勇者の家で目を覚ましてしまったんだが   作:nao.P

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8話。魔法の玉

「アバカム!」

 

アメリアが鍵のかけられた扉に呪文を唱えると、鍵穴から「ガチャリ」と音がした。

 

重厚な扉が開く。

 

本当にたったの一日で呪文を成功させてしまったようだ。

マゴットちゃんは信じられないと言った表情でアメリアを見つめている。

 

「成功成功♪ さ、入るわよ」

 

驚いてる二人をよそにアメリアが嬉しそうに中に入っていく。

 

 

呪文の難しさは昨日身を持って知った。

宿で一晩マゴットちゃんから呪文について手とり腰取り教わったのだけど結局僕は覚えることが出来なかった。

元から才能がないもんだと思うのだけどマゴットちゃんは、僕から魔力を感じるので必ず呪文を使えるようになると言っていた。

 

なので。

使えるようになるまで毎晩マゴットちゃんにご教示してもらおうと思います。うん。

マゴットちゃんは寝巻き姿でお風呂上がりのいい香りを漂わせながら教えてくれるもんだからとてもドキドキなのです。

そのままね、いつか一緒のお部屋でお眠りしたいのです。うん。

 

「ちょっとナオヒコ! 何ボケっと突っ立ってんの!? 早く来なさい! バカなの!?」

「ひっ!?」

 

保管庫の中にアメリアの甲高い声が響く。

どうやら僕はいけない妄想に浸っていたようだ。

 

 

奥へと行くと小部屋にポツンと一つ小さな木箱が置かれていた。

 

開ける。

 

玉だ。ガラスの玉。中は透明だが青白いガスの様な物が溜まっているのが見える。

 

「これね。結構な魔力が込められているわ。はいナオヒコ。気をつけて持ちなさい」

 

アメリアが手に取り少し興味深そうに眺めた後、僕に手渡した。

 

「…って、僕が持つのかよ」

「だって何かの拍子に爆発しちゃったら死んじゃうもの」

「死ぬのかよ!? って僕は死んでもいいんだ!?」

 

「あなたが真の勇者なら世界を救うその日まで死なないハズよ。だから大丈夫なの」

 

うんうんとアメリアは自分で言った言葉に頷いている。

そんなんで納得出来るかよと思いつつ、道具袋に魔法の玉をそっと詰めた。

 

それから僕たちは村を出る準備をした。

薬草に毒消し草。それから食料に水。お泊りセットにテントだ。

テントで女の子二人と寝泊まり出来るのかなと思うとヨダレが垂れた。

アメリアがなにやら僕を軽蔑する眼差しを向けていたが、しょうがないのです僕は男の子ですからね。

 

それら増えた荷物をアメリアが連れて来ていた白馬のパトリに背負わせた。

 

「連れて来てたんだな」

「当然よ。この子とは私が小さい頃からどこへ行くにも一緒だったんだから。ね。パトリ」

 

そう言いながらアメリアは腕を伸ばしてパトリの首を撫でる。

慣れた感じでパトリも気持ち良さそうにしていた。

 

「それじゃあ行くかね」

 

「勇者殿」

 

村人に呼び止められた。村長だ。

もうこの村で二晩も宿でお世話になったので、村人の顔も覚えた。

 

「これより勇者殿が向かう先は我が国と十年以上も国交を断絶していた地。既に魔王の手に落ちているということも考えられまする故どうかお気をつけて」

「大丈夫。真の勇者は世界を救うまで死なないらしいからね」

僕がそう言うと、アメリアが変な目でこっちを見た。

 

「それと勇者殿。化物を退治してくれたお礼と言ってはなんですが受け取ってくだされ」

 

村長から手渡されたそれはトゲトゲのついた鞭のようだ。

 

「これは滅多に咲くことのない強靭なイバラで出来た鞭。

かつてこの村が多数のモンスターに襲われたとき村人が振るったこのたった一本の鞭で村を救ったことがあるくらいなのです」

 

その鞭はツル状にしなややかに伸び、トゲの部分は鋼みたいに硬く鋭い。

 

「とても軽いのでお隣の女性の術者の方でも軽々と扱えることでしょう」

 

それを聞いたアメリアが鞭を受け取るや否や、ヒュンヒュンと振り回し始めた。

近くに生えていた草木が綺麗になぎ倒される。

 

「気に入ったわ! 誰かさんのお仕置きにも使えることだし!」

「死んじまうわ!」

 

突っ込まざるを得ない。

アメリアはお礼を言って有難く受け取っていた。

 

「勇者様。気をつけてくださいね……」

 

マゴットちゃんが本気で心配してくれるのが余計怖くなった。

 

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