【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話   作:スーパー巨大特濃葛根湯

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説明回、難しすぎる。次も3日後。

感想、ここすき、お気に入り、全部とても励みになります。
ぜひどんどこお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、みんながどんな話を求めてるかの参考にもしています。


【54】 読書という娯楽

 帰り着いた宿屋の自室にて、僕はその本を開いていた。

 

 僕らがいつか相対せねばならないかも知れない、たぶんこの世で最も強く……間違いなく最も恐ろしい相手。

 もちろん今までもギルドや酒場でそれとなく魔王の情報を集めてはいたのだが、しかしどうも、何と言えばいいか。

 どの情報も雑然として、要領を得ないものであった。

 

 魔王は山と見紛う身の丈の化物だと言う人もいれば、深窓の令嬢さながらに線の細い少女だと言う人もおり、中には口から怪光線を出せるトビキイロオオフシトカゲだなんて言ってる酔っ払いもいた。飲み過ぎだよ、早く嫁さんとこに帰って、たまには洗濯でも代わってやんな。

 

 1000人が見れば1000通りの姿を持つかのように、茫洋として得体のしれない何者か。

 まるで陽炎のように揺らめいて見定められない、虚な影。

 それが集まった情報から僕が抱いた魔王のイメージだった。

 というか、実際正しい事はほぼわかっていないのかもしれない。

 なんてったって冒険者ギルドのギルマスなヴォルバレイさんすらも、詳しくは話せないが実のところ未だ正確に掴めているとは言い難いと溢していた。

 

 だからこそこの本で、正体まではわからずとも、そのズレたピントが少しでも合わされば良いのだが。

 ガッツリ文章しか無い硬派なハードカバーっぷりに、すでにちょっと眼精疲労を感じながらページを捲る。

 家に帰りにくい時に商店街の古本屋とかで小説を読んだりする事は多かったが、しかしこういう学術書みたいなのは流石に経験が無いんだよな。

 みんなのこれからの安全に関わる話なので、両頬を張って気合いを入れ直し再び目を落とす。

 

 難しい言い回しや冗長な表現は未だ読む事ができないから飛ばし、かなり大雑把に意訳しながらではあるが読み進めてゆく。

 

『そも、魔王とは何か』

『歴史に度々現れては人類種を脅かした魔物どもの特異点』

『これまでに10の存在が確認されており、彼奴らがこの大陸にて覇を唱えようと軍勢を起こす度、人類は絶滅の危機に瀕してきた』

『皆も知っての通り、ある個体があまりにも多くの生命の精霊をその身に宿し過ぎた果てに、魔王と呼ばれる程の怪物となるとされている』

『元は小さな名も無き魔物であったソレが、同胞を人を動物を殺しに殺したりて、その血肉と魔力と精霊を貪り長じた化生』

『それが魔王である』

 

 これは教会で説法を聞いていた時に、それらしい話をされた。

 つまり魔王という名前はなんというか、世界王者みてーなタイトルというか、マジで魔物の王と呼ぶに相応しくなった時そう呼ばれるらしい。

 それまでは、てっきり世界できてから唯一の魔王さんが今回の相手なんだとばかり思っていたからな。

 毎回毎回全く別の魔物が魔王になるから前例などなんの対策にもなりはしないので、歴史の授業や子供向けの説法以外ではあまり語られない話だ。

 そもそもよく考えればそれらの歴史があるからこそ、ファオルベルカ教がちゃんと「魔王は人類全体の脅威である」という世論を統一できているんだもんな。

 

『一番最初に魔物どもの頭領を名乗ったのは、記録の上ではゴブリン女王が初めとされている』

『言葉遊びにはなるが、魔女王と呼称したほうが正確かも知れない』

『ゴブリン女王の存在が記された記録は天闢歴よりも以前、大落歴の頃まで遡る』

 

