【書籍化進行中】異世界で職業:ヒモとしてみんなにバフを撒いてたら完全に逃げられなくなっていた話 作:スーパー巨大特濃葛根湯
次の投稿は5日後の予定。
感想、ここすき、お気に入り、全部とても励みになります。
ぜひどんどこお願いいたします。
特にここすきと感想は何度も見返して、みんながどんな話を求めてるかの参考にもしています。
「なんか……話に聞いてた時点でセンセーショナルだったけど、それより輪をかけてだいぶ凄い人たちだね」
変なの見ちゃったなぁって感じの苦笑いをした青年が、言葉を選びつつ肩をすくめる。
その振る舞いにあわせ、肩甲骨にまで届きそうな癖の無い美しい髪がさらりと揺らめいた。
スゲー髪質してんね、世界が嫉妬しちまうよ。なんのシャンプー使ってるんです? ヴィダルサスーン?
よく分かんねーからボディソープでそのまま頭まで行っちゃってる僕とはえれー違いだ。これは僕の粗忽さも悪い。
悪王寺先輩とはまた違った趣の中性的な整った顔立ちは、ともすれば見る者に本来とは異なる性と錯誤させかねない。
でも男の娘って感じでもないんだよな。どっちかっつーと、未分化な天使のようだ。同い年の男子に抱く感想としてはぶっちぎりでキモい。僕に声には出さない分別があって良かったな。
神がどちらもの良い所を取って右手で作り上げた造形美、ガムとアメの間の子のハイチュウみたいなもんか? 安めのお菓子に例えると一気に庶民的になっちまった。けど好きな物に例えたんで悪く思わないでくれよな。
郷里にて培われた固定観念がある僕らにしてみれば、何の特徴にもならない黒い瞳と黒い髪。
しかしそれらは彼が備えているとどことなく高貴で物静かで、それでいて何物をも切り裂く鋭利さも有した黒曜石を想起させた。
衣服もそれらに合わせ黒を基調として纏められている(空手家じゃなさそうなので、声や血や下着まで黒いかはわかんない)のがよー似合っとる。
けれど端々に入った赤のアクセントが、そんな鉱物的な硬い印象を与えるのみに留まらず、彼が内に紅い血を宿した一個の生命であると思い出させてくれる。美。コンセプトも完璧じゃん。三面図も欲しいぜ。君だけデザイナーついてる?
僕も是非その人にユニクロへ行く服をコーディネートしてもらいたいもんだね。
「ま、でも何人かは知った顔が居るし、君らが仲良くできる人たちとならこっちでも仲良くやれるかな。俺は
背丈は僕よりほんの少し高いくらいで、男子高校生の平均よりは低いだろうか。
だというのにそれが“劣った“印象を抱かせないのは、ひとえにそんな程度の事は彼にとってハンディキャップ足り得ないと、見ているだけで理解させられるからだ。
パッと見で僕が冴えない穀潰しの酒飲みなギャンブル好きだとバレるのと同じ様なものである。それを同じと言っていいのか?
