すんません。
ゴホン……まあそれはともかく、サーシャ姐はまだしも他の方々にあんな短い時間で好かれるワケないじゃないすか。
「うーん、まあ普通はそうなんだけどさ……」
『いやぁ、狼獣人はなぁ……昔と気性変わっとらんかったら、招待受けたアオ坊を群れの中放り込むのは結構怖いっちゅーか……狙ったら絶対逃さん執念深さがあって、時には群れで共有する習性じゃから、事前に仲間に面通しをする習慣があってじゃな……そっかぁ、目的地なんぞ聞かんかったが、あん時狼獣人とこ行く話じゃったんかぁ……次行く時は、ワシついてくからの』
なんか色々凄い情報が自身の口からのじゃロリボイスで飛び出しちゃった。聞かなかったことにしとこっかな。
い、いやでも、執念深いのは只人だって何族だっておんなじだぜ。
感情の動きとしても、そこまで只人のソレとかけ離れてはいないのはこれまでの付き合いで重々承知済みですし。
サーシャ姐だけが特別で、他の狼獣人さんは「第一印象は匂いが9割」とかな価値観だったら困るけれど、普通に他種族と馴染んで生きていけている以上、そこまで顕著な違いがあるとは考えにくい。
その上であのクランハウス案内の裏目的が面通しだったってんなら、それこそあの高身長高耐久高STRっつーバリギャリお姉様方のお眼鏡に、ヒモなんかがかなうはずが無いんだよな。
ちなみにバリギャリはディナーで出たチキン煮込みの骨を銀狼族さんが平気な顔で噛み砕いてる時の音です。真似してみたら歯がかけてしまった。アホ過ぎ。
委員長に相談して薬作ってもらってなんとか直ったんだけど、なぜかその調合中にもう一本余分な歯がフラスコ内で出来上がっちまったんだよな。どうして歯を治す薬作ってる過程で無から別の歯が出来上がるんだ? 錬金術の力ってスゲー!
結局そっちの歯はなんか彼女がいそいそとしまってたが、一体何に使うのかは聞けなかった。僕は臆病だ……。
おっと話がそれちったな。
とどのつまりですね、そもそもあんな人数のクラン全体でこんなヤツを飼おうって総意にゃなんないでしょうよ。
流石に数十人全員が血迷うとは思えないし、普通に稟議通んないですって。
なんてったってヒモですよヒモ。こんな獅子身中の虫を自ら飲み干そうなんて、社運を賭けた一世一代の体張りギャンブル過ぎる。しかもそのギャンブルに勝ったとて得られるモンが無いってどういう事だよ。
ハイリスクノーリターンはもはや賭けじゃなく荒行だろ。ヒモ扶養するのは煩悩からの脱却とは真逆の道なんで、解脱に至るための苦行としてもオススメできないぜ。
「けれど……集団で、飼う、方が……一人あ、たり、の、費用負担が……減るので、理に……適っている、と、思い、ます……よ?」
あ、うーん、えっとぉ……数理論理学的視点で見ると道理は通ってるんすけど……ただ飼うこと自体に焦点を当てるとまずもって道理が無いと言いますかぁ……。
経験者ならではの何気ない目黒さんの意見が、僕の胸に深く突き刺さる。不意を突かれてグッサリ来ちゃった。死にますね。
みんなが普段から分担してお金を出しあい、僕を養ってくれているという事実を再認識すると、動悸がしゅるんれすよねへぇ……おびょびょ……。死にますね。
しかし日に一度は心拍数120くらいにした方が身体に良いらしいんで、健康の為に毎日考える事にするか? 生きてぇんだか死にてぇんだか。
ま、ま、ま……それはね、僕ちょっと理数系弱くて割り算とか出来ないから、目黒さんの仰ってる事があんま分からないンすけど、ともかく。
悪王寺先輩がされてるみたいなことはありませんから、ご心配には及びませんよ。
初対面のこんなチビと狼獣人さんが突然良い関係になる──みたいな、そんなご都合主義な展開、現実にありゃしませんって。
まあ異世界に転移している僕らが言うのはおかしな話ですが。
「ごめんね。ボク、キミの言う事ならぜんぶ信じてあげたいんだけど……旦那クンって内部情報の数値見てるみたいに他人の心読み取るのに、自分に向けられたプラスの矢印だけはあんま見えてないじゃん?」
お、図星。
いや見えてはいんのよ? 見えてっけどなんで向いてるか分かんないとこがあるだけで。
心の動きの機序っつーかね、機微くらいはわかるんだけどさぁ。
ただそれらの結果として僕が好かれる事になんのが、なんでなのかちょっと……。
ふーむ。周囲からの評価との乖離に、他者の感情を類推する際のズレ……となるとこれは鈍感というより、自己肯定感の低さに由来する己への不信に端を発しているとかが定番か?