 おっと長そうだぞこれ。

 まさか前の暦にまで戻られるとは思ってなかったぜ。

 まぁでも数千年の間に10体なら、そこまでの出現間隔ではないって事か。

 そりゃポンポン世界の破滅が顔を出しても困っちまうからな。

 週刊連載やってんじゃないんだ。読者の為の間延びしないメリハリある展開なんて、現実に期待されても困る。

 

『そもそも大落歴自体は、今より数千を超すほどの暦を遡ったその日に、ファオルベルカ様が空に浮かんでいた巨大な球体より、この大地を切り取って地に落とした事から始まったとされている』

『我々が住まうこの地上は、それまでは空に浮かんだ球の表面に存在していたのだ』

『それをパイの如く切り分けて地面に落として大地とし、残った球体も3つに割り砕いて他の大陸とした』

『それまで人類や生命がどこにいたのかについては、学者によって議論の別れる所であるが……それはココに記すには些か趣旨が異なる内容と言えよう』

『ゴブリン女王を現す単語として魔王の名が出たのは、その後の話となる』

『つまるところ、魔王もまた大落歴以前は存在していなかったのかも知れない』

『もしくは、そう呼ばわる人間自体が存在していなかった可能性も等しくあるのだが』

 

 ……なんか、スゲーデカいスケールの話してない? これ神様星もしくはコロニーを落としてますよね?

 まぁ隕石の激突が生命の起源ってのもなんとなく、無い話ではなさそうではあるか。

 剣と魔法の世界で、現実味ある命の始まりを神話にするとこうなるって感じ。

 マジで文字通り、空中になんでか浮かんでたよくわかんねー玉を神様が切って落としただけの可能性も全然あるのが、ファンタジー世界の難しいとこだよな。

 ま、ホントのとこは異世界から帰る時に、直接本柱に聞いてみよう。

 

『とまれ、その大陸落としによって生まれた大地に、我々の祖先が家を築き魔術を学び文明を作り上げて少し経った頃、ゴブリン女王は現れた』

『彼女が生み出すゴブリンの総数は日に千とも万とも言われ、産み落とされた彼らはその日の内に人を襲えるまでに成長したとされる』

『栄華を極めた古プラシェス王朝は、ゴブリン女王の台頭から一年と保たずに国ごと飲み込まれた』

『王城に勤めていた文官の遺した「陽が昇るとともに、地平線が動き出し我等へと殺到した」という一文が、その身の毛もよだつような物量を物語っている』

『最後にはその名を冠した公式で知られる論理魔術学の祖、バガウデルティスが編み出した超大規模儀式魔術によって、多大な犠牲を払った末に掃滅されたと言われているが、現代にはその儀式魔術は残されていない』

『これはあまりの威力を恐れたバガウデルティスが、敢えて書き残さなかった為だというのが定説である』

 

 これは初耳だった。

 説法は「歴代魔王の脅威が人類を襲って~」みたいなふんわりした話だったからな。

 BETAみてぇに物量で攻めてくるタイプも居たんすねぇ、最悪。

 魔王なんて仰々しい肩書持ってんだから、DQみたいにもっとこう、クソつえーボスが世界を支配しようとするくらいのざっくりさで居て欲しいもんだね。

 ……しかし、その数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどのゴブリンどもを、果たしてどの様な魔術があれば一掃できるのか。

 おそらく一切手段を選ばないおぞましいものであった事は、想像に難くない。

 

 

 その後も死者の帝国を築き上げたアンデッドの魔王だの、何もかもを食らい尽くさんとしたオークの魔王だの、ラスボスを張れそうな一端の化け物たちの記述が続く。

 普通に読み物として面白いっすね、いやマジであった話なんだから面白がっちゃダメなんだけど。

 それでも、こう言ってしまうとあまりに不謹慎だけど、まるでファンタジー小説を読むような、あまりにも現実離れした戦記がそこには描かれていた。

 手に汗握るハラハラした展開とまでは言わずとも、今この世界に人間が現存しているという結末のわかった安心感が、なんというか悲壮感を薄れさせてしまう。

 古代ローマとギリシャの戦記物を読んでいるようなもんというか。

 自分事ではない、どこか対岸の火事じみた感覚があった。

 完全に当事者だってのに、ずいぶん呑気な学生気分が抜けなくて嫌んなるね。

 

