【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話 作:スーパー巨大特濃葛根湯
感想、ここすき、お気に入り、全部とても励みになります。
ぜひどんどこお願いいたします。
念のためTwitterアカウントを作りましたが、投稿告知程度の発信にとどまるかと思います。
https://x.com/su_pa_tokunou
「た、助かった……んです、か?」
普段あまり感情を外に出す事のない委員長が、か細げな声でつぶやいた。
それになんとか反応した僕は、力入らぬ身体を押して、腕の力だけで出口へと這いずってゆく。
外から差し込むあまりにも明るい光に目を細め、そしてなんとか力を振り絞って振り返る。
そこには、僕の敬愛する仲間や先輩たちパーティ全員が、死体のように倒れ伏していた。
しかし、彼女らに手を伸ばす事は無く。
……泣き出してしまいそうな痛みをこらえながら、僕はついに光の外へと半身を曝け出した。
こちらを見ていた村人が、何事かと驚いたように僕を見つめてきた。
「心配、しないでください……」
気丈に、僕は笑う。
「お尻が、痛いだけなので……」
がろがろと音を立て砂道に轍を刻みながら進んでいた馬車は……そうして、ようやく止まったのだった。
一昨日教会の馬車にてボゥギフトを出て、地下墓地のある奥ガルギン村へ出発。
強化魔獣が牽引する馬車……つまり魔車? で丸二日かかるこの村への果てない旅路で、現代人の僕らはみな総じて尻を喪うことになったのであった……。
■
「神様、どうかオレたちのケツをお癒し下さい……本当に、頼みます……」
崩壊したお尻の埒外の痛みから信心に目覚めた明星先輩が、尊いほどに純粋な心で神へ敬虔なる祈りを捧げる。
淡い光が村長宅に満ち、今回ばかりは僕ら全員のお尻をやわらかな布で包むように神の加護が一撫でしてから、吹き抜けるように消え去った。
前回と同じ表現のせいで神がセクハラして去っていったみたいになっちまったが、激痛はかなり和らぐ。スゲーーーー!! 神様愛してる!!
あまりにも鮮烈な奇跡体験に、神様と既に会ってるくせに信仰心のかけらも湧いてなかった愚かなる現代人の僕らの心に、たしかな信仰の灯がともった。
これから先街中で「あなたは神を信じますか?」と聞かれれば、「もちろんだ、奥ガルギンで尻を撫でられた」と答えるだろう。
一応出発前に、クッション代わりになるようスライムリュックに大玉雛の羽を詰めた物を人数分用意したのだが、まぁもちろんそんな生兵法は焼け石に水で叩きつける座面が僕らのおケツで太鼓の達人を連コプレイ、首を傾げながらも無事第六天魔王の難易度おにをフルコンボした。
これにはベガ立ちしていたオーディエンスも思わず拍手し、その空気の振動で僕らのドライブゲージは削りきられバーンアウト。
僕らは真っ白に燃え尽きたのであったとさ。
とっぴんぱらりのぷぅ。
「お、おぉ……聖女様……! ファオルベルカ教会が、まさかそこまでの方を送ってくださるとは……!」
村長が僕らのケツを癒やした明星先輩の姿を見て、彼女が聖女であると錯覚した。
内情がわからない人からすると、確かにめちゃくちゃ幻想的だったからな。
つか内情知っててもすげーよね? 今まで全然異世界で魔法要素を感じてなかったせいで、マジでビックリしちゃったもん。
目の前で見た魔法なんて、シモン爺さんがビール3回転させて口に入れるヤツか、ラウ爺さんが力み過ぎて漏らし僕を痺れさせた電撃程度のもんだ。
浮かれたジジイのお茶目=魔法という方程式が僕の中で成り立ちつつあったんだよ。
是正してくれて助かったぜ。
「あぁ? オレが聖女様ァ? よしてくれよ、そういうガラじゃねえって」
「まぁまぁ、良いじゃない明星さん。村の方々が安心されるなら、ハッキリ否定しないのも優しいウソってものよ」
「まぁ、姐御がそう言うなら……」
あのプリン頭改造修道服ヤンキー僧侶vs逆バニー鎧エルフ女聖騎士腕相撲対決宿屋裏庭巨岩粉砕事件の一件以降、明星先輩は完全に先生の舎弟と化していた。
