【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話   作:スーパー巨大特濃葛根湯

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日々が忙しなく、明日も投稿無いと思う。

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※9月16日 気になる部分があったので加筆修正


【28】 聖女という称号

「ふむ……そろそろ交代の時間ですか」

「そッス! 次私ッスからねセンパイ! センパイ小指で持ち上げちゃいますっスよー!」

 

 それみかんを空中に浮かすマジックみてぇになんない? 僕の血は流れないよね? 大丈夫?

 

 僕は引き続き委員長の膝の上で、あいも変わらずお姫様抱っこされていた。

 依然お変わりなく洋画ホラーのガキに抱かれるお人形状態だ。

 時折思い出したように両手でお手玉もされている。

 凄いねとは言ったが、別に僕それ気に入ったワケじゃないんだけどな。とはいえ褒めた僕も悪い。

 まぁこれはこれでレベルアップ後の身体能力の確認にはなるか。

 こういう事を繰り替えし試して、どれだけの力なら入れていいかを学習していく感じだな。教材として腕が鳴るぜ。

 

 実際僕は人にモノを教えるのは嫌いじゃねぇ。

 相手の気分やモチベを慮ってしまい過ぎるあまりに勉強やめて一緒に遊んじまうきらいはあるが、しかし生来インターネット君っつーのは教えたがりなもんさ。いや、別に人は生まれた時からインターネット坊やの原罪背負ってるわけではないんだが……。

 

 相手にモノ教える時のコツは、何がわかってないかを把握する事だ。

 つきなみで簡単な話だろ。しかし案外コレが多人数を相手にする授業じゃできない。マンツーマンの良いところはそこだな。

 何より僕も大事な相手と二人きりで作業ができるのは大変気分が良い。

 

 

 脳内ではメガネをかけた僕が、椅子に座った目黒さんに向かって教鞭を取っている。

 いいかな目黒さん、人という字はバフによって無事だったキレイなお尻を象った象形文字なんだ。

 こくこくと頷いた目黒さんはノートに「人」という文字を大きく一つ書き、そのまま足を伸ばしてωにした。

 うむ、それでいい。物分りの良い生徒を持つと教師は楽でいいぜ。

 なんかノッてきたな。

 窓から外を見ると、真っ青な空にポツポツと浮かぶ白い雲が風を受けて流れている。うららかな日差しが眩しくて、僕は思わず目を細めた。子供たちが遊びはしゃぐ声が、風に乗ってかすかに聞こえてくる。

 こんなに天気も良いし風があって暑さが和らいどるのに、なんで部屋の中いなきゃいけないんだ? ねぇ勉強なんかやめて街に繰り出さない?

 この街を高所から眺められる穴場のスポットを見つけてさ、そこからの景色は最高なんだよね。目黒さんにも見せてあげたいんだ。

 

 いまだ脳内シミュレーションだというのに、二人きりという事実と外の天気の良さにアガった僕は初日から目黒さんを遊びに誘っていた。

 これは教師役向いてないかも知れんね。

 それはそれとしてあの場所には目黒さんと行きたい。後で誘っておこう。

 

 

「ふむ、ではそれまでは」

 委員長が何かをつぶやくと、僕はお手玉されなくなり再び膝に降ろされた。

 お、鞭は終わりか? じゃあ飴が欲しいワンねぇご主人様。

 高度に訓練された犬や猿と同じく高い知能指数を持つ僕は、芸をうまく耐えきったご褒美をニンゲン様にねだった。

 

 

 するりと僕の手を自分の首に回し、まるで僕が委員長の肩を抱いているような状態になる。おん?

 そしてそのままの状態で手を握ると、委員長の指が僕の指にからまってきて、まるでこひぇにと繋ぎのようになる。

 恋人という言葉を言った事がなかったので、めちゃめちゃに噛んでしまった。

 

 

 ……恋人ォ!?!?!?

