「グラディウス?」
ロマリアの街に入ることが出来た僕らは、早速一件の武器屋を見つけて武具を新調するべく立ち寄っていた。
先に宿を探しなさいよとアメリアに注意されるも我慢出来なかった。
剣が欲しいこともさることながら商店街は賑わいを見せていたからだ。
武具や道具屋に雑貨屋、それに露店などがあちらこちらに並び多くの街の人や冒険者が行き交っていて先程まで開門規制していたことが嘘のように陽気に満ちていた。
「なんだい旅の人。その剣を知らないのかい? この街で暮らしてる男共の大半が皆それを愛用してるんでさぁ」
武器屋の店主が僕に一本の剣を手渡した。
「おっ。軽い」
鉄製の剣。丈は約50cmのショートソードでやや幅広の両刃だ。
僕が今使っている銅の剣より少し短いが大分軽い。
これがこの街の主流の武器「グラディウス」だそうだ。
中でもこの街の剣闘士が好んで愛用することからそう名付けられたらしい。
剣闘士ってなんだ。
「少し短いように思うかもしれんがこれがまた丁度いい扱いやすさでね。ほら。一回振ってみたらどうです」
「いいね。スキが少ない感じ。切れ味はどんなかな」
「青銅よりはずっと上さ。鋼鉄には劣るが鉄製では上等だな。今は何をお使いで?」
「銅かな」
「銅!? 銅だって!? ぎゃははは」
笑われたぞおい。アメリア。
「なんで私を見んのよ」
いや、お前の国のメイン武器だぞ。どうなってんだよ。
「鋼鉄製の剣も置いてあるんだろうか?」
「鋼鉄の剣ですかい?鋼鉄はかなりの高価でさあ、この街ではあまり出回らんのですよ。南西の国ではここより魔物が強いってんで高価でも出回ってるらしいですけどね」
「南西?」
「砂漠の国と聞いてます。気候だけでも辛いってのに魔物も強力ときたもんで。よっぽど腕に自信がなけりゃ近づかん方が身の為ですぜ」
そっちに行かないのなら鉄の剣で十分と言うわけか。
僕はその剣を買うことにし、余った予算でマゴットちゃんにも鉄の槍を買うことにした。
アメリアには棘の鞭があるので新たに武器を買う必要は無さそうだった。
「ところでこの街に入る時に開門規制されていたんだが何か知ってるかな」
「へえ。なんでもまたカンダタ盗賊団が現れたらしいんですわ」
「盗賊団?」
「もう3日も前の話で。なんでも、城に忍び込んで宝物を持ち去ろうとしたところを見つかっちまってこの街に逃げ回って潜んでるらしいのです」
「それで検問張ってたのか」
マゴットちゃんが街にまだ賊が潜んでいると聞いてキョロキョロと辺りを見回し不安そうな表情を見せた。
「大丈夫ですよ後ろのお嬢さん。盗賊団は今頃とっくに城壁なんて突破していると思いますよ。世界中で名の知れてる有名な盗賊団だしこのくらいのヘマで捕らえられたりしないでしょうな」
「そ、そうですか…。それならよかったです」
逃げられちゃったとしたらそれはそれで良くはないけどね。
マゴットちゃんがホッとしているので良しとしよう。
街の人々もそれで気にも留めていない様子だったんだな。
「それで、近々盗賊団を壊滅するべく討伐隊が結成させる話があるらしいんですわ。その辺詳しくは城に行ってみたらどうです? 武器に頼らず銅の剣で戦い抜いてきたお客さんならきっと入隊できるでしょうな」
武器屋の店主はそんなことを言ったが僕の目的は魔王を討伐することだ。
第一盗賊団は人間だろ?
「剣闘士」
「え?」
「この街の闘技場コロシアムで日々戦っている戦士のことさね。元々は魔王討伐隊を集めることを目的に開かれた闘技大会だったんだがね 。
それが次第に凄い観客を集めることになっちまって。魔王そっちのけで世界中から集まった戦士と戦士の決闘さ。とにかく一度見てみることをオススメするね 」
それを聞いて、ひょっとしたら城門入り口で出会った戦士の男もこれが目的で遠い地からやってきたのかもしれないと思った。
「このカンダタ盗賊団の討伐がうまいこといったら魔王討伐隊として本格的に動き出すのは間違いないだろうね」
「そういうことか。それなら行ってみる価値はありそうだな。行ってみるかロマリア城へ」
店主に礼を行って武器屋を後にすると、既に陽は沈みすっかり夜になっていた。
それでも街は変わらず賑やかだ。
食欲をそそる香りがあちらこちらから漂ってくる。
僕らは宿を取り明日ロマリア城へ行くことにした。