あまりに事件名が長い為、僕と目黒さんの間では“大破壊“と呼ばれている。
めちゃめちゃゲームの趣味合うよね。やっぱ家族居ない時、っつーかほぼ居ないからいつでも良いんだが、僕の部屋招待してBOOK・OFFで買ったプレ2で一緒に遊びたいなぁ。地球帰ったらやろうって指切りで約束しちゃった。
でも地球帰るとバイト復帰だから、もしかすると時間取れないのは僕の方なのかもな。世知がれぇ話だぜ。
また、明星先輩が先生の舎弟に収まったとはいえ、僕は変わらず明星先輩の舎弟である事は変わらず、そして僕は先生のヒモである。ようやく完璧な三すくみが成立した。
元ヤンはヤンキーに強く、ヤンキーはヒモに強く、ヒモは元ヤンに強い。今まではじゃんけんで僕を出すと確で負けてたからな。
別に僕が先生に強い態度に出れるわけではない事を考慮に入れなければ完璧だ。なぜか繋がってもいないのに僕の思考を読みとった先生が、「たまにはいいんですよ……?」と小首を傾げて呟く。最近僕もう先生の前で迂闊な事考えらんないんすよ。
これからはポケモン御三家もこの属性でご用意願いたいね。ヒモと元ヤンとヤンキーのうちどれかを旅の初めに選ばされる主人公君の事を思うと涙を禁じ得ない。
どうしてそんな業を子供が背負わされなきゃなんねぇんだ? そんな因習、僕が絶ち切ってやる……!
勝手にマサラタウンを因習村に認定した僕は、存在しない哀れな子どものために義憤にかられるのだった。
さっきから思考が暴走気味なのは、ひとえに今から墓地に行くからである。
あまりにも甚大なストレスを前にして、そのいずれ訪れる破滅までの時間を少しでも引き延ばそうと、シナプスがパチパチパニックの如く弾け躍動している。ポッピングシャワーかもしれねぇ。どうしてガキは口の中で暴れるものが好きなんだ。
つまるところ、いわゆるひとつの走馬灯だ。
なぜ走馬灯で愛する家族や大好きな仲間の事でなくマサラタウンを思い浮かべなければならないのですか……? これが博愛精神の末路さ。お前らはきちんと考えて人を愛するんだぞ。
「どうか聖女様……あの墓地の、我らの父祖眠るあの地下墳墓を、どうか……どうかよろしくお願い致します……!」
「あー……オゥ、任せとけよ。バチンとカタ付けてやってやっからさ。で、今までなにがあったのか、詳しく聞かせてくれるか?」
どう考えても聖女より雇われ用心棒に近い態度で、明星先輩は村長から詳しい経緯を聞き出した。
要約するとこうだ。
一月ほど前から、この村の近くにある墓地でおかしな事が起こり始めた。
事の起こりはそこに居たはずの墓守が、いつの間にか消えてしまったことだ。
基本的には周辺村落含めの5日間持ち回りで行われていた業務だったのだが、気づけば南東のシッポウ村の年寄りを最後に、プツンと途切れてしまっていたそうだ。
その年寄りも墓守へ向かってから期限を過ぎても帰って来ず、もしや道中で倒れたか魔物に襲われたかと騒ぎにはなっていたらしい。
が、結局周辺の野山をいくら探しても老人は出て来ず、やむなく最も墓地に近い奥ガルギンへ連絡に走り、事の詳細が周囲の村落へと伝わった。
これはまず墓地を探してみる他無いだろう、とそれらの村の中から有志を集め、墓地へと調査団を派遣する運びとなる。
その一行が墓地に到着したところ、墓守小屋も墓地も獣に荒らされたような形跡はないものの年寄りの姿は見えず。
そうして、墓地全体にいつもと違う、なんとも陰鬱というか、いやーな雰囲気が漂っていたそうだ。
もちろん墓地なんて元々そんなものだが、しかし、なんというか、この世のものではない、生者の為の世界ではない……常世の国の入り口が、この地に穴を開けたかのようだったという。
であれば、地下に広がる墓地の中も何か妙な事になっていてもおかしくない。
有志の中の誰もが嫌がったが、勇気ある若者二人が、誰も行けんなら俺らがゆこう、そうしよう、と買って出たそうだ。
