【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話 作:スーパー巨大特濃葛根湯
ただ年末年始は仕事が鬼なので遅刻は完全にありうると心得ておいてください。
感想、ここすき、お気に入り、全部とても励みになります。
ぜひどんどこお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、みんながどんな話を求めてるかの参考にもしています。
みんなへのプレゼンテーションが終わったので、後は質疑応答である。
ちなみに聞くのは僕だ。
なんてったって僕が知ってんのは彼女らの今の状況だけだからな。
時たまこういうサプライズを仕掛けるのが、人付き合いで他者を飽きさせないコツさ。
油断しているとこ悪いが、この手のイマジナリーラインを越えるような演出もさせて頂くぜ。
さて素人質問で恐縮ですが、この方々はどういった理由で有名なんですかね?
足を組み肘掛けに頬杖をつきながら、コント:圧迫面接を開始する。
「それにはボクがお答えしようか、人間関係のシロートくん」
あまりに綺麗な返しのカウンターパンチでほとほとグロッキーになった僕は、大人しく手を膝の上に置いて静聴の姿勢に入った。
非戦闘職の僕に、10カウント以内に立ち上がる粘り強いタフネスは存在しない。
「えー、まず
はいはいはい、なるほどね。
言われてみれば全然知らないですね。
いやもうぶっちゃけると日本にいた頃は、マジで学校の人らってほとんど意識に入ってなかったんだよね。
そりゃ同じクラスの委員長や科目受け持ってた先生は知ってたけど、生活圏内にない方々は、それこそ明星先輩や悪王寺先輩レベルでないと存じ上げるヒマがなかったっつーか。
まさにただの人間に興味はありません状態だった。
この中に暗殺者、砲術士、錬金術士、商人盗賊聖女にエルフのエッチな聖騎士がいたら僕のところに来てください。以上。その結果が今ってワケ。
「そりゃ光栄な話だなァ? その頃に声かけてくれりゃむこうでも楽しく遊べたのによぉ。オメェもうちっと積極的に来てくれよ。一緒にガッコサボってメダルゲームでもやりに行きたかったぜ」
えー? いや僕には異世界転移でもしないと、先輩に話しかけるなんて恐れ多くてとてもでは……。
でも、魅力的なお話ですね。もしそうなってたら、毎日楽し過ぎてずっと先輩とつるんじゃってたろうなぁ。
もしかしたら、センパイとの遊びに夢中になって、学校行かなくなっちゃってたかも知れません。
「……あのなぁ、節度ってモンがあるだろ節度ってモンが。高校くらいは出とかねぇと将来困っちまうだろ? いやべつにな、仕事はオレが外で稼ぐから良いんだけどよ、それでもオマエがやりたい事がそれでできなきゃ可哀想じゃねぇか。ちゃんと卒業できる程度は出席しなきゃダメだ、いいな?」
え、あ、ハイ……仰るとおりで……。
なぜか例え話でヤンキーセンパイから高卒の大事さを語られてしまった。先生もウンウン頷いとる。
おかしいな、先輩って卒業危ぶまれてたっつーか、退学間近って聞いてたんだけど。
「で
え、えぇ……ホントなんです! 信じてください刑事さん!
「話は署かベッドで聞くよ。まったくキミはホントに他人に興味が無かったんだねぇ……」
「では代わりに私が。知名 賢人16歳、6月7日産まれ、双子座。私達Aクラスの隣Bクラス所属で帰宅部塾通い。血液型はB型。得意科目は国数英理社、苦手科目は体育美術道徳。好きな作家は小泉八雲。趣味は人間観察、コレは中学の卒業文集にて記載。学校から自転車で20分の距離に住み、中一と小5の妹が二人居ます。呼び名は上が兄貴、下がおにい。両親健在で、父は商社勤め、母は近くのスーパーでパート……これで思い出せましたか?」
肩をすくめる悪王寺先輩に代わり委員長が知名君の解説を始めるも、ストーカーかFBIじみた情報の羅列で想起を迫られ、完全にフリーズした僕を見て、彼女も同じく呆れたように肩をすくめる。
いや違う違う、違うのよ。
この短かな時間でヤバいのが僕ではなく委員長になっちまった。最後の方の情報はどうやって知ったんです?
これで思い出せるもなにも、人を記憶のアルバムに分類する際使われない情報のオンパレードじゃねぇか。
な、なに? なんか大事な情報を隠す為に欺瞞情報ブッコミまくったりしてないよね? そ、そういや魔王側のスパイだもんね僕ら! そういう暗号通信なんだよね!?
当然僕は信頼できる語り手なのでそんな事実はなく、単に委員長が信用のおけない不審人物である事が浮き彫りになっただけであった。
オイオイ! 聞き捨てなんねぇなァ!? 僕の大好きな相手が不審人物だとォ!? 例え隠し立ての仕様がない真実だろうと、名誉毀損にあたる行為には毅然と抗う姿勢がある!