 

 

「後でいくら絡んでもいい、と言ってしまいましたからね。私は約束は守るんです」

 

 真面目な顔でそう言う委員長のうなじが赤くなっているのを見て、僕はただ黙って絡めた指を軽く握る。

 ……多分、僕の耳も真っ赤になっている事だろう。

 こういう時悪王寺先輩ならサラッとやるんだろうが、僕にはちょっと役者不足だ。

 当の悪王寺先輩はなぜか「コイツらボク達もいる前で何やってんだ……?」という顔をしながらこちらを見ていた。

 

 

 そして僕はどうしてかそこからの丸1日、同じ事をパーティーメンバー全員とやる事になるのであった。

 

 鹿野ちゃんは言っていた通り僕を小指だけで持ち上げようとして勢い余って屋根までバウンドさせ、目黒さんはシートベルトの如く僕を抱きしめて時折黒髪のむこうから熱い息とともに囁きかけ、突然割って入った明星先輩には膝の上に正座させられ「あのなぁ青海ィ、お前もうちょっと慎みってものをな」とこんこんと説教を受け、先生にいたっては何かに挟まれた瞬間から記憶が無い。

 

 なんせもうとりあえず死後裁きを受ける際に業として加算されそうなあれやこれやが過ぎ去り、ようやく僕らはボゥギフトへとたどり着いた。

 

 な、なんか……なんでみんなそんなに急に凄いアプローチを……?

 最近、ちょっとよくわかんないくらいみんなからの好感度が高くなっている気がする。

 いや、気がするっつーかラブコメ主人公程ニブくねぇからわかるよ! 僕めちゃめちゃ気に入られてない!?

 う、嬉しい。人から好かれるの初めてだからちょっと実感が湧かねぇ。

 ……これは好かれているという扱いで良いんだよな?

 ちょ、ちょっとわからん。好きという気持ちはわかるが"好かれる"というステータス異常は初めてなのだ。

 

 しかしチョロい僕が魅力的なみんなを大好きになるのは当然だが、なんでみんながそんなに僕を思ってくれているんだ……?

 登っていたはずの階段を気づけば降ろされていた時のような衝撃が僕を襲う。頭がどうにかなりそうだった……。

 

 

 そんなとんでもない爆弾を突然落とされた状態の僕をよそに、街中用の普通の馬車に乗り換えて、一路僕らは中央街教会本部へと向かっていく。

 朝に出発しほぼ夜通しで走ったので、マジでめちゃめちゃに眠いが、これから教会本部へと報告に行かねばならないらしい。勘弁してよ~。

 とはいえあんな内容なんだからそれもやむなしかぁ。

 

 とりえず目の前の問題は一旦棚に上げ、僕らはピエルモンテス枢機卿へ今回の事の詳細を語り終えていた。

 

「なるほど……お話はよく分かりました。もしあのまま放置されれば、事は奥ガルギンだけでは済まなかったでしょう。この短期間で二度もボゥギフトの危機を救って頂いたこと、心より感謝致します」

 

 そう言って枢機卿は深々と頭を下げる。

 偉い人にそういうことをされなれていない僕らはめちゃめちゃ焦った。

 アワワー! あ、頭をお上げください!

 

「無論形ある物で功績に対する褒賞もお渡し致します。ですが、この大都市に住まう万を超える人々の明日と希望を護った英雄たちに、私が礼を尽くし謝意を述べるのは当然の話です。どうかこの老骨の功徳の為と思い、受け取ってくだされ」

 

 こちらに負い目を感じさせずに礼を受け取ってもらう言い回しだと思うが、なんかもう日常会話で使わない言葉が多すぎてよくわかんねぇや。いや大体の内容はわかるんだけどね。

 ……多分だが、調査をちょい強引に押し付けたら、それがこんな大事になっちまってケジメを付ける為のお礼かな。

 それに今回の事もどうせ喧伝するだろうから、教会にとっては大きな成果を連続で上げたに等しい。

 そりゃお礼の一つも言っときたくなるだろうぜ。

 

 ま、口悪しくは言ったが、もう僕は別にこの人らに対し思うところは無かった。

 

