洞窟の出口が見えた。
僕はこの洞窟で46匹のモンスターを倒した。
レベルアップにはいい巣窟だった。
倒したモンスターの数を刻む度に、強くなっていくのを感じた。
例えるなら勇者という名の機械に乗り込み、その操縦に体が慣れていく感じだ。
体つき、手のシワ。生まれつきの左腕にあるアザ。
間違いなく僕自身なのに不思議な感覚。
どこまで動けるようになるんだろうか。楽しみだ。
差し込む陽の光で目が眩む。
外から乾いた空気が洞窟内部に向かって勢いよく流れ込み、肺に思い切り吸い込むと湿気でじめついていた体内が循環される。
洞窟から出るこの瞬間はちょっと気持ちがいい。
それはアメリアもマゴットも同じようだ。
「う〜んっ」と両手を伸ばして伸びをしている。
白馬のパトリにいたっては頭を上下に振って全身使って駆け回っている。
「はぁ〜。長かった。長すぎよ全く。本当疲れたわ。今すぐにでもお風呂に入ってベッドで休みたい気分……」
「そうですね」
とマゴットも同調しているが明らかにアメリアの方が疲弊し切っていた。
すぐに座りこんでしまった。
どうやらアメリアは暗闇が苦手なようだった。
洞窟内にいる間中、アメリアはマゴットの腕にしがみつく様に腕を掴んでピッタリくっついて歩いていた。
最初それを見たとき、女の子同士で百合でも始まったのかと思いドキドキした。
普段強気で自信たっぷりなくせに洞窟内ではか弱い女子と化するもんだから、唖然としてその様子を見ていたら
「な、何よ。あ、後で覚えておきなさいよ」
と睨まれ、口では強気なことを言ったものの今にも泣き出しそうな震えた声をしていたのでよっぽど怖いんだろうと思った。
洞窟内部に入る前に僕に向けて理不尽に鞭を振るおうとしたのは、恐怖を誤魔化したかったからなのだろうか。
なら許してあげようか。
「建物だ。あそこで休んで行くか」
洞窟をすぐ出たところは森の中だったがすぐ側に監視所だろうか。
それらしき建物が立っていたのでそこで少し休息を取ろうということになった。
建物の側まで行くと声をかけられた。
「おや? 珍しいな。キミら冒険者か? 」
人がいた。
小窓がありそこから40代くらいの兵士らしい格好をした男が顔をだした。
「そうです。アリアハンから来たんだけど、ロマリアだっけ? そこは今も無事ですか」
と問いかけると、こいつ何言ってんだという顔をされた。
「アリアハンから来ただって? 洞窟はもうずっと封鎖されてるの知らないのか? そこからどうやって来るって? 笑わせないでくれよ」
完全に馬鹿にしている。
まぁ10年以上も閉ざされていては理解もできる。
アメリアが何か言うのかと思ったが疲れているのか黙ったままなので僕が続ける。
「僕勇者なんですよ。って言っても信じてもらえるわけがないですね。どう説明すればいいのか…」
「ああ。もういい。冒険の真似事か知らんがケガしないうちにロマリアに帰りな。お母さんが心配しているぞ」
そう言うと小窓を閉めて中へ引っ込んでしまった。
せめて休ませてもらおうと思ったがアメリアが口を開いた。
「いいわよ別に。ちょっとその辺で陽を浴びてたほうがよっぽど休めるわよ。30分休んだらロマリアへ向かえばいいわ。滅びていないことは分かったわけだし街でゆっくり休めばいいことよ」
「ん。それもそうか」
地図を見る限り、この場からロマリアは近い。
時刻は昼の3時を回っていたが夜が来る前には余裕で着ける距離だ。
僕らは日当たりの良いところに座って昼食を取ったあと、ロマリアに向けて出発した。