櫻華のカンデラ   作:おこげの

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アルとはしゃいで、ムツキと揶揄い合って、カヨコと共に音楽を聴き、ハルカと一緒に雑草を愛でたい。そんな日常を送りたい。


神秘達(神々)との邂逅

 

 ブラックマーケット闇銀行にて、便利屋68With燭光(乃水サクラ)は融資の審査の為、ソファーに腰かけて待機していた。2時間、3時間と幾ら待っても銀行員からの返事は返ってこなかった。社長のアルは窓口の席で待機しており、他の4人はソファーで吉報を待っている状況だ。

 

流石に退屈に思い、皆は雑談に興じることになった。この時間のお陰で、燭光はある程度は3人と打ち解けていた。ハルカとは雑草について少しの雑談を、ムツキとはお互いに揶揄い合い、そして今はカヨコと閑談をしていた。

 

「私はカヨコさんのお顔を見て、怖いとは感じませんでした。凛としていて、寧ろ綺麗だと思います」

 

「…何それ……目を閉じてるから分からないでしょ、ちゃんとその目で顔を見てから言いな。全然説得力ないよ」

 

「ふむ、それもそうですね……ですが、私の目は友人曰く不気味で怖いとのことで、カヨコさんを不快にさせるかもしれませんが……それでもよろしいですか?」

 

目が怖い、ね……あんたも他人からそう思われたことあるんだ……私は顔でサクラは目……いや、なに同列にしているんだ私は。まぁでも実際に見てみないと何とも言えないか。

仮にそのような目でも私がどうこう言える訳じゃないし、一時的に便利屋のメンバーになったからには、気に掛けておく位はしておくか。

 

「どうかしましたか?」

 

「何でもない。大丈夫。うん……目、見せてみてよ」

 

「ふふ、そうですか。それでは………開きますね」

 

燭光の瞼が少しづつ動き始める、カヨコはゴクリ…と喉を鳴らし、謎の緊張を走らせる。ただ瞼を上げるだけの動きに、ゆっくりと時間が流れる感覚を味わうことになるとは思いもしなかった。思えば、この様にじっくりと燭光の顔を見るのは初めてだと気づく。

 

綺麗で滑らかな白磁の肌、長く綺麗に整っているまつ毛、顔立ちも端麗である。カヨコは少し惚れ惚れとした気持ちで燭光を見つめている最中、ある気づきを得た。

 

「ねぇ……あなたって……もしかして、男───だったりしないよね?」

 

カヨコは若干奇妙な質問の仕方をする。長年の洞察力により、燭光にある違和感を感じた。それは体の骨格、細かな節々だ。一見すると、お淑やかな女性に見える、だがよく身体を観察してみると、首に赤い縄が巻かれていて見えにくいが喉仏が見受けられ、鎖骨辺りの筋肉に強い違和感を覚えた。その質問に対し、燭光はあっけらかんとした様子で答えた。

 

「はい、そうですよ?ふむ、てっきり気づいていると思ってましたが、やはりこの見た目では分かりにくいみたいですね」

 

「…………そう、なんだ」

 

カヨコは何とも言えない気持ちになる。益々燭光の事が分からなくなった。キヴォトス外の人間でありながらヘイローを持ち、照明などの光の操作や瞬間移動などの芸当、そして珍しい人間の男。もしかしたら私達はとんでもなく厄介な人間を請け負ったのではないか、と心の中で嘆いた。

 

「ふーん?サクラちゃんって男の子だったんだね……ほうほう、確かに体つきが違うね~」

 

話を聞いていたムツキは、そう云いながら燭光の体を遠慮なくまさぐる。待ち時間でお互いを揶揄い合ったお陰か、この様な大胆なスキンシップをできる関係になっていた。

 

「細くて柔らかいけど、若干固いところもあるね~」

 

「いっ一応、公共の場っ…なので…人目にっ付くことは、やめてください」

 

「これだけ触られても笑みだけは崩れないんだね」

 

「これ以上はセクハラですよ」

 

「ごめんごめん、うん。ほんとに男?」

 

「生物学的に男性に当たります。証拠は………この話はやめにしておきましょう」

 

カヨコはそんな2人の様子を見ながら暇をつぶす、ハルカはウトウトし始め、次第に皆は待ちくたびれ肩を寄せ合って寝てしまう。

 

「フフっ……さて、そろそろ社長を助けてあげるとしますか」

 

