【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話   作:スーパー巨大特濃葛根湯

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続きは3日後。

感想、ここすき、お気に入り、全部とても励みになります。
ぜひどんどこお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、みんながどんな話を求めてるかの参考にもしています。

※21:20追記 改めて読むと表現の問題で完全に誤解を産むと思われた為、「脱いでおらず直接的な部分ではやっていない」旨を追記しました。


【62】 僕らの故郷

 結局朝を迎えるまで、僕たちは語り明かした。

 途中、トリモチを剥がしたコールダウさんにかかった痛み止めが切れたようだったので、ギリギリまだ起きていた明星先輩に頼み、もう骨折を治癒してもらったり。

 小腹が空いたら部屋備え付けの魔法具で、買ってあった干物と干し肉を炙って肴にしたりしてね。

 なんか30年先くらいにやるべき事を今やってない?

 こんなん七輪で椎茸とスルメ焼いて一杯やってるようなもんじゃんね。

 コールダウさん曰くこういうのが一番良いらしい。

 ちょとジジ臭い気がしないでもないが、たまには良いよねたしかに。

 

 とはいえ大した話はしていない。

 僕は前に酒場で聞いたギルド職員のゴシップや、競魔で毎回負けるドワーフに逆張りして銀貨五枚かけたらその日ばかりは見事にスッた話なんか。

 コールダウさんからは逆に爛れた女性関係の話をされて、お前は今あの中の誰と良い関係なんだよと揶揄われた。

 実はまだそういう経験が無いと明かすと心底驚かれ不能まで疑われたので、完全に出来上がっていた僕は『いやこんなに元気なんすけどねぇ!』つって、酔ってないと許されない芸当まで披露したりしていたらしい。

 コールダウさんが魔法で作り出した土くれの玉を、ブリッジした僕は一体どこでリフティングしたんですか? いやまったく身に覚えがありませんな。

 彼が声が枯れるほど笑ってたのだけボンヤリと覚えているが、その辺りマジで記憶が判然としない。しないのでみんなには秘密でお願いします。脱いではないぞ。それに直接的な部分でもないからね。腰で跳ね上げただけだから。覚えてないが。ホントに。

 

 冒険者っつー半荒くれ者な友人とのサシ飲みだったから、ちょっとよくない酔い方しちゃったね。

 言っとくけど普段はこんなのやんないし、一発芸もキイロオオトビフシトカゲの声帯模写が鉄板の綺麗な酒飲みなんだ。

 間違ってもわるいスライムじゃねぇ。根っからのホイミン気質さ。

 TPOを弁えた結果、今回は地獄呑み用体張り宴会芸が選出されただけなんだ。悪いのは僕じゃなく、そうするとウケるっていう場の流れなんじゃないかい? 僕はむしろそんな状況の被害者まである。

 見開き一杯使って言い訳する半天狗みたいになっちったな。このままでは無様に死ぬぞ。

 

 そして最後には酒瓶を抱くようにして、二人そろって豪華なベッドの下に頭を突っ込んで寝ていた。

 

 

 もちろん、というか言うまでもなく、コールダウさんと僕は、完全に胸襟を開き、墓場まで持っていく秘密を分かち合うほど仲良くはなれなかった。

 たった数時間バカ話をしながら酒を飲んだだけで刎頸の友になれるなら、この世に諍いなど一つも起こってやしないだろう。

 だからこそ、僕は心の底から楽しんだし、面白いと思う事は即やって、酒も普段からは想像できないくらいカパカパ明けた。

 コールダウさんが、調査に来た相手にわざとらしく酒に誘われ、それで絆されるほど甘っちょろい相手だとは思わない。

 なので僕はそういった事は一切考えず、事情を忘れ去りただこの夜を楽しむ事にしたのだ。

 下心丸出しで自分の利のみを求める相手と飲んでも、誰だって楽しくないもんね。

 それにさ、なんだかんだと理由はつけたけど、僕自身がお酒を飲む時に難しい事なんて考えたくなかっただけかも知れない。

 

 だから、僕が聞けた言葉は二つだけ。

 そして、それだけで十分だった。

 

 

 一つ目が、彼がこのパーティの中で僕を狙った理由。

 

 僕が周りのパーティメンバーから実力的に置いてかれ始めてて、このままだと足手まといになるんじゃないかと危惧しているという相談をすると、彼は治った手で炙り干し肉にチーズを載せながら、それは杞憂だろと断言した。

