【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話   作:スーパー巨大特濃葛根湯

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特にここすきと感想は何度も見返して、みんながどんな話を求めてるかの参考にもしています。


【64】 帰郷

 鼻から深く息を吸い込めば、馬車を牽く馬の獣臭や運ばれてくる木箱や荷物の埃っぽい臭いがする。

 気分の良い臭いじゃないハズなんだが、もうすっかり慣れたもんだからか、なんだか懐かしい気持ちになるぜ。

 子供の時分に嗅いでたマジックのインクみたいなもんかね。ついつい癖になっちまう。

 臭いと分かってんのになんか嗅ぎたくなる、コレが臭いフェチの神髄ってヤツなのか?

 自身のノスタルジーを他人由来のフェチでまとめられると、なんだか冒涜された気分になるな。しかし得てしてノスタルジックな物ってのは誰かのフェチがちだ。人は過去を求める。ほとんどの人間は潜在的にオトナ帝国へ行く資格があるってワケ。

 

 そして後に残る微かな喉のいがらっぽさに、思っていたよりもここの空気は乾いていたんだなと気付かされた。

 改めて嗅ぐと、とことん喉と肺に良くない気質をしていやがんね。

 アイリスオーヤマが加湿器持って異世界に参入したら天下取れるぞ。いやどの商品もオーパーツだから何持ってきても大丈夫だわ。

 タブレット持ってきて「板の中で小人が動いている!? 面妖な……!」って女騎士に言われる展開もあるだろうな。一回くらいそういうテンプレの経験をしたいよ僕も。

 僕が鉢合わせたテンプレ展開って『ギャンブルの必勝法らしきものを見つけるも普通に負ける』くらいのもんだからさ。ちなみに僕はこの方法で15万スッている。

 なんで異世界まで来てギャンブル物かませキャラあるあるやってんだ?

 

 こんな時代の町中で深呼吸すれば、鼻が曲がるような悪臭がしそうなもんだが意外にもそうでもない。

 生活に根差した魔法のおかげか、この世界は文明度に反してそれほど悪臭に苛まれていないんだ。

 なんなら魔法がある分現代日本より便利なとこまであるからね。

 大抵の国では旱魃が続いたら、国が雇った水魔法使いが領地を巡って水を溜池や井戸に貯めて回るそうだし。

 ダムが干上がる心配をしなくていいからうどんも茹で放題だし、砂漠で行軍中にパスタを茹でても怒られないだろう。人間って麺を茹でないといてもたっても居られない生き物なのか?

 少なくとも飢える心配や渇く心配が、同年代の地球の歴史と比べれば格段に少ない世界なのである。いいトコだね。

 

 そんなワケで深呼吸をしても、香るのはその町毎の特色の匂いと……あとは近所の宿屋が本日出すメニューくらいのもの。

 ちなみに最寄りの宿屋『燻る火種亭』は味の濃さを売りにしており、濃厚な匂いに騙されると激烈濃厚で塩辛いホワイトシチューを飲むハメになるので気をつけねばならない。

 僕も飲み会終わりにオーランドさんに連れられて一回来たことあるが、知らずに食って死ぬほどビックリした。死の味がしたぞ。

 いくら冒険者の新陳代謝が良く身体が頑強でも、連泊はオススメできんね。異世界版二郎みたいなもんさ。

 一口目はガツンと効いて、駆け巡る脳内物質っ……! β-エンドルフィン……! とはなるが、その脳内物質の後から凄まじいスピードでインド人を右に回して死神も猛追してくる事となる。

 程々にしとかないと、僕ら只人じゃあレベルアップしたとこで閻魔様殴って現世には帰ってこらんないからな。

 

 土埃が起こりにくいように土魔法で固められた地面も、カラリと乾燥しているのが新鮮である。

 なんてったって、僕らは一月近く町中が湯気上げる温泉街で暮らしていたのだ。

 バルツァンは湿気がね、思いの外凄かったんだよ。

 高い宿屋は特別な水属性の魔導具を使い、空気中の湿気をある程度コントロールしていたので快適だったが、街全体としては結構ジメジメしてる場所も多かった。

 何も知らずに木造の一軒家建てたら泣きを見る事になってただろう。

 