そう呟き、3人を起こさないようソファーから立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 窓口の席で待機しいるアルの元に、闇銀行の銀行審査官が到着した。アルは審査の待ち時間に文句を言うが、銀行審査官は気にせず促し、アルに厳しい結果を突きつける。

 

「従業員が社長を含めて5名、肩書の無駄遣いですか?それに必要以上に高い賃貸料……財政状況を把握されていますか?そして資産と言える物は銃火器のみ……お客様、これではご融資は難しいですね」

 

「えっ、えーっ!?」

 

「担保できる財産、あるいはあなたに信用があればご融資は可能なのですが、まずは日雇いの期間工などをなさってはいかがでしょう」

 

「は、はああ!?」

 

挙句にはまともな職に就いてみてはと奨められる。便利屋として、アウトローとしてのプライドが許すはずがない、アルは苛立ち、暴れてやろうかと感情的になるが、ここはブラックマーケットだと我に返り、落ち着きを取り戻し冷静になったが、却って落ち込んだ気持ちに陥る。

 

(何よこれ…情けないわ……キヴォトスいちのアウトローになるって心に決めたのに、私は……こんなつまらない、融資だのなんだので……サクラに頼りないって思われるかも…)

 

そんな気分が落ち込んで項垂れているアルの元に、サクラこと燭光が駆け付けた。

 

「大丈夫ですか、アル社長」

 

「あっ……サクラ…」

 

「おや、あなたは確か……アルバイトの方でしたね」

 

「どうもこんにちは、お話を伺ってもよろしいですか?」

 

値踏みする様な視線を向けられるが、燭光は気にせず説明を求める。

銀行審査員は先程の内容をもう一度説明をした。燭光はうんうんと頷きながら話を聞く。

 

「担保できる財産、または信用があれば融資ができる、とのことでしたね?」

 

「ええ、そうですが、お話を聞く限りでは難しいかと」

 

「サクラ……大丈夫よ、ありがとう」

 

「アル社長、短期間とはいえ、私は便利屋の一員なったのです。バイトと言えど、社長を助けるのも務めです。手はありますよ」

 

「え…?」

 

燭光は懐から何か物を取り出し、窓口の机にそれらを羅列する。

アルと銀行審査官は疑問に思いながらそれらを注視した。互いに戸惑いが見える。汗の漫符が表示された銀行審査官は質問を投げる。

 

「あの、こちらは…」

 

「フフっ、これは────”オーパーツ”です」

 

「!?」

「な、何ですって!?」

 

燭光が羅列した物は、キヴォトスに於いて高価で価値がある”オーパーツ”。旧キヴォトス世界の残余である謎多き物質だ。

しかもそのオーパーツは、どれも完璧で高純度な代物であった、ファイストス円盤、ヴォルフスエック鋼鉄、アンティキティラ装置、古代の電池などが散見する。

 

「これを担保に融資をお願います。怪しいのであれば、そうですね……試しに換金所などでこれらを審査してみてはどうでしょうか、此処(ブラックマーケット)ではそういった場所が多くあると思うので、すぐに済むと思います」

 

「……わ、分かりました、では拝借させていただきます。少々お待ちください…!」

 

銀行審査官はそそくさと下がっていった。アルは呆然と燭光を見つめていた。

 

「あ、あなた、オーパーツなんて物を持っていたのね……」

 

「個人的な目的の為にオーパーツを収集していました。先ほど出したのもほんの一部なので、気にしなくて大丈夫です」

 

「………ありがとう、サクラ。お陰で助かったわ」

 

「依頼を成功させる為ですよ」

 

「はぁ……社長として情けないわね、私…」

 

燭光のお陰により、融資が通る可能性がでてきた、だが社長として情けない有様であり、それはそれで気を落としてしまう。だが実際に助けられたのは事実なので、そこは素直に感謝をする。まったく、この子を役に立たないと決めつけた人がいるなんて、どこのどいつかしら、と心の中で自責をした。

 

暫くして、審査した結果オーパーツは本物だと判明した。これを担保できる財産として融資ができると説明される。アルは喜び、後ろで待機している3人もその様子を見て安堵する。書類等の記入に移る矢先に、それは突然に起きた。室内の照明がパッと突然と消えた。

 

「え!?なに?停電?」

「サクラ、あんたの仕業じゃないよね?」

「私ではありませんよ、これは……この停電、意図的に落とされたみたいですね」

 