彼らは知り合いの制止も振り切って、ずんずんと進み薄暗がりの洞穴へとたいまつ片手に降りて行き……
すぐに、人が出してよいものではない叫び声が聞こえて。
誰一人、帰ってはこなかったという。
走って逃げ帰ってきた調査団のそんな話を聞いて、村長は教会への依頼を決意したそうだ。
その後墓地の周りでは、夕暮れに急いで村へと帰ろうとする道中、廃れた木こり小屋の横に腐乱した死体が現れ、叫んで目を瞑るも一向になにもなく、恐る恐る目を開けば消えてしまっていたり。
夜間鬱蒼と茂る森の奥から、死んだはずの祖母が呼ぶ声が聞こえ、遥か先からゆったりとこちらに近づく白骨死体が見えたり。
そうしてついには、深夜村の家の窓に、半分顔を無くした女の幽霊が過ったりと。
異常現象が、頻発するようになっているのだという。
それらの原因の調査と解決を、僕らに依頼したいのだそうだ。
……え? ぼ、僕らが行くのですか? い、今から? その、この世の物ではないとされる場所に……?
途中から洒落怖が始まったのかと思って完全にシャットダウンモードに入り、ピザ屋の夜間警備員の如く目と耳にシャッターを下ろし立てこもっていた僕は、最後の言葉にて正気に戻され勝手にシャッターが開いてしまう。
どうやら電源が尽きたらしい。
あとはもうかわいいぬいぐるみ君達に惨殺されるだけだ。
顔半分ねぇ女の霊に殺されるくらいならそっちの方がマシだよ〜〜〜〜!
無論泣きたいのは僕だけではなく、明星先輩、委員長から小金井さんに至るまで全員漏れなく涙目である。
たりめーだろ、怖すぎる。
しかし丸二日魔車で揺られて(というか振り回されて)この村まで来た以上、もはやアトラクションの待機列に並びコースターに乗り込んで安全ベルトまで締めたようなものだ。
ココまで来てすんません無理ですお家帰してとは言えず、僕らはむせび泣きながら調査の準備に入るのだった。
「青海センパァイ……ホントに、ホントに今から怖いとこ行くんスカぁ……? ウチ嫌っスよぉ……せんぱいぃ……」
「いや、うん……そうね……嫌だよね、僕も相当に嫌だからね……本当はここで「僕が行くから鹿野ちゃんは待っててね」って言えればカッコいいんだけど、僕だけじゃなにもできないからなぁ……役立たずのヒモでごめんね」
目黒さんに絶賛慰められている鹿野ちゃんによる僕特効の泣き落としをうけ、自分の無力さがマジで嫌になってきた。
明星先輩の言う通り、ジェンダーレスが叫ばれる昨今でもいざという時に女の子を護るのは、男というよりも人としてそうあるべき心構えだと思っているので、彼女らを助ける事もできない事実に普通に凹んでしまい情けなく目を伏せる。
ホントは僕は危ない事は全部引き受けて、鹿野ちゃんや委員長たちには異世界の楽しい部分だけ満喫して欲しいくらいなのだ。一緒に居る相手全員に入れ込んでしまうので、みんなを幸せにしたくなってしまう。異世界に来て随分と傲慢な生き物になったもんだと自嘲するしかない。
なにもできない事を謝る僕に、しかし鹿野ちゃんはハッと何かに気づいた様子で慌てて走り寄り、僕の身体をスルスルと登ると肩に足を掛けスムーズに肩車へ移行し頭を撫でてくれた。
「わ、わわっ! お、落ち込んじゃダメっすよ先輩! ……そっか、先輩が危ないんだもんね……大丈夫、ウチが先輩を守ってあげますっス!」
そんな彼女の健気な決意を祝福するように、僕らを太い黄金の光が繋ぐ。
今まで彼女の心を占めていた恐怖が薄れ、僕を護らなきゃという眩いばかりの勇気と覚悟が鹿野ちゃんの心に満ちていくのを感じる。それは彼女も同じようで、僕が本当にみんなの代わりに行ければと願っているのがわかったらしく、頭を撫でるスピードが早くなり力強くなる。このままだと火ぃ着いちゃうかも。
結果的に衆目の前で年下の小さな女の子に慰められながらヒモしぐさをしてバフをかける事となった僕は、自然墓地へと行くモチベーションが跳ね上がった。自分で墓を掘って入るからだれか土をかけてくんないか?