 なぜなら偶然であれど、僕らが地下墳墓の調査に行けたからこそ、魔王の走狗を討伐できたという結果があるからだ。

 これは自惚れじゃなくパーティの僕以外のメンツはマジで強い。この言い回しでホントに自惚れじゃねぇ事もあるんだな。

 スカウターを持ってねぇから曖昧な感覚だが、そこらの冒険者よりは頭一つ抜けて強いだろう。

 そんな僕らがたまたまリッチキングを発見し討伐できたのは、幸運に依るものが大きいとはいえ、彼らがこの案件を僕らへと発注したおかげだ。

 多分だが……そこらの銀級冒険者が数人で行っていれば、見るも無残な結果になったのは想像に難くない。

 

 既にリッチキングの魔核は教会の誇る魔導鑑定にかけられており、そのおよその能力までも判明している。

 あのリッチキングはもちろん魔王の走狗であり、ダンジョン深化と罠作成と死者使役の狂化を併せ持つ、トラップダンジョンから無限のアンデッドの軍団を生み出せる魔物だったらしい。ガチ構成じゃん、シナジーがありすぎる。魔王は企業系のwikiでも見て能力詰め込んでんのか?

 

 恐らくだがダンジョンを作った後で周囲に魔物を放ち、調査にやって来るビギナー、銅級の冒険者を飲み込んで命の精霊を取りこみながら、それを燃料に使役する死者を増やしダンジョンを深くしていく。

 そうして幾度も調査に出た人員が失踪するのを見たギルドが、銀級、金級といった上位冒険者を送り込んできても、深化したダンジョンに無数の罠を張り巡らせ、刈り取れる。

 そんな流れでこちらの戦力を削ぎつつ自軍の兵数を増強して、最終的にボゥギフトの町へ不死者の軍勢で攻めいるつもりだったのだろう。

 

 しかし全ての罠を看破し避けられるド派手王子様系盗賊と、ポップするアンデッドたちをことごとく浄化するヤンキー僧侶というメタ構成を備えた僕ら合同パーティが最初にズカズカ乗り込んできて、未だ深くできていないダンジョンの最奥へと無傷のまま踏み入られた。

 それを察知したアイツは、単なる幸運でココまで来ただけだろうとたかをくくり、この生命としての格も低い駆け出しパーティを、自ら葬ってやろうと玉座の間に呼び込んだと推測される。

 むこうにしてみればとんだクソゲーだった事だろう。

 しかし本来現実にコンティニューはねぇ、禁忌に触れてワンコイン投入し得た残機を磨り潰されたんだ。これからはせいぜい地獄で元気に暮らしてくれ。

 

 当事者が逆に葬り去られた今となっては真実は不明だが、聞けば聞くほどヤバそうな状況だった感じである。

 この大きな街だからアイツに対処できる強者が居ないとは言わないだろうが、しかし被害が増えていたのは間違いない。

 奥ガルギンのあの善良な村人たちが被害を受けずに済んだのだから、この結果は僕らにとってなによりの報酬だった。

 

 未だ美辞麗句を並べて僕らを称える曲者な枢機卿の言葉を聞き流しつつ、僕はまたいつかあの村に行きたいな、なんてもう考えていた。

 ベールくんとも約束をしちまったからさ。しかし魔車に乗って一日は遠いんだよね……。次行けるとしても年は跨いじまうだろうなぁ。

 どうすんだよ来年には勝てなくなってたら、あの頃の子供の成長は早いぜ。

 

 

「ですので、よろしければアカネ様には聖女の称号を受けて頂きたいのです」

「は?」

 

 そして放たれる聞き捨てならない彼の言葉に、同じく完全に話を聞き流していた明星先輩が、素っ頓狂な声をあげるのだった。

 

 

 

「いやいやいや! だからガラじゃねぇって! オレには聖女なんて無理! そんなんなっちまったら喧嘩もできねぇだろうが」

「いえいえ、悪を挫くのは聖女としても尊い行いかと思われますよ」

「いや……そりゃ良い奴殴ろうとは思わねぇけどよ……」

「あなた様に面倒な手間やご迷惑はおかけいたしません。ただ普段通りの生活をしていただき、冒険者として魔物を倒して頂ければそれで結構です。ただそれだけの聖女の行いが、人々の希望となりえるのです」