むろん事の推移を眺めていた他のメンバーからもドン引きされてしまっている。好きな女の子がそんな目で見られるのは我慢ならねぇ!
「なるほどね委員長、流石の洞察力だ。僅かな情報からそれだけの秘されるべきパーソナルデータを分析するとは賞賛に値するよ。地球に帰ったらメンサの試験でも一緒に受けに行かない?」
我が意を得たりとばかりに、彼女の出してくれた情報を自信満々に肯定する。
あまりにも僕が自然と受け入れるものだから、みんなも「え?そう……?今ので良いの……?まぁアイツが納得してるし良いのかも……」と、ギリギリ半信半疑、コップの縁いっぱいいっぱいな納得と疑念の境目で持ちこたえられた。
今までコツコツ貯めていた信頼というゲージ技をぶっ放してなんとかなった感じだ。
「ありがとうございます。この程度は当然です」
こっちこそありがとね、でも当然じゃねんだわ。
しかしそのおかげで僕たちは重要な情報を知ることができた、そうでしょ?
ならこの場合特に問題は無く、スムーズにこのまま議題は進行されるワケだ、いいね?
「で、彼はなんで有名なんです?」
危険な場所からは素早く離れるに限る為、話題を急アクセルで転換させる。
悪いが僕はハンドルを握ると性格が変わるタイプなんでね、安全運転は約束できないよ。手に入った甲羅はすぐ投げるし、平気でドリフト掛けながらコース外を走って時間をロスするぜ。
「え、あー、そうね。知名君は全国模試でも複数科目満点の常連なの。張り出される定期試験の順位も常にトップだったわ。ウチの学校でそこまでの子って珍しいから、確かに有名だったかも知れないわね」
生徒をフォローする事にかけては一日の長がある先生のアシストによって、不審者情報から知名君の事へと無事に話が転がってなにより。
はーん、そう言われたら……名前くらいは見た事がある気がする。
まぁいつも見てる場所は紙の反対側だから、自分の名前を探すタイミングでまじまじと眺めたこたないが。
しかしそりゃまた……可哀想な話だ。
こう言っちゃなんだが、僕なんてのは異世界に来ても極論無くすものが無かった。
努力して得た居場所もなきゃ、築き上げた功績もない。
つまりこんな風に、見知らぬ場所へとぽいと放り出されてもプラマイゼロで済んだ。
けどみんなは違う。
持ってたハズの何もかもを、向こうに置いてきちまったんだ。
だからこそみんなをなんとしても帰してあげねばならない、と思っているフシが僕にはある。
その点、知名君は最たる物と言えるだろう。
全国模試でほとんどの教科満点なんてのは、持ち合わせた才能と怠らぬ努力があってこその輝かしい成績だ。
そんな彼が、自分の意志でもなく誘拐じみたやり方で、全てを喪失してしまうなんて。
あまりに残酷な話じゃあないか。
なによりそのレベルの天才の流出なんて日本という国の損失だぜ。
持たざる者が持っていた者の喪失を憐れむのも滑稽な話だが……しかしまぁ、優しさくらいは持ち合わせていたって事にしても構わんだろう。
なんとかして、彼も無事にお家へ帰してあげたいものだ。
「で、最後。
は、え? なに? 急にバオウザケルガ?
やっぱ最強はキャンチョメだと思うんすけど、そこら辺は議論が激しくなっちまうとこですよね。
「王城先輩はウチも知ってるッスよー! めちゃめちゃ良くしてもらってたっす! なんか、パパが先輩のとこの、ドージョーの門下生? みたいな」
あ、そうなんだぁ。会えるの嬉しいんだね、良かったねぇ。
ぴょんぴょん跳ねる鹿野ちゃんを微笑ましく思い相槌を打っていると、手を取ってブルンブルン振り回され残像を残しながら∞を描いてしまう。ハハハ、こらこら、やめてね。
つまり武道関係の道場やってらっしゃる御家系で、しかも鹿野ちゃんに優しくしてくれるたいへん良い人って事か。
じゃあもう完全に信頼が置ける方じゃん。この後会いに行くのが楽しみになっちゃうな。
「うん、おおむねその通りかな。明音と……どっこいどっこい?」
「ま……そうだな。オレの方がデケェけど、微差だよ微差。ほとんど変わんねぇ」
「ってくらい大きい娘でさ。けれどやっぱお家の躾って言うか、厳格な両親に育てられたのかとっても優しい子でねぇ。たしかお婆さんが外国の方で綺麗な金髪のボブカットでさ、それに名前の「王」を取って『優しい王様』。太眉がチャームポイントの、琥珀色の瞳をしたモデルさんみたいな女の子なんだ。メチャメチャかわいいんだよねぇ」
はぇ〜、それはまたすげぇ三人衆だこと。
まぁ学校単位なら一人居てもおかしくは無いのかな……? くらいの感じではあるけれど、随分とバリエーションに富んだ才能ある人間が集まった学校だったんすねぇウチ。
つまり飛び抜けた才人が何人かいる代わりに、僕みたいなマイナスのハズレ値も詰め込んで帳尻合わせてたってことか?