 思わず時間を忘れ、これまでこの世界の人間が歩んできた苦難と希望の軌跡を読みふける。

 

 

 

『……天闢歴が始まってから数百年の時を経て、大陸北部、今で言う勇者国がある辺りの伝承に、この様な記載がある』

 

 そこから数行、読めない文字が連なっている。

 恐らくは言語も記述方式も異なるその当時の手記を、そのまま引用しているのだろう。

 

『本書を手に取るような勉強熱心な諸賢に要約は不要かと思うが、学びの門戸は万人に開かれているべきであると言うのが私の信条だ』

『要約すれば「とある冬の日、食うに困った村の狩人が、少ない食料を求め冬の山に分け行った。そして勝手知ったる山内にて、グァドバガム(注:今で言う四手熊に似た大型の魔物)が数体、内臓を食い荒らされた姿で見つかり、その残りを村内の人手を総動員し持ち帰る事で冬を越せた。これはボゴドド山の山主が、村人にもたらした恵みである」といったところだろうか』

『特に変わった内容ではない』

『こういった自然信仰は、厳しい気候の地域においてファオルベルカ様を信仰するのとは別口でよく行われる。神は一人であっても、ヒトよりも上位の存在などはいくらでも居るからだ。山主と呼ばれる存在を、彼らは日頃から崇めていたのだろう。それが本当に居たのか、はたまた人の味方だったか、もしくはそうではないのかは別にして』

 

『しかし、著者はこの時こそが暴食の魔王の始まりなのではないかと推測する』

『この様な不自然な山からの恵みについての記載は、それこそ有史以来山の様に存在する。別にこれだけであればおかしな点は無い。しかし、この地域ではその数年後に、白骨化した山主と思しき地竜の遺骸が見つかっている』

『異様に美しい骨格の遺骸だったそうだ。腐肉も角の根本の表皮も、全てが綺麗に残っていなかった』

『まるで舐めるように食い尽くされたかの如く』

『これは未だに山主という存在の神秘性を表す出来事として現地では扱われているが、誕生初期の暴食の魔王による食害ではないかと推測するには十分な証拠である』

『そしてこういった信仰の後乗りによって、暴食の魔王が本来山主などの上位存在に集まるはずであった神力をも食らって、通常では考えられぬ程の大きさまで肥大したのではないだろうか』

 

 

『かように様々な形を取って我々に影響を及ぼしてきた魔王たちであるが、これら全ての苦難を人類は乗り越えてきたのも、また事実なのである』

『しかし、今代の魔王はそれらと毛色が違う点が多く見られる』

 

 お、ようやく本題か。

 いやー長かったけどサクサク読めたぜ、気づけば読み始めてから3時間くらい経ってるもん。鐘もゴンゴンよう鳴っとる。

 

 え、ていうか、あの……もう、ほとんどページが無いんですけど……?

 

『歴代の魔王のように露悪的なまでの自己の顕示を行わず、己の名前すら誇示する事なくただ徒らに人々へ敵意を向けてきた。見る者によって姿を変え、心を見透かし甘言を弄して人心を惑わせる。扱う魔術はまるで嵐の如く、海で出逢えば船を、陸で出逢えば砦を、根こそぎこの世から削り取る』

『だからこそ最初、人々はそれを魔王であるとさえ認識できていなかった』

『多くの国に被害が出てようやく、ファオルベルカ教会は今代魔王の出現を世に布告した』

『今では彼奴は"幻鏡の魔王"と呼ばれ、人の心を惑わす悪魔のように語られている』

『あまりにも人心に精通したその手口から、彼の者は人から産まれた魔王なのでは、などという悪趣味な噂すら存在するほどだ』

『それが馬鹿げた話であるし、矮小なるヒト族の推測に過ぎない事は否定しないが、学術都市の学者などが躍起になってそれを否定している様には閉口する。魔物からしか魔王は産まれぬと言って憚らぬ古老どもが、果たしてなんの根拠を持ち合わせてそう主張していようか』

 

 なるほど……?