 ……なんか最近みんなが妙に家を欲しがってんだよな。

 流石に僕の財布から出すには大き過ぎる買い物なんでプレゼントとはいかないし、そもそもいつかは日本に帰るのに買ってもしょうがないと思うんだが……。

 まぁ、日本では家を買うって早々できない体験だし、お金が有ってできる内にやってみたいというなら、拠点の一つくらい作っても良いのかな。

 差し当たってどんな家が希望なのか、みんなに聞いて回ってみるとしよう。

 もし住むならば、間違いなくバルツァンではなくこっちだろうし。

 

 最終的には観光客も増えて、往年の賑わいを取り戻していたあの観光地も、しかしココほどの活気というか、煩雑さにも似た喧騒は無かった感じがある。

 こっちはなんていうか、みんながその日を全力で生きている故の騒がしさっていうのかな、そういう生命力に満ちているのだ。

 あそこは旅行する場所であり、この街は住む場所であるということなのかも知れない。

 

 

 久しぶりにこの街へ降り立った感慨からか、様々な思考が脳裏を過りまくったけれど、ひとまず。

 

「ただいま、ボゥギフト」

 

 すっかり心のふるさととなったこの場所へ、僕らは帰郷した。

 

 

 

「あら! 帰ってこられたんですねアオミさん! お噂はこちらまで届いてますよ。もうあちらに移住しちゃうのかと」

「ただいまですマーガレットさん。いやぁ、僕らはもうすっかりボゥギフトっ子ですからね。旅行先としては良いですけど、住むならやっぱりココじゃないと」

「あらあら、それはボゥギフト統括ギルド受付として、大変喜ばしいことですわ。有望な冒険者パーティにこの街を気に入って頂けて、ボゥギフト市民冥利に尽きるといったところでしょうか」

「あ、コレお土産です。なんかね、バルツァンの温泉から作られた物で、肌にスゲー良い軟膏かなんからしくて」

「あら〜! アオミさんのそういうとこ私大好きですよ!」

 

 手のひらに収まるサイズの石細工の容器を差し出すと、トンビにカメパンを取られるが如くとんでもない早業でかっさらわれた。

 ……全然見えなかった。実際統括ギルドの受付嬢なんかになれる人材って、並の冒険者よりも高レベルなんだよな。

 天空闘技場のエレベーターガールみたいなもん。

 

「僕もマーガレットさん大好きですし、気に入ってもらえたようでなにより。そいじゃ、今日は挨拶回りなんでこれで……あ、そうそう! 僕らいない間に新しいお店できてたら、また教えてくださいね〜」

 

 既に石細工の容器から軟膏を取り出し、手の甲に塗り始めた彼女へ手を振りつつ、そのままの足で併設の酒場へと歩を進める。

 

 長旅から帰ったら、まずは挨拶回りだ。

 ってか単純に僕がみんなに会いたいだけ。

 元々ぼっちだった頃もしっかり寂しがり屋だったからさぁ。根が変わってないんだよな。

 スライムピアスを装備した覚えは無いから、キャラメイク時に力と運の良さのタネを食べたっぽい。にしては非力なんですが、それは……?

 セクシーギャルの下位互換だからみんなにオススメはしねぇぜ。僕もそっちになっときゃ良かったか? ルックスB無いとダメ? 世知辛い……。

 

 

 まずは知り合いが多く集まってそうな統括ギルド。

 エントランスや酒場で顔を合わせた知人に順次声をかけて、その中でも特に仲の良い友人たちにはお土産を渡していく。

 自慢じゃないが、この町では僕がヒモであることはかなりの人に知られているからな。いくらなんでもホントに自慢じゃなさ過ぎる。自虐です。

 ただそれは逆説的に、たいていの相手が僕を知っているという事にもつながるのだ。

 なんで初めて会う人にも自己紹介すると「あー!」つって指さされるし、万人に対する共通の話題としてそれが使えるんだ。

 天気なんて目じゃねぇ会話デッキ最強の汎用札。

 まぁ今んとこコミュで話題に困ったことは無いから未だ使ってないが、最終手段が懐にあるなんて、こんなに気が楽な事って無いぜ。

 ホントにそうか……? 町中に恥を知られて何故僕は救われてるんだ……?

 

 いいや、今一度考え直してみろ。

 大好きな人達と「求:扶養 出:癒やし」の等価交換で支え合っているという事が、果たして恥なのか? 紛れもなく恥だった。情けないよ僕は。

 ってか癒せてるのかな……? 不安になってきた。帰ったら先生の腰でも揉むか。後目黒さんの髪を手入れしよう。委員長は機材を磨くのを手伝って、明星先輩には何故か手作り料理所望されてたから台所借りるか。僕があの宿で料理すると、なぜか看板娘のメイちゃんが「もうワタシは要らないんですか!?」と情緒不安定になるから見つかんねぇようにやらんとな。

 

 てかさぁ、問題なのは支え合っているというのも烏滸がましい支えられ具合な事なんだよな。

 改めて考え直すと半端ないシャークトレードだもん。

 この強そうな甲鱗のワームと、その黒い睡蓮のカードを交換しないか?