人は見た目が九割とはいえ、そこまで事細かに見抜かれたらもう言葉なんか要らないでしょ。なんか情熱的な告白みたいになっちゃったな。愛は言葉にし過ぎると熱量を失っちまいやすいから正解かもね。
しかしそんな一目でわかる彼の凄まじさには、喧伝するような派手さは無く、今だって知り合いらしき悪王寺先輩にひらひらと小さく手を振る様は、人当たりが良く接しやすいひととなりなのだろうとわかる。
たぶんイケメンだから優しいんだぞ。美形は生物として強いから余裕があり、その余裕分他者にも優しいのだ。大いなる偏見であるのはそう。
とりあえず彼は、完璧超人もかくやと言わんばかりの、ウェイ系ではなくまっとうな明るさを持った、まさしく陽の光の下を歩むに相応しい陽キャであった。
思わずその人としてあるまじき完成度の高さにべた褒めしちまったが。
いや、そうね、なるほど。
目の前にして初めて僕は理解する。
彼が闇無 晶君だったとすれば、僕は彼を知っていたのだ。
ただ学校で生活をしているというだけで、他人に興味を持つ余裕すらなかった僕が、矢の様な速さで止まることなく流れる景色の中、つい目で追ってしまった相手。
校庭でサッカーをしている姿(なおそれを眺めていたという事は、僕が自教室で行われている数Ⅱの授業を一切聞いていなかった証左となる)だったり、壇上で表彰をされている横顔(前に座った一年がデカすぎて半分くらいしか見えず顔と名前が一致しなかった)だったり、文化祭でなんとも陽気そうなメンバーで構成されたバンドにてボーカルを務めていた時の歌声(一緒に回る友人どころか学内に居場所も無いので、行く宛も無くフラついて空き教室で座ってた時に聞こえてきた)だったり。
……なんか瞬く間に凄まじく明暗別れた高校生活の光と影を行き来してしまったが、あの高校の人間であれば少なからずどこかで意識を惹かれてしまう圧倒的な誘引力。
翔葉高校という閉じられた箱の中で、常になにもかもの中心に位置していた、もっとも強い引力を持った輝く恒星。
彼、闇無晶には万人を引きつける“何か“があった。
……まぁ、名前も知らなかった僕が言っても、ちょっと信憑性に欠けるかもだけどね。
けれど、ともあれ、こんな場所に来てまで出会えた同郷の人が知ってる相手だったというのは、なんというか心強くもある。
彼のようななんでもできる万能型の人間が旅路を共にしてくれるなら、みんなの負担が軽減されることは想像に難くない。
ただでさえ世界救うなんつー高校生にはちと重すぎる重圧かけられてんだから、せめてみんなで分散していきてぇからな。年金と一緒だ。
……しかしそれはつまるところ、このパーティのお荷物たる僕という重荷も彼らと分かち合う、て事にならんか? 本当に救わなければならない相手は、救いたい形をしていない……。
いや、この事を今考えるのはやめておこう。
いつ考えても鬱んなっちゃうんだし、寝る前とかに考えるぞ。
むしろ目下の問題は僕みたいな陰の者が太陽キャの目の前に立っちゃったら、あまりのルーメンに文字通り見る影もなく消え去っちまうんじゃないかって事だ。
陽キャっつったら悪王寺先輩も明星先輩も分類的にはそうなんだけど、どういうワケか彼は二人をも凌駕する陽力(飛行機が飛ぶ力じゃない方)を放っている。
なんつーか後ろめたさも衒いも無いのだ。純粋な光が後光の如く差し込んでくる。
あ、やっぱりダメかも。膝から下が粉になってサラサラと風に流れ消え始めてるもんな。心か。
根が僕と同根な目黒さんも心なしか不透明度が下がり、薄くなった彼女越しに僕と目があった鹿野ちゃんがトムジェリの如く眼ん玉飛び出る程ビックリ仰天。
彼女が即座に目黒さんの頭上によじ登り、腕をブーンの形に大きく広げ影を作る事で陰の濃度を保ち事無きを得てホッと安堵の息を吐いた。ブーンて。
最近同年代と話すようになって分かったんだけど、ちょっと近所の兄ちゃんの英才教育が僕の思考の隅々まで行き届き過ぎてるきらいがあるんだよな。人との繋がりを感じられて嬉しいぜ。
まさか向こうさんも顔合わせの挨拶だけで、ここまで要らない事が色々起こるとは思うまい。
往々にして人格者は、自らの立派さを理解していないものだからな。つかそもそも人ってのはみんなそうだ。基本一人称視点な現実は、TPSと違って自キャラが常に見えるワケじゃねぇからしゃーない。
かくいう僕だって自分の事はよくわかっていない。どうしてこんなのがカーシェアリングの如く、みんなに共同利用される予定組まれてるのかさっぱりわかんねぇもの。
さて、お待たせして申し訳ありませんね。
どうも初対面の人間には慣れてないメンバーが居まして。