 

 ニコニコ恵比須顔の枢機卿の言葉に、そこまで口が達者な方ではない明星先輩は丸め込まれてたじたじだ。

 なんでもリッチキングを聖なる光(とテレフォンパンチ)で滅した彼女の力は、教会が認定する聖女の基準に十分達しており。

 そして今この大都市ボゥギフトに聖女が少ないのが問題となっていたらしく、ほなちょうどいいじゃんとばかりに先輩に白羽の矢が立ったらしい。

 今回の功績に対する褒賞としても名誉ある称号の認定は相応しいというのもあるっぽい。

 

 

 うーん、先輩がどうしても嫌なら僕が口を出して舌先三寸で煙に巻いてもいいのだが……。

 チラと隣を見ると、コクリと頷かれる。

 どうやらウチのパーティの一人が思うところがあるらしく、僕は今回は黙っている事にしたのだった。

 

「明星さん。この話、私は受けてみていいんじゃないかと思うの」

 

 今まで話の流れを黙って聞いていた聖先生が、唐突に口を開く。

 

「あ、姐御まで!? いや、でも、聖女って……オレべつにココの宗教もよく知んなくて……」

「えぇ、それはそうだと思う。けれど、聖女の本質的な部分はそこじゃあないんじゃないかしら」

 

 そう言って枢機卿を見やれば、彼は深く首肯する。

 

「賢人様の仰る通りでございます。確かに他の宗教であれば、聖女とはもっとも信心深く敬虔な者を指す言葉かもしれません。しかし我らファオルベルカにおいて聖女とは、恐ろしくも残虐な魔王の魔手から無辜の民を護る者に授けられる称号。弱き者たちの希望、人々の明日を支える剣持つ者の名前です」

「もう一度の確認になりますが、彼女を強制的に矢面に立たせたり、無償の労働につかせたりするものではないのですね?」

「えぇ、当然です。無論民衆への発表やいくつかの神事に参加していただく事はありますが、なにも強制しませんし縛り付けるようなものではありません。ただ、別の街に移住されるならば事前にお話は頂きたいですが……」

「つまりは魔王の走狗討伐者として名前を貸すようなもので、その力によって民衆が安心して生活できるようにすると」

「はい、それこそが今の我々が求める聖女です。俗物と笑ってくだされ。……そして、これは私が言ってはいけませんが……もし、本当に、最後の最後でどうしようもなくなれば、逃げたって構いません。誰かの為に自己を犠牲にするのは美徳です。けれど神は、それを強要してはいないのです。強き者にだって、弱くなってしまう時がある。だからこそ、全ての人々が手を取り合い脅威に立ち向かわねばならない」

「いえ、とても素晴らしい教えだと思います」

 

 先生からの明け透けなまでの質問にも、枢機卿は真摯に答えた。

 彼は少し曲者なところはあるし、きっと様々な謀略を抱える人物だとは思われるが、しかし聖職者として人々の為になる事のみをするのは一貫してしている。

 そうしてその守るべき人々の中には、間違いなく明星先輩や僕たちも入っているのだろう。

 

 いくつか必要な事を確認してから、先生は先輩に向き合う。

 

「であれば聖女というのは……あなたに相応しい名前だと思うわ」

「でも、オレは……勉強もできねぇし、すぐ暴れちまう。オレはそんな、リッパな人間じゃあないっつーか……」

 

 どうしても煮え切る事のできない先輩の言葉を聞いて、先生は目を瞑り息を吐くと。

 自らの頬を、両手でパンと叩く。

 

 

 そうして次に開かれたその眼は、あの日見た鋭さを備えていた。

 

「なぁ明音ェ、オメェはツエーよ」

「……ウス」

 

 その言葉使いに、先輩は思わず背筋を伸ばし先生の目を見つめ。

 そうして今目の前にいるのが、聖先生ではなく聖生 聖だと理解する。

 