いや、ていうか僕が護れないのが不甲斐ないって話で、それ見た鹿野ちゃんに護ってもらっちゃうともう趣旨が逆になっちゃってるっていうか。
そしてなぜかそれを目の前で見ていた目黒さんとの間にも、しっかりとした光の線が伸びる。
な、なんでぇ!? 脈絡のないヒモ認定の太鼓判が僕を襲う! 自覚無くやるようになんのはマジでヤベーんだよ!
彼女から流れてくるのは、鹿野ちゃんも含めた僕ら二人を守りきるという強い想い。
前髪で見えないその瞳は、しかし覚悟に鋭く細められているのが見ずともわかった。
り、り、理由は!? どうしてかは言ってくんないのか!?
僕らの一連の流れを見ていた先生にも、どうしてか光の線が繋がる。こっちもかよ! いやまぁこっちはまだわかるが!
突然始まったパズドラみたいな連鎖に、僕の脳内でコンボ数がカウントされリーダースキルも発動。計4900倍に膨れ上がった全体ダメージが超キングメタルドラゴンを襲いその防御を突破する。今となっては経験値の足しにもあんまならんが。
え、いや、そんな、どうして急に……。
生徒を護ろうとする先生はともかく、二人にそこまで強く護ろうと思われる覚えが無かった僕は、普通にワケが分からなくてぽかんとしてしまう。
な、なにが起こっているんだ……?
突然光で繋がり始めた僕らパーティにマジでビビりながらも、墓地への案内を買って出てくれた村長は素晴らしい人物だ。えらいぞ村長、奥ガルギン村は百万年無税!
■
墓地と地下墳墓は奥ガルギン村のはずれにあった。
確かに行ってみると、まだ昼間ながらなんかスゲー陰鬱なやーな空気を感じなくはない。しかしめちゃめちゃ明るく騒がしい墓地もやだろ。
どっちにしろ幽霊が居るのは確定な以上、心霊スポットかおばけの運動会かくらいの違いしかねぇ。そうなると雰囲気もクソも一緒だ。
というわけで泣き言を言っても仕事は終わらないので、僕らは渋々調査を開始した。
つっても特別なことをするワケじゃない。
最初に墓地の中の地下墳墓以外の場所は探索済みで、その後の外での怪異の発見は全て夕方以降であるところを考慮すれば、昼間の今僕らがやる事はほぼ地下空間の探索と湧いた魔物の討伐のみである。
恐らくは夕方以降になると地下墳墓内の幽霊系の魔物が活発化し、外へと漏れ出してくるのだろう。
今まで夜以外の時間に外での魔物の発見報告が無い以上、さっさと地下墳墓の魔物を掃討すれば何事もなくミッションコンプリート。
僕らは大手を振ってボゥギフトへと帰還できるというワケである。
なぜか既に委員長以外とバフが繋がっている僕らパーティが先行し、地下へと続く階段に向かって歩く。
もちろん先輩たちのパーティとはバフが繋がっていない。
ヒモの話はしてあるが一緒に養ってくれとはパーティの誰も言えなかったのだ。
あたりめぇだろお友達紹介キャンペーンやってんじゃねぇんだぞ。気軽に友人をヒモ育成の底なし沼に引きずり込めるかよ。
そうして、僕たちは地の底から生ぬるい風が吹きあがる階段を前に、決心を固め相対する。
墓地の中は嫌な気配はすれど別に何かが出ることもなかったけれど、しかしこの先には確実に何かが居るという確信が僕らの中にあった。