 人と人が支え合う『人』という字ならまだしも、どっちかっつーと『イ』なんだよ。組体操みたいな人間関係してんじゃねぇ。

 逆ピラミッドの最下層に位置する精神の奴隷たる僕には、土台以外の役割は荷が勝ちすぎるぜ。

 

 自己批判してると日が暮れちまうので話を戻すが、流石に顔見知りなのは酒飲みたちくらいで、現状町に暮らす大多数は「アオミってヤツがヒモと水晶に診断されたらしい」って噂や吟遊詩人の唄で聞いたことがある程度の認知度っぽい。それを「程度」で済ませて良いのかはさておき。結局印税入ってきてねぇし。異世界にまではJASRACの力も届かなかったようやね。

 SNSもねぇから有名税もあんまかかんないし、冒険者としても名が売れてる事は悪いことじゃないと無理やり納得しておくか。

 

 

 幾人かに土産を手渡していると、奥のテーブルにお決まりの顔を見つけ、嬉しくなって足早に近づいて行く。

 

「ヒダルさん、サーシャ姐!」

「オゥ、なんだ英雄サマ! 戻ってきとったんか!」

「やーめてよヒダルさん。僕は英雄ってより、英雄の荷物持ちくらいのもんなんだから」

「わぁ、アオ久しぶりぃ! 一月以上顔見れなくて、お姉さん寂しかったなぁ〜」

「こっちこそだよ。いやね、バルツァンも良いトコだったけど、やっぱココは思い入れがあるからさ。あ、これ二人にお土産。なんかねぇ、麦で出来てるけどえれー強い酒らしくて、試しに飲んだら一発で記憶吹き飛んだから、注意して飲んでね」

「おおっ! いいぞ、わかっとるじゃねぇか! 酒ってのは強ければ強い程いいんだ、少量で酔えればその分賭けに使える金が増えるからな!」

 

 相変わらずギャンブルと酒に狂っている凄腕鍛冶師ダメドワーフっぷりに懐かしさと安心感を覚える。

 奥さんの気持ちを思えば絶対に足を洗った方が良いのだが、しかしそれはそれでひどく寂しい気持ちになるから不思議なもんだ。

 破産しないギリギリのラインだけ守ってもらえれば、これはこれで良い生き方なのかも知れない。……いやこれは完全に外野の意見なので、ヒダルさんは奥さんが愛想を尽かす前になんとかしなよ。

 ま、もしそうなった時は相談してくれりゃ、間取り持つくらいはするからさ。

 

「ふ〜〜〜〜ん……じゃあさアオ、今度ウチのクランホーム来てサシで一緒に飲もうよぉ。前みたいにウチが外で酔い潰れたら大変だしぃ、クランホームならウチをすぐに寝床に放り込めるでしょお?」

「お、いいねぇ! ……けどそんな心配なら、クランのお仲間さんたちと飲めば良いんじゃない?」

「まぁまぁいいからいいからぁ。じゃ、約束ねぇ」

 

 銀級冒険者クラン“白銀の狼“に所属する筋骨隆々ガッチリ体型のトラッパー、サーシャ姐と宅飲みの約束も帰宅早々に取り付けてしまった。楽しみ〜。クランっつーのはパーティより人数多い集まりの事だ。

 思えば彼女とはこの異世界に来てから、その翌日くらいには知り合っていたのだからもう長い仲だ。

 トビキイロオオフシトカゲについての情報を教えてくれたのも彼女だからね。

 そういやシモンの爺さんはどこかな。

 あの人もその時の初宴会で知り合った相手で、僕が宴会芸を覚える必要性を感じたのも、彼がジョッキから溢したバーガルを空中で三回転させ飲むのを見てからだ。

 つまりはあの地獄宴会芸を魔が差した僕がやってしまった遠因とも言えるな?

