【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話   作:スーパー巨大特濃葛根湯

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本編じゃなく閑話です、そういう日もこれからはある。

感想、ここすき、お気に入り、全部とても励みになります。
ぜひどんどこお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、みんながどんな話を求めてるかの参考にもしています。


【閑話 1】 無職で遊ぶな子どもたち

「お、良いじゃ〜ん。お絵かき好きなんだ。お馬さんだよね。あ、ロバ! なるほどね〜、たしかに足の長さや肉付きがそうかも。ん? あぁわかったわかった、任せときなって、僕こう見えて金級冒険者なんだからさぁ。冒険者ごっこなんてそんなん本職よ? オラ! 見よこの完璧なトビキイロオオフシトカゲのモノマネを! キャロロロロ!! あぎゃー! 本気で叩くな! いてぇ!」

 

 リッチキングを討伐した後の休養期間の珍しく特に何をする予定も入ってないある日、教会が運営する孤児院に先生が行くというので、このままじゃまたパーティでプールしてる「青いクズ共同基金(僕が命名するも誰もこの名前で呼ばない)」から金を持ち出してスッちまうと判断した僕も、賑やかしくらいにはなるだろうとお邪魔する運びとなった。

 いやなにか直近で強い相手と戦うとか、誰かが依頼受けてるとかならヒモとして大穴に賭けに行くんだけどさ。

 今ちょうどみんな街で各々やることやってんだよね。

 かたややる事の無い僕は飲み会か賭け事か、鹿野ちゃんと一緒に近所の子供と遊ぶか、目黒さんと部屋の草花を世話して愛でるか、明星先輩が教会のお偉方から逃げ出してアングラ市場巡るのに付き合うか、小金井さんと市場調査に行くか、悪王子先輩と女の子が好きそうな流行りの店を行脚して可愛い子を探す子女調査するか……くらいしか選択肢がないワケ。

 いや僕の飲み友ってたいてい昼間は仕事してるからな。当然だろ。昼間働かないで夜飲んでたら終わりじゃねぇかよ。躊躇いのない自傷行為(ツッコミ)で僕は致命傷を負った。命令もされてないのに自害するな。

 つーワケで、自然と昼間っから遊べる相手は限られちゃうんだよね。

 

 

 で、日々に突然ぽっかり空いたそんな隙間時間に、僕は東町の孤児院に来たのである。

 教会に併設された孤児院は想像していた通りボロいが、しかし不潔という感じでもなく子どもたちも痩せ気味だが元気はありそうだった。

 たぶん大きく豊かな都市だから、というのもあるのだろうが、そこにはなんとなく思い描いてしまうような悲惨さは無くて、なんだか安心してしまった。

 あんまり不幸な子供を見せられたら、下手すると引き取って幸せに育て上げたくなってしまいそうだったからな。

 

「あらあらあらあらあらあらあらあらあら、ごめんなさいねぇ。この子たちったら本当に元気なの」

 シスターのポーラさんが首筋に星型のアザあるんかと思うようなあらあら連打を繰り出しつつ、馬鹿なガキが僕のケツに顔を埋めて「山ほどの焼肉ー!」と叫ぶのを頭を叩いて止めていた。子供って……面白!!……

 

 まぁでも全然気にしなくていいっすよ。

 子供なんてのは、目の前にある何かに思いついた事を即座にやって生きている生物ですからね。

 なにをしたって楽しくてしかたない。自分の好きな人にも見て欲しい。一緒に笑っていて欲しい。

 健全で無邪気なもんです。

 

 それに、これは口には出さないが。

 ここの子たちは特に、欲しいものがシンプルで、欲求が素直で、そして……そんなに愛に飢えていない。

 あぁ、すこぶる好ましい。

 子どもたちも、ここを運営している人も、みんなみんな愛おしくなっちゃうね。

 

 くしゃくしゃと頭を撫でてあげると、ワーワー騒ぎながら子供二人が僕の服の中へと入り込んでくる。

 あ、コラやめろ! へそを舐めるな! このー! おら! 大回転だ! 目ぇ回すなよ!

 

「……ご兄弟が多いのですか? そのお年にしては、ずいぶん子供の扱いが上手くて、優しいから」

 

 いやいや、一人っ子ですよ一人っ子。

 まぁでもして欲しい事もやりたい事も分かるじゃないっすか。自分だって昔は子供だったんだから。

 

「それは……いえ、稀有な素質だと思います。人は誰しも、今の自分以外忘れてしまう。未熟だったり、無知だったり、思慮が浅かった事を、意図的に無かったことのように振る舞ってしまう。それは未だ己の傲慢さを飲み下せない、道半ばの者にとって切り離せぬ業です。あなたにはそれが無い」

 

 いやぁ、僕のはそんな難しい話じゃないと思いますけどね。

 単にまだ子供の頃の自分を、胸の中に抱えているだけかも知れません。

 だから僕は未だに未熟で、無知で、思慮が浅いままなのかも。

 いけませんね、こんなんじゃいつまで経っても大人になれやしない。

 これも一つの悪徳だ。そうは思いませんか?