包帯が巻かれた左目に手をかざしながら周りを見渡す。目に見えない物を見るこの眼で、燭光は5つの光を捉えた。その中でひと際煌めく1つ光に、燭光は強い歓喜に湧く。銃声が響き、周りの人々が騒ぎ始め、そして爆発音が鳴り響いた。マーケットガードは阻止しようと動きを見せるが、背後から銃底で殴られ意識を落とす。この暗闇と煙幕で思うように動けないようだ。

 

「全員その場で伏せて、持っている武器を捨てて!」

「言う事を聞かないと、痛い目にあいますよ☆」

「え、えっと……みなさん、ケガをしないように伏せててくださいね…!」

「警備システムの電源は落としたから無駄だよー」

「ほら、そこ!大人しく伏せてなさい!」

 

覆面を被った連中が姿を現した。周りを見渡し、常に銃口を向けている。

 

「ふふ、フフフ……まさかこんな早くに合えるとは、暁のホルス、小鳥遊ホシノ…いえ、ここは落ち着きましょう、今はその時ではない」

 

「ど、どうしましたか、サクラさん…?」

 

「いえ、なんでもありません、取り敢えず隠れますか」

 

カヨコ、ムツキ、ハルカ、燭光は柱に隠れて覆面達の動向を観察する。

 

「ねえ、あの子達って──」

「見るに、アビドス生徒達と見受けられますね」

「ねっ、狙いは私達でしょうかっ!?か、返り討ちにしちゃいますか?」

「いや、ターゲットは私達じゃないみたい……あの子達……まさか、ここを…」

 

銀行を突入した覆面の生徒達のこの所業は完全に────

 

「ふふっ、銀行強盗とは……大胆なんですね。アビドスの生徒は。倫理観が心配です」

 

青い覆面を被った人物、砂狼シロコは窓口に向かい、銀行審査官を問い詰める。審査官は慌てながらバッグに色々と詰め込み始める。その様子をアルは目を輝かせながら見つめていた。

 

(や、ヤバーい!!この人達なんなの!?ブラックマーケットの闇銀行を襲うなんて!!)

 

(めちゃくちゃ手際いいし、超プロフェッショナル……か、カッコいい!シビれる…!)

 

(これぞ正に、真のアウトロー!あぁ涙出そう…)

 

「社長は……全然気付いてないみたいだね…はぁ」

 

「むしろ目なんか輝かせちゃって」

 

「わ、私達はここで待機でしょうか?」

 

「その方がいいでしょう。アビドスと銀行、双方助ける理由はないですし、リスクが大きい」

 

「うん、それに社長が今あんな状態だから、今は隠れていよう」

 

暫くするといっぱいになったバックを担ぎ、覆面達は銀行から立ち去って行った。

憤慨した銀行審査官は道路の封鎖とマーケットガードに通報を呼びかける。騒がしくなる様子を見て融資どころではない状況になった。先ほど渡したオーパーツを回収し、アルを呼びかけようと周りを見渡すが、姿が見えない。

 

「あれ?アルちゃんは?」

 

「見当たりませんね、アル様…」

 

「あの子達の後を追ったみたいだね、はぁ……追いかけるか。サクラ、走れる?」

 

「…………私は一足先にアル社長の元へ向かいます。場所は後でメールで送りますので、お先に」

 

「………ズルでしょ、それ…」

 

体が弱い故体力が少ない、疲弊するのは確定なので、燭光は逃げるように黒い風を発生させ、虚空へと消える。カヨコは嘆息し、皆は走ってアルの後を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覆面達こと対策委員会と先生は、バッグの中の確認をしていた。中身には札束が大量に入っており、皆は動揺と驚きの反応をする。目的の集金記録の書類は問題なく確保できたが、問題は大量の現金をどうするかで意見が分かれた。

 

「やったぁ!!早く運ぶわよ!」

「そんなことしたら駄目だよセリカちゃん!!」

「何でよ!?このお金はそもそも、私達が汗水流して稼いだお金じゃん……それがあの闇銀行に流れてったんだよ!」

「確かに…そのままにしておいたら、犯罪者の武器や兵器に変えられたかもしれません…」

「そうよ!悪人のお金盗んで何が悪いの!?」

 