 いつかは巡った因果の帰結を見せつけ、自分がどんなモンスターを産み出してしまったのか彼に思い知らせる日も来るだろう。

 

 

「あ、そういやオマエ、知っとるか? 例のパーティのウワサ」

「んー? なになに、知んない知んない。僕らまださっき帰ったばっかだからさ」

 

 差し出されたジョッキを受け取り、駆け付け一杯をあおりながら続きを促す。

 しかしあんまり呑み過ぎると注意をされそうだし、ほどほどにしておかんとな。

 

 なんてったって、僕が行くとまたギルマスと酒盛りに出かけてしまうという理由で、冒険者ギルドへの報告から外されたくらいだし。

 ま、今回の件は冒険者ギルドが仲介をしただけで、僕らとグランダム様の直接契約だったからね。

 正式な依頼の報告なら流石にパーティ全員で行っている。

 今は明星先輩が教会本部へ、悪王寺先輩と小金井さんに先生が冒険者ギルド、残りのみんなで宿を取ってからその足でここへ来たんだもん。

 

「オイオイ遅れとるな、冒険者は情報が命だろうが。今じゃアイツらの話で大抵の酒場はもちきりだぞ」

 

 ずいっとこちらへ顔を寄せたヒダルさんは、こりゃいいカモが来たとばかりに仕入れた噂を僕へと横流しする。

 この世界は娯楽に乏しいからな、噂話は老若男女問わず大好きなのである。

 例に漏れず僕も嫌いじゃねぇ、詳しく聞かせてくれ。

 

「他の町から流れてきた銀級らしいんだが、大通りの真ん中でよ、道を譲らないだかなんだか理由つけて喧嘩吹っかけて、一対一でムガクを伸しちまいやがったんだ。まぁ冒険者同士の喧嘩くれぇ日常茶飯事だが、あのムガクを真正面からってぇのはな」

「えぇ!? ムガクさんがやられたぁ!? 大丈夫だったの!?」

「なに、あの歩く大岩みてぇなヤツが簡単におっ死ぬタマか。とはいえ、肋と腕折っちまって救護院のお世話にはなったようだがな」

 

 『丘割り』のムガク。

 この街ボゥギフトの誇る金級冒険者の一人。

 “丘背負い“と呼ばれた小山みたいな大亀の甲羅を、単身その豪腕にてブチ割るという偉業を為し遂げた、禿頭の大男だ。

 僕の飲み仲間で、よく冒険者の男連中で集まって、彼から寄せられた女性との付き合いの相談に乗ったりしていた。

 バルツァン出発前に、僕が委員長と鹿野ちゃんに同日にキスされてどうしたらいいか、という悩みを打ち明けた相手の内の一人でもある。匙をぶん投げられたが。

 

 そんな彼が喧嘩で負けるというのは……正直、想像がつかなかった。

 金級というのは、町を救うレベルの魔物を討伐した冒険者にギルドが認定するランクである。

 僕らが金級に昇格したのも、リッチキングを倒したからだしね。

 銀級は実直にやっていればいつかはなれるものなのだが、金級はそれを完全に超過した、才ある者のみが到達できる領域なのだ。

 ま、僕はオマケだから例外としてね?

 

 つまるところ、彼もまた英雄の一人であり、何か契機さえあればコールダウさんのように帝国付指定冒険者へと至りうる人間だって事。

 それを真っ向から叩きのめすっつーのは……ちょっと異様だ。

 

 その相手の冒険者パーティっていうのが、単にまだ大物を討伐できていないだけで金級に至る才能を持つ強者だったという話なのだろうが……。

 しかしそれでも珍しい話だし、なにより。

 僕はなんとなく、ここ最近の流れからして、同郷の香りを感じ取らずにはいられなかった。

 

 

 

 流石にそのまま宴会になだれ込むと怒られそうだったので大人しく定宿『斑猫の尾』へと帰り、メイちゃんと女将さんへ軟膏のお土産を渡した後、みんなと夕餉を囲み今日聞いた話をする。

 って事があってさぁ、なんかみんなはそういう話聞いた?

 

「いんやぁ、教会の方は別になんも無かったぜ」

「冒険者ギルド、商業ギルドともにそういった話は聞きませんでした。というか、改めて聞き込みまではしなかったと言いますか」

「あ、ボクは聞いたよそれ。ムガクって人の話は確かにみんな言ってた、結構強い冒険者パーティがこっち来てるらしいね。なんでも帝国じゃなく、王国の方の人らなんじゃないかって」

 

 ほーん、なるほどねぇ。

 魚介系のオイルパスタを木製フォークで絡めとりつつ、みんなの話を統合……しようとして新情報はほぼ皆無だった事に気づく。

 まぁしゃーない、別に事前にその情報を収集しようという取り決めがあったワケじゃないしな。

 あ、美味しい。

 あっちで美味しいもの食べ過ぎて舌肥えてないか不安だったけど、家庭料理と高級料理は別枠だよね。

 やっぱここのパスタ食べると安心するよ~。流石はメイちゃんだなぁ。

 