 

「……いいえ、神は戦える者が戦えぬ者を守るように、戦えぬ者は戦う者に感謝しその者の為に働くようにと仰られています。それはけして、無理をしてすぐ大人になれという意味ではありません。あなたができる事を、あなたの大事な人の為にしてあげてください。まさしく、この子たちと遊んであげるように」

 

 そりゃまた神様はずいぶん寛大な方ですねぇ。

 矮小な人間君には到底辿り着けそうにない達観だぜ。

 

「当たり前ですよ。神はいつだって人々を赦し、悪を討つ力を下さいます。この世にそれほど寛大な存在は他に在りません」

 

 いくら寛大とはいえ、流石に戦ってない上に戦っている人に養ってもらって働いていないヤツまでは赦さない可能性があるな。これだけは言わないでおこう。

 傲慢さを飲み下せない見栄っ張りな虚勢を張った道半ばの者のカルマがそこにはあった。

 折角褒められたのにぶち壊しな存在ですんませんねポーラさん。

 

 両脇にガキを抱えて走り回り空を飛ばせてやりながら、神ではなく僕に優しくしてくれた彼女へ懺悔するのだった。

 

 ちなみに先生はあまりに綺麗過ぎるからか、普段はシスターの胸やお尻を触るようなワルガキ男子たちも照れきって、おとなしく一緒に地面に描いた丸の中を片足で跳んで移る遊びをしていた。

 跳ぶ度に凄まじく揺れるものにみんな目が釘付けだ。性癖ぶっ壊れちゃいますよ先生。

 これからのシスターの苦労を思うと、あんまり良い影響とは言えない気がするぜ……。

 

 

 

 あぁほらレム、可愛い顔が台無しだ。うん、約束。また来るよギーツ。明日ぁ? 明日は無理かなぁ。でもすぐだよ。毎日ご飯食べて遊んでよく寝てたら、すぐにまた会えるさマノン。ジェイスはまた練習した絵を見せてよ。

 

 数時間遊んだ後、先生がシスターと別れの挨拶をしてる間、僕は泣きついてきた一人一人に目線を合わせ頭を撫でつつまた来る約束をしていく。

 いやめちゃめちゃ別れを惜しまれてるが東街なんだからクソちけぇぞ。

 ここから宿まで歩いて10分しない距離なんだから。

 

「ではまた顔を出しますので……みんなもまた遊びに来るから、それまで元気でね」

 

 あーもーほらほら泣かないの、今度は僕よりもっと激しく動き回るお姉ちゃん連れてくるからな。

 魔車より速く走れるからな、絶対ビビるぜ。えー? ビビらないぃ? そりゃ次会う時が楽しみだ。

 んじゃなー!

 

 最後にはみんなを笑わせてから、先生と僕は大きく手を振って家路につくのだった。

 

 めちゃめちゃ良い時間過ごしちゃったな、サイコーの一日かよ。

 こんな楽しい毎日過ごしてたらバチが当たりそうで怖いぜ。

 なんか善行でもして徳を積んどけば、いざという時は神様への言い訳くらいにはなるかもな。善行の前に労働すべきじゃないか? 働いてない奴の言い訳は飼い主以外誰も聞いてくんないぞ。

 

「フフ……蒼君、懐かれてたわね。子供、好きなの?」

「えぇ、子供も好きですよ。あのくらいの歳の子は、やりたい事を遠慮なくやってて見てて気分が良い。あんなに構って欲しいって自己主張してくれると、こっちもいくらでも構ってあげられてWin-Winです」

 

 まぁ子供が特別好きかと言われるとそうでもないがな。

 僕はたいてい会った人全員を好きになっちゃうからね。

 こればかりは地球にいた頃から変わってない性根だ。

 どうしても誰も嫌いにはなれなかった。

 どんな人にだって、愛されるべきところや、斟酌されて然るべき事情があったから。

 

 でもこれはたぶん、僕が人に恵まれたからだとも思う。

 本当に心の底からどうしようもなく許せない人が、たまたま幸運にも僕のそばに居なかっただけで、きっといつか僕にも好きになれない人が現れるのだろう。子供っぽいとはいえ、何も夢見る乙女じゃあねぇからなぁ。