おかしいなぁ、これでも自分の事はある程度正確に理解してるつもりだったんだけど。
しかしね、認識を改めようにもチビの酒飲みのギャンブル好きのヒモっつーカス寿限無君を、一体どう評価すれば良いのやら……。
いや、(マイナス価格で飯を)食う(ほぼ毎夜)寝る所に(交代制のパーティーメンバーが忍び込んでくる)住む所(というか仕舞いこむ所を今からみんなで見に行く予定)って感じだし、カス寿限無は正当な評価か? また自己肯定感がぐんと下がっちまった。負のスパイラルやめてね。
「自分の属性を改めて見つめ直した助手クンの目が死んじゃった……ボクの始めた物語だけど、あんまり自己を正確に分析すんのはやめとこっか。夢日記とかも良くないって言うし?」
そっすね……これ以上踏み込んだらウボァとか出てきちゃいそうだし、なんかデンジ君みてーな開けちゃダメな扉とか見つけてもやだし。
「そう、です……青海君の、良いと、ころ……ちゃん、と、私達、は、分かって、ます……から……」
んぁ↑〜、照れちゃいますわゾ^〜。
「可愛らしい、サイズのおてて、も……お酒を、飲ん、で……ぽわぽわしてる、のも……賭け、事、で……楽しそうに、騒いで、るのも、もちろん……ヒモ、なのも……全部全部、長所、です」
んぁ〜? それ長所ちゃいますわゾ^〜?
そんなこんなでのんびりお喋りしながら通りを歩いていると、気付けば目的地へと辿り着いていた。
「お、これが山算金の言ってた物件かな? とうちゃ~く、っと」
山算金手描きの地図を見ながら歩いていた先輩が足を止めたのは、先日訪れた『銀狼王の旅団』クランハウスよりも一回り小さな建物だった。
あ、これがぁ。
えーっと前情報だと……以前とある商会が保有していた商館で倉庫なども完備、ただ築年数は云十年前なのでガタは来ている部分アリ、と。
はー、なるほどなるほど。大きさ自体は良いですけど、確かにちょいと古く見えるかな?
「とはいえ、中を見てみない事には始まらないからねぇ。中さえリフォームされて快適なら、外観は後でいくらでもお金出して整えられるし」
先輩は山算金から渡された鍵束を人差し指でくるくると回しながら、逆の手の小指でちょんと錠前をつつき解錠すると、勢い良く扉を開け放った。
「さぁ旦那クン、我らが愛の巣の内見と行こうじゃないか!」
◇ ◇ ◇
事の発端は今朝、『キングダム』も含めたクランの全員が山算金によって呼び集められたことだった。
「さて、皆様わざわざこんな所までご足労頂きありがとうございます。いえね、資料を持ち帰って宿でしっぽり回し見も良いんですが、何分量が多くて精査するだけでも私一人では骨が折れましてねぇ。流石は無秩序な交易都市ボゥギフト、物件数がバカみたいにあります」
どっさりと羊皮紙が放り込まれた木箱をいくつも並べた机を前に、山算金は深く溜息をつきながら肩を回した。
ここは商業ギルド内にて割り振られた彼女の私室である。
しかしバルツァンへ行く前に僕が一度来たのとは部屋が変わっていて、あの時よりも更に広いし調度品も質が良くなっているような気がすんね。
「へー、ここが小金井さんの仕事場なのね。その、とってもいいお部屋っていうか……普通に教室くらいあるんだけど、ココを一人で使ってる、の?」
「えぇ、えぇ、良い部屋でしょう? 前の部屋はギルドお抱え冒険者パーティーとしてのものという向きが強かったですが、なんせここはギルド幹部用の部屋ですからねぇ。紛れもなく私の城ですよ」
「うぅ、すごい……教え子がこんなに立派に偉くなって……感慨深いわ…… 私なんて自分の場所とよべるのは職員室のデスクくらいだったのに……」
先生が生徒の成長と自分のふがいなさに思わず感涙しているが、たしかにそれも大袈裟では無いくらいの部屋だった。
階層が高く組織の中枢に近くも、話が漏れないように配慮がなされた、格式高い内装の個室。
そこを彼女が任されているその意味は、もはや察するまでもないだろう。