自分達が汗水流して稼いだお金が、他の用途に使われていて、自分たちの努力が無駄だと言われているようで、セリカは憤慨し、ノノミやアヤネはどうしようかと葛藤し、先生とヒフミは心配の眼差しでその様子を見ている。

 

「”本当に、それでいいのかい?”」

 

先生は再度セリカに確認をする。良心の呵責が働いたのか、バッグを握る手を緩め、俯いてしまう。年長者であり3年のホシノは皆を見守りながら、シロコへ質問をする。

 

「シロコちゃんはどう思う?」

 

「答えるまでもない、ホシノ先輩が反対する」

 

「え!?」

 

「流石はシロコちゃん、私の事分かってるねー」

 

「私たちに必要なのは書類だけ、お金じゃない。今回は悪人の資金だからいいとしたら、次はどうする?その次は?」

 

その問いにセリカは視線を逸らす、こんな方法に慣れてしまうと、ゆくゆくは平気で同じことをしてしまう可能性。この先、危機に陥った時に「仕方ないから」と言いながら、悪事に手を染める。そんな最悪な想定をしてしまう。

 

「おじさんとしては、カワイイ後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー」

 

「こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってる燦然と輝くゴールドカードに頼ってたはずー」

 

「…ですが、それはホシノ先輩に反対されて……そうでした。きちんとした方法で返済しない限り、健全なアビドス高校ではなくなってしまう…」

 

「そゆことー」

 

ノノミの答えに、ホシノは頷き、にへらと笑いながら腕を頭の後ろに組む。皆は顔を見合わせながらその純然たる意見に同意した。

 

「”うんうん……じゃあ、貰うのは必要な書類だけ!それでいい?”」

 

「事情は知りませんが……このお金を持っていると、何かトラブルに巻き込まれるかもしれません。災いの種みたいなものでしょうから…」

 

もどかしい気持ちもあるが、自分達の信念の為に、大量の現金が入ったバッグを処理することを選ぶ。この一連の流れを、彼女達が居る橋の下で聞いていた。

 

「黒服から聞いた現在のキヴォトスは、学生達がそれぞれ自治を管理していると……ふむ、未熟な子供達である故、このような枷を負うことになった。学園都市になったキヴォトスでは仕方がないこととも言えますが、まともな大人が居ないのも事実……」

 

アビドス高校の状況を耳に入れた時から、その様な感想を抱いていた。借金の元凶はカイザーPMC、アビドスを襲った災害によって砂漠化が進行した状況を利用し、アビドス高校を借金漬けにした悪徳企業。道徳的観点等を度外視すれば、法と契約を上手く使った手堅い策だと評価する。砂の下に埋もれている巨大量子コンピューターの為だけにここまでするとは、自社の利益の為に利用することだろうと簡単に推測できる。

 

「アビドスの生徒は苦労が絶えず大変ですね………まぁ、同情は湧きませんが、理解はします。かく言う私も、まともな人間ではないのですが」

 

───私は、この手中に神秘()を納めれば、それでいい───だが、それではツマラナイ。サクラメントゥムには、ただ神秘()を手に入れるだけでは足りない、黒服が端末で見せた生徒と先生達のあの輝かしい映像、あの透き通った青い神秘()は、私の崇高に繋がる。

 

ヘイローが激しく点滅し、常に瞑目してある目を開き、黒い靄を漂わせる。内をから湧いてくる感情を表しているかのようだ。冷静になる為に左目を抑えて興奮を沈める。悪癖は治らないな──と自責しながら正気を取り戻した。

 

「目に見えず、手の届かない、あの輝き………魅せてもらいますよ。先生」

 

そう口から零していたところで、アルが彼女達の元へ辿り着いた。走ったことで息を切らしている。アビドスの面々は正体がバレないよう、急いで覆面を被り直した。燭光はアルの姿を確認し、カヨコ達に連絡を入れた。

 

「ふむ、本来はこの出来事を理事へと報告すべきですが………現状のままでいいでしょう。結果は変わりません。今の所属は便利屋68のアルバイト、この立場の方が彼女達へ近づきやすい」

 

「おーい!サクラちゃーん!」

 

「おや?早い到着ですね」

 

「相手の逃走経路を予想しながら走ってきたからね、連絡貰った時はもう近場だったよ」

 

「あ、アル様は……あの橋の上ですね…」

 

4人は橋の上を見上げる。アルは覆面達に称賛の声をかけていた。

 