 

「だってよぉ、お前が“ショウヨウ“のリーダーなんだろ? どのメンバーも、それをわざわざ放逐する愚か者には見えんかったからなぁ」

「えぇ? いやぁ、リーダーって事はないと思いますけどねぇ。明確に決めてもないし。どっちかっつーとこんな弱い奴より、よっぽど年長者で実力あるエルフの先生の方が良いんじゃ?」

「……お前らはなんか、そういうとこがチグハグだなぁ。もっと真剣にやれ真剣にぃ」

 

 僕の返答を聞いて、間抜けを見る表情をしながら、呆れたように彼は語る。

 帝国という巨大国家に見初められた、最上位冒険者としてリーダーに求める資質。

 自発的に冒険者を志したわけではない僕らに欠けた、誇りにも似た高い意識。

 

「あのなぁ、リーダーってのは最も強い者を指す言葉ではねぇんだよ。わかってねぇなぁ。その中の誰もがいざという時に頼る相手、コイツさえ居れば心が折れないと思える柱の事なんだって

「お前たちパーティを観察すれば、お前がリーダーとして扱われている事は手に取るようにわかったさ。ほんで、高位冒険者パーティにおいて、サポーターが精神的支柱なんてことは、全くと言っていい程無いの!

「つまるところ、お前は何かとんでもない隠し玉を持っているかぁ、サポーターというのが欺瞞で……馬鹿強いアイツらから頼られる程の役割を持っていると考えるのが自然だろうがよ

「それを見せてもらおうとしたんだがねぇ、気付けばこの有様さ。まったく笑えるぜ、なぁ?」

 

 そう言うと彼は、足元に転がる自身の抜け殻(剥がしたトリモチ)を軽く蹴り、やらかした己を自嘲した。

 

「ま、今更見せろなんて無粋は言わねぇよ。僕は戦闘職じゃありませんっつー自供も頂いたしな。俺に襲われても隠し通せる単なる武力では無い何かを、その身に秘めているという事だけ知れれば……今はそれで良いさ」

 

 つーわけで、ヒモだからというよりは、僕らの間の関係性を見抜かれたが故のターゲッティングだったわけである。

 これが僕を狙うって結果で済んだから良かったものの、大事な戦闘中に逆転の一手を防がれたりしたら致命的だ。

 ポーカーフェイスというか、敏い相手に狙いを覚らせないくらいの強かさを、これからの僕らは持たねばならないという事か。

 ここらへんは一朝一夕に矯正できるものではないので、みんなと話し合いながら意識的に変えていく他ないだろう。

 さしあたってババ抜きをやる為にトランプでも作ることにしよう。

 異世界物の定番だが、それを流通させて儲けようとは考えてなくてね。

 前に言ってたスライムの皮製靴の中敷きはまだしも、そんな分かりやすく異文化を発信しても良いことはない。

 

 なぜなら、二つ目。

 

「ま、本当にすまんかったよ。これも宮仕えの嫌なところでなぁ。慣れないことでも命令されたらやらなきゃならんし、できませんでしたでは済まされやしない。肩肘張って狭苦しいったらありゃしねぇわ

「……だからこそ、なんだがよ。もう別に心配はしなくていいぞ

「詳しくは言えんけどな、お前らは違ったよ。治癒され五体満足な俺がこの足で歩いて帰り、今回の仔細を報告すれば上も納得すらぁ

「……酒代のかわりに、先輩冒険者として一つだけ忠告しておいてやるが」

 

 そうして、本当に後輩を心配するように。

 僕以外の誰も居ないハズの部屋で、他の誰にも聞かれぬように声を潜め顔を寄せて。

 

「チキュウ、という国から来た奴らに気をつけろ」

「お前みたいな、黒髪の連中だ」

 

 僕ら異世界人が、彼らにとって敵になってしまった事を告げた。

 

 

 

 

 

 

 朝方、高位冒険者特有のバカ早新陳代謝により、ケロッとした顔で去っていったコールダウさんを見送り、仮眠を取って午後。

 僕以外のみんなはお昼を食べて帰ってきてから、部屋に集まり事の経緯を説明していく。

「えー……という、ワケでですね……僕らは出自を明かす事は御法度になりました。たぶん、一緒に渡ってきた人の中で、誰かが異世界から来たことをおおっぴらにした上で、とんでもないやらかしをしたのかと……」