ケルセデクから帰還後まもなく、山算金と商業ギルドとの政争には方がついた。
無論、彼女の圧勝でである。
バルツァンでの貴族公認の商会設立から始まり、ついにはケルセデクの一件で国家が認める交易商と成り上がった彼女は、自分をハメようとしたボゥギフト商業ギルド幹部を打ち負かしてみせた。
喉元を食い破られ権力闘争に破れた彼らはもはや抵抗する術を持たず、今や彼女の軍門に下り派閥の一員となって頭を垂れている。
本来なら逆恨みや嫉妬が怖いところではあるが……これだけの手際の良さなのだから、その辺りも含めて信頼しても良いだろう。
山算金はケルセデクやバルツァンに強固な地盤があるから、おそらく南部方面担当くらいにはなってんじゃなかろうか。
……あー、てか、そうか、なるほど。
それならこの羊皮紙の量も納得やね。
「そんなわけで、ようやく横槍を入れられることなく我が商会はボゥギフトに支店を構えられる事になりまして、権力も人手も存分に使いその候補をピックアップしているところ──なの、です、が」
わざとらしく区切りながらスタッカートで強調しつつ、ニンマリと悪だくみをするように彼女は口角を上げる。
「商館としての利用に耐えうるハコというのは、正しく私たちが求めている『全員で住める家』としても最適ということです」
やはり、そういう事らしい。
いくらボゥギフトっつったって、こんだけデカい建物がそんなに余ってるとは思えないもんな。むしろこの都市で一旗揚げて成り上がろうと乗り込んでくる人も多いくらいなのだから、デケー空き家なんて遊ばせておくだけ損だ。
つまりこれらの物件数は、いわば新たなボスへの上納なのである。
そしてそんな彼らの気に入られようというゴマすりを、彼女はさらに上手く使ってみせる気でいるのだ。
山算金の言葉に、それまで「自分は関係無くね?」だったり、「難しい話過ぎて何言ってるか分かんないッス!」だったりと、我関せずな様子だった面々がガタリと前のめりになる。
なんせ持ち家はここ最近のウチのメンツの共通の話題堂々の一位だからな。
かく言う僕も大変楽しみにしていました。なんなら一番浮かれているまであるね。わざわざ先回りして先輩冒険者にお話聞きに行くくらいだぞ。
「同時進行で完了させられるタスクは情報を流用し一度に済ませてしまうのが、限られたキャパで最大限のパフォーマンスを出すコツです。……さて、早速取り掛かりましょうか。適当なグループに分かれて、一箱ずつ見てってくださいねぇ。その中で選ばれた物件を、後で手分けして見て回りますんで」
山算金がパンパンと手を叩いてそう言うと、みんな一斉に箱に群がって、取り出した羊皮紙を広げては好き好きにわーわーと騒ぎ始める。
もちろん僕もその中の一員だ。こういうのはみんなで一緒にワイキャイ言うのが一番楽しいんだから。
そのついでに『銀狼王の旅団』にてお聞きしたなんやかやの情報を、みんなとも共有しておくぜ。
魔法使いが所属するクランはお風呂ついてると最高らしいんで、そこはぜひとも欲しいとかね。商館候補の建物に食堂系の設備があるかも見ときてぇな。
あと換毛期の抜け毛掃除が大変なので、床は溝が少ない方が良いらしいですが……これは単に話聞いたクラン特有のあるあるやね。
「なるほどねぇ〜。たしかに思い返すと、単なる一人暮らしの引っ越しでも物件選びって大変だったわ。それが冒険者のクランハウスともなると、もっと色々考えなきゃよね。とりあえず風呂トイレ別でIHよりはコンロの方がいいかしら」
「二階から直接庭へ滑り台で降りれるのはマストなんッスけど、なかなか無いッスねぇ」
「それ、は……庭に、ツリー、ハウス、でも、建てて……そっちで、やりましょ、う、ね」
「収納の量やら部屋数やらもあっけどよォ、そもそも立地がいっちゃん重要なんじゃねぇか? あんま盛り場に近ぇとアオが抜け出して毎夜行っちまうし」
「ふむ、青海とて犬猫では無いのだから、勝手に外へ出ても帰ってくるしそれくらい良いのではないですか?」