「その、す、凄く衝撃的だったわ!あんな大胆なことができるなんて……わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られない、本当の意味での自由の魂!そんな”アウトロー”になりたいから!」

 

「えっと……何の話」

「さぁ?」

 

セリカとホシノは困惑しながらひそひそと話す。ちなみに先生は近くの木々に姿を隠している。

 

「そ、そういうことだから……な、名前を教えて!!」

 

「な、名前……か…」

「え、ええっと…」

 

シロコとファウストことヒフミは困惑の反応をする。シロコにとっては念願の銀行強盗だが、組織の名前などは決めていなかった。即席のチームで、巻き込まれた挙句、ファウストというリーダー役を担うことになったヒフミにとっては、混迷の出来事だっただろう。お人よし故の結果だが、それが彼女の美徳であるのも事実だ。

 

「はい!おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」

「ちょ!?ノノ、っミ先輩!」

 

「私達は、人呼んで────覆面水着団ですっ!!」

 

ノノミはそう云いながら決めポーズをとった。ホシノもそれに便乗して前で出る。

 

「ふふふのふん!目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモット―だよ!!」

 

「な、なんですってぇぇーーッ!!ああ………かっこいい……!!」

 

そんな様子を4人は眺めていた。

 

「何してるの……あの子達…」

「アルちゃんドはまりしてるじゃん。特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」

「アル様、楽しそうですね…」

「ふふ、アル社長は本当に面白い方ですね」

 

陸八魔アルさん……彼女のことは興味ありませんでしたが、彼女の発する神秘()は、敵味方を魅了する……不思議な神秘()です。機を見て収集できるのであれば、是非納めたいものですね。

 

「さて、流石に呼びかけておきますか」

 

「あ、あの方達は、ど、どうします?」

 

「逃げるだろうね。今は準備期間だから追わなくていい」

 

3人を横目に、燭光はアルの元へ瞬時に移動し、肩にぽん、と手を置いた。

 

「わあ!?あ、サクラ?」

 

「アル社長、アウトローとしての気概を心に刻んだようでなによりです。そろそろ3人の元へ戻りましょう」

 

「そ、そうね、ちょっと夢中になっちゃって、悪かったわ」

 

「ふふっ、気持ちが晴れたみたいで良かったですね?」

 

燭光は優しく笑う。先ほどの銀行でのサポートと、細かな気遣いを受けて、アルは燭光(乃水サクラ)に信用の気持ちを大きくする。男女共に見惚れる様な燭光の笑顔を見てそう感じたアルは、僅かに頬を紅潮させる。

 

そんな2人の様子を覆面水着団ことアビドスの面々は見ていた。撤収しようとした矢先、ふとアルの方を一瞥した。瞬きした時には既にアルの傍にいた謎の少女、便利屋の仲間か?と訝しむ視線でその少女を見つめていた。

 

「いつの間に…あの子は見たことがないですね」

「もしかして便利屋のオペレーターだったりして?杖を突いているから、裏方の役割をしていたんでしょ」

「………い、いえ、セリカちゃん……便利屋の情報を調べていましたが、彼女の情報は何一つもありません。今スキャンしてみましたが、分析結果は0、です……彼女は一体…」

 

アヤネはドローンで燭光の姿を捉え、拡大し、スキャンをしたが、該当する学園等のデータは上がらなかった。タブレットに映るその佇まいは、どこか不気味な印象を抱く。

 

「ん、なんか、不気味だね」

 

「”みんな!早く撤収するよ!マーケットガードが来るかもしれないからね!”」

 

インカムから先生の声が入ってきた、皆は気を取り戻し、その場から離れようと動く。そんな中でホシノは未だに訝しむ視線で燭光を見つめていた。

 

「…………あの感じ……なんだか、アイツの様な……」

 

「ちょっとホシノ先輩!ボーっとしないで早く逃げるよ!」

 

「あっ、待ってよー、おじさんを置いて行かないで~!」

 

声を荒げるセリカに、気が抜けたような返事で返す。最後に燭光の姿を一目しようと振り返る。そんなホシノの双眼に映ったのは、瞑目していなく、目を見開き此方に視線を向けていた燭光の姿だった。

 

【挿絵表示】

 