「……闇無、わざわざ曖昧な言葉にする必要は無いだろう、姦しい声が外まで届いていたぞ」
そんな僕らのてんやわんやを呆れた目で見ていたもう一人の青年が、腹立ちまぎれといった感じでボヤく。
ちなみに曖昧な言葉っつーのは「凄い人たちだねぇ」のくだりね。
僕がイケメン見ただけで戦闘シーンの解説キャラみたいに一瞬で山ほど思考したり、凸凹コンビがわちゃわちゃしたりしたからもうすっかり話の流れがわかんなくなっちゃったな。
すいませんねぇ、メリハリはっきりしてるパーティなんで平時は緩めなんですよ。弛緩と緊張こそが力を生むっつって言ってたし、大擂台賽で。
消去法で考えても、彼こそが知名 賢人君だろう。
バリカン使ってんだろうなって刈り揃えられた短髪に、オシャレではなくともスマートさを感じさせる黒フレームの眼鏡。
委員長の真面目さが四角四面だとしたら、彼から感じるソレはまるで鋭い三角形の角のような刺々しさを感じる。
自分がこれだけやるのだからお前らもこれだけやれというような、自他ともに厳しいタイプかな。
ただそんな生真面目そうな彼が、この世界に馴染んだ魔法使いらしいローブを着ているのは、なんだかミスマッチでちょっと面白い。
けれどそれがよく似合っているんだから、きっとこの異世界でも生真面目にファンタジー冒険者生活をしてきたって事なのだろう。
どこでだって変わることなく己を貫ける強い人。
ぐにゃぐにゃに曲がって、スライムみてーにどんな隙間にも身体をねじ込み適応した体を取っていた僕と違って、キチンとした人間なのだろう。
「すぐそばに危険があるこの世界で、そのように気の緩んだ連中など、背中を預けるに足る人品があるとは思い難……い……え?」
おっと辛辣。みんなからも少しムッとした感情の揺らぎを感じる。
初対面でこんな事言われたら、そりゃお前に何がわかるんだよと思っちゃうので、その苛立ちはしゃーなかろう。
しかし確かに、日本みたいな平和ボケをこんな危ない世界で繰り広げているのを聞かれちゃった以上、自身やひいては仲間の為にも共闘は許容できないってのも当然の話だ。
それが安全な町中の宿屋であっても、そりゃ日本よりゃよっぽどアクシデントに遭う確率は高かろう。
得てしてこういうタイプの人は能力が高く、ついてこれない者をついつい見下してしまいがちである。
まぁすべき事を常に成さない不真面目な相手は、彼にとって理解し難い異星人……もしくは異世界人にでも見えているのかもな。
まぁ、まだほんの一言彼の言葉を聞いただけだから、この認知が当たってるかどうかはわかんないけれどね。
今んとこ情報なんて彼の発言と目付き、そこに載せられた軽蔑、苛立たしげに腿を叩く手指、擦り切れたローブの裾、ヘタった靴の状態、堂に入った杖の持ち方くらいしかない。
これだけじゃあ人を知ろうってのにはまだまだ不十分だ。
今はまだ、僕は彼という人物を知らない。
お互いを良く知るには、もっと時間が必要だ。
相互理解は人付き合いの基本であり、そこを疎かにして一つの目的を掲げた共同体が上手くいくはずがない。
だからこそ今は少し噛み合いが悪い僕らには、相手を知る為のコミュニケーションが要る。
刺々しい態度やいっそ罵倒にも思える否定の言葉は、異世界に来たって変わらない彼の意識の高さに由来する、同胞への失望の発露だ。
けれどそれを狭量や傲慢なんて言葉にしちゃうのは、ちょっと不誠実じゃんね。
そもそもどれだけ天性の才能があろうとも、勉強ってのは努力のゲームなんだ。
例え一目見た情報を忘れない完全記憶能力があったとて、見たことの無い物は覚えられない。
10の努力が10点になるか1点になるかの差異はあれど、しかし少なくとも100点取るにゃ最低限100の努力が要る。
その分野で好成績を叩き出している彼が、途方もない努力家である事はまず間違いがない。
自らを律して弛まぬ鍛錬を積み重ねてきた彼が、気の抜けた周囲を見て腑抜けてると考えちゃうなら……それはある種、他者への期待の裏返しでもある。
なぜお前らは100を、1000を、10000をやらないのだ? という、10000やる人からの至極当たり前な疑問。
いつも気を張り、常に研鑽し、ずっと何かを考え続けられる彼にしてみれば、すべき事をしていない人が怠慢に映っちゃうのは自然な話。
これはついついみんなの緊張感に水差しちまう、僕みたいな怠惰サイドの不甲斐なさが浮き彫りになっちゃうだけで、決して彼に原因がある齟齬じゃあねぇ。
デキる人がその優秀さに起因して憂き目に合う、なんてのは正直良い気分のする展開じゃないでしょ?