 全ての人間と友達になれるなんて思っちゃいない。何をしたって話の通じない相手というのは確かに居て、それはなんなら想像もつかない程身近にいてもおかしくはない。

 それを思うと恐ろしくなる。

 これ以上僕がどうしようもない人間になってしまうのが。

 そんな人間がみんなのそばに居ていいハズが無いという当たり前の事実が。

 極めて利己的で身勝手な僕には、ひどく恐ろしかった。

 

「なるほど……何人くらいが良い?」

 

 瞬間、僕の背後に推理中のガリレオばりの数式と方程式が飛び交う。

 もちろん数学に弱い僕が用意できるのは九九と二次関数がいいとこなんで、低年齢層の視聴者にも優しい仕様だ。

 

 へへへ、今の僕をナメるんじゃねぇぜ。

 異性との交流が皆無だった頃なら「これってもしかして将来欲しい子供の数聞かれてんじゃないのぉ!?」なんて、自意識過剰極まりない結論に至ってた事だろう。やるじゃん、正解だよ。捨てたもんじゃないな過去の自分も。

 

「うーん……僕が何人の子供を幸せにできるかわからないんで、まずは今大好きな聖先生をできる限り幸せにしてから……あなたと相談したいです」

 

 とはいえウソや誤魔化しをしてもしょうがない。

 好きな相手とくらい真摯に向き合って話したいから、正直な気持ちを伝える。

 上手い返しなんてできない僕は、ホントの気持ちを曝け出すことしかできないのだ。

 

 するとなんとか及第点を貰えたらしく、先生は顔を真っ赤にしてさっきより強く僕の手を握る。いてて。

 なんか鼻息荒いし目が血走ってる気がするが、勢いでなにかやっちゃうと不幸になるのはみんなだからね。

 これで許してくださいと、背伸びして彼女にキスをして……その後なぜか上の空になった先生の手を引いて、宿へと再び歩き出す。

 ただ街の喧騒だけが隣にある静かな時間だったけれど、好きな人と一緒なら沈黙も不思議と嫌じゃないもんだね。

 もともとぼっちなだけあって、誰とも話さない時間には慣れてるからかなァ!?

 

 その姿を通りすがりの飲み仲間マグニフィスト兄弟にしっかりと目撃され、その夜の酒場でしっかりと冷やかされるのだった。

 え? エルフと何処で出会うか? いやそれは全然分かんないかな……彼女も僕らの村で出会った相手だしさ。

 あぁでもそっか、南の方にある大森林行けば会えるんじゃない? あんなとこならいつもなにがしか依頼は出てるしさ、そのついでって形にして足を運んでみるとか。

 しかしたぶん先生が例外なだけで、結構排他的だとは聞くけどねぇ。

 は? 排他的な女性はどうやってオトすのか? まーたそんな手当り次第誰でも良いみたいな……そもそも僕は別にナンパ師でも女衒でも無いんだからそんなの知らないんだけど。まぁでもまず最初にオトすって表現がどうかと思うんだよね。一歩引いて相手より上に立ってるみたいな感覚じゃん。まるで机上演習の指揮官のようにさ。話したい相手は誰? 触れて、通じて、よく知りたい相手は誰? それは目の前にいる人なんだ。下向いても上向いても、その相手と目は合わない。なによりね、順序が逆だと思う。好きになった相手だからこそどうしても意識してしまって、その人のして欲しい事や好きな物がわかるようになるんじゃない? 惚れた相手をまず作らなきゃ。でもそれは全然難しい事じゃないよ。僕なんか好きな相手何人いるか数えらんないし。自慢する事じゃなくてわらけてくるな。全然笑い事やないぞ。いやみんなもきっと今まで見落としてきただけで……。

 冒険者の一団に囲まれながら軽い酔いに任せた与太話を長広舌で語りつつ、僕の楽しい夜は更けていくのであった。

 ホントにハッピーな日じゃん。

 今日はなにもかもがあったすばらしい一日だったって絵日記には描いとこうな。

 

 

 結局なんでかみんなに奢ってもらっちゃった翌日、先生が財布とは別口で袋にお金を分けて貯金し始めたのを見てしまい、めちゃめちゃ嬉しくて「でもそれ地球に持って帰れないですよね……?」とは言えない僕だったとさ。

 前任のヒモも貯めてくれたお金なんかを持ち逃げするより、こんな可愛いことを健気にしてくれる彼女自身を持ち逃げした方が良かったろうに。

 他人の感性ってのはなかなかわかんないもんだぜ。

 

 ちなみに僕の記憶を読み取った鹿野ちゃんは、家族みんなでプールに入りたいからウチは25人は欲しいッスとの事。いつの間に思考だけじゃなく記憶まで読めるようになってんの?

 別に25mプールって25人用っつーワケじゃないし、それ僕と鹿野ちゃん入れたら27になっちゃうんじゃないかとも思ったが、本人が楽しそうに話すのでまぁええかと笑顔で相槌を打つのだった。

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