カメラレンズの様な黒く無機質で、複数の円が重なった、赤のグラデーションが僅かにかかっている瞳。その目と目が合い、交差させる────全てを、深淵を見抜くような視線を受けて、ホシノは黒服と同じような不気味で悍ましい感情を抱いた。心なしかほくそ笑んだ様な気がして、逃げるように首を前に向け、そのまま走り去る。

 

(なんだ……あの目は……この感覚は…っ)

 

漠然とした不安に囚われながら、皆と共に校舎へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつ言う?」

「面白いから暫く放置で♪」

「うん…?あの…これ、忘れ物でしょうか…」

 

ハルカが地面に置いてある大きなバッグに指を差す。皆もそのバッグへと視線を向けた。気になり皆はそれに近づく。

 

「おわ、結構重いよコレ。何が入っているんだろ」

 

「……開けてみるか」

 

カヨコはジッパーを下げる、するとその中身が僅かに零れ落ちる。

 

「……へ?」

 

丁度アルの足元に転がったのは、札束、それは大量の現金だった。

 

「ひょええ!?」

「!!こ、これは……!?」

「わ、わぁ……こ、こんなっ、現金がいっぱい!?」

「ええええええええええっぇえええッ!?!?」

 

これにはムツキも驚きで変な声を上げ。

普段クールで表情を崩さないカヨコも驚愕の表情を表す。

ハルカは混乱し、アルは───驚愕そのものを体現した顔になった。

 

一方燭光はというと…

 

「おお、現金がこんなにも。ふむ、これで暫くは生活に困ることはないのでは?」

 

相も変わらず、瞑目し笑みを浮かべていた。

 

「これでもう、食事抜かなくてもすみますか………?」

 

「ええ、幾らでも好きな食べ物が食べられますね。良かったですねアル社長」

 

「ラッキーだね!アルちゃん!」

 

「でも…これって、あの子達の…」

 

「こんな所に置きっぱなしだと、その内誰かが持ち去るだけだし、持って帰った方がいいんじゃない?」

 

カヨコの提案に、アルは逡巡するが、誰かに持ってかれるなら私達が預かっていた方が…という考えになり、ぎこちなく首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

便利屋68の事務所に戻った一行は、今日の出来事を振り返っていた。

 

「オーパーツを担保にね……確かにキヴォトスでは最も価値がある代物、財産になると思うけど…そんな代物よく持っているね、あんた、何者なの?」

 

「ふふっ、秘密ですよ。強いて言うなら、骨董品などの集めるレトロ愛好家…と冠しましょうか?」

 

「えーっ?もっと詳しく話してくれてもいいじゃんー。気になるなぁムツキちゃん」

 

「す、凄いですね……これなんて、何が書いてあるか分かりませんが、何故か惹かれます…」

 

「おや、それはヴォイニッチ手稿ですね。私も読みましたが、未だ未知で不明な内容ばかり。名称不明な草本や占星術が多く、解読は難航しています」

 

「な、なるほど、こんな草…実際にあるのでしょうか…」

 

ソファーに座り、そんな雑談をしていた。ふとアルの方へ視線を移すと、窓辺を見ながら覆面水着団の振る舞いを振り返っている様だ。目をキラキラとさせ、()()()()()を強く感じている。

 

「我が道の如く魔境を行く………紙に書いて貼っておこうかしら…」

 

「アル様、帰ってからずっと覆面水着団の事ばかりですね」

 

「くふふ。いつ気付くかなー?」

 

「……はぁ、社長……覆面水着団の事だけど……あれアビドス高校の連中だよ…」

 

「へぇ、そうなのねぇ………」

 

数秒間沈黙が空間を支配する。そして大分聞きなれた驚愕の声が室内に鳴り響いた。

 

「え゛!?!?」

「な、な、な、なんですってーーーーーーっっ!?!?!?そっ、そんなぁーーー!?」

 

ショックで手を震えさせるアルの有様に、笑い声を上げるムツキ、頭を抱えるカヨコ、少し心配そうに見つめるハルカ、そんな4人を見守り、クスッ──と笑う、頬を薄く赤くし、僅かに感情を発露させた燭光であった。

 

 

 

 

 

 





設定やキャラクター、文章についておかしい所が有ればご指摘くださると幸いです。

修正は度々します。

燭光、開眼しました。感情の変化で開けたり閉じたりします。

次回は紫関ラーメンが爆発して乱戦になります。燭光はどうなるんでしょうか?先に教えておきます。死にます。以上。
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