間に入り彼が持つ個性としてのトゲを受け止めて、周りから発生する悪感情をとりなして和らげるのが、組織の潤滑油としてやるべき事だ。
面接でそう答えたからには、キッチリ役割守んねぇとなァ。
「ま、ま、ま……そうイジメないでよ。ごめんね。なんせ僕らもここんとこ魔王の走狗を二連続で打ち倒すわ、山と見まごう空飛ぶクジラを討伐するわで、騒動に巻き込まれっぱなしだったもんでさ。ついつい一息ついて、緩みが漏れてしまったとこがあったのはその通り。けれどもこういう稼業はメリハリも大事なもんだよ。そちらもフーゼニスティアでは鳴らしたパーティだと聞いてるけれど、きっと窓から見える大河の流れにホゥとため息を漏らしてしまう一時くらいはあったハズでしょ。なんせこの世界は仰る通り危険が多いけれど、しかし同時に地球には無かった幻想的な美しさがある。比較的安全圏では、肩の力を抜くタイミングも必要なんじゃない?」
みんなの事を悪く言われている以上、立場的にも心情的にも一方的に彼に賛同するワケにはいかない。
こちらの実績を示しキチンとした資質を主張しつつも、決してサボっていたワケではなく息を抜く時間であった事を弁明、相手を責める事無く共感しやすい一例を出すことで呑み込みやすい理屈を提示、ファーストインプレッションの悪印象をうやむやにしつつ拭い去るにはこんな感じで煙に巻くのが良いだろう。
……およ?
一向に返事を返さない彼の顔を見てみれば、その視線は一点に釘付けとなっていた。
目に浮かべた感情は軽蔑から驚愕へと色を変え、信じられないとでも言いたげにぽかりと開かれた口が、内心の動揺を如実に表している。
彼が見ている先に立っていたのは、髪留めで分けた前髪から露出したデコを光らせる、同じく眼鏡の女子が一人。
「お、正親さん?」
「えぇ、知名君。お久しぶりです」
折り目正しく頭を下げて挨拶をした委員長は、一緒に下がっちゃった眼鏡の弦を摘まみクイと上げた。かわいい。
かわいいけど、えっと?