正負は違えど、並み居る天才たちと総合値はトントンたぁ鼻がたけーや。
天は二物を与えずっつーけれど、僕に関しては与えられたのは荷物だったのかも知れんね。
さて、じゃあひととなりも理解した事だし、行きますか。
「ん、どこへ?」
そりゃあもちろん、生まれ故郷から遠く離れた新天地にて、たまたま出会った郷里の方々へご挨拶にですよ。
そうして夕暮れの街を歩み、未だ足を踏み入れた事のない色街方面へとやってきた僕らは、もう完全にそういうお店ですよという町並みに、揃いも揃って顔を真っ赤にしどぎまぎする。
ぼ、僕はどうしてこんな提案をしてしまったんだ……。
いやでも、待ってても絶対ハプニングしかやってこないんだから、先に顔を合わせておくのは悪くないってみんな賛成してくれたし……でも完全にここらへんの地理をよく知らなかった僕が悪い……。
チョンチョンと突かれた方を見れば、赤面した明星先輩が壁にバカデカいハートを描いた建物を指差していた。
「オ、オイ……あの店はどうだ……?」
な、なにが“どう“なんです……?
よく分からないしまだ訴状が届いていないので回答は差し控えさせていただきますが、あそこまで行くとちょっと間抜けでムードも霧散しそうで良いですね。
「そ、そうなんですね……参考にします……」
と、遁甲……? 八門の……?
この時ばかりは難聴かつ鈍感になるべきと判断した僕は、委員長の返答を耳聡く連想ゲームで変換した。
二人っきりでやって来たなら本気でお話させてもらうが、流石にパーティ全員で来た時に個々人ごとに良いムード作ってたらヤバ過ぎるからな。
そうしてほうほうの体でなんとか辿り着いた件の連れ込み宿にて。
「あぁ、あの子らねー……たしか一週間くらいクエストに行くとか言って、つい昨日出てったわよ。なに? 知り合い? じゃあさ、アンタらからもあんま激しくヤんないように言っといて欲しいんだけど。他の客がみんな文句言ってくんのよ」
いかがわしい声が響く店内へと彼女たちを入れるのは憚られた為、不慣れな純情未経験おたく君お一人様でのこのこやってきた僕に、露骨に胸元をはだけたお姉さんは迷惑そうにそう言い放った。
話を聞いた僕は一路沈痛な面持ちでトボトボとみんなの元へと舞い戻り、突如豹変したように笑顔になって勢い良く両腕で大き丸を作る素振りから、流れるようにバツを形取った。
すいません、取材NGでした! 解散です!
帰り道、慰めてくれるみんなへ、デザートに甘ウマ寒天モドキを奢ったのは言うまでもない。
トホホ〜〜〜……もうイベントフラグを無視した先手はこりごりだよ〜~~〜!
そんなこんなで翌朝。
王城さんたちの件については、彼女らが帰ってくるまでできる事も無いし保留となった。
一応他の転移者たちについての情報を、他国のものまで含めて悪王寺先輩には調べてもらう手筈となっているので、なにかをしでかした人が出れば出るだけ逐次情報は入ってくるだろう。
明星先輩は、詳細な報告や聖女就任に関しての話があり、昨夜あの足で教会へ再び召還されていったので、それ以外の全員が委員長の部屋に集まっていた。
昨日は着いたのが昼過ぎだった事もあり、いったん休憩という事で行われなかったミーティングのお時間である。
みな冒険帰りというワケでもないのに装備や道具類を用意し、武具の損耗や消耗品の目減りを確認していく。
この時ばかりは委員長も、名前ではなく役職でその人を呼称する。
どうやらそうする事で、己の仕事を再度しっかりと認識しなおせるようにとの配慮らしい。
異世界でのミーティングの経験者なの? なんて、以前の僕なら思ったかも知れないね。
今の僕はその常に正しくあろうとする姿勢を、称賛こそすれ茶化しはしない。
彼女がどれほど愛らしく、真面目で、けして目的を間違えない人間か知っているから。
みなが席に着き、自分に注目しているのを確認してから、彼女が口を開く。
「宿も無事取れたので、それではみんな各々やるべき事に取り掛かって下さい。錬金術師である私は必要な素材を錬金ギルドに購入しに行ってきます」
そして──話は、冒頭に戻る。
一度は言ってみたいセリフだよね?
死ぬまでにしたい100のことリストから、この項目を消しておかなくちゃあなァ。