 なんだか、思っていたよりも結構重要そうな情報が出てきたな。

 人の魔王なんて、中二病の頃の僕なら飛びついただろう単語だ。

 もちろん可能性の一つに過ぎないだろうが、それでもあり得ないような話ってのはあり得るのがお決まりだ。

 とはいえ決めつける事無く、いつでも出せる引き出しにしまっとくくらいがちょうど良いか。

 

『そのような古色蒼然とした決めつけを、過去の学者が認めたからとて信じ続けるのは如何なものであろう。真実とは、権威への配慮や慣例の遵守に血道を上げる、眼の曇った人間には到底見つけられぬ場所にあるはずだ』

『人というものは年を取ると、そんな当たり前の事すらわからなくなってしまう』

『と、いうよりもわからないフリをするようになってしまうのだろう。なぜならそれを直視すれば、己の残り短い余生ではその謎を解き明かせぬことが明らかとなってしまうからだ』

 

 まぁそれはそうだろう。人間年を取れば頑迷にくらいなっちまうだろうさ。

 だがよ、掛けた年月が長いってのはつまり、より多くの仮定を思いついて、そして捨ててきたって事でもある。

 先人が試してもいないと決めつける前に、自説に破綻した部分が無いか洗う方がよほど有意義だぜ。

 もしくは仲良くなっちまって情で絆しなぁなぁで丸め込むのも手だ。

 敵視して関係を悪くするのは悪手、どれだけ優れた人間も周囲を攻撃してちゃ評価されやしない。

 なぜなら人を評価するのは、その周囲の人間だからだ。

 審査員に唾吐いてちゃ、合格点はもらえないんだよね。

 

『白亜の象牙の塔で安穏と、磨かれた古マホガニーの机の木目を数えるばかりの老い先短い耄碌爺どもが、著者の唱える新説を一度たりともまともに取り合わなかった事こそがその証左足りえよう』

『学術都市メレクトリアにおいては知識というものは取り沙汰されず、真に唾棄すべき人間同士のなれ合いが全てを左右するのである』

『そもそも著者はフェクリス派閥のポルテ老に学び、同期の誰よりも革新的な視点から世の真理たる全く新しい学説をいくつも発表し、その度に握り潰されてきた』

『これは偏にこれまでの功績を否定されたくないという、年輪ばかり重ねた盆暗どもの学内闘争に巻き込まれたからであり、派閥間闘争などという時間の無駄も甚だしい暗闘の中で運悪くも退学に追い込まれたのは、人類にとっての手痛い損失であった事は言うまでもなく……』

 

 ……いや、愚痴長くない?

 もちろん構成の都合上仕方ないのかもしれないが、現在の魔王についての記述がこんなラスト数ページまでさっきの以外出てこなかったんだけど。

 今までの魔王の情報や説話ももちろん興味深いし、なにかの助けになるかも知れないので悪くは無いのだが、もっとも知りたい情報がまだ全く……。

 

 ……えい。

 数ページ飛ばして、最後のページを開く。

 

『以上の事から、まったくもって現代の学術都市は腐敗しきってるとしか言いようがない。さて、いかがだったろうか。この度の考察では、幻鏡の魔王について過去の魔王たちの資料から迫るという、これまでとは全く違うアプローチを行った。その結果、"幻鏡"という表象が、そう的はずれな称号では無いということが再確認できた。これからも著者は鋭意、人類の敵たる魔王について詳しく調査を続けてゆく』

『研究への援助を申し出たい篤志ある方が居られれば、下記の住所へ送付願う。同じく講演依頼も随時受付中である。歴史に名を残したいのであれば、是非ともこれらをお勧めする』

『貴方のその銅貨一枚が、後に魔王を倒す一助となるやも知れぬのだから』

 

 

 

 ……肝心な情報がほぼ載ってねぇ!! 最後にアフィリエイト貼ってるキュレーションサイトじゃねぇか!! レターパックで現金送らせるな!!