「おや、委員長ちゃんお知り合いだったの?」
「えぇ、知名君は塾も同じですので」
悪王寺先輩の疑問になんでもない事のようにそう告げる委員長とは裏腹に、先程まで堂々と啖呵を切っていた彼は、完全に思考回路がショートして口を開けたり閉じたりしながら挙動不審に目を泳がせている。
うん、いや、まぁ、転移者の中には知り合いくらいいくらでも居るだろうし、というか悪王寺先輩と闇無君もそうだし、それは当たり前の話なんだけど。
けれど、きっと知名君は知り合いと顔を合わせたくらいで、他人との会話を無視したりするような不誠実な人間ではなく、レスバでも無いのに顔真っ赤にするタイプでもない。
つまり、これは。
「ど、どうして、こっちの世界に……? 最初の広場で見回した時、正親さんは居なかった、ハズなのだが……」
「あぁそれでしたら、天使による鑑定時に居座って誘拐への抗議を行っていたからかと思います。私が広場へと転移させられた時には、既に半分ほどが出発済みだったようですので」
「な、なるほど……いや、それは、すまない。最初の転移時点で君を見つけるべきであったし、その可能性を考慮して広場である程度待機しておくべきだった」
「? そんな非効率な事はすべきではないのでは? 王城さんから聞きましたが、知名君たちが取った行動は誘拐を受け入れる場合極めて合理的かと思われます」
「いや、うん、えっと、あ、ありがとう。しかし、そうか、来て……いたのか」
真っ赤な顔でしどろもどろに近況報告をする知名君と、平然と受け答えしている委員長の顔を交互に見ながら、僕は子供でも分かるような結論に達しようとしていた。
「な、なら! なら、正親さん。僕たちと一緒に、来ないか」
「ぷえっ」「おっと」「ちょっ」「あァ?」「えー!?」「ふぅん」
「え? えぇ、はい、そうですね。共に頑張りましょう」
「「「「えーーー!!!?!?!!?」」」」
……無論、というか言うまでもなく、これがめちゃめちゃベタなすれ違いコントである事は理解している。
傍から見ているだけで、知名君一世一代の勧誘を、委員長が「エルフの国へ一緒にみんなで行きましょう」っつー話だと勘違いしていると察しがつく。
委員長の性格を鑑みれば、もし彼女が僕に見切りをつけ三行半を突きつけるなら、それは僕の目を真正面から見据えてキチンと理由を述べた後の事だろう。
だからこそ人心に敏い山算金と色恋に敏い悪王寺先輩は、テンパった知名君の横紙破りなヘッドハンティングにはビックリしてても、委員長のお返事には驚いていない。
『そういうタイプじゃ無いだろう?』とわかっているから、「オイオイなんか面白い流れになってんな」くらいの顔をしているのだ。
それくらいの事はキチンと承知している。
承知した上で、僕の心臓は痛い程に強く拍動していた。
……いつかその時が来れば。
ちゃんと正しくてきちんと生きている誰かが彼女らの前に現れ、メッキの剥がれた僕に彼女らが愛想を尽かしたその時には。
これまでご迷惑かけましたと頭を下げて、幸せになって下さいと笑顔で手を振って送り出そうと、委員長に告白された時点で決めていたから。
"いつか"は、いつだって唐突に訪れる。
なにもかもを失うその時には、最後通牒すら舞い込んできてはくれないものなのだと、僕は嫌というほど知っているのだ。
僕は強くなったつもりで居た。
いやもちろんヒモっつー社会的弱者のままだし、そうでなくとも能力的にも全然みんなの足元にも及ばない程度だけど、そうじゃなくてもっと長期スパンな……地球に居た頃も含めての話。
一人の人間として様々な経験を経た今の僕は、きっと過去よりも打たれ強くなっていると思っていたのだ。
あの頃みたいに毎日一人泣き続けて、愛してくれた人がもう居ない事に絶望して、愛されぬ事に愕然としていた僕は消え去り、なにもかもをどうにか受け入れて、壊れそうな自転車操業でこれからずっと生活していけると考えれる程には強かに……擦れたものだと、勘違いしていた。
けれどこちらへ来て気軽に話せる人ができて、一緒に居てくれる人が増えて、大事な誰かに囲まれてしまった結果、気づけば僕の人間強度は笑ってしまうくらいに脆くなってしまった。
今は単なる勘違いだったけれど、しかしいざその時に直面したら。
異世界に転移してこんなにも弱くなってしまった僕は、果たして耐えられるのだろうか。
ゴォン、と昼前を告げる大鐘楼の鐘が鳴っている。
時計の無機質な針が、また一つ時を刻んだ。