 未だ二日酔いが抜けず痛む頭と、滲む吐き気に苦しみながら、昨夜コールダウさんから断片的に聞けたお話を、僕らだけが知る情報と重ね合わせて推測された仮説をお披露目する。素人質問が飛んでこない事を祈ろう。

 

「はい、二日酔いの薬です。副作用として口の乾きがありますので、これ以外の水分も摂るように」

 モガガッ。

 

 身を固くしていた僕の口に突っ込まれたのは、臓腑を抉るような教授からの致命的な質問ではなく、委員長謹製のお薬が入った薬瓶であった。助かる〜〜……ありがとね……。

 ちょっと怖くなるくらいスッキリと泥沼から抜け出し、普段通りに快復した僕へ先生から質問が投げかけられる。

 

「そもそも私達は今まで明かしてこなかったわけだし、それ自体は別にいいんだけど。その、誰が何をしてしまったのかしら?」

「すいません、そこまでは彼も話してくれませんでした。明確に機密事項に抵触するのでしょう。片手落ちで申し訳ないですが……」

「ううん、これだけでも十分に凄いと思うわ。大変な仕事を任せちゃって、ごめんなさいね」

 

 いや大変も何も、僕はさっきまで二日酔いになるくらい酒を飲んで騒いだだけなのでつが。おっと、大学に入ってオタサーで飲みを知りイキり始めたぽたく君が出てきてしまった。しまっちゃおうね。

 むしろその言葉は、僕が害されないかあんな夜明け近くまで交代しながら見張ってくれた、悪王寺先輩と目黒さんにかけてあげて欲しいくらいで、僕からもそのお礼に僕にできることなら一つなんでもお願いを聞くと先程約束を……あん? 見張って……くれていた……?

 

「しかしそうなりますと、これからの情報収集にはその項目を追加しなければなりませんねぇ。仲間にした覚えもないお仲間たちが何をしでかしたのか、私達は知る必要があります。また、今までは異世界人であることを喧伝しないだけでしたが、事によっては隠していかなければなりません。今更黒髪の方々の髪を染めても、逆に隠したいという意図が見え見えになってしまいますから、そこは仕方ありませんが……いよいよバックボーンを詳細にでっち上げる必要が出てきたのかも知れません。……私、異国の血が混じった髪色をしてて良かったと思ったのは、産まれて初めてですよぉ」

 

 なにかとんでもない事実に気付きかけた僕の思考は、自分の髪を摘んで弄る小金井さんの言葉で中断される。

 その顔は憂いを帯びているというか、嫌な事を思い出しているようだった。

 そう? 僕はめちゃめちゃ綺麗だと思うし、小金井さんに似合ってるから、その髪色大好きだよ。

 

「ンフフ、そうですかぁ? では今のが二度目ですねぇ」

 

 まるで泣いた烏が笑うように、コロリと表情を変えて上機嫌にニヤニヤする彼女が愛らしい。

 まぁ、分かりやすく人と違えば、悪ガキなんて好き勝手言うものだからな。

 僕もガリガリのチビだったから気持ちは理解できるぜ。

 一時期あだ名がスケルトントークンだったもん。やかましいわ。子供はMTGじゃなくデュエマやってろ。

 トレカも扱うチェーンの古本屋でバイトを始めるまで、その言葉がどういう意味か分からんかったので、ダメージは受けなかったのが幸いだ。

 ホントに幸いか? 傷付かないからといって殴られて良いワケでは無いのでは? ……わかった、この話はやめよう。ハイ!! やめやめ。

 

 図らずも同じ傷を受けた同士として、暗澹たる過去を思い出した僕がバッド入ってると、それを鋭敏に察した鹿野ちゃんが慌ててロケットずつきで飛んできた。

 生命の精霊により強化された彼女は本来必要な1ターンのタメを無視して、めいちゅう100いりょく130をブチかまし、ジャスパが間に合わなかった僕はあえなくK.O.され画面に座布団が舞う事となった。

 普段はやらないようになってたのだが、今回は早さを意識した結果威力が出ちまったらしい。しょうがないね。

 

 みぞおちへの打撃にせり上がる何かを抑えながら、お腹に顔を擦り付ける彼女の頭を撫で耳の裏をくすぐり精神を安定させる。

 くすぐったそうにンーンー言いながら身悶えする鹿野ちゃんは、おそらくこの世で最も効果的な向精神作用を持っているのは自明の理だ。まだガンには効かないが、そのうち効くようになるしな。

 彼女の存在が闇の製薬会社に知られると、利権を守る為に襲い掛かってくる恐れがある。来たるべきバイオハザードから彼女を絶対に守護り通さねば……。

 

 

 僕らが身分を隠す必要があるのは、つまりはそれと同じような事だ。

 異世界人である事が不利益に繋がるならば、それを隠し立てていかねばならない。しかしそれは別に気に病むようなことじゃあないでしょ?