 

 

 飛ばしたページもぱらぱらめくったが、書いてあるのはやっぱり愚痴だけであった。完全に気勢がそがれた僕は、眉間を押しつつベッドに本を放り出す。

 本屋の婆ちゃんの思わせぶりな態度もあって重要なイベントアイテム「学術書」を買ったつもりでいたが、完全に単なる「娯楽本」だった。それっぽいだけの赤いニシンじゃねぇか。

 内容としては面白いんだけど、幻鏡の魔王とやらについての情報はほとんどわからなかった。

 まぁ、教会も冒険者ギルドのギルマスも掴んでないネタを、一介の本の作者が知ってるわけないかぁ……。

 一応、ちょっとだけそれっぽいのを手に入れはしたけれど、これもなんなら噂として人口に膾炙してるっぽいし、聞きこみ続けてりゃいつかは聞けそうなレベルだったな。

 

 収穫もあったと言えばあったが、なんだか肩透かしな読書体験になっちゃったな。

 これが銀貨7枚は、果たして相応の価値があったのかは……行きつけの古本屋の爺ちゃんにでも聞かなけりゃわからない話なのだった。

 

 

 

 

 

 

「青海君、お酒を飲みに連れて行ってくれませんか」

「へ?」

 

 本を読み終えてゴロゴロと寝転がっていると、突然委員長が部屋に入ってきてこう言い放った。

 急な来訪にベッドから顔を上げた僕は、最初何を言われたのか分からなかった。

 それは先生が先生という立場を今もなお心の中でしっかりと意識して僕らを律するように、委員長もまた生来の生真面目さというかブレなさを保有しているから、どうしょうもない時以外二十歳になるまではお酒を飲むべきではないと普段から宣言していたからである。

 この度の道中では薄いバーガルしかなく止むなくそれを呑んでいた時はあったが、あんなもん酔えるようなアルコール度数じゃなかったしね。

 

 ……とはいえ、心変わりは何も僕らちゃらんぽらんだけの特権じゃあない。

 思うところあって己の主義主張を変える日なんて、万人に等しく存在する。

 自暴自棄でヤケになってる様子も無いし、ストレスに潰されそうになっている感じも無いから、別に心配するような心情では無いだろう。

 たぶん一番近いのは『興味本位』かな、とは思うのだが。

 

「うん、もちろん良いよ。ご飯は宿で食べてから行く? それともご飯も外で? お試しで少しだけ舐めるなら前者、ガッツリ食べて飲んでみたいなら後者かな」

「そう、ですね……。青海君はどちらが多いですか?」

「宿でいつもみんなと食べてるのをご存知の通り、僕はもっぱら前者かな。向こうでもなんやかんや摘むけど、たいてい濃くないお酒を騒ぎながら呑んでる感じ」

「ではそれが良いです。食べてから向かいましょう。店はどこが良いのでしょうか? 道を教えて頂ければ、現地集合できます。番地などはこの異世界にはありませんので、名称でも構いません」

「ううん。僕は正親さんの手を引いて、一緒に入りたいお店を探したいかな。どこが良いかも、二人で相談しながら一緒に決めよ。非効率的かもだけど、僕はそうしたいな」

「……はい、わかりました」

 

 危うくカーナビの如く目的地の住所もしくは名称を入力してくださいモードに入りかけた彼女を、僕のワガママで上書きする。

 そんなワケで、僕は大好きな女の子と夜の二人呑みデートへ行くことに相成ったのであった。

 

 ……真面目な委員長が悪い彼氏の趣味に付き合ってイケナイ遊びを覚えようとしてないか、これ。

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