委員長が勝手に僕のポケットに小銭を投げ入れ、スルスルと光の線を僕の身体から引っ張り出す。
掃除機のコードみてぇに出せるんだね、知らないからビックリしちゃった。
ずいぶん僕の便利な使い方に慣れた委員長に、僕はそこはかとない安心感を覚えた。
こんな緊急事態でも普段と変わらない人間がいるのは、他者にとって心強い救いとなるもんだ。そういう意味ではマジで委員長って不変だからな。
授業中に校庭へ犬が出ても微動だにしなかったし、後でみんなと一緒に犬を愛でてる時も一定の速度で顎下を撫でていた。
犬の可愛さにタスクが全て上書きされてしまうのか、午後の授業が始まってもそこから離れられなかったのもチャームポイントだ。マジでかわいいよねそういうとこ。
仲間への信頼を再確認した僕は、胸に宿るその温もりに背を押され、地下へと足を踏み入れた。
そうして地下への階段を降りて3歩目で、目の前に顎が無い女のレイスが天井から落ちてきて全員漏れなく失禁した。
絶叫が響き渡る。
最近のホラー映画では減ってきた骨太かつストレートなジャンプスケアに、これこれこういうのだけは止めてくれと思った僕らは泣き喚きながら右往左往。
僕は足をもつれさせて先生の胸に弾き飛ばされ、委員長と手足を絡ませながらズッコケてくんずほぐれつとなる。ト、To LOVEる!? しかしこのままだとR-18の後にGが付く展開になっちまう!
「後で好きなだけ絡まっていいですから早くどいてください! あのグロいのが寄ってきてます!」
顔色を青くした委員長の言葉に振り向けば、千切れ落ちた顎の肉を揺らしながら、半透明な女がデタラメに手足を振り乱して近寄って来ていた!
う゛わ゛ーーー!! コワスギるーーーー!!!
レイスが僕らへと躍りかかり、もう駄目だHDDは消してくださいでももったいないのでできれば恵まれない子供たちに分けてあげてくださいと祈ったその瞬間、明星さんが叫んだ。
「浄化!」
洞窟の奥まで響くほどの声量で叫ぶと同時、彼女は箱を作るように握りしめた拳を構えると、脇を締めて撓らせるようにフックを放つ。
美しい弧を描いたそのボックスは、さながら鞭の放つクラック音のようにパンと空気を鳴らす。
それは彼女の拳の先端が、一瞬音速に達し衝撃波を生み出した事の証左だ。
もしも頬に食らえば、単なる死体やガイコツなどは粉砕されてしまうだろう。
そうしてその拳先から、なんの前触れもなくサンドブラストの様な光弾が飛翔する。な、なに!?
光の弾は真っすぐに幽霊の顔に直撃し、暖かな光の泡となって彼女の顔を包み込んだ。
しかしその聖なる微光は、不死者たる彼女を害する事は無く。
顔を大きく欠損していたレイスの傷が、まるでフェード編集をされたかの如く二重に姿が重なってだんだんと癒えてゆき。
そうして最後に彼女は、顔を欠き生者を恨みこの世を徘徊する死霊に成り果てていた女性は、どこにでもいそうな綺麗な村娘となった。
彼女は静かに涙を流しながら、いつの間にか中空より降り注いでいた光のベールに導かれるよう、洞窟の入り口から天へと消えていくのであった。
ありがとう、この場の誰のものでもない声が、かすかにそう囁いた気がした。
え? 聖人除霊伝タフ?
なんかすげー美しい宗教画と格闘漫画を同時に見させられたんだけど。