 僕らがそう生まれたのが悪いのではなく、他の要因により不都合が生じているだけなんだから。

 面倒ならばそれを隠して生きてけばいいし、それが気に食わないのなら、その“他の要因“を是正すれば良い。

 

 つまるところ、評判を地に落とした彼らの行いを、僕らが上塗りしてやればいいのだ。

 その方法自体はまだわかんないけどね。

 彼らのやってしまった事をカバーするのか、それとも更に魔王の走狗を倒してこちらの名声で掻き消すのか、地位を上げてマトモな異世界人もいると証明するのか。

 まぁ現実的なのは前者二つだろうか。

 何をやっちゃったかは知んないけれど、せいぜい僕らが拭ける程度の大きさのケツにしといて欲しいもんだぜ。

 

 ま、悲観するような事じゃないって話。

 自分の失敗ややらかしで手詰まりになるよりは気が楽なもんでしょ?

 責任は既に僕ら以外にあるんだ。言い訳の切り札(ジョーカー)が手札にあるってのはメリットだぜ。

 失敗したら存分に釈明すればいいし、醜く言い逃れをして、負け惜しみ吐いて遁走しよう。そうやって自分の尊厳を守って、憐れに逃げるんだ。今回の件はその余地がある。

 そうして逃げのびた先で、また再びやり直そう。

 なんせ生き延びて心さえ折れなければ、人間詰む事は無いんだから。

 人生はアーケードゲームじゃない。コンティニューにワンコインは必要ないのさ。

 時代はゲーセンじゃなく家庭用据え置き機、FPSはガンコンじゃなくパパパパッドでやるのが主流なんだよ。なんせエイムアシストが掛かりやすいからね。

 最後に爪痕ダブハンのバッジさえ付けれれば、それで僕らの勝ちだ。

 

 負け犬の理論でバッドルーザーっぷりを決め込みニヒルに笑う僕は、悪王寺先輩が先程からなにかを言おうか言うまいか迷ってウズウズしているのに気付く。

 ん、何かありました?

 今の僕は二日酔いも抜け、黒歴史バッドトリップもし終えて絶好調ですからね。

 どんな質問にもバッサリガッツリと「あのさ、お願いって、昨日やってたヤツをもう一回ってのはどう……?」んぇ……?

 き、昨日……? 昨日の……あの、なに……?

 瞬間、僕の脳内に溢れ出した、存在する昨日の記憶。

 二人の交代する見張り。冒険者とのサシ飲み。何もかもを忘れ酒盛りを楽しむバカ。深酒。地獄呑み用体張り宴会芸。

 突破ファイルくらいあからさまに映し出された、いくつかの伏線。

 

「あの、リフティングするヤツ……もっかい見たくて……あ、いや! 変な意味じゃなくてね!? えーっと、新たな知見って言うか! 可愛くて、それにその、ちょっと良くて……いやこれじゃ変な意味か!! 違うからね! その……ボクが見張ってた時に、ちょうどやってたから……」

 

 え!? あの宴会芸をシラフで!? ……で、出来らぁっ!!

 その後、約束を違えるつもりは無い僕が涙目で披露した宴会芸は、珍しくみなに沈黙をもたらすのであった。

 

 ち、違! これは宴会用で! 酒入ってないとさぁ!!

 こ、こ、ここ、殺してくれーーーー!!!!

 

 ……てくれーーーー!!

 

 

 ……れーーーー……!

 

 

 後先考えないバカの叫びは、再び賑わいを取り戻した温泉街の活気に紛れ、僕にだけ癒えない傷を残して消えていき。

 「別にみんなの前でやってとは言ってないのに」という悪王寺先輩の呟きがトドメとなったのであった。

 (僕以外)めでたしめでたし。

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