「ダメだ。目ぇ離すとアイツは死にかけるからな。それにガキできた時に教育にワリぃだろ」
「で、そのトンチキヤンデレ集団の新居探しに俺らも付き合う意味ってあんの?」
そんな僕らの大騒ぎを横目に眺めていた闇無君が、箱からこぼれた羊皮紙を摘んでポイと箱に投げ入れ、呆れたように尋ねてくる。
「この規模の建物には、たいてい別館や離れがあるものです。キングダムの方々も転居ご希望との事でしたので、そちらに住まわれれば話も早いかと思ったのですけれど……寒空の下で野宿がお望みのようですし、お帰り頂いても結構ですよぅ?」
「オッケー。つまりこの段階で口出すことは無いわけだ。ソファで寝てるから終わったら声かけてくれよ、青海」
あーい、了解。待たせる事になっちゃってごめんね。
なんなら経費で出すから、どっかお店で時間潰してもらっても大丈夫だよ。
「あっ、コイツ……私が口出せないの分かってセンパイに言うんだから、この勇者サマはまったく性格が悪いったらないですねぇ」
まあそう言わず、実際こっちの事情に付き合ってもらってるんだからさ。
「そうだそうだ、言ってやれ青海ー。そんな新婚仕草見せられたら、賢人がまた脳焼かれちゃうだろうがー。いッた、ちょ、賢人、
「えぇい、黙れ馬鹿者! 要らない事を言うな! ……青海の言う通り、我々は近くの店で時間を潰してくる。現地を見て回る段になれば、脳内通信でコイツを呼んでくれ」
知名君はそう言うと、闇無君のポケットから取り出した小銭をこちらへ放り投げ、彼の耳を引っ張って扉から出て行った。
「えー、俺がバフ受けんのぉ? アイツらめちゃめちゃ更新するから通知スゲーうるさいんだよ……」
「切っておけばいいだろうが! もう円満な解決を迎えたので僕に未練は無いとあれほど……」
閉じられた扉の向こうで、彼らの声が遠ざかってゆく。
朝っぱらから呼びつけといて待機時間を作ってしまった事にマジで心の中で詫びつつ、できるだけ早めに話をまとめようと僕は彼女らの輪の中へ入っていくのだった。
どうみんな、良いトコあった? えー! そこめっちゃ良いじゃ~ん! はいはいはい、あっこね。白樺通りの朝市にめちゃ近いわ。最高。毎日要らない物買いに行っちゃう。浪費癖あんのわかってるだけにこえーな。みんなで僕の財布の紐管理して欲しいぜ。「それ以外も管理する」? まあそれはそれで嬉しいからお願いしよっかな。え!? こっちの物件は中庭に木が生えてんの!? ロマンあんなぁ~。憧れるわそういうの。何の木だろコレ。あ、栗みてーなヤツ? 一番良いじゃん。え? こっちの栗ってイガ破裂すんの? じゃあ僕が針供養の豆腐みたいになるわ。ダメかも。池!? その物件池あんの!? マジでそれは嬉しいかも。小さな魚を放流して餌やったりね。日本庭園で錦鯉に餌やる金持ちの悪役ごっこが毎日できるじゃん。夏場なんかほとりにベンチとパラソル立ててゆったり眺めたら良過ぎて熱中症でぶっ倒れるまで見るかも。お。ここはパン用の竃あんね。いや洋食しか食べない炭治郎じゃなく。パン窯の方ね。前からパン焼いてみたかったんだよね~。『斑猫の尾』でもパンはヒロウさんとこで買ってるじゃん。あっこのももちろん美味しいんだけど、自作の焼きたても食べたいしみんなにも作ってみたいっていうか。「そんな新妻みたいな滾ってくること言うな」? どういう事? とりあえずすんません。それと滑り台はさぁ、ベランダあればなんとかDIYイケる気がすんだよね。ケルセデクから帰ってから、メーダさんに妙に木工の腕褒められるようになってんの。本場の木工細工に触れたことで目が肥えたからかな。てか別に普通にメーダさんに依頼したらいい話だったわ。ベランダごとぶっ壊れたら洒落なんねぇ。代わりにエントランスに置く彫刻でも掘ろっかなぁ…………
そうしてたっぷり三時間ほど待たせ、彼らがお茶の飲み過ぎでカフェインがキマり過ぎた頃、ようやく僕らは現地へと内見に向かうのだった。しっかり謝罪しました。