 小金井さん達はもともと商業ギルドの用意した社宅的なのに住んでいたのだが、これを機にこちらの宿へと移ってきていた。

 もうパーティとして合流したようなもんなので、一所に集まった方が都合がいいのは確かだしね。

 なにより商業ギルドと少しバチった経緯もあり、相手の懐で暮らすのは気が休まらないというのもあったそうだ。

 ……こうなってくるといよいよ家というか、拠点を買うのが現実的になってきちゃったな。

 

 鹿野ちゃんから出されたハンドサインを見のがなさなかった僕は、大皿に盛られた角の生えた赤い魚の蒸し物を彼女のお皿に取り分ける。あいよ、お待ち。

 それを見た先生が、ちょっとはにかみながら見様見真似のハンドサインを送ってくる。

 すいません先生、そんな破廉恥な指示は人前ではちょっと……。

 

「つまるところ、青海君はその冒険者たちが私たちの同窓生であろうと予測しているというワケですね?」

 

 そうだね委員長、その通り。

 金級冒険者と喧嘩して勝つなんて、なんともテンプレ異世界物らしいイベントじゃないか。

 悲しい話だが僕ら若者はそういうテンプレに弱い。

 誰かが既にさんざやった事を、自分もやってみたいと思っちゃうもんだからな。

 これは転移者の一団の仕業と見て間違いないだろう。

 

 

 てか、そうだったしね。

 というワケでございますので、皆様手元にお配りした資料の一枚目をご覧ください。

 この為に安物の大玉雛皮紙を用意し、酒場でやいのやいの言われながら手書き致しました。字が下手だってボロクソ言われたんだけど、読みはともかく書きはまだしょうがないんよ。

 えー、被疑者は銀級冒険者パーティ"キングダム"。多分王国から来たって話はこのパーティ名のせいですね。

 構成人員は前衛に女性と男性がそれぞれ一人、後衛の男性が一人の三人パーティ。

 実際に確認していないので噂の域は出ませんが、定宿は『宿屋:放埓の日々』だそうです。ここたしかほとんど連れ込み宿なんですけどね。マジ?

 お土産の配分を見直しお菓子の量を融通する事でギルド職員から聞き出したのですが、リーダーの女性は「オウシロ コハク」で登録されているそうです。

 他はそれぞれ「クラナシ アキラ」「チナ ケント」。

 それぞれ得意武器はガントレット、両手剣、杖だそうで、わかりやすくバランス良いパーティやね。

 どうやらヒモは居ないみたいで、お仲間を今回も見つけられず少し寂しい気分だよ。

 ……これね、僕全然知らない人たちなんですけど、みんな知ってます?

 あ、知ってる? 王城 琥珀、闇無 晶、知名 賢人……はぇー、みんなそれぞれ有名人なんだ。

 

 

 無論、というか言うまでもなく相手の情報はほとんど特定済みである。

 こんだけ噂が出回ってりゃ、土産配りついでに軽く聞いて回るだけでお釣りが出るくらい話を仕入れられたわ。

 僕だってなにも酒場で馬鹿みたいに酒飲んで騒いでるだけじゃねぇって事……まぁ十中八九はそうだけど。

 

 こっちに来てから後手後手で騒動に巻き込まれていた事もあり、イルカや犬くらい知能の高い生命体である僕は、今回くらいはひとつ先手を打っておきたいと考えたのだ。

 そもそも旅行にしても事前準備や名所の下調べは欠かさない性質なんでね。下着も日数分+1持っていくタイプだ。

 現実はRPGじゃねぇので、フラグが立ってなきゃイベントに進めないなんて事はない。

 能動的に動けば、これから起こるアクシデントをおじゃんにするくらい造作もねぇのさ。

 

 むこうがこちらを嗅ぎつける前に、相手を丸裸にしてやろうじゃねぇか。

 なんてったって僕は、現代ラブコメなら情報を仕入れてくる親友枠を狙っていたんだ。なんなら好感度も謎の技術で調べておいてやろう。ちなみに僕を攻略する場合は全てのヒロイン√をコンプしてからだから、トロフィーコンプするならぜひ周回してくれよな。

 ヘヘヘとニヒルに笑う僕を、委員長は呆れたような目で見るのだった。

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