 片肘を膝について、前のめりな体勢で先生は話し続ける。

 そうしてポンと胸ポケットが本来ある位置を触り、自分の姿を見て苦笑した。

 口寂しげに唇に手を持っていき、あるハズも無いソレをふかすように吸い込むと、懐かしむように目を細める。

 

 ……少なくとも僕らの前で教壇に立ってからこれまで、彼女からタバコの臭いがする事はなかった。

 

 

「ツエーヤツはよ、そうじゃねぇヤツらを守ってやんなきゃなんねェ」

 

 先輩は返事をすることも無く、ただ真剣な表情で目を見つめ話に聞き入る。

 今語られる言葉は、きっと今までの親以外のどんな大人よりも自分に寄り添った言葉なのだと、彼女は理解しているようだった。

 

「アタシは昔恩人からそう教わって、守る為にセンコーになった。そして……それを後悔した事はない。こんなにテメェ自身を誇れる事はねぇからだ」

 

 それは果たして、誰から聞かされたものなのか。

 未だ先生の事を理解しきれてはいないという事実を、僕は思い知らされる。

 当然の話だ。

 人一人の全てを知ろうなど、神にも似た傲慢なのだから。

 自分の中に作り上げる他人の虚像など、たかが子供の戯言だ。

 

「だからアタシは、今度はオメェにもそうなって欲しい。人を守り、誰かの為に動く事の素晴らしさを……それによって救われる自分自身を、オメェも分かってくれればと、アタシは願わずにはいられねェ」

 

 彼女の瞳が郷愁と自嘲の色を帯びる。

 だからきっとこれは、今だけの、先生の弱音でもあるのだろう。

 教師ならば背で語るべきものを、言葉にしてしまうズルを犯す自分の未熟さの自覚。

 

 でも、多分。

 言葉にして語られてこそ、心に刻まれるものもあると思う。

 

 今の聖さんも絶対に間違っていないと、僕はそう思わずにはいられなかった。

 

「……これはセンコーからの言葉じゃねぇ。聖生 聖としての……"潰しの青龍"としての、"朱の明星"に対する言葉だ」

「……ありがとう、ございます」

「ガキを導くのが大人の役目だからな。なんか困った事ありゃアタシに言え。そん時ゃメシも連れてってやるし……どうしようも無きゃ、いつでも助けてやっからよ」

「ウス!」

 ……? あ、お、え? な、なんて?

 なんか今とんでもねぇネーミングが聞こえた気がしたが、話は丸く収まってそうだし良い雰囲気なのでブチ壊すワケにもいかねぇ。

 ヒモoutヒモinというとんでもないローテで激動の人生を生きている先生の二つ名を、僕は重く受け止めるべきなのか流すべきなのか長考の末一旦気にしない事にした。

 そうして明星先輩は、ファオルベルカ教の"聖女"を引き受けた。

 まだ少し座りは悪そうだが、けれどシスターや司祭たちに感謝され、そして頼られるのはそうまんざらでも無さそうだった。

 今も騎士に稽古をつけて欲しいと言われ、オウよと威勢よく返して演習場へと向かって行った。

 オイオイ丸一日かけた馬車移動でほぼ寝てないんだぞ……。

 まぁ昨日は村でゆっくりと寝たし、無理と徹夜は若者の特権だぜガハハ。なんか僕の方が年下なのにジジ臭くなっちまったな。

 なんでだと思い脳内を探れば未だに魔車で召喚した親父どもが宴会をしていた為、さっさとデフラグして思考領域から押し流す。そんな事で脳の容量を使うんじゃねぇ。

 

 

 ともかく、この短期間でわかったが明星先輩は本当に面倒見が良い。

 きっと地球でもこうやって損な役回りを担って、そうしていつの間にか朱の明星なんて悪名まで付けられてしまったのだろう。

 彼女はこんなにも、他人の為に行動してあげられる人なのに。

 

 そんな彼女の心労を少しでも癒やしてあげられればと思い、僕は稽古明けに一眠りしたら飲み会に行こうと彼女を誘うのであった。

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